光熱費がゼロになる家は実現可能か

現在急速に普及が進んでいるスマートハウスに関する様々な製品を集めた展示会「スマートハウス・エコハウス展」が、10月23日から25日に東京ビッグサイトで開催された。
このイベントで24日には、「エクセルギーハウスが示す”本物のゼロエネルギーハウス”」という講演会が行われた。講師は建築家で株式会社アルキテクタ 代表取締役の黒岩 哲彦氏。ゼロエネルギーハウスとは文字通り「光熱費がゼロになる家」。本当にそんなことが可能になるのだろうか。その様子をレポートする。

アルキテクタ代表取締役の黒岩哲彦氏アルキテクタ代表取締役の黒岩哲彦氏

住宅で消費されるエネルギーの約65%は電気ではなく「熱」

黒岩氏は以前福島県の農村に移り住み、民家の保全と住宅への自然エネルギーの導入の可能性を研究。その後大手ハウスメーカーの2つのプロトタイプ開発に携わった経歴を持つ。
講演では、まず現在住宅内で消費されるエネルギーの内訳が紹介された。内訳の半数以上を冷暖房、給湯、厨房が占める。
「消費されるエネルギーの約65%は熱。電気ではありません。しかも熱から電気は理論的に約4割しか変換できない。実際は発電時に7割の熱エネルギーを捨てています。ならば熱は熱で利用した方が効率的ということになります」。黒岩氏はこのように解説を加えた。

家庭で消費するエネルギーの約65%は「熱」。電気は半分以下家庭で消費するエネルギーの約65%は「熱」。電気は半分以下

小金井市が「エクセルギーハウス」を推進

そこで小金井市(東京都)が推進しているのが「エクセルギーハウス」だ。
エクセルギーとは物理学上で「拡がり、散りを引き起こす能力」とされているが、ここでは「エネルギーの持つ、エネルギーとは表現できない能力で、実生活に役立つ身近な場所で得られる能力」または「資源性」と定義づけられていた。
具体的には太陽光や雨水、呼吸の利用などが当てはまる。
同ハウスは冷暖房・給湯・排水について光熱費を不要にする。
同市では2011年に、このエクセルギーを活用した環境配慮型モデル住宅「環境楽習館」を建築。竣工後は、環境負荷低減の効果を知るための様々な検証を行い、現在は環境を学習するための研修室や喫茶施設として一般に開放している。

エクセルギーハウスの基本的仕組み。雨水で冷暖房を行い。野菜の栽培などによって排水を浄化するエクセルギーハウスの基本的仕組み。雨水で冷暖房を行い。野菜の栽培などによって排水を浄化する

快適性を左右するのは空気の温度ではなく面の温度

たとえばエクセルギーハウスは「面」で冷暖房を行う。
冷房は天井に雨水を循環させ、蒸発冷却で行う。循環させる動力は、屋根に設置したわずか畳1帖ほどの大きさの太陽光発電システムだ。
暖房は床を太陽光または地元の間伐材を利用したペレットストーブでお湯を沸かし温める。また室内の壁面に関しても天井や床から温度が伝わり冷暖房する。
このような仕組みで「雨デモ風デモハウス」では、冬は18℃、夏は30℃を維持し、快適に過ごせたという。
だが、この程度の温度しか維持できないのではパワー不足ではないか、と思う人も多いだろう。この疑問に対し黒岩氏は以下のように説明した。
「住宅内の温度には『空気の温度』と『面の温度』があります。エアコンなどは部屋の空気を冷暖房します。しかし、人間は天井や床といった面の温度によって快適さを感じるのです」。
冬季にエアコンで室温を23℃にした場合でも壁面は15℃程度だ。一方でエクセルギーハウスは壁面を21℃にすれば室温は18℃程度になる。室温自体はこちらの方が低いが、快適性はこちらの方が上だというのだ。
「この感覚は、空気の温度より壁面の温度が低い、夏の洞窟の爽やかさを想像すればわかります」(黒岩氏)。

身近な営みを活用する地球にやさしい家

現在ゼロエネルギーハウスの設備といえば、「太陽光発電」「蓄電池」「HEMS」の3点セットが中心だ。これらはすべて工業製品。しかし我々の身近には自然が生み出す利用可能なエネルギーがあふれている。
「太陽光、雨水、蒸発、蒸散、溶解、分解、呼吸、排泄、呼吸など身近な営みに、放っておくと散ってしまうエネルギーがたくさんあります。これらはすべて役に立ちます。一緒にもっともっと勉強しましょう」
講演の最後を黒岩氏はこう締めくくった。
利用可能な自然エネルギーは上記以外にも風力や地熱などがある。本当に地球にやさしい家とはこれらを活用する家ではないだろうか。まだまだ試行錯誤の段階だが、今後に期待したい。

日常生活のまわりに様々な役立つエクセルギーが散らばっている日常生活のまわりに様々な役立つエクセルギーが散らばっている

2013年 11月06日 12時08分