駅の総合化により苦境に立たされた時代

前回、金山総合駅南口側にある金山商店街振興組合(名古屋市熱田区)の活性化活動を紹介したが、今回は駅北側の金山橋連合商店街振興組合(名古屋市中区)の地域活性化活動について紹介する。

金山橋連合商店街振興組合の理事長のお話によると、振興組合では金山総合駅前の3つの施設「金山駅ビル」「アスナル金山」「日本特殊陶業市民会館」と、金山交差点を中心とする「大津通」を軸に活動を行っているという。

金山駅ビルとアスナル金山は、金山総合駅のコンコースを抜けたすぐ北側にある商業施設。アスナルだけでも約60店が出店しており、1日平均40万人といわれる金山総合駅利用者の多くが飲食や買い物を目的にここに立ち寄るため、常に人が行き交っている様子が見られる。

現在はそんな賑わいのあるエリアだが、金山駅が総合化された1989年(平成元年)からの10年間、実は商店街は苦境に立たされていた。理事長は当時をこう振り返る。

「もともとJR、名鉄、地下鉄の駅はそれぞれ離れた場所にあり、以前はトライアングル状に人が流れていたんです。ところが総合駅になったことで人が外へ出なくなって人通りが激減し、つぶれてしまった商店街もありました。そんな時代がしばらく続きましたが、総合化から10年後にアスナル金山がオープンすると、次第に賑わいが戻ってきたんです」

2005年に完成したアスナル金山が、商店街を再生させるきっかけとなったのは確かだが、どのような商業施設を造るかということに関しては、スムーズには決まらなかったという。

写真左側が金山総合駅「駅ビル」(2004年6月オープン)、写真中央~右側が「アスナル金山」(2005年3月オープン)写真左側が金山総合駅「駅ビル」(2004年6月オープン)、写真中央~右側が「アスナル金山」(2005年3月オープン)

人の流れを駅の外へ。アスナル金山オープン

金山橋連合商店街のエリアマップ(金山橋連合商店街振興組合ホームページより)。組合員数は50だが、1組合あたりの加盟店が数十店と多いため全加盟店では数百店舗にものぼる金山橋連合商店街のエリアマップ(金山橋連合商店街振興組合ホームページより)。組合員数は50だが、1組合あたりの加盟店が数十店と多いため全加盟店では数百店舗にものぼる

「アスナル金山の建設計画が持ち上がったときは『そんなちっぽけな建物は必要ない』という反対意見が多かったですね。南口側に、名古屋ボストン美術館や名古屋都市センター、グランコートホテルなどが入った「金山南ビル」が完成していたので、北口側にも同規模のビルを建てるという“ツインタワー化”を地域の多くの方が望んでいたようです」

高層ビルが建てば店舗や企業などを誘致することができるし、利便性の良い場所だけに多くの人が足を運ぶことも期待できる。活気を失った商店街を一気に再生するには、それくらい派手に仕掛けなければという考えも一理あるかもしれないが、理事長は“10年後を見据えたまちづくり”という大局観から高層ビル建設に反対し、アスナル金山の建設を強くプッシュした。

「総合駅の北側と南側の両方に高層ビルを建てたら、それこそ駅を利用する人たちはビル内にとどまって外に出てこなくなってしまいます。まち全体の発展のことを考えれば、金山エリアを俯瞰的に捉え、人の流れを駅の外に向かわせるアスナルのような施設を造るべきだと思ったんです」

そして2005年3月、ブティックやファッション雑貨店などの物販店が多く入る「アスナル金山」がオープン。やがて金山総合駅周辺に人の流れができ、商店街も活気を取り戻していった。

商店街振興組合と学生ボランティアで運営する「金山夏祭り」

金山橋連合商店街振興組合の活動としては“地域密着”を基本理念にイベントや情報発信、防犯対策などに取り組んでいる。なかでも力を入れているのが、今年で開催10回目を迎える「金山夏祭り」だ。

毎年8月第1土曜・日曜の2日間、アスナル金山をはじめ金山総合駅コンコースイベントスペース、日本特殊陶業市民会館など商店街エリアの施設を活用してさまざまなイベントを行っており、子どもを中心に家族で楽しめるような催しが多いのが特長だという。

「毎年、飛騨の神岡町から10トン程の雪を運んでもらって市民会館前広場に雪山を作り、子どもたちに宝探しゲームなどを楽しんでもらっています。会館内のホールでは劇団飛行船の公演や、無料映画観賞会、中学校の吹奏楽部によるブラスバンド演奏などもありますし、アスナル金山のステージでブライダル専門学校の生徒さんたちがショーを行ったり、コンコースのイベントスペースで物産展を行ったりと、あちこちでいろいろなイベントを行って盛り上がっていますよ」

