仕事、育児、家事に奔走する女性が一人で頑張らなくても良い住まいを

学生以外は全員お母さんというメンバー。企画を考えるに当たっては女性だけでなく、男性にもインタビュー。夫婦間でも認識にずれがあることを実感したという学生以外は全員お母さんというメンバー。企画を考えるに当たっては女性だけでなく、男性にもインタビュー。夫婦間でも認識にずれがあることを実感したという

2014年1月に立ち上げられた商品開発プロジェクト「MIRAI図」は、神奈川県を中心に集合住宅、マンションを供給する不動産会社リスト社内でこれまで商品開発には縁のない業務に携わってきた女性社員10名(別途プロデューサー1名)に、昭和女子大学の有志学生11名(別途指導教員4名)、協力企業5社の女性社員5名が3つのユニットに分かれて進めてきたもの。テーマは『女性の視点から見たこれからの暮らし』。最終プレゼンテーションではユニットごとに設定した課題とその解決のために考えられた商品が提案された。

最初の発表は家事と仕事、育児に奮闘するワーキングマザーのためのマンション「スマイルハウス」。既存の共働き女性を意識した物件では、問題の解決が住戸内の間取りの工夫に終始していること、コストアップを前提としていること、すでに頑張っているにも関わらず、もっと頑張ることを期待されていることに感じた違和感の解決を目指したものである。

解決法は大きく2つ。ひとつは、1人で頑張るのではなく、みんなで助け合って問題を解決しようと、マンション内に住民同士、周辺地域との繋がりを作ることを提案している。具体的には住戸と共用廊下の間に土間、住戸内に開閉自由な開放空間を作ることで、住民同士『開いて、繋ぐ』とし、共用部である屋上などにも同種の空間を作るとしている。共用部の一部は住民だけではなく、地域にも開くものとしており、子どもたちが放課後を過ごしたり、地域のママサークルが利用したりと時間によって異なる人が使う場面が想定されている。

もうひとつは住戸内の工夫。家事ごとに必要な空間を集約することで家事動線を略し、効率的に動けるようにしたもので、洗濯機置き場と干す場所、収納間の動線を圧縮して洗濯を楽にするシェアウォッシュ、水回りを集中させてロボット掃除機の作業を容易にするシェアクリーンなど、3種類の工夫が提案された。特に面白かったのはロボット掃除機を使うことを前提とした間取りという発想。掃除はロボットがやるものと割り切れば、家事に割かなければならない時間はずいぶん減るはずだ。

自分で手を入れることでローコスト住宅にコスト以上の満足度を

女性のDIYブームなどをデータから紹介しながら、愛着の持てる家作りを提案女性のDIYブームなどをデータから紹介しながら、愛着の持てる家作りを提案

残り2ユニットの提案はいずれも一戸建て。ひとつは建売住宅に自分で手を入れる余地を残して販売することで、価格以上の満足度、愛着を創出するという「LaSeek(ラシーク)」と名付けられた企画。昨今のDIYブームを取り入れ、住みながら完成していく住宅を目指している。ユニット名の「Tuesday」は週の前半の、なんでもない、普通の日をイメージしたもので、そんな日常を楽しくする家を目指したという。

具体的には玄関のニッチ、リビング、主寝室・子ども部屋、庭の中から住む人が選んだ3カ所に完成後、自分たちで手を入れる余地が残してあるというもの。ペイント、クロス、タイルの中から好きな素材を選び、施工方法を選び……となっているが、施工自体はさほど難しいものではなく、また、販売主から工具を借りたり、作り方のノウハウを教えてもらったりということもでき、誰にでもできるようになっている。もちろん、その分、予算がアップすることもない。もうひとつ、作る過程を通じて周囲の住民とコミュニケーションが生まれることも意図されている。

