自身が保有するマンションを売却する際には、まず不動産会社に査定依頼をするのが一般的です。しかし、複数の不動産会社に依頼した場合、査定額以外のどのような部分に注目するべきかわからない、という方も多いでしょう。
不動産会社選びにおいて重視する点は人によって異なりますが経験者の意見は、これから売却を検討している人にとって有益なものとなるはずです。
今回は、2022年に埼玉県ふじみ野市のマンションを売却し、現在は川越の注文住宅で暮らしながら、株式会社すんでの住宅購入検討者向けメンターとしても活動するこぱさんに自身の売却経験談を聞きました。
教えてくれた人
・X:@kobayan4444
・すんでメンターページ
購入時は資産性よりもランニングコスト重視

―最初に、マンション購入時のことを教えてください。
こぱ:2022年にふじみ野市内の大規模マンションを売却したのですが、購入は2015年の1月でした。
それまで東武東上線の東武練馬から徒歩12分ほどのマンションを借りていたのですが、そのマンションが坂の下にあったんですね。自分が転倒したこともあり、当時妊娠中だった妻にも良くないと思って引っ越すことを決めました。
そのころに上司が住んでいたプラウド新浦安を内見に行き、大規模マンションに惚れ込みました。そして、当時のふじみ野市の新築大規模マンションは、2014年6月に竣工し、引き渡しが始まっているのにも関わらず、売り切れていない状態で割安になっていたんです。2,970万円で3LDK74平米3階の中住戸・南西向きの物件があったため、内見してすぐに購入を決めました。
―購入時には、今後マンション価格が上昇するという見通しを持っていたのでしょうか?
こぱ:正直、そこまで考えていませんでした。むしろ、「この物件に永住する」と思っていたぐらいです。
先程お話ししたプラウド新浦安のような大規模物件の場合、ゲストルームやカフェラウンジなど居住者に嬉しいサービスが充実していますが、一方で管理コストが高そうだなと感じたため、極力そういう必要以上の設備がない方が良いと考えたのです。
もちろん当時、他の物件も検討しました。例えば、同じふじみ野市内の上福岡駅の西口側にフォレストレジデンスというマンションがあり、2,700〜2,800万と同程度の価格で少し駅から遠い分(徒歩30分)、専用送迎バスがあって、シアタールームやゲストルームもあり、共用部が豪華でした。
また、プラウドシティ志木本町もこれから売り出していくというタイミングだったので、少し待ってそちらを購入するという選択肢もありました。検討していた物件の売り出し価格は4,800万ほどで若干高いのですが、こちらの方が資産価値的には上だなと思っていました。
ただ、どちらも将来的に管理費などの負担が重くなりそうだと思い、最終的にふじみ野市内の大規模マンションを選んだという経緯があります。駐車場も平置きで附置率80%、共用部もキッズルームやスタディルーム、キッチンスタジオとロビーくらいだったので、こちらの方が管理コストが安くて良いなと判断しました。
つまり、当時の私は資産価値よりランニングコストを重視したのです。2,970万なら月々のローン支払い額が7万弱。それに管理費・修繕積立金・駐車場を合わせても10万に届かない程度です。東武練馬のマンションの家賃も同程度だったので、「通勤時間が伸びるだけで済むな」という判断がありました。
仲介手数料の値引きよりも保証内容を重視

―そして、コロナ禍やお子様の成長などによって住み替えを検討し始めたわけですね。
こぱ:本当は、マンションを保有したまま引っ越したかったのですが、注文住宅のローンを組む段階で銀行から既存のローンを解消してほしいと言われたため売却を決めました。媒介契約締結がローン条件で、引き渡しまでの売却が必須条件ではなかったため、まずは仲介会社選びを始めました。
売却にあたっては、まずは居住マンションの売買をよく手掛けていた野村の仲介さんに査定を依頼しました。また、現在住んでいる注文住宅を三井ホームさんに建てていただいたので、三井のリハウスさんにも査定を依頼し、比較検討しました。
―不動産会社を比較する際に査定額以外に注目したポイントはありますか?
