猫を家で飼う家庭が増え、「猫との住まいアドバイザー」認定資格も

犬や猫といったペットを家族として迎え、一緒に暮らす家庭が増えている。最近では、猫が犬の飼育数を超えているという。

猫の場合、完全室内飼育が一般的となっており、新築やリフォームなどを検討する際には、猫との暮らしが快適で、使い勝手のいいプランを求める声も聞く。しかし、多くの飼い主は、猫に集中しがちで、住まいづくり、空間づくりを総合的に捉えることができないケースもあるようだ。

このような背景の中、2019年2月に生まれたのが「猫との住まいアドバイザー[Basic]」。一般社団法人日本ライフスタイル協会の認定資格である。

「住宅に関して、犬や猫などペットと共生する、という大くくりのガイドラインやハウスメーカーのプラン提案などはみられます。また、犬との住まいに関する資格もあるようですが、猫との住まいに特化した資格は初めてだと思います」と同協会の遠藤秀一郎さんは話す。

猫と暮らす住まいの玄関に設けた、猫の動きを考えた靴箱を兼ねた棚。猫が自由に動き回ることができる 写真:蔵プロダクション猫と暮らす住まいの玄関に設けた、猫の動きを考えた靴箱を兼ねた棚。猫が自由に動き回ることができる 写真:蔵プロダクション

猫と暮らす施主にとってよりよい住まいの提案を

「猫との住まいアドバイザー」は、新築やリフォーム、インテリア設計などの際に、猫と暮らす施主にとってよりよい住まいを提案できる人を育てるために設けられた資格。
現在行われているBasic編は、住まいに関する仕事をしている、もしくは勉強している方で、猫のことはよくわからない猫初心者でもわかる内容となっているという。

現代のペット事情や猫との住まいに興味を持つ顧客像、住まいに関わる猫の特性、猫との住まいの必須条件、猫と快適に暮らす工夫などの講座を受講した後、資格試験を受け、合格者は、「猫との住まいアドバイザー」として一般社団法人日本ライフスタイル協会にて認定される。

遠藤さんによると「今まで受講した方のプロフィールは、ハウスメーカーや工務店の営業の方、リフォーム会社や不動産関係の方など。女性の方がメインになるのではないかと思っていたのですが、男性の方も多く受講されています」。日常の業務の中で猫を飼っている施主などと出会う機会も増え、猫との暮らしに関わる知識を得たうえでより適した提案をしたい、と考える方が増えてきているのかもしれない。

自分が猫を飼っているのであれば、ある程度、施主とのコミュニケーションを図れるかもしれないが、猫のことはよくわからない、知らないという場合、プランニングはもちろん、猫を飼っている施主へアプローチという部分でも不安に思うケースも多いのだろう。

講座風景。6月に第2回が行われ、第3回は9月(大阪)、第4回は11月(東京)を予定(詳細は同協会へ)講座風景。6月に第2回が行われ、第3回は9月(大阪)、第4回は11月(東京)を予定(詳細は同協会へ)

施主にとっての猫の存在を理解する。打ち合わせ時にも配慮が必要

この講座の講師を務めているのは一級建築士でありペットシッターでもある、いしまるあきこさん。保護猫活動、猫に関する住まいのデザインやアドバイス、猫シッターを通じ、5年間で乳児猫から老猫まで100匹以上の猫に関わってきたという。

講座では、受講者にとってのお客様である、猫と暮らす方(施主)との接し方、打ち合わせ時の注意点なども学ぶことになる。

「猫と暮らす施主にとって、猫は家族であるということを認識しておく必要があります。たとえば、50~70代の施主であれば、猫は子育て後の『子ども』ですし、20~40代は、子どもがいる世帯の場合であれば情操教育として飼うと同時に、子どもにとっては猫が『きょうだい』なのです」。その施主にとって猫はどのような存在なのか、まず、理解することが必要ということだろう。

また、打ち合わせ等で自宅を訪問する場合の注意点については、「猫は、においに敏感なので化学物質の臭い(香水や整髪料など)が強いものを持ち込まないようにしなくてはいけませんし、家に伺った際に猫が飛びだして脱走しないように玄関扉の開閉に注意することも必要です。無理して触らないなど、猫に嫌われない方法なども理解しておいた方がいいでしょう」

また猫は環境の変化を嫌うため、たとえばリフォーム工事を行うのは中高齢期(7~11歳)までに。高齢期(12歳以上)では大きな変化はストレスとなり、体調を崩すこともあるという。そして、忘れてはいけないのは、猫の寿命も考慮すること。
「猫の平均寿命は15~16歳。施主の方の年齢やライフイベントなどと、猫の年齢を考慮したプラン提案をすることも大切だと考えています」(いしまるさん)