この企画はたまたま自分でも家を探していたメンバーが建売住宅見学を重ねて気づいた問題点をベースにしており、ローコストな住まいでもコスト以上の満足度が得られるようにと考えたという。ただ、あまりに簡単にできる作業で、そこまでの満足度、愛着が得られるものかどうか。個人差もあるのだろうが、いささか疑問を抱いた。入居時に手を入れられるだけでなく、継続的に自分でメンテナンス、バリューアップに係る仕組みなどもあれば面白いのかもしれない。

本当は一戸建てが欲しい共働き夫婦が楽に暮らしていける一戸建て、街区を提案

街区、間取りと2班に分かれて企画を考えたそうで、その甲斐あって提案の内容も充実していた街区、間取りと2班に分かれて企画を考えたそうで、その甲斐あって提案の内容も充実していた

もうひとつは忙しい共働き夫婦が楽に暮らしていけることをテーマにした一戸建て街区の提案「Rakurasu Town(ラクラスタウン)」。利便性を優先して新築マンションを購入することが多い共働き夫婦だが、状況が許すなら本当は一戸建てが欲しいと言う人が7割ほどにも上るそうで、そうした人たちを取り込むことを狙った企画である。

提案は街区、街の仕組みと住戸内の2つに分かれており、街区、街の仕組みでは街区内に人間関係を醸成することで、仕事に時間を取られがちな共働き夫婦の孤独感を解消し、新たな趣味や楽しみが生まれることを主眼としている。

具体的な仕組みとしてはクラブハウスを設置、部活動を推進してコミュニティ醸成を図るなど、マンションでの仕組みを彷彿とさせるもの。実際、管理組合を作ることも含め、集合住宅の運営方法、良さを一戸建て街区に取り込む意図があるという。同様に一戸建てでは弱点とされがちな安全性、防犯性も重視、街区内の道路を一方通行にし、出入口を1カ所にするなど工夫を凝らしている。

面白かったのは各戸の外灯を利用、夜でも明るい街並みを作るという部分を自画自賛するメンバーが複数名いたこと。一戸建て中心の住宅街は夜間暗くて怖い。口に出してデメリットというほどではないものの、そう感じている女性が少なくないということだろう。これから一戸建て街区を販売する方々はこれを参考に、夜間の帰宅も安心できる物件を作っていただきたい。

住戸内の工夫では水回りと寝室をワンフロアにまとめ、雨でも洗濯物が干せるサンルームを配する、玄関に家族それぞれの収納を設けるなど家事のしやすさ、動線への配慮が中心。協力企業である東京ガスやニフティ、東急グリーンシステムの商品、ノウハウも盛り込まれていた。

早ければ来年以降、実際の物件として登場予定

最終プレゼンの聴衆。関係者も含め、会場いっぱいに集まり、メモを取る人も多数最終プレゼンの聴衆。関係者も含め、会場いっぱいに集まり、メモを取る人も多数

これらの提案についてはすでに商品化の動きがあり、プロジェクトの責任者であるリスト開発本部戸建事業部の相澤毅さんによると「『LaSeek』は仕入れ次第だが、早ければ年内、遅くても来年には商品化の予定」という。建物自体を変える必要はないため、比較的容易ということだろう。

『Rakurasu Town』は来年予定している横浜市内の現場に要素を抜き出して採用することを検討されている。同社のすでに販売済みの一戸建て街区の入居者アンケートで、入居者が共同で利用できる場が欲しかったという意見が多かったことも後押しし、クラブハウス自体の設置はほぼ決まっているそうだが、今後は市や地元とも協議をし、地域に開かれたクラブハウスにしていきたいとのこと。保育所や学童保育など、地域に足りない要素を提供できるような形に持っていければ、地元にも喜ばれる開発になることだろう。期待したい。

もうひとつの『スマイルハウス』も物件を仕入れ次第投下する計画とのこと。今回の発表では既存建物の改修を前提としていたためか、3つの家事シェアはそれぞれ別の間取りとなっていたが、家事をやる身とすれば掃除も、洗濯も、調理も楽にしたい。総合的に家事効率が上がる間取りとしてもう一段、企画に磨きをかけていただきたい。

2015年 03月25日 11時06分