マイホームの選択肢を広げる中古住宅

「夢の」という枕詞がつくほど、「マイホーム」は多くの人にとって憧れであり、人生の中でも重要なキーワードであることは間違いないだろう。最近では、賃貸であっても内装変更の自由がきいたり、趣味をテーマとした部屋づくりがなされている住まいも増えてはきたものの、より『自分らしい暮らしを築く』要求を満たしてくれるのは、やはり自己所有の住まいだ。
しかし、住み慣れた街、通勤通学に便利、学校や病院に近いなど、生活するうえで求めるポイントを満たしてくれる場所に家を建てることは容易なことではない。

・希望のエリアに住める
・お手頃価格が見つかる
・購入前に実際に建物を見ることができる

新築神話の根強い日本でも、中古購入検討者が増えてきたのはそうした理由からだろう。

さて、この中古住宅。
日本では個人間による売買が圧倒的に多く、この個人間売買は「現状有姿」(現在のありのままの状態で引き渡しする)取引が全体の60%を占めているそうだ。現状有姿=瑕疵保証を行わないわけではないので、この点は留意しておきたいが、いずれにせよ個人間売買の際に保証を設けている場合であっても長くても3ケ月。生活の中で買い主が様々な瑕疵に気づくには、決して充分な期間とは言えない。

不具合が見つかると、買い主は住宅購入費やリフォーム費用にプラスし、思わぬ修繕費用が出費となってかかってくる。そうしたリスクに備えるために設けられたのが「既存住宅瑕疵保険」だ。

既存住宅瑕疵保険とは?

瑕疵(かし)とは、不具合や欠陥を意味する。
中古住宅の場合、売買時に気づかなかった瑕疵が引き渡し後、生活する中で見つかり、トラブルになることもあるため、売り主・買い主ともにその不安や負担を軽減解消したいところである。

<既存住宅瑕疵保険>

■保険の特長:「検査」と「保証」がセットとなった保険制度
加入には保険法人や検査機関による必要箇所の検査を受け、検査に通ることが前提となっている。
■保証対象:
構造耐力性能と防水性能の隠れた瑕疵で、特約で給排水管路も加えることもできる。
■検査・保証依頼:売り主・買い主ともに行える
但し、検査事業者への委託となり、実際の保険金請求は検査事業者が行い売り主・買い主は直接保険金請求はできない。
■保証期間:引き渡し日から1年か5年
■保険金支払限度額:500万か1000万(条件による)

この保険には、2つの利点があると言える。
一つは、加入できるという時点で検査をクリアした一定の品質が確保できること。もう一つは、加入後は一定期間に基本構造部分から隠れた瑕疵が見つかった場合、その補修費用が保証されることだ。また、税制特例や住宅ローン減税となる場合もあるので、診断による安心感以外のメリットが得られることもある。

インスペクターが見聞きした瑕疵・トラブルの実例

「住宅を維持していくうえでシロアリ対策も大切なメンテナンスの一つ」と加藤氏。「住宅を維持していくうえでシロアリ対策も大切なメンテナンスの一つ」と加藤氏。

保険に加入する条件は、「検査」を受けることが必須となる。保険の加入・未加入に問わず、購入の際にどのような点に留意したらよいのかは知識として持っておきたいところだ。そこで、中古住宅で見つかりやすい不具合について、『ホームインスペクター』として中部圏で実際にいくつもの建物診断を行っている「なごや住宅診断所」所長の加藤大輔氏にお話を伺った。

「診断時に不具合が見つかりやすいのが『床下』と『小屋裏』この2ケ所ですね。どちらも日頃目にしない場所です。住んでいる方が日頃目にしない場所と言うのは、どうしても不具合に気づきにくくなり、不具合が発生、進行していることがあります。また日常生活で習慣がない分、購入前にこの箇所をチェックすること自体、一般の方はなかなか思い浮かばないかもしれません」

<小屋裏(屋根裏)>
・雨漏り
・金物の施工不良
※建築された年代によっては金物がなくても良いものもあるのだが、問題となるのは金物があるのに正しく付いていない場合

<床下>
・シロアリ生息・被害
・設備関係の不良
※給排水管の接合不良など

その他、ユニットバス換気扇の排気ダクトが外れてしまっていることはよくあり、レアケースとしては鳥、コウモリ、ネズミ、ハクビシンなどの生物侵入があることも。

保険対象適用外のポイント

瑕疵に多いものの一つである「雨漏り」瑕疵に多いものの一つである「雨漏り」

一方、保険対象適用外となるものは

・洪水、台風、地震、噴火、津波などの自然現象
・火災、落雷、爆発、暴動などの偶然または外来の事由
・シロアリなどの虫食い
・自然消耗
・住宅の不適切な使用によるもの などがある。

シロアリ防除を専門としている筆者にとって気になるのは、蟻害が対象外であること。蟻害(シロアリ被害)は、中古住宅購入時の不安要素として上位に挙がる項目でありながらも“既存住宅瑕疵保険の対象外”であるのはなぜか加藤氏に伺ったところ、

「蟻害は診断時に見つからなくとも、防蟻対策をおこなっていなければ蟻害に対して安心だとは言えないのです。大げさな例えかもしれませんが、診断翌日にシロアリが侵入し加害を始めることだって考えられますよね。
診断時に異常がなくとも防蟻対策をしておかなければ一定の品質をクリアしたとは言い難いため、保険適用から外されているのだと思います。海外では防蟻を重要視しており、売り主負担で防蟻施工を行っているところもあると聞いたことがありますから、住宅を維持していくうえでシロアリ対策も大切なメンテナンスの一つだと思いますよ」

現地確認時に自分でできるチェックポイント

最後に、私たちが中古住宅を内覧する際に気を付けると良い点をプロのインスペクターに特別に教えていただいた。

大きく分けるとポイントは3つ。
①外部:基礎、屋根、外壁および窓廻り
②内部:天井・壁、床、水廻り
③その他:境界、申請図面、確認済証、検査済証

下図を参照頂き、状況のチェックを行うことをお勧めしたい。

「△や☓の項目があれば、劣化診断のできる建築士やホームインスペクターなどの専門家による診断を受けて頂きたいですね。☓の項目がある場合は補修コストが大きくなる可能性もあるので、その点も考慮して購入を検討することをお勧めします」

また、「点検口があるかどうかも重要です!」と加藤氏。

「より長く快適に住むためには、定期的に点検が必要です。それにより木造住宅であってもより長く保つことができます。点検に必要な点検口の有無はチェックして頂き、ない場合はリフォーム時に併せて作成することをお勧めします」

『定期的な点検とメンテナンスが重要』
これは、長持ちさせるコツを尋ねると建築士・施工業者・専門業者・・・どの立場の人からも必ずと言ってよいほど聞かれる言葉だ。

これから成熟していく中古住宅市場。その魅力を活かし、価値を高め、満足いく購入にするために、『定期的な点検とメンテナンス』は押さえておくべきポイントなのだろう。

内覧時に気を付けたいセルフチェックポイントを押さえておくことで、トラブル回避やリフォーム計画に役立てられる</br>(○、△、×のケースの場合には、本文の加藤氏の言葉を参考に)内覧時に気を付けたいセルフチェックポイントを押さえておくことで、トラブル回避やリフォーム計画に役立てられる
(○、△、×のケースの場合には、本文の加藤氏の言葉を参考に)

2014年 07月22日 11時39分