驚いたのは、このイベントの運営をすべて商店街振興組合で実行していること。イベント会社に頼らず、組合関係者と地元の専門学校の学生ボランティアで夏祭りの計画から実行、片付けまで手づくりしているそうだ。

「近くにELICビジネス&公務員専門学校という学校があって、第1回目から毎年150人を超える学生さんがボランティアをしてくれています。着ぐるみを着たりチラシを配ったり、暑いさなか頑張ってくれるんですが、何もお返しできないのが本当に申しわけなくて……」

理事長のそんな感謝の気持ちは、きっと学生さんたちにも伝わっているはずだ。アスナル・市民会館・ELICビジネス&公務員専門学校・商店街振興組合が産官学一体となって、10年間このまちづくり活動を共に続けてきたのだから。

2014年の金山夏祭りの様子<br />〈左上〉早朝から雪山を準備する夏祭り実行委員のスタッフ。〈右上〉真夏とあって溶けるのも早いが子どもたちは雪遊びに夢中<br />〈左下〉アスナル金山で行われたブライダルショー〈右下〉コンコースでの物産展2014年の金山夏祭りの様子
〈左上〉早朝から雪山を準備する夏祭り実行委員のスタッフ。〈右上〉真夏とあって溶けるのも早いが子どもたちは雪遊びに夢中
〈左下〉アスナル金山で行われたブライダルショー〈右下〉コンコースでの物産展

住む人も商店街利用者も安心の防犯対策

昨年設置された街路灯。冬はオレンジのライト、夏はブルーのライトが灯る昨年設置された街路灯。冬はオレンジのライト、夏はブルーのライトが灯る

また、3年程前からは、この夏祭りに市内の養護施設の子どもたちを招待して楽しんでもらっているという。

「知人からの相談で招待しようということになったんですが、昨年は100人近い子どもたちのお祭りを楽しむ笑顔を見ることができました。毎年あの笑顔を見たいですね」

子どもたちや地域の人たちの笑顔が、商店街振興組合スタッフの原動力なのかもしれない。

活動のなかでもう一つ力を入れているのが地域の防犯対策だ。昨年2014年には、国の補助も利用しながら、大津通の金山交差点付近の歩道に13台の街路灯と4台の防犯カメラを設置した。

幹線道路から一歩中に入れば集合住宅が立ち並び、昼間人口より夜間人口が多いというエリアだけに、そうした取り組みは地域に住む人や商店街の利用者に好評だ。さらに、今年3月末までには大津通を中心に防犯カメラ24台を増設する。

10年先を考え、足元を固めてきたまちづくり

金山橋連合商店街振興組合の代表になって12年目になるという理事長に、金山のまちの未来像をどう思い描いているか尋ねてみた。

「アスナル建設計画の頃から私はずっと『金山のまちから北へ向かって栄まで、人の流れと光の帯をつなげたい』という思いを持ち続けてきました。大津通の一角にそれを促すような、金山のランドマークとなるような施設を造りたいという気持ちは今も変わりません。この地域はマンションなど集合住宅が多いので、商店街の発展のことだけを考えるのではなく、そういう地域性に見合ったまちづくりをすることが大切だと思っています」

金山のまちを俯瞰的に捉え、“将来こうあるべきだ”というものをはっきり示し、ぶれることなく活動を続けてきた理事長。

「今から10年前に、10年先のことを考えて、それに向かって1年ごとにやるべきことを段階的にやってきたつもりです。理事長を務めて12年が過ぎた今、思い描いてきた構想の実現に向けて、ようやく小さな風穴が開いたような気がします。ですから、もうそろそろ次の世代にバトンを渡してもいい頃かなと思っているんです」

バトンを受け取る次のリーダーには、今の理事長がしっかり固めた金山のまちづくりのいしずえと、ぶれない思いも一緒に引き継いでもらいたい。そして“金山から栄までの人の流れと光の帯”をぜひ実現してほしい。

前回、商店街活性化の活動について話を伺った駅南口側の金山商店街振興組合が、まちの身近なところから賑わいづくりに取り組んでいるのに対し、今回紹介した北口側の金山橋連合商店街振興組合は、さらに一歩進んだ都市づくりの取り組みを行っているという印象を受けた。

北と南の商店街振興組合の協働が実現すれば、きっと将来は金山総合駅周辺がより快適で楽しいエリアになるだろう。

【取材協力】
■金山橋連合商店街振興組合
http://www.kanayama-go.com/


夏祭りをはじめさまざまなイベントのメイン会場としてよく利用される日本特殊陶業市民会館夏祭りをはじめさまざまなイベントのメイン会場としてよく利用される日本特殊陶業市民会館

2015年 03月03日 11時10分