首都圏で増加するコンセプトシェアハウスの風雲児!?

これまでに何度もHOME’S PRESSでも取り上げている通り首都圏を中心として音楽、ゴルフ、食、バイク…などなど、あらゆるコンセプトのシェアハウスが急増している。
クリエイターのためのシェアハウス、とだけ言ったら、もうそれほど珍しいものでもないかもしれない。しかし今回紹介するのはそのコンセプトに相応しく、とても「尖って」いる。

なんと、入居から半年間は家賃が0円なのだ!
応募条件は「これまでにクリエイターとして何かを生み出したことがあり、創作を通してこのシェアハウスに貢献や協力をすること」。

共通の趣味を持った人同士が集まり、趣味の話題で入居者同士が活発にコミュニケーションを取ることが、シェアハウスの一つの醍醐味。しかしこの家賃0円のシェアハウスは趣味の範囲に留まらず、「ここから世の中に出る」ことを前提として人が集まる場所としてつくられた。

賃貸住宅なのに家賃0円(別途、共益費月額10,000円~15,000円は入居者負担)。どんな秘密があるのか?また、クリエイターを支援する仕組みとは?古くから「ものづくり」のまちとして知られる東京都台東区で2014年8月にオープンした「TOLABL(トラブル)」を取材した。

異例中の異例とも言える、”家賃0円”。クリエイターの間では注目を集めているようだ。</br>家賃0円の仕組はどうなっているのだろうか?異例中の異例とも言える、”家賃0円”。クリエイターの間では注目を集めているようだ。
家賃0円の仕組はどうなっているのだろうか?

アトリエであり住居。コミュニケーションと作品が生まれる場所に

リビングでは、大テーブルを囲んでクリエイターたちが食事をしたりテレビを見たりと団欒の時間を過ごすリビングでは、大テーブルを囲んでクリエイターたちが食事をしたりテレビを見たりと団欒の時間を過ごす

複数の路線が乗り入れる「南千住」駅から、東京スカイツリーに向かって真っ直ぐ歩いたところにTOLABLはある。元々はオーナーが自宅兼事務所として使用していた平成2年築の4階建てをリフォームした物件である。
1階部分を全て共有スペースとし、壁に作り付けられたホワイトボードや作業スペースを設け、入居者はアトリエやイベントスペースとしてここを自由に利用できる。
それぞれの個室は一般的なつくりだが、団欒用に設けられた共用の和室や、広々とした屋上で目の前に佇むスカイツリーを眺めながら、クリエイター同士でアイディアを出し合い、それぞれの夢について語り合うなど、コミュニケーションを図る仕組みが空間づくりに考えられている。
また、入居するのは「ものづくり」をするクリエイター。インテリアなどを専門とする人をはじめ、自由に棚などを作りたいという入居者からの声も想定し、敢えて内装工事をしないスペースも設けた。

「TOLABL」というこのシェアハウスの名前は、以下の3つを由来としている。
1:ラボる(ラボで作業すること)
2:TO LAB(ラボに行くこと)
3.トラブル(毎日の”楽しい”もめ事)

アトリエと住居の一体型となったこのシェアハウスで個性のあるクリエイターたちが切磋琢磨してものづくりをして暮らす、そんなイメージがこの名前には込められている。

「家賃0円」の意外な理由

このシェアハウスを運営しているリレーションズ株式会社(以下、リレーションズ)は、「マイナスがプラスになる瞬間(b+)を数多く社会に生み出していく。」というビジョンを基に、企業のコンサルや自転車のシェア事業等を行っている。今回のシェアハウスはどのような想いでスタートするのだろうか?そこには、このシェアハウスプロジェクトの発起人である土屋さん自身の暮らしに理由があった。

「実は私もシェアハウスに住んでいるんですが、シェアハウスは多様な価値観を持つ人が訪れ、想いを萌芽しやすい場所だと感じています。その経験から、世界をアッとさせるものが生まれるシェアハウスを作りたいと考えるようになったのが一つです。そして、大企業に勤めるエンジニアから、会社勤めをしながら自分の望むものづくりをすることが難しいと言う話を聞いたんです。しかし転職やフリーランスへの転向も容易ではない。仕事をしながらクリエイターが自分の望むものづくりをしたり、面白いプロジェクトに関われる空間を作りたいと思い、2つを合わせてクリエイター向けシェアハウスを考えました」

“クリエイターのための環境を整える”ことで、事業として社会の“不”を解決する事ができる。ではなぜわざわざ、家賃を0円にしたのだろうか?

