住宅における新しい省エネ基準が2015年4月に完全施行、2020年に義務化へ

国内における住宅・建築物部門のエネルギー消費量は全体の33.8%(2011年実績:資源エネルギー庁調べ)に達するが、1990年から2011年までの20年あまりで約33%(住宅部門だけでは約25%)の増加がみられる。また、同期間において住宅部門の二酸化炭素排出量は48.1%も増えたようだ。住宅にかぎった話ではないが、あらゆる面で省エネルギー化が急務となっているのであり、国民の一人ひとりがしっかりと意識していくことも欠かせないだろう。

1979年10月に施行された「省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」により1980年に省エネ基準が設けられ、その後1992年(非住宅は1993年)および1999年の改正で段階的に強化されてきた。とくに1999年の改正は全面的な見直しを伴うものであり、「次世代省エネルギー基準」とも呼ばれる。一般的には「平成11年基準」あるいは「H11基準」などと表記されることも多い。

その「次世代省エネルギー基準」が見直され、2013年10月(非住宅建築物は4月)に施行された。非住宅建築物に対してはすでに2014年4月から完全施行されているが、住宅および複合建築物の住宅部分に係る基準は2015年3月31日までの1年半が経過措置期間とされ、改正前の基準を用いることが認められている。そして、2015年4月1日からは住宅に対しても新たな省エネ基準が完全施行される。ただし、現時点では強制力がなく、すべての新築住宅における「義務化」は2020年をめどに実施される予定だ。

2013年の省エネ基準改正がどのような内容だったのか、さらに2020年の義務化に向けてどのような課題があるのかを考えてみることにしよう。

住宅の省エネ化が重要な課題になっている住宅の省エネ化が重要な課題になっている

2013年の改正で省エネ基準はどう変わったのか

2013年10月に施行された新しい省エネ基準は、建物と設備機器を一体化して建物全体の「一次エネルギー消費量」を総合的に評価する仕組みだ。非住宅建築物では従来、設備ごとに評価をする基準だった。その一方で、住宅については外皮(壁や窓など冷暖房する空間と外気を仕切る部位)の断熱性能だけを対象とした基準だったが、「外皮の断熱性能」を新しい計算方法に改めたうえで、設備性能の評価を加えて建物全体の省エネルギー性能を判断することとなった。

冷暖房設備、換気設備、給湯設備、照明設備などに仕様基準を設け、これらを総合的に評価するものであり、太陽光発電設備による再生可能エネルギー発電や、エコキュートなどによる省エネ効果も評価の対象とされる。「一次エネルギー」とは、石油・石炭など化石燃料、原子力燃料、自然から得られる水力・太陽光などのエネルギーを指し、電気・ガス・灯油など建物で使う「二次エネルギー」を「一次エネルギー」に換算することで、消費量の比較を容易にしようとするものだ。

また、2013年基準では住宅の外皮性能について「外皮平均熱貫流率」「冷房期の平均日射熱取得率」を用いるように変更されたほか、地域区分は「Ⅰ〜Ⅵ」の6区分から「1〜8」の8区分に改められた。ただし、改正前はすべての地域で「日射遮蔽性能」「断熱性能」の基準が設けられていたが、改正後は寒冷地(地域区分1〜4)において日射遮蔽性能(日射熱取得率)の基準が設けられておらず、蒸暑地(地域区分8)において断熱性能(熱貫流率)の基準が設けられていないことに留意しなければならない。

日本の住宅における断熱性能は諸外国より劣っている?

2013年に改正された住宅の省エネ基準において、その計算方法は改められたものの、外皮(外壁や窓など)の断熱性能についてはほぼ従来の省エネ基準(1999年基準)のまま据え置かれた。「次世代省エネルギー基準」といいながらも、その実態は16年前に制定された古い基準のままなのだ。さらに現状では、建築主への努力義務規定にとどまっている。省エネ法では「エネルギーの使用の合理化に努めなければならない」と定めているものの、対策が著しく不十分でなければとくに罰則規定などもないのだ。

そのため日本の住宅における断熱性能は、多くの先進国の基準と比較してかなり劣っているという指摘も多く聞かれるが、とくに性能差が大きいのは窓のようだ。窓の断熱性能を表す熱貫流率は数値が低いほど高性能だが、日本では2.33以下が「最高性能」とされ、法的拘束力もないためにこれが4を超えるアルミ複層ガラスの使用も多い。ところが、たとえばドイツでは1.3を超えるものが使用禁止となるほか、韓国や中国などアジアの国々と比べても、日本はかなり見劣りするようである。なお、窓の性能問題については[オピニオンリーダー]松尾和也氏による「暑さの7割寒さの6割は窓が原因なのに、日本の窓は中国の最低基準以下」をご参照いただきたい。

また、日本では冬期の生活室温が低いことから、「ヒートショック」による入浴中の事故死だけでも年間1万9千人以上にのぼるとされている。近年は年間5千人を下回るようになってきた交通事故死者数よりもはるかに大きな問題なのだ。さらに断熱性能が低いことにより、結露の不具合が発生する住宅も多いだろう。これらは断熱性能の向上で改善できるものだが、義務化によってある程度の改善は見込める。だが、もともと低い断熱性能のレベルそのものは変えずに、省エネの重点対象を断熱性能から設備機器の性能へ移したのが2013年の改正でもある。