講座終了後のアンケートでは、内容への満足度も高いという。今後、[Basic]よりもレベルを高めた講座も予定しているとか。(左)日本ライフスタイル協会の遠藤秀一郎さん(右)講師のいしまるあきこさん講座終了後のアンケートでは、内容への満足度も高いという。今後、[Basic]よりもレベルを高めた講座も予定しているとか。(左)日本ライフスタイル協会の遠藤秀一郎さん(右)講師のいしまるあきこさん

住まいに関わる猫の特性を理解する。万が一の事故への対処も

実際にプランニングを検討する際には、猫の特性を把握しておくことが重要なのは言うまでもない。
猫の種類、年齢やサイズ、体重、毛の長さ、運動量などのプロフィールや現時点での困り事などを伺うこと。体重は、キャットステップなどの設計に関わるし、扉付き収納を設けるなど猫毛対策も必要になることもあるからだ。

たとえば、猫は3次元で家を使いこなせるということ。たいていの猫は助走無しで70センチは垂直に飛ぶことができるので、テーブルや棚、キッチンカウンターなどが足がかりとなってさらに上に行ってしまうことへの配慮が必要だ。においつけや爪とぎ、といった猫にとっての縄張りを主張する行為への工夫も検討したい。また、快適な室温は20~28度。飼い主が留守の場合の空調計画なども考えておくことも大切だろう。

特に猫との住まいで重要なのが、猫トイレのプラン。換気が可能で人や他猫から見えない場所、飼い主がチェックしやすく、掃除がしやすいなどにも配慮すること。また、キャットステップやキャットウォークも十分に検討したい。猫の年齢や運動能力などを考慮して、猫が使いたくなるようにしつつ、安全なプランを。素材は滑りにくく、落ちないような奥行きなどにも配慮したい。

「たとえば、透明なキャットウォークが流行っていますが、猫にとって危険なので設置しないことをお伝えしています。猫は目があまりよくないので、透明なものはよく認識できません。飼い主の方がご希望した場合、その危険性を説明するよう講座では指導しています」(いしまるさん)

ジグザグさせたキャットウォーク。猫が暴走しすぎないようにデザインしている 
写真:蔵プロダクションジグザグさせたキャットウォーク。猫が暴走しすぎないようにデザインしている  写真:蔵プロダクション

対処療法ではなく、どのような条件でも応用が利く、本質の情報や知識を

最近では、猫を含め、ペットに適した設備や建材は各メーカーから多く提案されている。たとえば、衝撃を吸収するフローリングや傷がつきにくい壁材、空気環境を整える素材、キャットステップなど、さまざまなアイテムが揃っている。また、ハウスメーカーなどでもペットと暮らすことを目的とした商品の提案もみられ、プランニングの可能性は広がってきている。

しかし、適するプランに、適する素材やアイテムを取り入れ、適する施工を施さなければ、猫はもちろん飼い主にとっても使い勝手が悪くなってしまう場合もある。いしまるさんは、「基本は、猫の安全と健康を考えること。ただ、猫にとっては楽しい住まいでも人間にとって住みづらい住まいとなっては、猫とともに快適に楽しく暮らしているとは言えません。講座を通して、対処療法ではなく、どのような条件でも応用が利くような、本質的な考え方、猫との住まいに関する知識を広めていくことが重要だと考えています」。

ペットの飼育数が増え、室内飼いがスタンダードとなってきている今、新築やリフォームの際には、ペットと共に暮らすための工夫やアイテムを取り入れた空間づくりが必要になるケースも多くなっていくだろう。設計者や施工者には、施主とペットとの日々の暮らしを理解したうえで、住まいを総合的に考え、的確で専門的な提案ができることが求められる。講座や資格を通して、住まいに関する専門知識とペットに関する知識をバランスよく組み合わせられる人材が増えること、バランスのとれたノウハウが広がることを期待したい。

■取材協力
日本ライフスタイル協会 https://www.lifestyle.or.jp/
一級建築士事務所 ねこのいえ設計室 http://nekonoie.tokyo/

キャットウォークの幅にも配慮が必要だ。 猫は奥行き150mmの上でも寝てしまうキャットウォークの幅にも配慮が必要だ。 猫は奥行き150mmの上でも寝てしまう

2019年 07月19日 11時05分