砂ボコリや悪臭、感染症などの温床となる土砂・がれき

水害などによる砂ホコリや悪臭、感染症などの温床となる。また、道路をふさいでしまったら日常生活にも困る。一刻も早く撤去したい(写真:PIXTA)水害などによる砂ホコリや悪臭、感染症などの温床となる。また、道路をふさいでしまったら日常生活にも困る。一刻も早く撤去したい(写真:PIXTA)

昨今の自然災害では、極端に被害が大きくなる例が珍しくない。2018年7月豪雨では西日本を中心に広域的かつ同時多発的に河川の氾濫や土石流などが発生。民家の全半壊2万1,460棟、浸水3万439棟という甚大な被害をもたらした。また、2019年10月の令和元年東日本台風(台風19号)の被害も、極めて広範囲において河川の氾濫やがけ崩れが発生し、民家の全半壊5万4,363棟、浸水3万7,289棟という大きな爪痕を残した。

このような河川の氾濫や土砂災害の際、必ずといっていいほど問題となるのが、自宅やその周辺に堆積した土砂やがれきをどう撤去するのか、だ。これらを放置すると砂ボコリや悪臭、感染症などの温床となるので被災者の誰もが一刻も早く撤去したいと考えるだろう。

そこで国土交通省は、2020年3月に『宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド』を令和元年東日本台風の被害を踏まえて改定した。同ガイドは本来自治体向けのものだが、宅地内に堆積した土砂やがれき撤去の段取りや撤去を公費で行う方法といった我々一般市民にも有用な情報も少なくない。本記事では、その部分を中心に『宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド』の内容を我々がどう利用すべきかを考えたい。

被災直後から撤去作業実施までの疑問点について解説

同ガイドでは、被災直後から撤去作業実施までの自治体側からの疑問点について、過去の事例をもとに解説などをしている。たとえば次のような疑問点だ。

●疑問点
「民有地の土砂を市町村で撤去することにしたが、どのようなやり方があるか」
解説
「苦情や手戻りがないように申請者、施工会社、自治体の3者、あるいは申請者と自治体の2者で立ち会うやり方など、被災状況や人員体制に応じて適宜やり方を決める必要があります」

おもな事例としては、「土砂排除作業前に事業申請者、施工会社、町の3者で現地立ち会いし、実施範囲を確認した」(広島県熊野町)などがある。まずは「この場所も撤去してくれると思ったのに」といったことにならないように当事者間でしっかり作業内容を確認することが重要ということだ。

●疑問点
「遠隔地の民有地所有者から土砂撤去の了解を取り付けるにはどうすればよいか」
解説
「遠隔地にいる所有者に対しては、ご自身の宅地の被害状況や土砂撤去の同意書のみならず被災地周辺の写真や復旧・復興に関する様々な支援制度の情報もあわせて郵送することで、土砂撤去の了解が得やすくなると思われます」

おもな事例としては、「遠隔地居住者は災害が起こったことはニュースで知っていたが、自治体がどのような支援を行っているかは知らなかった。撤去だけでなくほかの支援制度もあわせた説明を受けたことで、一緒に復旧に取り組もうという気持ちになったようだ」(愛媛県宇和島市)などがある。遠方に土地などを所有している人は、その地域が被災しているニュースを見たら、とにかくその自治体に連絡して被災の有無や対処方法を確認したい。

撤去費用は自治体が負担してくれる場合も

●疑問点
「決定した土砂排除方針を市民にどうやって周知すればよいか」
解説
「チラシ、HPなど様々な方法で情報提供する必要があります。また被災地近くの公民館や市民センターなどに窓口を設置、さらに防災行政無線でお知らせすることも有効です」

おもな事例としては「被害が分散していることもあり、公費撤去の情報を知らない方のために自費撤去に対する償還支払い制度の案内・Q&Aをチラシ・HP等で周知した」(広島県呉市)などがある。このように撤去費用に関しては、公的な支援制度もあり得る。その内容は後述する。

●疑問点
「国の支援制度はあるのか」
解説
「災害救助法、災害等廃棄物処理事業、堆積土砂排除事業といった支援制度がある」

おもな事例は次項で紹介しよう。

国から自治体への支援制度

土砂やがれきの撤去に関する国から自治体への支援制度には下記のようなものがある。これらはすべて被災者の費用負担の軽減につながるので、概要だけでも知っておきたい。

「災害救助法」
対象者は半壊(焼)または床上浸水した住居の所有者。または住居やその周辺に運ばれた土石、竹木等で一時的に居住できない状態にあり、自力ではその障害物を撤去できない人。支援金の限度額は13万7,900円。支援の対象物は、スコップなど撤去に必要な機械、器具のレンタルまたは購入費やその作業をする人への賃金。

「災害等廃棄物処理事業」
補助先は市町村(一部事務組合、広域連合、特別区を含む)。暴風、洪水、高潮、地震、台風などによる被災および海岸保全区域外の海岸への大量の廃棄物の漂着被害に対し、市町村等が実施する災害等廃棄物の処理の費用について財政的に支援する。補助率は2分の1。

「堆積土砂排除事業」
補助先は市町村。①市町村長が指定した場所に搬出集積された堆積土砂、②市町村長が公益上重大な支障があると認めて搬出集積または直接排除された堆積土砂、のいずれかを排除する費用の2分の1を補助する。

土砂やがれき撤去に対する国から自治体への支援制度。これらによって被災者の費用負担を軽減できる(出典:国土交通省「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド」)土砂やがれき撤去に対する国から自治体への支援制度。これらによって被災者の費用負担を軽減できる(出典:国土交通省「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド」)

支援制度を利用するには情報を取りこぼさないことが重要

前述の広島県呉市では上記のような制度を利用し、2018年7月豪雨において宅地内に流入した土砂やがれきの撤去を所有者の依頼に基づいて公費で行った。当時の具体的な流れは以下のようになる。

①市役所と各市民センターで受付
②書類審査および現地確認
③事前立会(撤去前)
④撤去作業
⑤完了立会(撤去後)
⑥撤去完了(呉市から「撤去完了通知書」が届く)

これらの費用はすべて市の負担だった。なお、アパートも入居者全員の同意が得られたうえでオーナーが申し込めば対象となった。さらにすでに自費で撤去した場合でも、そのとき掛かった費用と市が算定した費用のいずれか低い方を償還(返済)してもらえる制度もあった。

このように万一、土砂災害に遭ってしまったとしても、自治体の支援が用意されていることは多い。だが利用するには、何よりその存在を知っていなければならない。それゆえ今のうちに『宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド』に目を通して基礎知識を蓄積し、いざそのときが来たら自治体のホームページなどを確認して情報を取りこぼさないようにしたい。

『宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド』
https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001334502.pdf

2020年 05月23日 11時00分