
記事執筆・監修
新川 優香
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
フリーランスライター・2級FP技能士。大学卒業後、不動産仲介業務に従事し売買を経験。その後は不動産賃貸の事務職を経て、現在は専属ライターとして活動。不動産売買仲介から賃貸仲介、物件管理まで幅広い分野の執筆経験を持つ。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、FP2級の資格を保有。
老後の住み替えは、定年後の暮らしや将来の介護、住まいの老朽化などをきっかけに検討を始めるのが一般的です。ほかにも、住み替えの理由はさまざまで、状況に応じた最適な住み替えフローを構築することが非常に重要です。
実際に、ホームズが住み替え経験者500人を対象に実施したアンケート調査では、住み替えを検討した理由として以下のようなさまざまな理由が上位にランクインしていました。
| 順位 | 住み替えを検討した理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 住んでいる家に対する不満(狭い、部屋数が足りない、古いなど) | 25.6% |
| 2 | 住宅の老朽化 | 24.5% |
| 3 | 子どもの誕生・成長 | 21.9% |
| 4 | 自分や家族の介護・高齢化 | 18.0% |
| 5 | コロナの影響による生活スタイルの変化 | 15.4% |
※参考:住み替えの理由、売却価格はどうだった?…住み替えに関する意識調査レポート|ホームズ
4位に「自分や家族の介護・高齢化」が入っていることから、老後の暮らしを見据えて住み替えを検討する人は一定数いると分かります。しかしながら、60代以降では資金計画や住み替え先の選び方を誤ると生活費の負担増や住みにくさにつながるおそれがあるので注意が必要です。
この記事では、老後の住み替え先の選択肢や後悔・失敗を防ぐポイントを解説します。
この記事で分かること
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【60代】老後の住み替え先の選択肢

60代以降の住み替え先は、現在の住まいを売却して新居を購入する方法だけではありません。暮らし方や資金状況によって、複数の選択肢があります。ここでは、60代以降に検討しやすい住み替え先の選択肢を紹介します。
- コンパクトなマンションに住み替える(ダウンサイジング)
- シニア向けの住宅に転居する
- リフォーム・建て替えする
- 子ども世帯と同居・近居する
老後の住み替えではどこに住むかだけでなく、将来の介護、生活費、医療機関へのアクセス、家の維持管理のしやすさまで考えることが大切です。
コンパクトなマンションに住み替える(ダウンサイジング)
老後の住み替えでは、現在よりもコンパクトな住まいへ移るダウンサイジングが選択肢の1つになります。子どもの独立後に部屋数を持て余している場合や、階段の上り下り、庭の手入れ、掃除の負担を減らしたい場合に検討しやすい方法です。
ダウンサイジングによる住み替えのメリット
ダウンサイジングによる住み替えは、老後の暮らしにあわせて住まいの広さや管理の負担を見直せる点がメリットです。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 掃除や庭の手入れなど、日常的な管理負担を減らせる
- 階段の上り下りや広い家の移動負担を軽減しやすい
- 駅や病院、スーパーに近い立地を選べば生活利便性が高まる
- 現在の住まいを売却することで、住み替え資金を確保できる場合がある
広い一戸建てや築年数の古い家では、掃除や修繕、庭の管理に手間がかかります。住まいをコンパクトにすることで、日々の負担を抑えやすくなるでしょう。また、車の運転を控える将来を見据えるなら、徒歩や公共交通機関で生活しやすい立地を選ぶことも重要です。
ダウンサイジングによる住み替えのデメリット
ダウンサイジングによる住み替えには、住まいが狭くなることによる不便さや固定費の増加といったデメリットもあります。具体的なデメリットは以下のとおりです。
- 生活スペースや収納が狭くなる
- 家具や荷物を整理・処分する必要がある
- マンションでは管理費・修繕積立金・駐車場代がかかる
- 住み慣れた地域を離れると、環境の変化にストレスを感じる場合がある
特に注意したいのは、物件価格だけで判断してしまうことです。購入費用を抑えられても、管理費や修繕積立金などの固定費が増えれば、老後資金に影響する可能性があります。老後の住み替え失敗を避けるには、入居後の生活費まで含めて比較することが大切です。
ダウンサイジングによる住み替えの注意点
ダウンサイジングを検討する際は現在の暮らしやすさだけでなく、10年後・20年後も無理なく暮らせるかを確認する必要があります。特に以下の点に注意しましょう。
