実は家の中で熱中症にかかる人が多い

日本で観測された最高気温は、2013年8月12日の高知県四万十市の41度日本で観測された最高気温は、2013年8月12日の高知県四万十市の41度

地球温暖化による影響もあるだろうが、日本の夏はますます過酷になっている。
日本で観測された最高気温は、2013年8月12日の高知県の四万十市での41度だそうだ。 続いては、2007年8月16日の埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で観測された40.9度となっている。

夏ともなれば最高気温が35度を超える日も珍しくなく、日本は湿度も高いことから、熱中症で搬送される患者数も年々増えているという。熱中症…というと屋外でかかるイメージがあるが、この5年間の統計では、東京23区内で熱中症が原因となり死亡した人の9割が屋内だった、という報道もある。
住まいにはそもそも環境の過酷さから、人間を守る役割も備えているが、家の中でさえ気を付けなければ暑さによる危険から逃げることはできないようである。

実は世界には、最高気温が40度を超すのも珍しくない国など「暑い国」が多くある。
今回は、世界にある「暑い国」の住まいのいくつかを紹介しつつ、その工夫をみてみたい。

住まいの風通しの工夫

開口部を広くして縁側を作るなど、風通しをよくする工夫がされている沖縄の家開口部を広くして縁側を作るなど、風通しをよくする工夫がされている沖縄の家

2016年5月、インド北西部の都市であるラージャスターン州のファローディで、過去最高の51度を記録したとニュースになった。インドのこの地方では、毎年5月がもっとも暑くなるとのことだが、今年はとくに強力な熱波が到来しているという。さすがにここまで暑いのは珍しいようだが、それでも大変な暑さである。
インドの国土は広く、北端は北緯37度6分だから日本の宮城県とほぼ同じ緯度だが、南端は北緯8度と赤道に近い。今回の熱波は、季節風のモンスーンが北上せず、雨不足になったのが原因のようで、乾燥しやすい気候がこの暑さを加速させたようだ。
この暑さから人を守る住まいとして、インドの家屋は遮熱性能の高い石(レンガ)造りが多い。また、開口部は開かれていることが多く、風通しを確保するためか、閉ざされていない家屋が多いようだ。

風通しに工夫のある家屋はタイにもある。
熱帯に位置するタイでは年中を通して暑く、最高気温が30度を下回る日はめったにない。湿度も高く、一年中現在の日本の夏と同じような気候であった。そこで、1292年ごろに成立したラーンナー王朝では、高床式の住居が多く建てられている。人々は水稲耕作で生活しており、風通しの良いベランダで食事や作業をする。高床式にすることで、床下は風が通り湿気を逃して、涼しく過ごすことができる。また、床下は物置や家畜小屋としても利用されている。

日本でも、沖縄の日差しは強烈である。しかし高い山がなく風通しが良いため、気温はそれほど上がらない。そこで、真昼は屋内で昼寝などをしながらのんびり過ごし、涼しい朝や夕方に活動をすることで、暑さ対策をしているようだ。しかし、家の中が蒸し暑ければ、のんびりもしていられない。そこで、開口部を広くして縁側を作るなど、風通しをよくする工夫がされている。石垣島には柱だけで、壁をほとんど取り払ったような家屋もあるが、屋根が日差しを避けると同時に、戸外と同程度の風通しがあり、涼しく過ごせるようだ。また縁側は南側に作られている家屋が多く、これにより夏場の高い日差しは縁側で食い止められるようになっている。

水辺の住まい

タイの水辺に建つ住まいタイの水辺に建つ住まい

タイには高床式の住居もあるが、水上マーケットも有名だ。自動車などによる陸運が発達せず、水運が中心だった時代、船で運んできたままに直接取引をしたのが水上マーケットの始まりである。バンコクの中心を流れるチャオプラヤー川は、荷物を積んだ船の行きかう水路でもあり、農業用水を供給する恵みの川でもある。

それは、水害が多いから……という理由もあるようだが、水辺に建てられた家屋の多くは風通しを確保しながら、川の気化熱を利用し、涼しく暮らすという工夫からもきているのかもしれない。さらに、水辺に住んでいれば、暑さに我慢できなくなったとき、すぐに水浴びできるという利点もある。

また、タヒチやモルディブなどの南の島には、海の上に水上コテージが建てられている。景観を楽しむためもあるが、これも海の気化熱で涼しく感じられる工夫のようだ。

白い壁の住まい

エーゲ海に浮かぶギリシャの島。サントリーニ島の家は白い壁が特徴的エーゲ海に浮かぶギリシャの島。サントリーニ島の家は白い壁が特徴的

白い壁の家が立ち並ぶ景色が特徴的なのは、サントリーニ島を初めとしてエーゲ海に浮かぶギリシャの島々、そしてスペイン南部のアンダルシアなどがあげられる。

西洋漆喰が塗られているのだが、ただ景観を美しくするだけでなく、暑さ対策の意味があるという。白は熱を反射して吸収しないため、家の中では涼しく感じられるのだ。白い壁は定期的に塗り替えが必要のようだが、近年は観光誘致のため、白い壁に統一するよう法律で定められている島や地域もあるようだ。

スペイン南部のアンダルシアは石灰岩の産地なので、白く塗った下はレンガ壁になっている。レンガは土でできており、湿度を調節してくれるので、多少気温が高くても、気化熱が発生しやすく、涼しさを感じるのだ。

漆喰ではないが、南イタリアにある、「トゥルッリ」と呼ばれる住宅も、真っ白な外観だ。外壁や内壁に石灰が塗られているのだが、壁自体も石灰岩でできている。石灰岩をレンガのように切り出して積み重ねて作られているのだ。太陽光があまり入らないよう、窓も小さく作られているが、内壁に石灰を塗ることで、部屋の中が明るく感じられる利点もあるらしい。

日本の家屋でできること

さて、暑い国の住まいの工夫を紹介してきたが、日本の住まいでの工夫はどうだろうか。

日本の伝統的な家屋には、庇がある。庇は真夏の高い太陽光を遮るには有効だ。ただ、庇によっては、朝の光や西日など低い位置から差し込む太陽光は防げないこともある。そこで、庇や軒に簾を吊るす工夫を日本ではしてきた。簾は、日差しを遮ってくれるだけでなく、霧吹きで水をかければ、風が吹くたび気化熱を発生してくれる。簾だけではなく、網を設置してヘチマやゴーヤなどを育てるグリーンカーテンをつくるのも効果的なようだ。さらに日本人らしいのは、風鈴。風鈴を吊るせば、耳からも涼を感じられるだろう。

今年の残暑も厳しくなりそうである。家の工夫と共に、水分や塩分を上手にとり、健康に支障をきたさないように過ごしたいものだ。

簾などを賢く利用するのも、暑い夏の住まいの工夫簾などを賢く利用するのも、暑い夏の住まいの工夫

2016年 08月12日 11時00分