前年比は下回ったものの全国ワースト1位は10年連続

愛知県セルフガード協会の和田茂男さん愛知県セルフガード協会の和田茂男さん

愛知県の住宅を狙った侵入盗の件数は、2007年から2016年までなんと10年連続全国ワースト1位! 2位の千葉との差は約900件あり、ダントツの1位である。
先日、2017年10月末までの被害認知件数(暫定値)が発表された。住宅侵入盗は3,005件で前年比-13.7%(※)と減ってはいるもののまたワースト1が確定した。

愛知県民の筆者としてもこの不名誉な1位をなんとか返上できないものかと思うのだが、かくいう私も侵入盗の被害者。5年ほど前に空き巣に入られ、2年ほど前にはガレージのバイクが盗まれるという被害にあった。
自らの防犯意識が低かったためだと反省しきり。今一度侵入盗の実態と防犯対策のため、専門家にお話を伺うことにした。

今回尋ねたのは愛知県セルフガード協会(以下、セルフガード協会)。愛知県警の要請で2002年に設立された団体で、愛知県に事業所を置く防犯機器を扱う企業や専門家が加盟し、防犯設備に関するアドバイスや講演会、防犯診断活動を行っている。事務局長補佐・和田茂男さんにお話を伺った。


※愛知県警察本部生活安全総務課「地域安全対策ニュース」より

中間取得層が多く警戒心が薄い愛知県民が狙われている!?

まず愛知県がなぜ10年間も連続してワースト1位なのか。その理由について
「これといって断言できる理由がなく、警察も頭を悩ませているところ」と前置きしたうえで、こういう理由ではないかという仮説を教えてくれた。

「1つ目は所得。
愛知県の平均所得が比較的高く、中間所得層が多いということ。
高所得者層が多い地域は、セキュリティーにもお金をかけていて侵入盗からするとガードが堅く侵入しづらい。それに比べると愛知県は比較的ガードが甘くて侵入しやすいとみられています。

2つ目は県民性。
警戒心が薄く『うちは大したものはないから大丈夫』と思っている人が多い傾向があります。

3つ目は幹線道路が整備されていること。
侵入盗はグループで犯行に及ぶことが多く、車を使って逃走することから『外から入りやすくて逃げやすい」道路網が整っていることが侵入盗のターゲットになる要因だといわれています』(和田さん)

また、2016年警察庁のデータによると、侵入窃盗の発生場所別認知件数は、一戸建て住宅が41.2%。オートロックなどセキュリティが備わっているマンション等より、一戸建てが狙われやすい傾向に。戸建て志向が強いという県民性も原因となっているかもしれない。

和田さんは「どれも数値で立証できたわけでもなく、決定的な理由ではない」としながらも
「市区町村別でみた侵入盗被害は、一宮、豊田、春日井と高速道路や幹線道路が整備されているエリアが昨年、今年とワースト3になっています。またあま市などは、名古屋第二環状自動車道が整備されてからランキングがあがっています」(和田さん)
という話もある。

愛知県内の市区町村別認知件数ランキング。愛知県警察「住宅を対象とした侵入盗の実態」より抜き出し<br>※犯罪率:1000世帯あたりの認知件数(2017年1月の世帯数をもとに算出)愛知県内の市区町村別認知件数ランキング。愛知県警察「住宅を対象とした侵入盗の実態」より抜き出し
※犯罪率:1000世帯あたりの認知件数(2017年1月の世帯数をもとに算出)

侵入口は窓、無施錠の窓は要注意!

侵入口として一番多いのが窓。一戸建ての場合、59.7%が窓から侵入されている(愛知県警察「住宅を対象とした侵入盗の実態」より)。共同住宅でも3階建て以下は窓からの侵入が5割を超える。ドライバーなどでガラスをこじ開けクレセント錠を外して侵入されるケースが多いという。家の防犯性を高めるなら、窓や鍵、サッシなど、防犯性能試験に合格したものだけが認定されるCP建物部品(※)の採用を検討してみてもいいかもしれない。

また、侵入手段としては一戸建て、共同住宅すべてにおいて「無締まり」が3割近くを占めている。実は冒頭に述べたようにわが家も侵入盗の被害にあったのだが、その原因は、鍵を掛け違えてその日に限って締まっていなかった「無締まり」によるものだ。いつもは締めているのに…と悔やんでももう遅い。

和田さんによると、こうしたチャンスを周到に狙っているのが侵入盗なのだそう。
ほかにも、
「あまり使っていない部屋の天窓とか、面格子があるからと鍵をかけずにいる窓があれば注意したほうがいいですね。面格子はすぐ外せてしまうものも多いですから」(和田さん)


※CP建物部品:侵入までに5分以上の時間を要するなど「防犯性能の高い建物部品」のこと。警察庁、国土交通省、経済産業省、建物部品団体で構成する官民合同会議による試験に合格したものをいう。窓や鍵、ドアなど2017年3月までに17種類3,357品目が認定されている。

防犯性能の高い建物部品にのみ付けられるCPマーク。警察庁が国交省、経産省、建物部品関連の民間団体とともに定めたもの。
写真:愛知県警察「住宅を対象とした侵入盗の実態」より防犯性能の高い建物部品にのみ付けられるCPマーク。警察庁が国交省、経産省、建物部品関連の民間団体とともに定めたもの。 写真:愛知県警察「住宅を対象とした侵入盗の実態」より