- 坂道や段差が多くないか
- 病院・スーパー・公共交通機関を利用しやすいか
- 収納量や生活動線が老後の暮らしにあっているか
- 現在の住まいが想定どおりの価格で売れるか
- 売却代金に頼りすぎた資金計画になっていないか
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、売却価格や新居での生活費を楽観的に見積もってしまうことです。住み替え資金を現在の住まいの売却代金に頼る場合、まずは資産価値を把握し、購入費用・引越し費用・税金・老後資金を含めた計画を立てましょう。
マンションに住み替えた人の体験談
当サイトの過去記事から実際にマンションへの住み替えを行った人の体験談を紹介します。Nさんは、子どもの教育環境を変える目的で旧居である都内の新築マンションを賃貸に出し、郊外の中古マンションへ住み替えました。賃貸に出した理由として、「旧居であるマンションに愛着があった」「手放すのがもったいないと思った」「売却代金なしでも新居購入の見立てが合った」と語っています。
しかし、Nさんは賃貸に出す際に以下のようなトラブルが発生してしまいました。
- 銀行から住宅ローン残債の一括請求を求められる
- 不動産会社から賃貸ではなく売却を強く促される
一般的に住宅ローン残債のある物件は賃貸に出せませんが、例外として不動産投資ローンに借り換えることで可能になります。相談先の銀行はその提案をせず、Nさんは途方に暮れてしまったようです。さらに、仲介を依頼した不動産会社は賃貸に消極的な背景があるのか、売却を強く促され取り合ってもらえなかったそうです。
この体験談から、自分でもある程度の情報収集をしておくことや、知識を付けておくことの重要性が分かります。老後の住み替えで安定した生活を考えるのであれば、住み替え時に旧居を賃貸に出すか売却するかは慎重に判断することをおすすめします。
シニア向けの住宅に転居する
老後の住み替え先として、シニア向け住宅に転居する方法もあります。シニア向け住宅とは、高齢者が暮らしやすいようにバリアフリー設計や見守りサービス、生活相談サービスなどを備えた住まいのことです。代表的な選択肢には、賃貸で入居するサービス付き高齢者向け住宅、購入して資産として持てるシニア向け分譲マンション、介護サービスが充実した有料老人ホームなどがあります。
物件によって入居条件や費用、受けられるサポート内容は大きく異なるため、現在の健康状態だけでなく、将来的な介護の可能性まで見据えて選ぶことが大切です。特に60代は、まだ自立した生活を送れる人も多いため、将来、介護が必要になったときに住み続けられるかまで確認しておく必要があります。
シニア向けの住宅に転居するメリット
シニア向けの住宅に転居するメリットは、老後の暮らしに配慮された環境で生活しやすいことです。具体的なメリットは以下のとおりです。
- バリアフリー設計の住まいを選びやすい
- 安否確認や生活相談などのサポートを受けられる場合がある
- 医療機関や介護サービスと連携している物件もある
- 同世代の入居者が多く、交流の機会を持ちやすい
一般的な一戸建てやマンションと比べて段差の少ない床や手すり、緊急通報設備などが整っている物件もあります。一人暮らしに不安がある場合や、将来的な体調変化に備えたい場合は、安心感を得やすい住み替え先といえるでしょう。
シニア向けの住宅に転居するデメリット
シニア向け住宅は費用や生活ルールの面で注意が必要です。具体的なデメリットは以下のとおりです。
- 一般的な賃貸住宅や分譲住宅より費用が高くなりやすい
- 家賃や管理費のほか、サービス費・食費などがかかる場合がある
- ペット・来客・外泊などに制限があるケースがある
- 介護度が高くなると住み続けられない場合がある
シニア向け住宅だからといって、すべての介護状態に対応できるとは限りません。入居時は自立していても、認知症の進行や介護度の上昇によって、介護施設などへ再度住み替えが必要になることもあります。入居時の安心感だけで判断すると、老後の住み替え失敗につながるおそれがあるので注意が必要です。
シニア向けの住宅に転居する場合の注意点
シニア向け住宅を選ぶ際は、費用とサポート内容を具体的に確認しておくことが大切です。特に以下の点を確認しましょう。
- 初期費用と月額費用はいくらか
- 基本料金に含まれるサービスはどこまでか
- 追加費用が発生する条件は何か
- 介護度が上がった場合も住み続けられるか
- 退去条件や契約形態はどうなっているか
介護付き・見守り付きといった表現だけで判断すると、入居後に想定以上の費用がかかる可能性があります。老後の住み替えに潜む恐ろしい罠を避けるためにも、パンフレットの印象だけで決めず、契約内容や将来の支出まで確認しましょう。
リフォーム・建て替えする
現在の住まいに愛着があり、住み慣れた地域を離れたくない場合は、リフォームや建て替えも選択肢になります。段差の解消や手すりの設置、断熱性・耐震性の向上などを行えば、老後も暮らしやすい住まいに近づけられます。
