中堅ディベロッパーのチャレンジ

インテリアショップ「ワンダーマーケット」とコラボレーションしたモデルルームインテリアショップ「ワンダーマーケット」とコラボレーションしたモデルルーム

新築分譲マンションの大手ディベロッパー7社が共同で運営する「メジャーセブン」のリリースによると、2013年に供給された新築分譲マンション戸数の41%がこの大手7社によるものだったそうだ。新築分譲マンションの事業は、ひとつのプロジェクトで億単位の金額が動く新規参入の障壁が高い業界であり、圧倒的な資本をもつ企業が優位な分野だ。2001年に429社あったマンション供給社数は、リーマンショックを転機に2013年には186社にまで減少している。

この状況のなか、中堅ディベロッパーの動きがおもしろい。今回は、社内にリノベーション部門を持ち、インテリアショップとコラボレーションをしたモデルルームをつくるなど、感度の高い若い消費者を中心に人気のマンションディベロッパー 株式会社サジェストが手がける「カスタマイズできる新築分譲マンション」をピックアップ。タイプ別に同じ部屋がずらりと並ぶ新築分譲マンションの今のスタイルに“否”を問うチャレンジをレポートする。

「カスタマイズ」ができる新築分譲マンション

京王線「国領駅」の再開発で整備された駅前を抜けると、戸建て中心の住宅街が続く。徒歩13分、小学校・中学校に隣接した総戸数23戸の小規模マンション「ネクステージ調布国領」は、12戸を販売した時点で、サジェストが買い取って販売をしている。いわゆる“買取再販”だ。
「教育施設が近く多摩川まで徒歩圏内という住環境なら、もうひとつ付加価値をつけたら勝負できるとおもいました」と株式会社サジェスト ユニット本部の柿沼信人さん。

サジェストが買取再販を手がけるのは2物件目。1物件目で「カスタマイズ」を付加価値として販売し、手応えをもって2物件目に挑んでいる。
このカスタマイズとは、物件金額に関わらず購入成約時点に付与される50万ポイントをつかって、室内空間に手を入れるもの。例えば、壁を珪藻土に塗り替えたり、アクセントクロスに変更するのは5万ポイント~、キッチン前にワイドカウンターを設置するのは30万ポイントなど、好みで変更ができる。カスタマイズの種類は30種類あり、1ポイント1円で追加カスタマイズが可能だ。

「人気のカスタマイズは壁紙から珪藻土への変更です。自然由来の壁材で、調湿機能や脱臭効果があるという珪藻土のメリットをよく勉強されて選ばれています。当社のカスタムオーダーシステムは4年前から始めました。お客さまの好みに合わせて1戸1戸違う部屋に仕上げることは、小規模マンションだからできることです。全部同じ住戸のほうが販売側は楽ですが、お客さまの細かい要望にこたえるカスタマイズには需要があります。このサービスが大手との差別化に繋がると考えました」

左上:黒板塗装 右上:キッチンカウンターの化粧杉板 左下:壁をブリックタイルに変更 右下:キッチン壁をタイルに これらはすべて、カスタマイズオーダーシステムで変更が可能左上:黒板塗装 右上:キッチンカウンターの化粧杉板 左下:壁をブリックタイルに変更 右下:キッチン壁をタイルに これらはすべて、カスタマイズオーダーシステムで変更が可能

「フルスペック」は、正しいか…?

自然由来の材料で人気の珪藻土塗装。ガラスの壁やセンサーライト…長い目で見て、本当に必要な設備かどうかを見極めたい自然由来の材料で人気の珪藻土塗装。ガラスの壁やセンサーライト…長い目で見て、本当に必要な設備かどうかを見極めたい

カスタムオーダーシステムは、いきすぎた住宅設備に疑問を感じたところからスタートしている。大手ディベロッパーの新築分譲マンションは、最新の住宅設備が大量に取り付けられており、それがひとつの“ウリ”になっているが、果たして1年後にその設備をつかっているかどうかというと、実はかなりバラつきがあり、使っていない家庭もあることがわかったそうだ。
「搭載する設備を増やせば物件価格は上がります。であれば、本当に欲しい・必要な設備をお客さま自身に選んでいただいたら良いと考えました。また、室内空間を変更したいというニーズに応える仕組みとして『カスタムオーダーシステム』を導入しました」

新築分譲マンションのモデルルームに行くと、「オプション」と書かれたシールをよく目にする。例えば壁をガラス壁に変える・新たに食器棚を取り付ける・玄関のセンサーライトなど、標準仕様ではないものすべてがオプションとなり、基本的に物件価格+選んだオプション代金が住宅価格になる。今回のカスタムオーダーシステムが他のオプションと違うのは、50万ポイントまでは無料で変えられることと、竣工後の変更が可能なことだ。

どう選ぶか…「新築分譲マンション」と「中古+リノベーション」

住まい選びの価値観は多様化してきた。思い込みを捨てて、自分たちの暮らしに合った住まいを選んでほしい住まい選びの価値観は多様化してきた。思い込みを捨てて、自分たちの暮らしに合った住まいを選んでほしい

株式会社ニューユニークスというリノベーションの会社をもつサジェストだが、リノベーションの認知度が高まっているとはいえ、現在でも新築ニーズが多いという。
「やはり一次取得者は新築希望者が多いです。しかし近年は、決まった間取りや内装といった“新築分譲マンションはこういうもの”という一種の諦めがあるのを感じます。本当は好みのテイストにしたいけれど新築を選ぶ人たちと、好みのテイストにこだわってリノベーションを選ぶ人たちに分かれていて、後者が増えてきたのが最近のリノベーション人気に繋がっているとおもいます」

リノベーションを選ぶ人は、リノベーション費用に予算をとり物件にかける費用をなるべく抑えているという。家を買う世代が団塊ジュニアやデフレ世代に移り、今までの新築偏重の考え方は少しずつ変化しているようだ。
近年、家を持つ価値観が変化しているのを感じるという柿沼さん。夫婦二人や子どもが小さいうちは狭めの新築分譲マンションを購入し、子どもが成長したら最初のマンションを売却や投資にまわして広い家へ引越しをする…ライフステージに合わせて住まいを変える人が増えているそうだ。

住まいの価値観が多様化するなかで、消費者ニーズが細分化し、それに対応しようとするディベロッパーの動きが見えてきた。どんな暮らし方が自分たちを幸せにするのか――新築・大手・設備など既存の枠を外して考えるのが、今どきの住まい選びかもしれない。

2015年 04月14日 11時06分