住民参加型の防犯活動で侵入盗を寄せ付けないまちづくりを

ジョグパトのメンバーは青色のTシャツやビブス、LEDライトを身に着けて、ジョギングやウォーキングをしながら町内を自主的に見回るジョグパトのメンバーは青色のTシャツやビブス、LEDライトを身に着けて、ジョギングやウォーキングをしながら町内を自主的に見回る

防犯の意識は個人だけでなく地域で高めていくことが必要。なぜなら、侵入盗がもっとも嫌うのは、コミュニティの連携がとれているエリアだからだ。
「侵入盗は必ず下見をします。人通りや人目が少ないか、入りやすく逃げやすいか、施錠の状態など詳しくチェックしていきます。そんななかで侵入盗が嫌う家、場所というのが、近所付き合いがよく連帯感が感じられる住宅街です」と、和田さん。

先の表で市区町村別侵入盗認知件数ランキング14位の清須市は、1,000世帯あたりの侵入盗の件数で見るとワースト1位という結果に。これを受け、住民によるパトロール「ジョグパト」を2015年からスタートさせた。ジョグパトとは、ジョギングとパトロールを合わせた造語で、ジョギングやウォーキング、犬の散歩などの日課にプラスして防犯パトロールと行う活動のことだ。

ジョグパト総括事務局の大塚祥之さんは
「この地域が狙われる理由として、名古屋市近郊で高速道路と国道302号線が走り交通の便がいいこと、そして防犯対策が十分でないことが挙げられます。ガラスやドアを壊して侵入する被害が多く、施錠だけでは侵入は防げない。物理的な強化だけでなく、地域の目と連携をアピールすることで、侵入盗に心理的プレッシャーをかけなくては」と話す。
従来行っていたシルバー世代を中心とした防犯パトロール以外にも、若い世代を巻き込むことで地域を見守る目を増やしたい考えだ。

和田さんによると、こうした地域での防犯パトロールは連帯感をアピールできる有効な対策だという。ただし、曜日や時間などランダムに行わないと、隙間を縫って犯行に及ぶケースもあるので注意したいところだ。

侵入盗の被害が多発する年末年始。防犯4原則をおさらいして侵入盗に入られない家に

侵入盗の心理と行動を分析したデータ。家人の留守を確認する方法はインターホンがトップ。ピンポンダッシュは子どものいたずらではなく、侵入盗の不在チェックかもしれない。
出典:(財)都市防犯研究センターJUSRIリポート(警察庁「住まいる防犯110番」より)侵入盗の心理と行動を分析したデータ。家人の留守を確認する方法はインターホンがトップ。ピンポンダッシュは子どものいたずらではなく、侵入盗の不在チェックかもしれない。 出典:(財)都市防犯研究センターJUSRIリポート(警察庁「住まいる防犯110番」より)

最後に、和田さんから教えてもらった犯罪抑止の効果がある防犯対策、いわゆる「防犯の4原則」をおさらいしておこう。

①時間
5分以内に侵入できなければ7割以上の侵入盗が犯行を諦めるというデータがある(※)。犯人の侵入経路になりそうな玄関や掃き出し窓、勝手口などの開口部の施錠を1ドアにつき2ロックにするなど、強力で複雑なロックに。

②目
テレビ付きインターホンなどで訪問者を録画記録する。住人の在不在をインターホンで確認する侵入盗が多いので、録画付きのインターホンを設置していると、敬遠される要素にはなる。
機械的な目以外に、地域の目も防犯には欠かせない。

③光
家の周りを明るくする。センサーライトを裏口にもつけたり、まちぐるみで町内の防犯灯を増やすなど。また、玄関や門灯など就寝時には消してしまう家が多いが、付けておいたほうが防犯のためには有効。

④音
人や車が近づいたら音が鳴る警報装置や、防犯砂利を設置する。

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侵入盗の被害が多発するのはやはり年末年始とお盆休み。
長期休暇で家を空ける際に気を付けることを和田さんに伺った。

「新聞を止めるのはみなさんやっていると思います。郵便物も局止めにしてもらうなど、ポストに配達物がたまらないようにする工夫は必要です。
でも夜になっても部屋の灯りがつかなければ留守だということがわかってしまいます。人がいるように見える工夫、例えばタイマーで時間を設定して照明やテレビを付けたり消したりする仕組みを作って、家に人がいる気配を感じさせることが必要です。
あとは、留守の間お願いしますね!といえるご近所づきあいも大切ですね。」(和田さん)

スマホと連動したテレビドアホンや、異常があればアラームを鳴らす防犯機能付きインターホンなど、高機能インターホンも販売されている。リモコン付き照明機器なら、セキュリティタイマー機能が付いた汎用リモコンに変更するなど、手軽な方法も検討してみたい。

最悪、留守だとわかってしまっても侵入に5分以上かかる家で、ご近所の目があるとなれば、犯人が諦める確率が高まる。家の防犯対策とともに、日常的にご近所付き合いを密にし、まちぐるみでの防犯にも目を向け、愛知県のワースト1位を返上したいものだ。

※(財)都市防犯研究センター調べ


【取材協力】
愛知県セルフガード協会
http://www.selfguard.jp/

【データ参照】
愛知県警察
https://www.pref.aichi.jp/police/anzen/higaiboushi/shinnyu.html

警察庁「住まいる防犯110番」
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/top.html

2017年 12月23日 11時05分