ただし、買い物施設や病院、公共交通機関が遠いなど、立地そのものに不便さがある場合は注意が必要です。建物を快適にしても、車がないと生活しにくい環境は変わりません。老後の住み替え失敗を防ぐには建物の状態だけでなく、将来の生活動線まで含めて判断することが大切です。
リフォーム・建て替えするメリット
リフォーム・建て替えするメリットは、住み慣れた家や地域で暮らし続けられることです。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 住み慣れた地域で生活を続けられる
- 近隣との関係や生活リズムを維持しやすい
- バリアフリー化や間取り変更で老後の暮らしにあわせられる
- リフォームなら必要な箇所から段階的に工事できる
- 建て替えなら耐震性や断熱性を根本から見直せる
たとえば、玄関や浴室の段差をなくす、廊下やトイレに手すりを設置する、寝室を1階に移すなどの工夫により、日常生活の負担を軽減しやすくなります。新しい環境に慣れる負担を避けたい人にとっては、住み替え以外の現実的な選択肢になるでしょう。
リフォーム・建て替えするデメリット
リフォーム・建て替えには費用や工事中の生活負担が生じます。具体的なデメリットは以下のとおりです。
- 工事内容によっては費用が高額になる
- 建て替えでは解体費用や仮住まい費用もかかる
- 工事中に生活動線が制限される
- 古い家では追加工事が発生する場合がある
- 法律や建物の構造上、希望どおりに工事できないことがある
特に、耐震補強や断熱改修、間取り変更まで行う場合は、当初の想定より費用が膨らむことがあります。老後資金を大きく取り崩してしまうと、医療費や介護費に備えにくくなるため、工事費以外の支出も含めて資金計画を立てることが重要です。
リフォーム・建て替えの注意点
リフォーム・建て替えを検討する際は、建物だけでなく立地も含めて判断しましょう。確認したいポイントは以下のとおりです。
- 周辺に坂道や階段が多くないか
- 病院・スーパー・公共交通機関を利用しやすいか
- 車を手放しても生活できるか
- 再建築や増改築に制限がないか
- 売却して住み替える場合と比べて費用面で無理がないか
室内をバリアフリー化しても、外出や通院が負担になる環境では、老後の暮らしに不便さが残る可能性があります。また、古い家では建築基準法や接道義務の影響で、建て替えが難しいケースもあります。リフォーム費用と売却して住み替える場合の費用を比較し、どちらが老後の暮らしにあうか慎重に判断しましょう。
子ども世帯と同居・近居する
老後の住み替えでは、子ども世帯との同居や近居も選択肢になります。同居は同じ家で暮らす方法、近居は徒歩圏内や車・電車で行き来しやすい距離に住む方法です。家族のサポートを受けやすい一方で、生活リズムや費用負担の違いがトラブルにつながることもあります。
子ども世帯と同居・近居するメリット
子ども世帯と同居・近居するメリットは、日常生活で助け合いやすいことです。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 体調不良時や緊急時に家族へ相談しやすい
- 買い物や通院などをサポートしてもらいやすい
- 孤立感を抱きにくい
- 孫の成長を近くで見守れる
- 自治体の同居・近居支援制度を利用できる場合がある
近くに家族がいる環境は、老後の安心感につながります。特に一人暮らしに不安がある場合や、将来的な介護を見据えている場合は、同居・近居によって心理的な負担を軽減しやすくなるでしょう。
また、自治体によっては同居・近居を支援する制度を設けている場合があります。たとえば東京都新宿区では、一定の要件を満たすことで、子育て世帯とその親世帯が近居・同居する際の引越し代や礼金、仲介手数料などの初期費用の一部について助成を受けられます。
補助制度の有無や対象条件は自治体によって異なるため、子ども世帯との同居・近居を検討する際は、住み替え先の自治体情報も確認しておきましょう。
※参考:多世代近居同居助成(新宿区)
子ども世帯と同居・近居するデメリット
家族との距離が近くなることで、かえってストレスが生じる場合もあります。具体的なデメリットは以下のとおりです。
- プライバシーを確保しにくい
- 生活リズムや価値観の違いで摩擦が生じやすい
- 食事・家事・育児方針などで意見が分かれることがある
- 子ども世帯の近くに限定すると物件選びの幅が狭くなる
- 二世帯住宅の購入やリフォームには費用がかかる
特に同居では、親世帯と子ども世帯の生活空間が近いため、事前にルールを決めておかないと不満がたまりやすくなります。子どもの転勤や家族構成の変化によって、将来的に想定していたサポートを受けにくくなる可能性もあるので注意が必要です。
子ども世帯と同居・近居する場合の注意点
