テレビ番組にも取り上げられた「破綻への道からの脱却」

隅田川のウォーターフロントに映える「イニシア千住曙町」の外観隅田川のウォーターフロントに映える「イニシア千住曙町」の外観

皆さんは、これから買う(もしくは、買った)マンションが「破綻する」ことなど想像できるだろうか?
「そんなことは起こりえない」と思っている方がほとんどだと思う。マンション購入時に契約内容で提示されている修繕積立金や管理費を払っていれば、将来にわたって安泰…そう思っているのが普通だろう。

だが実際は、購入当初に30年の長期修繕計画を策定しても、毎月払っているマンションの修繕積立金だけでは、当初の計画のまま修繕ができる例はほとんどないという。国土交通省が5年ごとに実施している「マンション総合調査」(2008年度)によれば、工事費をすべて修繕積立金で用意できたマンションは60.5%にとどまり、他は費用の一部あるいは大半を一時徴収金や金融機関からの借入金に頼っている。つまり「約40%のマンションが破綻への道を歩んでいる」ということになる。

イニシア千住曙町も例外ではなかった。実際に、シミュレーションをしてみると毎月の修繕積立金の額が低いため、将来の大規模修繕が出来ないことがわかったのだ。住民負担は、大きく増えていき35年後には現在の約3倍の修繕積立金を払わないと修繕できない状況となる。

イニシア千住曙町の場合は、だが、幸いであった。
管理組合が自らそのことに気づき、1期目から早々に手を打った。理事会で協議し、総会を開き、住民の総意で修繕積立金を現在の倍にして、以降35年間は値上げをしなくても建物が維持できる金額となるように設定をし直した。購入時と条件はかわるものの、将来を見据えて“修繕積立金の心配なく、安心して住み続けられるよう”にマンション管理を立て直したのだ。

また、管理組合は管理費用の見直しにも着手。住民から預かる管理費を適材適所に振り分ける精査を徹底的に行った。具体的には、
第1期
・空き駐車場区画の有料での一時利用(増収)
・共用部分の火災保険を長期契約・積立式に切り替え(支出減)
・電気契約方式の変更(支出減)
第2期
・有人ミニショップの廃止(支出減)
・管理委託業務費の減額(支出減)
・一般会計から積立金会計への年間600万円の振り込み(積立金会計の増収)
第3期
・共用部分の照明器具LED化(支出減)
・エレベーター保守点検会社の変更(支出減)

イニシア千住曙町のこの取り組みはメディアやテレビ番組にも多く取り上げられている。
全住戸515戸、住民約1670名の規模を誇るイニシア千住曙町…住民全体をまとめ、決断を下していかなくてはいけない管理組合をいったいどうやって運営しているのだろうか。
今回は、その管理組合の総会に参加させていただき、運営方法や現在の取り組みを取材させてもらった。

イニシア千住曙町第5期臨時総会

「イニシア千住曙町」の第5期臨時総会の様子「イニシア千住曙町」の第5期臨時総会の様子

今回の総会は、4月にせまった消費税増税を踏まえて管理費及び契約駐車場代を増税分と同率で改訂していく議案の承認を中心に審議された。

主な議案は以下、
1)管理費及び契約駐車場代の改定及び消費税率に自動連動の細則規定
2)高圧一括受電サービスの導入
3)コピー複合機の買取

印象的だったのは議案そのものが、どれも現在の状況を常に見据えながらも将来にわたってのメリットを想定して練られていることと、議案審議の際に住民の総意と納得感を非常に大切にしていることであった。

1)の消費税率の増税による改定は、今回の8%だけでなく将来にわたっての増減税措置に合わせた”外税化”も同時に議案に提示されている。これにより、税制改定によって今後何度も協議を重ねなくてすむこと、及び同時に管理費・契約駐車場代が消費税と連動していることの住民の意識づけにもつながっていくと感じた。

また、2)の高圧一括受電サービスの導入については、導入までの選定の経緯や検討の状況、どんなメリットがあり、移行までに個々住居がどういった対応をするのかを丁寧に説明されていた。全員のインフラにかかわる事項のため、何度も「不安や不明点があったら、質問してほしい」と促し、実際に活発に質疑応答が交わされた。

理事会が準備した事前資料も想定されるQ&Aまで細かに書かれており、充分に検討されていることがよくわかる。ほぼ3時間に及ぶ管理組合の臨時総会の審議事項は、その場に出席していた住民の賛成で可決された。

