“映画のまち”を目指してまちづくりを仕掛ける岡崎市

監督は愛知県田原市出身で「ぴあフィルムフェスティバル」で入賞歴のある尾崎香仁(よしひと)さん。主演は愛知学泉大学の現役大学生、横山一葉さん(写真右)、主人公の彼氏役には「名古屋おもてなし武将隊」の二代目秀吉を務めた岡崎市出身のタレント・菅沼翔也さん(写真右から2人目)、主人公の友人役は地元アイドルグループで活動していた齋藤ELIKAさん(写真中央)に決定監督は愛知県田原市出身で「ぴあフィルムフェスティバル」で入賞歴のある尾崎香仁(よしひと)さん。主演は愛知学泉大学の現役大学生、横山一葉さん(写真右)、主人公の彼氏役には「名古屋おもてなし武将隊」の二代目秀吉を務めた岡崎市出身のタレント・菅沼翔也さん(写真右から2人目)、主人公の友人役は地元アイドルグループで活動していた齋藤ELIKAさん(写真中央)に決定

先回、岡崎市制100周年を市民参加で祝う「新世紀岡崎チャレンジ100」(以下チャレンジ100)について紹介した。“市民が自らのアイデアで地元の魅力を創出する”というテーマのもと、一年間にわたってさまざまなプロジェクトが開催された「チャレンジ100」は、一般の部のほかに学生の部と連携の部という枠が設けられた。今回は連携の部で採択された「岡崎プロモーションプロジェクト」について紹介したいと思う。

同プロジェクトは、“岡崎再発見”として岡崎映画を作るというもの。具体的な内容としては

◆岡崎を市内外にプロモーションする
◆市民参加型の映像コンテンツを制作、SNSやWEB上で活用
◆プロジェクト終了後の本格的な映画製作とフィルムコミッションの設立を目指す

といったもの。

プロジェクトとは別に、岡崎市では2017年4月からフィルムコミッション(※)も立ち上がっており、“映画のまち”を目指してまちづくりを仕掛ける気運が高まっている。映画製作の企画・製作を行った「岡崎プロモーションプロジェクト」実行委員長の浅井朋親さんにお話を伺った。


※フィルムコミッション:映画やドラマなどのロケを誘致したり撮影協力、エキストラの手配など映像制作の支援を行う非営利団体組織のこと

ハリウッド仕込みの撮影クルー参加で本格的な仕上がりに期待!

『猫になりたい』ロケの様子。写真奥の中央に尾崎香仁監督。右が撮影監督を務めるアンドリューさん、左にはカメラマンのラズさんが。ハリウッドでも活躍するイギリス人二人が両脇を固める撮影現場『猫になりたい』ロケの様子。写真奥の中央に尾崎香仁監督。右が撮影監督を務めるアンドリューさん、左にはカメラマンのラズさんが。ハリウッドでも活躍するイギリス人二人が両脇を固める撮影現場

浅井さんは岡崎市のタウン誌『リバ!』を発行する株式会社リバーシブルの代表取締役社長であり、“一番ディープな岡崎”を知り尽くした人物でもある。

「最初はこのエリアでクリエイティブな人材をどうやったら育てられるか、ということに主眼がありました。脚本を書いてみたいとか、ラジオドラマで声を出してみたい、歌を歌いたいという地元の人の小さな一歩を踏み出す場を作ろうと思ったんです」
と、浅井さんは映画作りのきっかけを語ってくれた。

岡崎市が市民のプロジェクトに投資するという「チャレンジ100」の企画を聞き、三河エリアの大学生を支援するNPOの代表でもある浅井さんは、愛知産業大学との連携で学生も気軽に参加できる映画作りを目指した。役者やエンディング曲を歌う歌手のオーディションにはそれぞれ約40名ほどの応募があり、ボランティアスタッフの応募も含めると総勢160名の岡崎市民が集まったというから市民の映画への関心が強いことが伺える。

とりわけ面白いのが、撮影クルーがハリウッドでも活躍するイギリス人2人という点。この映画のプロデューサーを務める細井文雅さんの友人で、岡崎市内の大学で映像に関して教えることを目的に来日していたアンドリューL.フィリップスさんが撮影監督、ラズ・ワーウィックさんがカメラマンとして参加することに。アンドリューさんは『エクスペンダブル3』や『ロビンフッド』にも出演する俳優。ラズさんは『ミッション・インポッシブル3』の現場での経験もあるハリウッド仕込みの腕前だというから、俄然仕上がりが楽しみだ。

忘れられていた"化け猫伝説"を蘇らせ、まちづくりのきっかけに

岡崎市のメインストリートともいえる康生通にある“化け猫モニュメント”。化け猫伝説をもとにまちおこしをする「東康生商店街まちづくりの会」によって設置された岡崎市のメインストリートともいえる康生通にある“化け猫モニュメント”。化け猫伝説をもとにまちおこしをする「東康生商店街まちづくりの会」によって設置された