子ども世帯との同居・近居を検討する場合、住み替え前に役割分担や費用負担について話し合っておきましょう。確認したいポイントは以下のとおりです。
- 介護や通院の付き添いをどこまで頼るか
- 家事や買い物の分担をどうするか
- 住宅購入費・リフォーム費・生活費を誰が負担するか
- 孫の世話をどこまで引き受けるか
- 同居の場合、生活空間やプライバシーをどう確保するか
「家族だから大丈夫」と考えて細かい部分を決めずに進めると、入居後に負担の偏りや金銭トラブルが生じる可能性があります。また、近居の場合でも家族のサポートだけに頼らず、病院や買い物施設、公共交通機関へのアクセスを確認することが大切です。家族との距離感と自立した生活のしやすさを両立できるかを基準に判断しましょう。
【比較】老後の住み替えはマンションと一戸建てどっちがいい?

老後の住み替え先として、マンションと一戸建てのどちらがよいかは一概に断言できません。管理のしやすさや生活利便性を重視するならマンション、広さや自由度を重視するなら一戸建てが向いている場合もあります。
国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査報告書」によると、二次取得者(※)のうち「60歳以上」の割合は分譲集合住宅が60.8%、注文住宅が57.0%と高くなっています。一方、分譲一戸建て住宅は16.7%にとどまっており、60歳以上では新築の建売一戸建てよりも、マンションや注文住宅、中古住宅を選ぶ傾向が見られます。
※二次取得者とは、これまでに一度以上持ち家を購入したことがあり、今回新たに住み替えを行う世帯主や購入者のことです。
この結果から、老後の住み替えではマンションか一戸建てかだけでなく、管理のしやすさ、立地、建物の状態、将来の介護や生活動線まで含めて判断することが重要といえます。老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、今の理想だけで選び、将来の体力や生活費の変化を見落としてしまうことです。
老後の住み替えにおけるマンションと一戸建ての主な判断基準を比較すると以下のとおりです。
| 項目 | マンション | 一戸建て |
|---|---|---|
| 管理の手軽さ | 管理組合や管理会社が対応する。共用部分の清掃や修繕の負担が少ない | 自分ですべての管理・修繕が必要になる。庭や外壁の手入れも含め、負担が大きくなることがある |
| セキュリティ | 監視カメラ、オートロックなどの設備が整っており、安全性が高い | 自己管理のため、門扉や防犯カメラなどを設置する必要がある |
| プライバシー | 隣室との壁が薄い場合があり、音漏れや生活音の問題が生じる可能性がある | 隣家との距離があり、プライバシーを確保しやすい |
| 維持費用 | 管理費や修繕積立金が毎月かかるが、大規模修繕などは管理組合が実施する | 修繕やリフォームは自費負担になる。修繕時期の調整や計画が必要になる |
| 住環境 | 駅近や便利な立地にあることが多く、交通や買い物がしやすい | 自然環境に恵まれた地域に多いが、交通の便や利便性に欠けることがある |
| 資産価値 | 立地などの好条件を除くと、一般的に資産性は低い | 土地や建物の資産性が高い |
老後の住み替えでは、自分の体力や経済状況、生活の優先順位を考慮して、マンションと一戸建てのどちらが自分にあっているかを検討することが大切です。
一戸建てに住み替えるメリット・デメリット
老後に一戸建てへ住み替える場合、マンションにはない自由度がある一方で、維持管理の負担も大きくなります。主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 暮らしの自由度 | ペット飼育やガーデニング、リフォームをしやすい | 管理や修繕を自分で手配する必要がある |
| プライバシー | 隣家との距離を確保しやすい | 防犯対策は自己管理になりやすい |
| 住環境 | 庭や広い室内を確保しやすい | 掃除・庭の手入れ・雪かきが負担になる場合がある |
| 立地 | 静かな環境を選びやすい | 郊外では車がないと生活しにくいことがある |
| 資産性 | 土地が資産として残る | 建物の老朽化や修繕費に注意が必要 |
一戸建ては、音や生活ルールを気にせず暮らしやすく、趣味やペットとの生活を重視する人に向いています。バリアフリー化や断熱リフォームなど、ライフスタイルにあわせて住まいを調整しやすい点も魅力です。ただし、老後は掃除、庭の手入れ、外壁・屋根の修繕、防犯対策などが負担になる可能性があります。
老後の一戸建て住まいで後悔しないためには、広さや自由度だけでなく、維持管理と生活利便性まで確認することが大切です。
一戸建てに住み替えた人の体験談
当サイトのコラムでは、子どもの成長をきっかけに住んでいた一戸建てを売却し、広い新築一戸建てへ住み替えたSさんの体験談を紹介しています。
