安心できる中古住宅の売買を後押しする法案が閣議決定

日本の中古住宅の流通シェアは、欧米諸国と比較して極めて低い。国土交通省の資料によると、そのシェアは14.7%(2013年)。アメリカ83.1%(2014年)、イギリス88.0%、フランス68.4%(2013年)だから圧倒的な差だ。

なぜ日本では中古住宅が売れないのか。
社団法人不動産流通経営協会が新築住宅購入者へ中古住宅に望む点を調査(2011年)したところ、トップは「構造上の性能の保証・アフターサービス等」(53.8%)、続いて「修繕・補修等の履歴情報の完備」(51.3%)だった。

中古住宅の場合、不動産会社からではなく一般の売主から買うことが多く、売主自身もどこが傷んでいるのか分からない場合が多く、アフターフォローもしにくい。したがって保証期間(瑕疵担保責任)が3ヶ月程度と短期になることがほとんどだ。このような背景から買主は新築住宅の方へ目を向けるのだろう。

しかし、日本は人口減の時代へ突入し、空き家が増加。さらに生活スタイルの変化や加齢に応じた住み替えのニーズなどによって、安心できる中古住宅市場の整備は不可欠となっている。

そこで政府は今年(2016年)2月26日に、中古住宅の売買契約前に行う重要事項説明時にインスペクション結果の説明を義務づけるという内容の宅地建物取引業法の一部を改正する法案を閣議決定した。

中古住宅流通シェアの国際比較。欧米は住宅流通のうち中古住宅が70%から90%前後を占める。</BR>一方で日本の中古住宅のシェアは、わずか14.7%しかない(出典:国土交通省資料)中古住宅流通シェアの国際比較。欧米は住宅流通のうち中古住宅が70%から90%前後を占める。
一方で日本の中古住宅のシェアは、わずか14.7%しかない(出典:国土交通省資料)

インスペクションの実施と保険の加入を促進する内容

おもな内容として、不動産会社は下記のような事項を義務づけられる。

①媒介契約の締結時に建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の依頼者への交付

② 買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明

③売買等の契約の成立時に、建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付

具体的には、売主と買主のいずれかが不動産会社との媒介契約時にインスペクションを依頼するかどうかを決め、依頼する場合はインスペクターを斡旋してもらう。費用は依頼をする方が負担する。目安は5万円から10万円程度だ。次に買主は重要事項説明時にその結果を聞く。この時点で建物の客観的な状態が分かるので、購入の判断や価格交渉などがしやすくなる。また、その結果は買主の既存住宅売買瑕疵(かし)保険の加入にも利用できる。そして売買契約時に建物の状態を売主と買主が確認し、その内容を記載した書面を受け取る。これで物件引渡し後のトラブル防止となる。

中古住宅の取引フロー。不動産会社は、インスペクションの情報提供などを義務づけられている(出典:国土交通省資料)中古住宅の取引フロー。不動産会社は、インスペクションの情報提供などを義務づけられている(出典:国土交通省資料)

インスペクション・既存住宅売買瑕疵保険とは?

ホームインスペクションとは住宅診断のこと。建築士など住宅の専門家(インスペクター)が、第三者的な立場から建物の劣化状況や欠陥の有無、修繕すべき部分やその時期、費用などを調査し、アドバイスをする。
買主としては大きな安心材料になるものの、実際の利用者は中古住宅購入者の1割未満だ(国土交通省資料)。理由としては、同省によると事前にインスペクションの存在を知らなかったということが多いという。

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の売主、買主のいずれかが任意で住宅瑕疵担保責任法人へ申し込み、検査機関(ここではインスペクター)が建物を検査することで1年または5年の保証が受けられるもの。保険金の対象となるのは、修繕費用、調査費用、転居・仮住まい費用等。保険対象部位は、下記になる。

・構造耐力上主要な部分(基礎や柱など)
・雨水の侵入を防止する部分(外壁や屋根など)
・給排水管路
・給排水設備・電気設備
*給排水管路、給排水設備、電気設備は保険法人によっては対象とならない

住宅ローンなどの整備にも期待したい

上記のような法整備で建物というハード面の問題は解決しつつある。残るのは住宅ローンなどのソフト面だ。
住宅ローンに関しては、以前よりは新築と中古の差がなくなっている。ほとんどの銀行ではリフォーム費用も込みでローンを組める。それでも現状では中古の方がローン期間が短くなったり、金利が高くなる傾向がある。また、多くの銀行は、お金をかけた豪華な家でも、必要最低限の安価な家でも一律に築年数で担保価値を設定する。つまり前者も後者も同じ築年数なら同じ金額しか借りられない。そうなると比較的高額になる前者を購入するには、多くの自己資金が必要となる。

アメリカなどでは、センス良く丁寧にリフォームされた家は新築よりも高く売買されることも珍しくないそうだ。日本も上記のようなハード面とソフト面の整備で中古住宅市場が活性化されれば、そのようになるかもしれない。買主としては選択肢が広がり、より住まい選びが楽しくなることだろう。

2016年 06月02日 11時12分