こぱ:査定額は両社ともに3,320万〜3,360万円とほぼ同じ金額でした。また、どちらの営業マンの方の対応も良かったです。コロナ禍の中での売却でしたが、2社ともかなり迅速な対応をしてくれました。さらに2社ともに専任媒介契約で仲介手数料の値引きの提案がありました。ただ、私はいずれに頼む場合でも仲介手数料の値引きはお断りするつもりでいました。
というのも、仲介手数料を値引きしてもらうことで囲い込みにつながるようなことがあって欲しくないと考えたからです。もちろん大手の仲介会社ならそういうことはしないとは思いますが、より広く、購入検討者を集めてもらった方が早く売れるのではないか、と思い仲介手数料はそのための必要経費であると割り切っていました。背景には、居住マンションの売れ行きはあまり芳しくなく、数か月間は仲介サイトに掲載されて、徐々に値引きされていく状況を見ていたこともあります。
それらよりも私が重視したのは売却後の保証内容です。一般的な売買取引では物件引き渡し後の建物・設備の不具合については売主が責任を負うことが多くなっています。これに対して、三井のリハウスさんも野村の仲介さんも、不具合が発生した場合の保証が手厚くなっていました。比較したところ、三井のリハウスさんの方が設備保証の面で保証上限額が高く、優れていると考えました。
自分の保有物件は引き渡しの時点で、築8年経っていたので、ガスやお風呂、床暖房といった設備が引き渡し後に故障することも考えられます。そうした場合でも無償サポートを受けられる点が売主である私にとっても、購入者にとっても良いと思いました。
―「仲介手数料が安くなるのはありがたい」と考える人の方が多いと思いますが、そこは重視しなかったのですね。
こぱ:保証内容については実際にリスクが表面化したとき、その差が如実に現れると思うのです。
中古の戸建て住宅を購入した友人がいるのですが、その家にシロアリ被害が出ていたことがわかった際に仲介会社から数百万ほどの補修・駆除費用が支払われたといっていました。売主の立場からすると、それだけの金額を負担するリスクを仲介会社にカバーしてもらうことができるのは非常にありがたいですよね。買主側にとっても、設備の故障や建物の不具合を一定期間、仲介会社がサポートしてくれるのは心強いと思います。
このように私は、査定額や仲介手数料よりも保証の手厚さに注目して不動産会社を選びました。
―そうした着眼点や知識はどのように身につけたのでしょうか。
こぱ:2年半ほど売却したマンションの管理組合の理事長を務めてきたことが影響していると思います。マンション管理の有識者として知られるはるぶーさんが主催するマンション理事長勉強会(RJC48)にも参加していて、マンションの専有部でも様々なトラブルが起こるという話を聞いていたんです。
「BORDER5」という管理力を基準にマンションを選ぶことができるサイトに登録して、管理レベルの高いマンションにレベルアップさせたり、国土交通省による管理計画認定制度や、マンション管理業評協会によるマンション管理適正評価制度が始まろうというタイミングで、それに備えてマンション管理を見直したりした経験もあるため、マンションの管理、維持メンテナンスにとても興味関心があったんです。なので、引渡し後の保証が充実しているというのは私にとって必須条件でした。
実際には、引き渡し後に設備トラブルが発生してはいないので、仲介手数料を割引してもらった方が得だったかもしれません。ただ、幸いなことに売り出してすぐにキャッシュ一括でお支払いいただける方に売却し、迅速に現金化ができたため満足しています。
―かなりスムーズに売却できたのですね。
こぱ:査定では3,360万ぐらいと言われていたのですが、さらに120万円上乗せして購入時より500万円ほど高い3,480万円で売り出しました。そこから値引き交渉などもあり最終的な買主となった方に3,380万円で売却しました。
ローン残額が2,200万円ほどだったので、残債割れもせずに約1,000万円のマンション貯蓄ができたことになります。
当時、レインズマーケットインフォメーションで10件程度はさかのぼって、販売価格、坪単価をチェックしたのですが、高層階に比べて低層階はさほど値上がりしておらず販売実績も芳しくなかったのです。そうした中で、坪150万程度の価格で売却できたのは良かったと思いますね。
―売り出し価格を決める際には、かなり入念に情報収集をされたんですか?
こぱ:そうですね。ただそれでも今考えると少し保守的だったと思います。
3,580万円でもいけると思っていたのですが、担当者の方から「それは少し高すぎるんじゃないか」と言われてしまいました。最上階が当時それぐらいの値段だったからなのですが、2年経過した現在は3階でも3,500万円超えで売り出しをしていますね。
ただ、2年前の段階では少し野心的すぎるということで100万円下げて3,480万円で売り出し、そこからさらに150万円の値下げ希望に対して、100万円を許容して3,380円で売却という経緯ですね。
購入して頂いた方の支払いが現金一括だったので、住宅ローン審査の結果を待つ必要もありませんでした。早く売れれば、その分駐車場もあわせて月々25,000円程度支払っていた管理費・修繕積立金を支払う必要もなくなるので、総合的には満足しています。
―不動産会社の担当者の対応で良かった点などはありますか?
こぱ:先ほどお話しした通り、野村の仲介さんと三井のリハウスさんの2社で比較し、最終的に後者を選びましたが、営業担当の方のレベルはどちらも高かったと思います。
こちらの足りない知識も補ってくれましたし、どちらも誠実に過去の成約事例、将来の見通し、周辺物件の状況まで様々なデータを提供してくれたので、非常にわかりやすかったですね。
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プロジェクトオーナーとしての自覚を持つことが重要

―現在は、注文住宅にお住まいのことですが、建築にあたってマンションの売却資金なども活用されたのでしょうか?