【Sさん(40代男性、会社員)の状況】
| 家族構成 | 家族4人暮らし(妻38歳、長女11歳、次女9歳) |
| 売り出しから売却までにかかった期間 | 約1年 |
| 売却年月 | 2014年4月 |
Sさんは45歳のとき、家族4人で暮らしていた築35年の一戸建てが手狭になったことや、耐震性への不安から住み替えを決意しました。建て替えや賃貸に出す方法も検討しましたが、建て替えは費用や仮住まいの負担が大きく、賃貸も周辺相場との兼ね合いで借り手が見つかりにくい可能性がありました。そのため、家を売却して同じ地域の新築一戸建てへ住み替えることを選んでいます。
売却活動では、売り出しから成約まで約1年かかりました。半年間ほとんど内覧がない時期もありましたが、不動産会社から定期的な報告を受けながら売却を進め、最終的には買主の値下げ交渉に応じて契約が成立しています。この体験談は、老後の住み替えそのものではありませんが、築年数の経過した家を売る難しさや、建て替え・賃貸・売却を比較する重要性が分かる事例です。60代以降の住み替えでは、売却に時間がかかると資金計画が崩れるおそれもあります。現在の住まいを売却して住み替える場合は早めに査定を受け、売却価格や売却期間の目安を把握しておきましょう。
老後の住み替えを考えるタイミング

老後の住み替えは、「まだ先の話」と考えているうちに、体力や資金面の問題から動きづらくなり、タイミングを逃してしまうケースがあります。実際には、家の老朽化や生活環境への不満、子どもの独立、ライフスタイルの変化などをきっかけに住み替えを検討する人は少なくありません。
ここでは、老後の住み替えを考えやすい主なタイミングとして、以下を解説します。
- 現在の暮らしに不満が生じたタイミング
- 現在の住まいが老朽化したタイミング
- 子どもが独立したタイミング
- 定年退職を間近に控えるタイミング
現在の暮らしに不満が生じたタイミング
老後の住み替えを考えるきっかけとして多いのが、現在の暮らしへの不満です。冒頭で紹介したアンケートでも、「住んでいる家に対する不満(狭い、部屋数が足りない、古いなど)」が25.6%で1位となっています。
若い頃は気にならなかった間取りや立地でも、年齢を重ねると不便に感じやすくなります。たとえば、階段の上り下りが負担になる、収納が使いづらい、冬場の寒さが厳しい、病院やスーパーが遠いなど、日常生活の小さな不満が積み重なるケースは少なくありません。
また、車が前提の生活環境では、将来的に運転が難しくなった際に生活そのものが不便になる可能性があります。老後の住み替え失敗を防ぐには、「今は問題ない」ではなく、「10年後も暮らしやすいか」などの視点で住環境を見直すことが重要です。
現在の住まいが老朽化したタイミング
住宅の老朽化も、住み替えを検討する大きな理由の1つです。冒頭で紹介したアンケートでも、「住宅の老朽化」は24.5%で2位となっています。築年数が経過した一戸建ては修繕やリフォームに大きな費用がかかることが多く、これをきっかけに管理負担の少ないマンションや、築浅・耐震性の高い一戸建ての住み替えを選ぶ人が増えています。
特に、高齢になると自分でメンテナンスをするのが難しくなるため、管理費を払ってプロに任せることができるマンションは人気です。さらに、新しい住宅はバリアフリー設計、最新設備、省エネ対策などが施されているため、快適さや経済的なメリットも享受できます。
子どもが独立したタイミング
子どもの独立をきっかけに、住み替えを検討する人もいます。冒頭で紹介したアンケートでも、「子どもの誕生・成長」は21.9%で3位に入っています。子どもが家を出た後は、使わない部屋が増えたり、夫婦2人では家が広すぎたりするケースがあります。広い一戸建ては掃除や管理の負担も大きく、老後になるほど体力的な負担を感じやすくなるでしょう。
そのため、子どもの独立を機に、コンパクトな住まいへダウンサイジングしたり、生活利便性の高いエリアへ住み替えたりする人も少なくありません。
定年退職を間近に控えるタイミング
定年退職が近づき、生活スタイルが変わることをきっかけに住み替えを考えるケースもあります。定年後は通勤がなくなり、自宅で過ごす時間が長くなるため、住環境への満足度が生活の快適さに直結しやすくなります。また、収入が現役時代より減少するケースも多く、住宅ローンや維持費の負担を見直すタイミングにもなるでしょう。
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、「退職後に考えればいい」と先延ばしにしてしまうことです。定年後は住宅ローン審査や体力面で不利になる場合もあるため、住み替えは働いているうちから準備を進めることが重要です。
老後の住み替えで考慮すべき資金計画