管理組合だけでない、管理会社・コンサルティング会社との連携あっての運営

総会の後、理事会の一部の方々と管理会社に別室でお話を伺った。お話を伺ったのは、第5期の理事長である守田さん、副理事長である児玉さん、滝井さん、松田さん、第1期から積極的に理事会をまわしてきた監事の應田さん、管理会社である大和ライフネクスト株式会社の持木さん、管理人の杉本さんである。

スムーズな管理組合運営のポイントは、まずは執行部の体制をしっかりして、責任と検討部署を明確にすることだ。
イニシア千住曙町では、毎月の理事会と各々の委員会(3名の各副理事長が、修繕などハード担当・ルール作りを含むソフト担当・防災・渉外担当と各委員会の長を務めている)で構成されている。担当制を敷くことで、理事会の運営がしっかりとタスク分けされ、共同代表制のようになっており、うまく運営がまわってきたという。20名の理事と3名の監事で成り立っている理事会であるが、出席率もよい。毎月の理事会のあと懇親を含めて飲み会も行っているようだ。
また、理事の任期を2年にし、半分を残し半分を入れ替えることで、継続的にマンション管理の質を担保していく考えだ。さらに、外部コンサルタントを入れることで、俯瞰して管理組合の取り組みを見てもらうという試みも始めている。

管理会社及び管理人さんからの情報収集も怠っていない。
管理人の杉本さんは、イニシア千住曙町を担当して管理会社の社員になったという。「ファミリー層が多いマンションなので、お子さんの顔などを見ながら声をかけるようにしています。お子さんも”ただいま”とか”行ってきます”など元気に声をかけてくれますよ」
総会の中でも、2月の大雪の際の対応について「管理人だけでは、なかなか人手がまわらない。マンションの皆さんに声がけして雪掻きをしたらどうでしょう」と提案をし、その場で管理組合の「スコップを購入する」という決議がなされた。マンションの日々管理をしている方からの具体的な意見や提案は、現実的な運営をスピードをもって行うためにも貴重である。

監事の應田さんは、「管理組合の役割は、まずはしっかり収支を支えること。ぎりぎりで収支を運営するのではなく、ゆとりを持ったうえで、住民に還元していくことを積極的にしていきたい」と話した。イニシア千住曙町では、マンション内でラジオ体操や餅つき大会なども行っており、ラジオ体操では2週間で延べ1000人が参加し、盛況だったという。「こういった活動をできるだけ増やしていければ…」というのが思いだ。

管理組合を運営していく…という意義と意味

そうはいっても、通常の仕事をしながら理事を務めるのは大変なのではないだろうか?
それぞれ理事の方々に管理組合の理事となる醍醐味をお聞きしてみた。

理事長の守田さんは「同じマンションを住む場所として選んでいるからか、年代や職業は違っても価値観が近いと感じることが多い。月に1回にコミュニケーションをとっていくのは楽しいです」また、滝井さんは、「行事などで住民の方とコミュニケーションがとれること、取り組みが終わった時の達成感ですね」と、また今回の総会でコピー機の買取提案を提案した児玉さんは「とにかく勉強になることが多い。理事をやっていなければ、わからなかったことだらけです」と話してくれた。一方、松田さんは「みなさんとても熱意をもって取り組まれているので、仕事との兼ね合いでなかなか思うように出席できない時もあり、申し訳なく思っていました」と語った。ただ、そう思うことで理事会の苦労を知り、今後理事を離れても管理組合の活動への理解と協力が深まっていくのだと思う。

最初からマンションの管理運営にあかるい人などいない、また全員が経営的な要素の多い管理組合運営のスキルをもっているわけでもない。それでも、自己の所有するマンションを大切に思うのであれば、まずは「知る」ことから始めることが必要だ。
イニシア千住曙町管理組合を取材して思ったのは、何より住民が「マンション管理」に積極的に取り組む姿勢を持つことが大切だということ。そして、できる限り早くマンション管理を見直し、理事会の取り組みが持続する仕組みをつくっていくことが肝要だと感じる。
住民が管理組合の総会に積極的に出席し、時には自ら理事に立候補することも大切なのでは、と思った。

■取材協力先 ホームページ/イニシア千住曙町公式HP
http://www.isa515.com/

第5期理事会の理事・副理事・監事の皆さんと管理会社の方々第5期理事会の理事・副理事・監事の皆さんと管理会社の方々

2014年 04月04日 10時12分