日本の伝統文化である銭湯も、内風呂の普及や重労働による後継者不足で減少傾向

江戸時代、江戸の町で繁盛した湯屋。当時湯に入るために必要な料金が一銭だったことから「銭湯」と呼ばれるようになったという。日本伝統の文化で、江戸時代に大繁盛した銭湯も、内風呂の普及や重労働による後継者不足などで徐々に減少。東京都では昭和29年に約2200軒あった銭湯が、現在では560軒ほどとなっている。

銭湯の魅力といえば、やはり大きな風呂にゆったりと浸かれることや、地域住民とのコミュニケーションの場となることだろう。ただ、最近では美容・健康面で注目されているほか、高齢者見守り、災害時の避難場所などとしての役割も見直されているという。

そこで、銭湯が果たす社会的な役割や魅力などについて、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合(以下:東京都浴場組合) 副理事長の石田眞さんにお話をうかがった。

江戸東京たてもの園 内にある昭和の趣の銭湯建物 子宝湯江戸東京たてもの園 内にある昭和の趣の銭湯建物 子宝湯

高齢者見守り、引きこもり防止、災害時の避難場所としても有用な銭湯

東京都浴場組合のホームページ。内容が充実していて、役立つ情報がたくさん東京都浴場組合のホームページ。内容が充実していて、役立つ情報がたくさん

高齢化社会に入り、銭湯が介護予防や引きこもり防止にも役立っていると話す石田さん。
「銭湯は地域住民のコミュニケーションの場ですし、特に一人暮らしの高齢者は自宅の風呂掃除が大変というような理由で銭湯に来られる方が多いです。実は銭湯は、高齢者見守りにも役立っています。例えば毎日銭湯に来ている高齢者が来なかったら『今日はどうした?』『風邪をひいたみたいだよ』などとまわりが心配するでしょう。また毎日のように銭湯に出かけてコミュニケーションをとることは、引きこもり防止にも効果的です」

地区によっては講習を実施し、地域の銭湯が高齢者見守りに協力。高齢者に事前に連絡先を確認しておくことで、何かあったら即座に行政の担当者に連絡し、官民一体となって地域貢献を果たしている。
「毎日来ている人にボケなどの変化を感じた場合も、速やかに担当者に連絡するようにしています」

銭湯は災害時における避難場所としても地域に貢献しているという。
「例えば、東日本大震災の時も避難場所になりました。銭湯の広い脱衣所は体を休めることができますし、食事を提供した区もあります。また井戸がある銭湯が多いほか10トンほどの貯水タンクは飲料にもなるため、水を確保できることから防災拠点にもなります。いざという時に井戸水を汲み上げるための発電機を用意している区もあります」

ヒート・ショック・プロテイン効果とは?

東京都浴場組合が作成した冊子やチラシ。スタンプラリーの導入、HSP入浴法に関するチラシなども作成し、銭湯をアピールする東京都浴場組合が作成した冊子やチラシ。スタンプラリーの導入、HSP入浴法に関するチラシなども作成し、銭湯をアピールする

なんとなく健康にも良いというイメージの銭湯、科学的にはどういった効果があるのだろうか。
「ヒート・ショック・プロテイン(熱ショックたんぱく質)効果」という言葉をご存知だろうか。この熱ショックたんぱく質は男女に関係なく、温浴刺激などによって効果をもたらすたんぱく質だという。

肌を温めてヒート・ショック・プロテイン(以下:HSP)を増加させることで、HSPがコラーゲンやその他のたんぱく質の日常的な傷害を修復し、常に元気なたんぱく質、元気な細胞にするとともに、肌の免疫力も高めるという。

「細胞が死ぬほどではないマイルドなストレスを与えることで体内のHSPを増加させます。ご家庭のお風呂は冷めやすいと思いますが、銭湯の大きなお風呂は湯量が多いため冷めにくく、HSP効果がより期待できます」と石田さん。
HSP入浴法については、実践方法が掲載されている(※ホームページアドレス参照)。

趣向を凝らした銭湯も登場。日本の伝統的な観光資源として外国人にもアピール

お話をうかがった東京都浴場組合 副理事長の石田眞さん。「銭湯はいつも快適な温度に保たれているためヒートショックが起こりにくいですし、万一のことがあっても誰かが気付いてくれますから、一人暮らしの高齢者にも安心の施設だと思います。また『体を洗ってから入れ』『走るな』『水をかけるな』など、まわりへの気遣いを養うお子さんの社会教育の場としても適しています。ぜひ多くの方に気軽に利用していただきたいですね」お話をうかがった東京都浴場組合 副理事長の石田眞さん。「銭湯はいつも快適な温度に保たれているためヒートショックが起こりにくいですし、万一のことがあっても誰かが気付いてくれますから、一人暮らしの高齢者にも安心の施設だと思います。また『体を洗ってから入れ』『走るな』『水をかけるな』など、まわりへの気遣いを養うお子さんの社会教育の場としても適しています。ぜひ多くの方に気軽に利用していただきたいですね」

リラックスやリフレッシュのほか、先に紹介したような高齢者見守り、防災拠点などとしても活用されている銭湯。
最近ではプロジェクターを使用して背景画の代わりに幾何学模様を映写する銭湯や、傷みやすい絵画をやめてカラフルなモザイクタイルで彩られた銭湯、場所に合わせて高級アメニティを用意する銭湯、ランナー歓迎のランニングステーション銭湯など、様々なアイデアや利用しやすい工夫を凝らした銭湯も登場し、人気を博しているという。
また、多くの人が楽しく利用できるように、東京都浴場組合では記念品を贈呈する「東京銭湯お遍路巡礼スタンプノート」の導入なども行っている。

増加の一途をたどる外国人客に対応するために、東京都浴場組合では英語が話せないスタッフも安心して接客でき、同時に外国人客も利用しやすい指差しマニュアルを作成。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は、「銭湯」という日本の観光資源を海外にアピールするチャンスでもある。
「体を清潔に保つだけでなく、人と人とのふれあい、人情も含めて発達してきた日本の入浴文化を見直していただき、これからも残していきたいと考えています。近所の交流の場としてもぜひご活用いただきたいですね」と話す石田さん。

東京都の銭湯の入浴料金は、大人(12歳以上)460円、中人(6歳以上12歳未満・小学生)180円、小人(6歳未満・未就学児)80円。遠くの温泉より、近所の銭湯。気軽にコミュニケーションをとり、地元の話などで盛り上がってみてはいかがだろう。

■東京都公衆浴場業生活衛生同業組合
http://www.1010.or.jp/

■HSP入浴法・効果
http://www.1010.or.jp/mag-column-09/

2018年 03月28日 11時05分