こぱ:いえ、それぞれ別個のものとして進行しました。注文住宅の契約をした際に、10%の手付金を支払い、完成物件の引き渡しの前に銀行でローンを実行してもらうといった流れです。
現在の住居は2021年2月に契約したので、その段階で400万ほど支払いました。そして、あまり慌てたくなかったので、2022年2月に現在の住居に引っ越してから、売却活動を開始しました。
確か、火曜日に公開したら、木曜ぐらいに担当者の方から「今週の土日で5件内見の申し込みがありました」と連絡がありました。そのうちの一人が大変気に入ってくれて、翌日には買い付けを入れてくれるというスピード決着でしたね。
―これから売却を検討している方にアドバイスはありますか?
こぱ:まず信頼できて、きちんとやり取りができる営業担当がいる業者と契約した方が良いと思います。
また、これまでお話ししてきたように私は一貫して保証内容を重視してきました。なので、やはり自分が何を重視しているのか?を明確にすることが重要だと思います。仲介手数料の値引きを重視するのか、売り出し金額を高くしてくれることを重視するのか、色々あると思います。
これは注文住宅を建てるときも施主として心がけていたのですが「自分が主導するプロジェクトである」ということを意識しておいた方が良いと思います。不動産を購入するにしても売却するにしても担当者にお任せして、「いい塩梅でやっておいてくれ」というのはあまりおすすめしません。
それで上手くいく場合もあると思いますが、やはり「自分の資産を自分の判断で値付けして売る」という意識が重要になります。
売り出し価格や値下げ交渉への対応で不動産仲介会社の担当者に相談することもあるでしょう。ただ、最後の決断を下すのはプロジェクトオーナーで自分だと認識しておくべきだと思います。そうすれば、最終的に自分が何を重視するのか、ということも見えてくるのではないでしょうか。
―こぱさんは現在、株式会社すんでのメンターとしても活動されています。購入検討者の方々の中で、そうした意識を持っている方は多いのでしょうか?
こぱ:ご自身でしっかりとした判断軸を持っている方も半分ぐらいいる印象ですね。
「自分と妻は都内勤務で通勤を考えると候補はAとBとCです。その中でどういう優先順位の付け方が良いのでしょうか」とかなり具体的に相談してくる方もいます。こうした方々には私が注文住宅を建てる際に利用したチェックシートを共有してお話を聞くと喜ばれることが多いですね。
私自身が優先順位のつけ方に悩んだ経験があるので、価格や交通、教育、買い物、環境、間取りといった項目を30個ほどまとめたチェックシートを作り、それぞれについて点数をつけていくというやり方をしました。本気でやると1〜2時間程度かかるボリュームなのですが、考えを整理するのには良いと思います。

購入時であれば、内見に行くたびに点数をつけていき、最終的に総合点で判断するというやり方もできるのではないでしょうか。「すべてが完璧な物件」に出会うことは困難でしょうし、「この物件は広いんだけど日当たりが‥」「価格は良いのだけど少し不便だな‥」といった部分があると思います。
そうした自分の感覚の一つ一つを言語化、数値化することで、最終的な判断も下しやすくなるのではないでしょうか。
―現在、こぱさんは注文住宅にお住まいですが、マンションも非常にお好きだそうですね。おすすめのマンションなどはありますか?
こぱ:自分の好みでは、朝霞台のジェネシティ、志木のパークホームズ志木ステーションファースト、プラウドシティ志木本町などが挙げられます。一定程度の駅からの近さとスーパーなどの商業施設の近さ、大規模なマンションが好みです。
私が相談を受けている方々の多くは、5,000〜6,000万ぐらいの価格帯で検討しています。そうなると、東武東上線で言えば朝霞~志木ぐらいでも良い物件があると思います。2022年ぐらいまでは、志木より一つ池袋に近い朝霞台駅やもう一つ先の朝霞駅が狙い目だったのですが、現在は価格が上がってきています。
以前は、和光市などと比較すると、朝霞台や朝霞の物件が1〜2割安かったのですが、現在は値上がりして5,000万~6,000万前後で販売されるようになりつつあります。朝霞駅は以前は急行が停まらなかったのですが、2022年12月の東武東上線のダイヤ改正により、現在は急行も停車する駅になって価格が上がりつつあるのです。こうした鉄道のダイヤ改正などもマンション価格に影響がありますね。
資産性という意味では、やはり都心に近い方が優位ですが、物件の購入側にせよ、売却側にせよ「自分が何を重視するか」を先に明確にした方が選びやすくなると思います。
記事執筆