なお、諸外国に比べて日本は暖房の使用が極端に少ないため、「断熱性能を上げても暖房費用の削減余地が少なく、省エネ効果が限られる」という指摘もされていることには一定の留意が必要だろう。

1999年省エネ基準のイメージ(国土交通省解説資料より引用)1999年省エネ基準のイメージ(国土交通省解説資料より引用)

省エネ基準の義務化へ向けた課題

しかし、これまでは目安にすぎなかった省エネ基準を義務化しようとする動きは、大きな前進として捉えることができるだろう。2012年7月、政府は2020年までに住宅やビルなどすべての新築建物で省エネ基準に適合することを義務づける方針を示し、国土交通省、経済産業省、環境省が共同で設置した「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」の中間報告に盛り込んだ。また、同様の方針は2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」、2012年7月に閣議決定された「日本再生戦略」にも掲げられている。

国土交通省はオフィスビルや商業施設など2,000m2以上の建築物について省エネ基準への適合を義務づける新法を通常国会へ提出し、2017年度以降の施行を目指すこととしているほか、2019年度以降には300m2以上の建築物までその対象を広げる方針だ。そして2020年度には一般の住宅に対する義務化も実施する方向で検討が進められている。さらに、2030年には新築住宅の平均でゼロエネルギー住宅の実現、2050年にはすべての住宅でゼロエネルギー化を実現といった目標も示されているようだ。

ちなみに、現在の省エネ対策のもととなっている「省エネ法」は対象が広く、経済産業省の所管となっている。そのため、国土交通省はここから建築部門を切り離したうえで「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律案(仮称)」を2015年の通常国会へ提出する方針だとも報道されている。

その一方で、一般住宅については省エネ基準に適合させることで建築コストが5%程度上がるとされ、義務化に慎重な動きもみられるようだ。そのため、建築主の負担や施工者の技術向上、「義務化導入時点での省エネ基準達成率」なども踏まえたうえで、基準の内容を検討することとしている。2020年の義務化までに、省エネ基準のレベルが見直される可能性もあるだろう。

さらに、中小工務店対策も急がれている。中小工務店が建てた住宅における省エネ基準適合率は2〜3割程度にとどまるとの推計があり、半数以上は1999年基準の住宅を建てた経験がないとされている。また、国土交通省による簡易推計では、1999年基準に対する新築住宅の適合率は、2008年度時点で1〜2割程度、「住宅エコポイント」が実施されていた2011年度上半期で5〜6割程度とされた。伝統工法の多い中小工務店では、構造上の特性で断熱や気密化が難しいほか、通風や開放性を重視する建物が造りにくくなるという懸念も示されている。国土交通省は、中小工務店や職人を対象に「省エネ施工技術修得支援(5ケ年計画)」を実施する予定だ。

これからの住宅は省エネの視点が欠かせない

2009年施行の改正省エネ法で、年間150戸以上を供給する建売住宅事業者などが遵守すべき省エネの基準が定められたが、その一つとして「トップランナー基準」が採用されている。トップランナー制度とは、流通する製品の中で「最も省エネルギー性能が優れている機器(トップランナー)」の性能以上に基準を設定するものだ。一定規模以上の事業者に求めた内容は、次世代省エネルギー基準を満たすことや、住宅性能表示制度における省エネ基準が最高ランクの「等級4」であることに加え、高効率給湯設備や節湯器具、熱交換型換気設備や高効率空気調和設備、太陽光発電設備などを併設することとしているが、現在では大手の建売住宅事業者であればおおむねこの基準をクリアしているものとみられる。

その一方で、2012年12月に施行された「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」で導入した「認定低炭素住宅」は思うように普及が進んでいないようだ。一般住宅の省エネ基準に比べて一次エネルギー消費量をマイナス10%以上とすること、1999年省エネ基準レベルの断熱性能を有すること、その他低炭素化に資する一定の措置が講じられていることなどを要件とするものだが、制度運用開始からの2014年9月末まで22ケ月間の累計認定戸数は、一戸建て住宅が3,464戸、マンション以外を含む「共同住宅等」が2,771戸にとどまっている。とくに一戸建て住宅では、2009年6月に導入された認定長期優良住宅制度がスタートから22ケ月間で158,004戸に達していたことと比べれば、かなりの出遅れ感もあるだろう。

また、住宅性能表示制度による「温熱環境(省エネ性)」では等級4のものが現状で最高だが、2015年4月からは低炭素基準に相当する「等級5」が設けられることになっている。なお、2020年に予定される省エネ基準の義務化において、すべての新築住宅がクリアしなければならないのが「等級4」である。

いずれにせよ、これからの住宅において省エネ化は必須の流れであり、新たに建てられる住宅では、建物自体が断熱性能を有しているだけでなく、省エネ型の設備機器を搭載していることが求められる。2020年以降には新たな省エネ基準を満たした住宅のストックが着実に増えていくはずであり、基準を満たさなければ将来の既存住宅市場の中で大きなマイナス要因となりかねない。これからは住宅の新築・リフォームのどちらの場合でも、省エネをしっかりと意識することが欠かせないのだ。

2015年 02月12日 11時07分