老後の住み替えでは、住み替え先の購入費用だけでなく、現在の住まいの売却価格、住宅ローン、退職金・預貯金の残し方まで含めて資金計画を立てる必要があります。特に確認したいポイントは以下のとおりです。
- 住宅ローンを利用できるか
- 退職金や預貯金をどの程度残すか
- 現在の住まいがいくらで売れるか
- 売却代金だけで住み替え費用をまかなえるか
- 引越し費用や税金、入居後の維持費も考慮しているか
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、新居の購入費用だけを見て判断し、住み替え後の生活費や医療費、介護費への備えが不足してしまうことです。ここでは、老後の住み替えで考慮すべき資金計画を紹介します。
収入が安定しているなら住宅ローンを組む
定年退職後に年金や他の安定した収入が見込まれる場合、住宅ローンを利用して新しい住まいを購入するのは有力な選択肢です。多くの金融機関では、「申し込み時に70歳未満、完済時に80歳未満」といった条件を設けています。これにより、60代でも住宅ローンを利用できます。ただし、返済期間が短くなり、借入額は少なくなる点に注意しましょう。
また、現在の住まいを売却しても住宅ローンが残る場合、残債と新居の購入費用をまとめて借り入れる、住み替えローンを検討する方法もあります。通常のローンより審査が厳しくなる傾向にあるため、利用できるかどうかを早めに金融機関へ確認しておきましょう。子ども世帯との同居を前提にする場合は、親子リレーローンやペアローンを利用できるケースもあります。とはいえ、老後の住み替えで無理に借入額を増やすと、定年後の住み替え失敗につながるおそれがあります。返済額は、年金収入や生活費、医療費への備えを踏まえて無理のない範囲に抑えることが大切です。
退職金や預貯金はなるべく残す
退職金や預貯金は、老後の生活を安定させるために重要な資産です。将来の予期しない出費や医療費などに備えて、一定額を手元に残しておきましょう。年金受給額と現在の生活費を比較できれば、不足分を補うための貯蓄目標を把握することが可能です。
仮に毎月の生活費に25万円必要で、年金収入が20万円の場合、毎月の不足額は5万円です。これを年間で計算すると60万円になり、老後を65歳から90歳までの25年間と見積ると、1,500万円(60万円×25年)が必要になります。老後に備えて最低限残すべき貯蓄額を確保し、そのうえで住宅購入や住み替えに必要な資金を計画的に使うことが大切です。
現在の住まいの資産価値を把握して少しでも高く売る
老後の住み替えでは、現在の住まいをいくらで売れるかが資金計画に大きく影響します。売却価格を低く見積もりすぎると選択肢が狭くなり、反対に高く見積もりすぎると購入計画が崩れるおそれがあります。
ホームズの「住み替えに関する意識調査レポート」では、住み替え前の住居について、購入時の価格と売却時の価格差を調査しています。結果は以下のとおりです。
| 購入時と売却時の価格差 | 割合 |
|---|---|
| 購入時の価格より、売却価格の方が高かった | 35.5% |
| 購入時の価格と、売却価格は同じくらいだった | 18.5% |
| 購入時の価格より売却価格は下がったが、想定していた範囲内だった | 22.3% |
| 想定以上に購入時の価格より売却価格が下がったが、納得できる範囲だった | 11.6% |
| 納得できないくらいに、購入時の価格より売却価格が下がった | 6.2% |
| 分からない・覚えていない | 5.9% |
※参考:住み替えの理由、売却価格はどうだった?…住み替えに関する意識調査レポート|ホームズ
同調査では「購入時の価格より、売却価格の方が高かった」と回答した人が35.5%、「購入時の価格と、売却価格は同じくらいだった」と回答した人が18.5%でした。つまり、半数以上の人が購入時と同程度以上の価格で売却できていることになります。
一方で、購入時より売却価格が下がった人も一定数います。特に、老後の住み替えでは売却代金を新居購入や生活資金に充てるケースもあるため、想定より安く売れると資金計画に影響します。現在の住まいを少しでも高く売るには、早めに資産価値を把握し、複数社に査定を依頼することが大切です。不動産会社によって査定額や販売戦略は異なるため、1社だけで判断すると適正価格を見誤る可能性があります。
ホームズの一括査定なら、複数の不動産会社へまとめて査定依頼ができます。査定価格や各社の強みを比較できるため、老後の住み替えに向けて現在の住まいをどのくらいで売れそうか把握したい人はぜひ参考にしてください。
老後の住み替えで後悔・失敗しないためのポイント

ここでは、老後の住み替えで後悔・失敗しないためのポイントを紹介します。
- 余裕のあるスケジュールを立てる
- 安全性・快適性・利便性を考慮して住み替え先を選ぶ
- 無理のない資金計画を立てる
- 自分にあった信頼できる不動産会社を選ぶ