「クリエイターのための空間は都内にいくつかあるので、やはり「尖って」いる必要があったんです。家賃0円にすることで、絶対におもしろいクリエイターさんが集まってくれると思いました。会社としては当然、利益どころか赤字ですが、ここからおもしろいプロジェクトが生まれていけば、TOLABLの名前も売れていく。回り回って、運営している会社としてリレーションズの名前が出ればいずれ会社のPRになるので、家賃負担分は広告費用と捉えています」

家賃0円とは、これ以上に「尖った」事は無いのでは、と感じた。実際にその戦略は成功のようで、入居の応募者が殺到したという。

様々なプロジェクトでクリエイターを世の中に

メリットは家賃だけではない。クリエイターのための様々なプロジェクトが行われようとしている。
入居する「レギュラー」は定員5名。他に、入居せずアトリエを利用することができる「準レギュラー」も募集している。入居者以外にもアトリエを開放することで、より多くのクリエイターに集まってもらい、それぞれのプロジェクトの幅を広げる事ができる。入居者だけでなく、クリエイターに対して広く価値を提供したいという思いが伺えた。

運営開始後の最初のプロジェクトも、もう決定しているそうだ。
アトリエ部分の最低限の設備は準備しているが、何しろ集まるクリエイターのジャンルは多種多様。それぞれが希望する設備を全て網羅することは難しいため、クラウドファンディングを利用し資金確保をしようというもの。
「みんなでアトリエを拡充する事を最初のプロジェクトとしています。それによってクリエイターさんの名前が世の中に出つつ、欲しいものも購入できるんです」と、土屋さんは話す。

今後は、TOLABLを利用するメンバーで世の中に作品を出していくのはもちろん、外部から依頼されたアイディアと内部のクリエーターとのコラボなども計画しているほか、地域との関わりも積極的に図っていくようだ。「せっかく浅草という日本の伝統的なエリアに近く、外国の人も多い街。何かしら浅草の街とのコラボレーションも行って行きたい」と、楽しそうに話す土屋さんの姿がとても印象的だった。

目指せ、クリエイターの「梁山泊」

最終的に応募は100人を超えたそうで、彼らの専門はデザイナー、エンジニア、カメラマン、漫画家、彫刻家、画家など、本当に様々だ。
しかしいずれにせよ「家賃0円」の枠で入居するクリエイターは、おそらく相当にものを生み出すことへの意欲が強い人になるのだろう。
土屋さんのお話を聞いていると、ここに住むクリエイターが様々なものを生み出し、外に向かってどんどん発信していくイメージが湧いた。TOLABLはシェアハウスでありながら、れっきとしたアトリエでありオフィスだと言える。同じ趣向を持った仲間と一緒に暮らし、例えば仲間との会話の中でアイディアが浮かんだら1階のアトリエに降りてすぐにそれを形にする制作に取り掛かる事もできる。この刺激的な環境は、本気のクリエイターには理想的な暮らし方なのかもしれない。

土屋さんの描く将来像通りにここから外に飛び出すクリエイターが増えたら、多くの有名漫画家を生み出した「トキワ荘」のように、「TOLABL」という名前がクリエイターの梁山泊のような存在として世の中に知られるかもしれない。

屋上には、スカイツリーを望むテラススペースを設けた。雰囲気の良い場所で仲間と語り合う</br>時間は、創作意欲や想像力を引き上げてくれそうだ屋上には、スカイツリーを望むテラススペースを設けた。雰囲気の良い場所で仲間と語り合う
時間は、創作意欲や想像力を引き上げてくれそうだ

2014年 09月02日 10時59分