工業化住宅を中心に、木材調達方法を見直す機運が高まる

世界各地で森林破壊が急速に進んでいる世界各地で森林破壊が急速に進んでいる

木の乱伐採によって、地球上から貴重な森林資源が急速に失われている。
東南アジアや南米などの熱帯地方では、2000~2010年の間に、日本の国土の3.4倍にあたる熱帯雨林が消失。こうしている間にも、1秒間にサッカー場1面分の森林が消えているという。

森林には大気中の二酸化炭素を吸収・固定するという大切な役割がある。このため、森林伐採が進めば、二酸化炭素が増加して地球温暖化が進み、土壌の保水力も低下して洪水や崖崩れのリスクが高まる。また、森林の生態系が破壊され、熱帯雨林では1日に74種もの生物が絶滅に追い込まれているという。さらに、住みかを追われた野生動物が人里に下り、人間や畑作物を襲う事件も増えている。

それだけではない。森林破壊は人々の生活にも深刻な影響を及ぼしている。現在、森林から生活の糧を得ている先住民族の人口は、約6000万人。こうした人々の多くが、乱伐や違法伐採によって住む場所や食料を失い、深刻な貧困に直面しているという。

こうした中、海外から大量の木材を輸入している国内の住宅業界でも、森林資源の持続的な利用を進めようという動きが広まっている。公益財団法人WWF(※1)ジャパン・自然保護室森林グループ長の橋本務太氏はこう語る。
「2010年頃から、住宅メーカーのCSR(※2)の一環として、木材調達の方法を見直す機運が高まってきました。現在までに、WWFと連携して、木材調達のガイドライン作成を進めている住宅メーカーや資材メーカーも複数あります。工業化住宅(プレハブ住宅)を扱う大手メーカーを中心に、森林保全への取り組みが広がっています」

※1:World Wide Fund for Nature 世界自然保護基金
※2:Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任

住宅・木材流通市場に変革をもたらす、FSCの森林認証制度

WWFジャパン自然保護室森林グループ長・橋本務太氏WWFジャパン自然保護室森林グループ長・橋本務太氏

現在、WWFでは、森林の持続的な利用を実現するため、FSC(※3)による「森林認証制度」の普及に取り組んでいる。これは、森林の管理や伐採が、環境や地域社会に配慮して行われているかどうかを評価し、認証を行う仕組みだ。FSC認証を受けた森林から産出された木材や木製品には、独自のロゴマークが付けられる。

「たとえばFSCでは、木を違法に伐採していないか、森の生態系を壊すような伐採をしていないか、森に住む先住民族や地域社会に配慮しているか、伐採後の植林などを行っているかなど、さまざまな観点からチェックを行っています。認証された製品にはFSCのロゴマークをつけ、木材を消費する先進国の消費者にアピールすることで、市場を変革し、森林保全につなげようというのがねらいです」

現在、WWFジャパンでは、住宅メーカー向けに情報提供やアドバイスを行い、森林の持続的な利用のための方針作りを支援している。そのサポートを受けて、各社は木材調達のガイドラインを作成し、「適切に管理された森林」から木材を購入するための取り組みを進めている。

※3:Forest Stewardship Council 森林管理協議会

木材調達方法の見直しにより、めざましい効果を上げたミサワホーム

ミサワホームの木質プレハブ住宅の上棟写真ミサワホームの木質プレハブ住宅の上棟写真

ミサワホームでは、2010年に新たに環境行動計画「SUSTAINABLE2015」を策定。WWFジャパンと連携して木材調達ガイドラインを作成し、森林の生態系に配慮した木材調達を行うことを宣言した。

まず、森林供給源までさかのぼって、出所が特定できる木材を調達(レベル1)。次に、木材の伐採権を確認し、「違法伐採によるものではない」ことを確認した上で購入する(レベル2)。さらに、第3段階では、FSCやPEFC、SGECなど、森林認証を受けた製品を調達する(レベル3)。この3段階により、「木材の責任ある調達」をめざす方針だ。

ミサワホームではこの方針に沿って、木材の調達から現地加工、工場生産、現場施工に至るまで、木材のトレーサビリティ(追跡可能性)を確立。その効果は、目に見える数値として表れている。
同社では、2009年度には、「出所がわからない木材」が全体の1割、伐採権が確認できていない木材が全体の半数を占めていた。その後、2010年度に木材調達ガイドラインを作成すると、わずか1年でレベル1とレベル2が100%を達成。また、レベル3についても、2012年度には目標の9割近くを達成するなど、めざましい成果を上げている。

今後の課題は、「内装材」のトレーサビリティをいかに確立するか

木材調達のトレーサビリティ向上が課題木材調達のトレーサビリティ向上が課題

しかし、課題がないわけではない。その1つが、内装材に対する対応の遅れだ。
「日本の住宅メーカーが使う構造材は、環境先進国もしくは欧米で生産される針葉樹が主体です。このため、木材の出所や流通経路をトレース(追跡)しやすく、仕入れの量が多いので取り組みの効果も見えやすい。一方、内装材は、手すりや階段、キッチン、下駄箱など幅広い用途で使われており、いろいろな木を組み合わせて使っているのでトレースが難しい。しかも、内装材に使われる広葉樹の木材の多くが中国など海外で加工されているため、出所がわからないものが多く、トレーサビリティを確立しにくいのが実情です」

もう1つは、購買のシステムに関わる問題だ。住宅メーカーでは、すべての木材を本社購買部が一括購入しているとは限らず、必要に応じて現場で木調達しているケースも少なくない。本社で木材調達をコントロールできないことがネックとなって、トレーサビリティが確立できない企業が多いのが現状だ。
「今後、大手住宅メーカーにとっては、内装材の木材調達と購買システムの見直しが課題となるでしょう。一方で、中小の住宅メーカーや工務店における取り組みはまだまだ遅れている。まずは、『自分が使っている木材がどこから来ているか』を確認することが、森林保全への第一歩です」

環境や生態系に配慮した住宅を買うことが、森林保全につながる

FSC森林認証のロゴマークFSC森林認証のロゴマーク

今後、住宅業界で森林保全の取り組みを広めるためには、家を購入する消費者へのアピールが欠かせない。その切り札となりうるのが、FSC認証製品の”ブランド化”だ。

とはいうものの、FSC認証の対象は、あくまで「最終製品」。住宅に使われる部材のすべてが認証制度で認められた材でないかぎり、住宅自体にFSCロゴマークを付けることは難しい。
このため、住宅に関しては、個々の部材での認証より、企業としての森林保全のトータルな取り組みを消費者にアピールすることが大切、と橋本氏は語る。

「環境や生態系に配慮した住宅を買うことによって、森林保全に貢献できるということを、消費者の方々にも知っていただきたい。世界の森林資源を使い果たすのではなく、木材の生産地の人々と共存しながら暮らしていける方法がある。そのことを、ぜひ皆さんに知っていただきたいのです」

環境や生態系に配慮した住宅を買うことが、森林を守り、豊かな地球を守ることにつながる。これからの家選びの判断基準の1つとして、注目していく必要がありそうだ。

2014年 03月07日 11時30分