老後の住み替えでは、新居先選びだけでなく、売却の進め方や資金計画を誤らないことが重要です。老後の住み替え失敗を防ぐには、早めに動き出し、複数の選択肢を比較しながら判断することが大切です。
余裕のあるスケジュールを立てる
住み替えを成功させるには、余裕のあるスケジュールを立てることも重要です。ホームズの調査では、売却時に「もっとこうすれば良かった」と思う点として、以下の結果が得られています。
| 順位 | もっとこうすれば良かったと思うポイント | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 余裕のあるスケジュールを立てる | 24.1% |
| 2 | 価格や担当者を、複数の不動産会社でしっかり比較する | 21.0% |
| 3 | 売れないからといって安易に価格を下げない | 20.8% |
| 4 | 不動産会社の言うことが正しいかどうか判断できるようにする | 19.8% |
| 5 | 不動産会社に任せきりにせず、自分でも情報収集する | 18.8% |
※1〜5位を抜粋
※参考:住み替えの理由、売却価格はどうだった?…住み替えに関する意識調査レポート|ホームズ
現在の住まいを売却して新居を購入する場合、査定依頼、媒介契約、売却活動、売買契約、引越しなど多くの手続きが発生します。一般的に査定依頼から成約までには3〜6ヶ月ほどかかるとされているため、売却を希望する場合は少なくとも半年前には行動を開始するのが賢明です。余裕があれば、急いで売却する際に起こりがちな相場より低い価格での売却を避けられます。
安全性・快適性・利便性を考慮して住み替え先を選ぶ
老後の住み替え先は、価格や広さだけでなく、安全性・快適性・利便性の3つを軸に選ぶことが大切です。若い頃は問題なく暮らせた住環境でも、年齢を重ねると段差や寒さ、買い物の不便さが負担になる場合があります。
| 判断軸 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 安全性 | 耐震性、段差の少なさ、防犯性、災害リスク、夜間の歩きやすさ |
| 快適性 | 断熱性、遮音性、日当たり、室内動線、収納量、バリアフリー性 |
| 利便性 | 病院、スーパー、公共交通機関、金融機関、行政窓口へのアクセス |
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、「今は大丈夫」と安易な考えだけで選んでしまうことです。たとえば、駅から遠い一戸建てや坂道の多い地域では、将来的に車を手放したときに生活しづらくなる可能性があります。住み替え先は現在の希望だけでなく、10年後・20年後も無理なく暮らせるかを基準に選びましょう。
無理のない資金計画を立てる
無理のない資金計画を立てることは、老後の住み替えを成功させるうえで不可欠です。主に以下の項目を考慮する必要があります。
- 新しい住まいの購入費用
- リフォーム費用
- 引越しにかかる費用
- 老後の生活費・医療費
退職金や預貯金を使いすぎないようにし、余裕を持った資金計画を立てましょう。また、年金や他の収入源を考慮に入れたうえで、住宅ローンを利用する場合には、無理のない返済プランを設計することが重要です。ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することで、より安全かつ現実的な計画を立てられます。
自分にあった信頼できる不動産会社を選ぶ
老後の住み替えでは、自分にあった信頼できる不動産会社を選ぶことも重要です。現在の住まいを売却する場面だけでなく、新居探し、住み替えスケジュールの調整、資金計画の相談など、さまざまな場面で専門的なサポートが必要になります。
| 場面 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 売却 | 査定価格の根拠、販売戦略、売却実績、担当者の対応力 |
| 購入 | 希望条件にあう物件提案、周辺環境の説明、将来の暮らしやすさ |
| 住み替え全体 | 売却と購入のタイミング調整、資金計画、税金・諸費用の説明 |
ホームズの調査でも、売却時にしておけば良かったこととして「価格や担当者を、複数の不動産会社でしっかり比較する」が21.0%で2位に入っています。また、「不動産会社の言うことが正しいかどうか判断できるようにする」「不動産会社に任せきりにせず、自分でも情報収集する」も上位に挙がっています。不動産会社によって査定価格や販売戦略、担当者との相性は異なります。1社だけで判断すると相場より低い価格で売却してしまったり、希望にあわない住み替え先を選んでしまったりする可能性があります。老後の住み替えで後悔しないためにも、複数社の査定結果を比較検討しながら、自分にあった相談先を見極めることが大切です。
老後の住み替えに関するよくある質問

ここでは、老後の住み替えに関するよくある質問を紹介します。
- 老後は持ち家か賃貸どっちがいい?