映画のタイトルは『猫になりたい』。
岡崎市に伝わる“化け猫伝説”がモチーフとなっている。
実は岡崎市は、佐賀県の鍋島や福岡県の有馬と並んで日本三大化け猫騒動の一つとして全国的に有名で、江戸時代から歌舞伎の演目や浮世絵にも登場しているのだとか。
しかし、地元民でもその事実を知る人はあまりいない。忘れられていた伝説を活用してまちおこしをしようと立ち上がった市内の「東康生商店街まちづくりの会」から話を聞いた監督が、自ら脚本を手掛け今回の映画づくりがスタートすることとなった。

空襲で焼け残った六供町(ろっくちょう)や、木造のアーケードが残る松本町のほか、石原邸などの古民家、地元人にはおなじみのショッピングセンター「シビコ」など岡崎の人にはなじみのある場所が舞台として映し出される。
とりわけ今回のロケ地として注目したいのが、分子科学研究所だ。
「脳科学細胞の研究などを行っている施設で、世界中の“頭脳”が集まっている国立の研究機関なんですが、地元の人でもあまり知っている人はいないんですよ。ノーベル賞を受賞した数々の偉人たちもここで研究をしているんです。岡崎にこんなすごいところがあるということは、まちの誇りにもなると思うんです」と浅井さんは話す。

シャッター商店街、空きビルを映画で資源化する

映画を作るにあたっては先にあげたように“岡崎再発見”というテーマもあった。全国の中核都市と同じように岡崎も商店街が寂れ、空きビルが目立つようになり、その対策には頭を悩ませているという。

今回の映画では、もう使われていないビルのフロアや、古い医療機器がそのままになっている耳鼻科の一室などが怪しげな雰囲気で映し出される。
「使われなくなった商店やビルをどう資源化していくのかが岡崎の抱えている課題。古いことは悪いことではないんです。今回の映画でも古い場所が逆に魅力的な場所として映っています。撮り方、使い方次第で魅力的なものに変えていけるんですよね」(浅井さん)。映画はその課題を解決するためのひとつのツールとして有効だといえるかもしれない。

今は使われていない耳鼻科のフロアを借りて撮影。ここで主人公さゆの体に変化が!? 昔のまま残された什器やタイル張りの壁が映画の中ではなんとも怪しげに映し出されている今は使われていない耳鼻科のフロアを借りて撮影。ここで主人公さゆの体に変化が!? 昔のまま残された什器やタイル張りの壁が映画の中ではなんとも怪しげに映し出されている

単なる観光PR映画ではなく"映画"として満足できる内容に

最後に映画のあらすじを紹介しておこう。
『両親の離婚、将来への不安など、様々な葛藤から父親との確執が生まれ、やがて父の嫌いな「猫になりたい」と願うようになった女子高生「岩月さゆ」。ひょんなことから本当に猫に変身してしまい、これまで知らなかった家族の真相を知ってしまう。父親の本当の気持ちに気づく「さゆ」だったが、今度は人間に戻れない!? 彼氏や友人の助けを得て、必死に戻る手立てを探るが果たしてその結末は…。』
ディープな岡崎の魅力がつまったスリリングな物語である。

映画の完成はもう間もなくだ。2017年8月中旬には完成披露試写会も控えている。地元での公開はもちろん市外の人にも見てもらう機会を作りたいと、さまざまなアイデアを練っている最中だとか。現段階ではそのアイデアについて公開できないのが残念ではあるが、
「いずれDVDとしてレンタルができるように仕掛けも作っていく」(浅井さん)とのこと。

冒頭でもふれたが、岡崎市ではこの春フィルムコミッションも立ち上がった。岡崎の才能と資源を再発見できる映画の完成とともに、"映画のまち・岡崎"としてどのように"化ける"のか、期待が膨らむ。

さる2017年3月25日に行われた第一回試写会では映画のダイジェスト版が上映された。観光名所を美しく収めるだけのPR映画ではなく、物語そのものも楽しめる内容となっていた。写真左で司会を務めるのが、岡崎プロモーション実行委員長の浅井朋親さん。尾崎監督、主役を務めた横山さんはじめ、ボランティアとして参加した方も並び、撮影秘話を披露したさる2017年3月25日に行われた第一回試写会では映画のダイジェスト版が上映された。観光名所を美しく収めるだけのPR映画ではなく、物語そのものも楽しめる内容となっていた。写真左で司会を務めるのが、岡崎プロモーション実行委員長の浅井朋親さん。尾崎監督、主役を務めた横山さんはじめ、ボランティアとして参加した方も並び、撮影秘話を披露した

2017年 05月27日 11時00分