不動産の2015年問題とは、どのような現象を指しているのだろうか

コンピュータの「2000年問題」が大きな社会的関心を集めたことを覚えている方も多いだろうが、それ以降は社会のさまざまな現象に関連付けて「○○年問題」と呼ばれることが少なくない。いささか食傷気味の感が否めないものの、最近よく耳にするのが「2015年問題」だ。

これはもともと第一次ベビーブームによる団塊世代の人たちが、2015年までに65歳以上になることで、社会保障の負担と給付のバランスが崩れ始める問題を指している。生産人口が減り現役世代の負担が増していくのと同時に、2015年10月に予定される消費税率のさらなる引上げも、経済の先行きに不透明感を与えているだろう。一方で、国民の一人ひとりに番号を振る「マイナンバー導入」にあたって、システム開発を担当するIT技術者が極端な不足に陥ることも「2015年問題」とされている。

それ以外にもさまざまな分野で「2015年問題」が取り沙汰されているが、不動産業界もその例外ではない。不動産における「2015年問題」とは、世帯数の減少によって住宅の需要が減り、不動産価値の下落を招くというものだ。ただし、2008年に出された推計で「世帯総数が2015年をピークに、その後は減少に転じる」とされていたものが、2013年1月時点の新たな推計では、世帯総数のピークが2019年になっている(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。

世帯数の増減だけで見れば不動産の「2015年問題」は回避され、新たに「2019年問題」が生じた格好だが、もちろんそれで一安心できるわけではない。ちなみに2019年のピーク時における5,307万世帯が、2035年には4,956万世帯まで減少するというのが最新の推計だ。

不動産の需要が大きく変わりつつある

不動産をめぐる環境はこれから大きく変わる不動産をめぐる環境はこれから大きく変わる

2019年に世帯数がピークを迎えると予測されるのは、あくまでも全国の総数である。都道府県別に見れば、すでに減少が始まっているところもあるのだ。5年ごとに実施される国勢調査の結果を見ると、前回の2010年時点において秋田県と高知県で世帯数の減少があった。他の都道府県は増加だったものの、前々回の2005年に比べて微増にとどまった県は少なくない。

国立社会保障・人口問題研究所による調査では、最新データとして2013年1月に公表されたのが「全国推計」にとどまり、都道府県ごとの推計は2014年半ばまで待たなければならないようだ。そのため2009年12月に公表された推計データに依らざるを得ないが、そこでは2010年から2015年までの5年間に27道府県で世帯数が減少するとされていた。さらに2025年から2030年の間には、滋賀県と沖縄県を除く45都道府県で減少が見込まれているのだ。

最新の推計では世帯数のピークが2015年から2019年へ延びたとはいえ、国内の総人口の減少はすでに始まっている。世帯数の減少タイミングが遅くなったことの裏側で、単身世帯や夫婦だけの世帯が従来の予測以上に増加しているということだろう。2010年時点でも「単独」世帯と「夫婦のみ」世帯の合計が52.2%を占めていたが、2035年にはこれが58.4%に増え、さらに「ひとり親と子」世帯を加えると69.8%に達すると予測されている。未婚化の進行や離婚の増加、死別などにより、とくに65歳以上の「高齢者単独」世帯は2010年から2035年の間に1.53倍と急激な増加になるようだ。その一方、これまで新築一戸建て住宅やファミリータイプの新築マンションが販売ターゲットとしていた「夫婦と子」世帯は、全体の4分の1を割込むものとされている。総世帯数が減少していく中で、さらにその割合が減るのだから、マーケットの需要が大きく変化していくことに疑いの余地はないだろう。

人口の減少も年々深刻さを増していく

国立社会保障・人口問題研究所による推計において、市区町村別の数値が公表されるのは人口だけで、残念ながら世帯数は都道府県別にとどまる。2013年3月に公表された市区町村別人口推計を見ると、2040年の人口が現在の半数を割込むところも少なくない。中には3分の1程度まで減少する町村もあるようだ。

もちろん東京都でも、人口減少とは無縁でいられない。2040年の人口が2010年より増えると予測されているのは中央区、港区、新宿区、墨田区、江東区、練馬区、三鷹市、東村山市、稲城市の6区3市、それにもともとの人口が少ない御蔵島村だけだ。大阪市では西区、天王寺区、鶴見区、北区の4区、大阪府下では田尻町のみが増加となっている。大阪市内には2割以上の人口減少が見込まれている区も多いようだ。愛知県では、名古屋市で守山区と緑区だけが増加なのに対して、その周辺では安城市、大府市、高浜市、日進市、みよし市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、大治町、幸田町が増加すると予測されている。

いずれにせよ大都市圏でも大半の市区町村で人口の減少が避けられず、それに数年ずつ遅れながら世帯数の減少も進行していくことだろう。人口および世帯数の減少は街の活気を奪い、不動産市場も次第に縮小していく。現在もすでに住宅の数が充足し、逆に家余りが社会問題となっている中で、これから世帯数が減少に転じるのだ。従来は新築住宅の供給に依存する割合が大きかった不動産業界も、この現実から目をそらすことはできない。

変化を求められる不動産業界のあり方

国内における人口の減少、それに続く世帯数の減少は、不動産業界のあり方も大きく変える。市場規模の縮小を見越して、一部の住宅メーカーはすでに海外の不動産市場へ参入を始めているほか、国内では住宅ストックの活用に軸足を移している例も多いだろう。また、単身者世帯、高齢者世帯の割合の増加に合わせた商品企画も求められる。間取りの変化だけでなく、留守の時間が長くなりがちな単身者世帯のセキュリティ対策、高齢者向けのバリアフリーや「見守り」対応も重要さを増していく。さらに、顧客と長くお付き合いができる体制を作らなければ、需要が減退していく社会の中で生き残ることは困難だ。

新築分譲を手掛ける不動産会社であれば、販売後のアフターサービスがますます重要になるだろう。それも従来のような物件の定期点検や保証といった範囲にとどまらず、入居後の生活全般に対するフォローが欠かせない。インテリアのアドバイスやリフォームの提案、さらに将来の売却、場合によっては子育て相談や生活相談まで、住まいに関するトータルサービスを提供することが求められる。

仲介を手掛ける不動産会社であれば、整備されつつある中古住宅流通市場の中で、他社より優れたサービスを考えることが重要だ。契約時における的確な情報提供や物件調査のスキルアップはもちろんのこと、これまでのように「物件の引渡しが済んだらそれで終わり」というスタンスからは卒業しなければならない。入居後の生活全般をサポートするため、単なる不動産業からの脱却を目指すことも必要だろう。

インターネットを始めとするIT技術の発達によって、業務の進め方も現在よりさらに大きく変わっていくだろうが、人間関係が大切であることは将来も変わらないように願いたいものだ。消費者の立場からすれば「一生のお付き合いができる住まいのドクター」となれる担当者がいるかどうかが、不動産会社の選択基準になるかもしれない。

不動産にとって「2015年問題」なのか「2019年問題」なのかはさておき、不動産特有の事情も考えておきたい。他の分野における「○○年問題」の多くが一過性のものであるのに対して、不動産はそれからずっと続く事象の単なる始まりに過ぎないということだ。

2014年 01月07日 10時01分