- 老後の住み替えで後悔しがちな失敗事例は?
- 老後に自己資金がなくても住み替えはできる?
老後は持ち家か賃貸どっちがいい?
老後の住み替えで持ち家か賃貸のどちらが良いかは、一概にいえません。それぞれのメリットを比較したうえで、自分にあった選択肢を見つけましょう。
| 選択肢 | メリット |
|---|---|
| 持ち家 | 資産価値を保持できる/家賃支払いの心配がなくなる/リフォームや改装が自由にできる |
| 賃貸 | 移動の柔軟性が高い/維持管理の負担が軽い |
将来の健康状態や生活スタイルの変化、経済状況などを踏まえて慎重に判断しましょう。
老後の住み替えで後悔しがちな失敗事例は?
老後の住み替えで後悔しがちな失敗は、住まいそのものではなく暮らしの変化を十分に想定しなかったケースです。たとえば、次のような失敗が考えられます。
- 子どもの近くに住み替えたものの、生活リズムがあわず負担になった
- 郊外の一戸建てに住み替えたが、車を手放した後に外出しづらくなった
- 駅近を重視した結果、騒音や人通りの多さがストレスになった
- 管理費や修繕積立金、サービス費などの固定費を見落としていた
- 以前の住まいを売却せず賃貸に出したが、空室や修繕費が負担になった
老後の住み替え失敗を防ぐには、価格や間取りだけでなく、生活リズム、近隣環境、固定費、将来の移動手段まで確認することが大切です。
老後に自己資金がなくても住み替えはできる?
老後に自己資金が少ない場合でも、現在の住まいの売却代金や住み替えローンを活用して住み替えできる可能性があります。代表的な方法は以下のとおりです。
| 方法 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現在の住まいを売却する | 売却代金を新居購入や引越し費用に充てる | 売却価格によって住み替え先の選択肢が変わる |
| 住み替えローンを利用する | 現在のローン残債と新居の購入資金をまとめて借りる | 通常の住宅ローンより審査が厳しくなりやすい |
| 賃貸へ住み替える | 購入費用を抑えて住み替えられる | 家賃の支払いが続き、入居審査もある |
ただし、自己資金が少ない状態で無理に住み替えると、入居後の生活費や医療費に余裕がなくなるおそれがあります。まずは現在の住まいがいくらで売れるかを確認し、売却代金・ローン残債・引越し費用・新居の維持費を整理したうえで判断しましょう。
老後の暮らしを見据えて住み替えを成功させよう

老後の住み替えは、住まいを変えるだけでなく、これからの暮らし方を見直す大きな機会です。マンション、一戸建て、シニア向け住宅、賃貸、リフォームなど選択肢は複数ありますが、どれが正解かは資金状況や健康状態、家族との距離感によって異なります。
後悔・失敗を防ぐには、住み替え先の条件だけでなく、現在の住まいをいくらで売れるかを把握し、無理のない資金計画を立てることが大切です。
ホームズの一括査定は、全国約5,000社以上(2026年5月時点)の不動産会社と提携しており、複数社へまとめて査定を依頼できます。査定価格や各社の強みを比較できるため、老後の住み替えに向けて、現在の住まいをどのくらいで売れるか知りたい人は、まず資産価値の確認から始めてみましょう。
初回公開日:2024年10月24日