最初から「ペットが喜ぶ」ことを考えて建てたマンション

京都市営地下鉄「椥辻」駅より徒歩6分。地上6階、地下1階で全23戸。提供:インサイトハウス京都市営地下鉄「椥辻」駅より徒歩6分。地上6階、地下1階で全23戸。提供:インサイトハウス

「ペット可」とされている賃貸マンションは以前に比べると多くなった。
だが、最初からペットOKとして建設されたのか、建設後しばらく経ってから「ペット可」になったのか。それによって建物内の設備は大きく変わってくるだろう。

京都市山科区に本社を置くインサイトハウスが展開する賃貸マンション「INSIGHT REPOS(インサイトルポ)」は前者だ。最初からペットと住むことを前提に設計されている。2020年1棟目を京都市山科区小野に、2021年には同区椥辻に竣工。続いて京都市上京区でも建設を予定している。しかも、「ペット可」であるだけではない。INSIGHT REPOSのコンセプトは「ペットが喜ぶ」マンションだ。

京都市営地下鉄「椥辻」駅より徒歩6分。地上6階、地下1階で全23戸。提供:インサイトハウス1LDKと2LDKがあり、原則として小動物2匹の飼育がOK。部屋のタイプによっては大型犬も飼育可能(犬種による)。提供:インサイトハウス

ペットと人、両方が主役になれる場所をつくるために

インサイトハウスが、INSIGHT REPOSのようなマンションを建てることになったのは、代表取締役の岡田治樹さんが建設予定地を訪れたとき、周辺に動物病院があることや、ペットを連れて散歩している人を見かけたことがきっかけだった。さらには、「ペットを飼いたいけれど、一人暮らしだから飼えない」という話を聞いたりしたこともあって、それならばと思い立った。

「そもそも、インサイトハウスは“一人ひとりの居場所、舞台をつくり、すべての人が人生の主役となるような社会の実現を目指す”ことを掲げています。ですからINSIGHT REPOSは人とペットの両方が主役になれる場所をつくろうという考えから出発しました」とインサイトハウス・店長の山本篤彦さん。

実体験に基づく飼い主の「あったらいいな」を盛り込んだ設計

モニターは各階のエレベータ前に。これならペットも人も安心して生活できるだろう。 提供:インサイトハウスモニターは各階のエレベータ前に。これならペットも人も安心して生活できるだろう。 提供:インサイトハウス

そこで、社内にチームをつくり、「ペットと人が喜ぶマンション」を追求することに。チームのメンバーのほとんどがペットを飼っていることもあって、実体験の「あったらいいな」を織り込んでINSIGHT REPOSはつくられた。

例えば、エレベータ内がわかるモニターもその工夫のひとつ。

「INSIGHT REPOSは、大型犬も飼育OKなのですが、もし、大型犬と飼い主さんがエレベータに乗っていたら、ドアが開いたときに待っている人やペットがビックリするかもしれません。モニターで見ることができれば、そういうことが回避できます」と話すのは同社の椙尾真実さん。もちろん、自身もペットとともに暮らしている一人。こうしたことは、実際にペットと共に暮らしてみないとなかなかわからないことだ。

モニターは各階のエレベータ前に。これならペットも人も安心して生活できるだろう。 提供:インサイトハウスインサイトハウスの山本篤彦さん(左)、椙尾真実さん(右)。二人とも自宅でペットを飼っている

そして、建物内を歩いていると、ところどころで目にするのがリードフック。各部屋の前、オートロックの操作ボタン前、足洗い場、ポスト前と、人が足を止めそうな場所に設置してある。さらには、ドッグカートの無料貸し出しを行っているほか、ペットが粗相した時に拭くことができるペットシートも設置してある。細かなことだが、ペットと暮らしている人だったらピンとくる、あると便利なものばかりだ。

また、ペットが室内を走り回っても滑りにくく、また汚れにくい特殊コーティング加工がされている「愛犬の床®」を、すべての部屋に導入している。「関西の賃貸マンションで初めて導入しました。とにかく“ペットファースト”のマンションです」(山本さん)

モニターは各階のエレベータ前に。これならペットも人も安心して生活できるだろう。 提供:インサイトハウス各部屋前のリードフック。提供:インサイトハウス
モニターは各階のエレベータ前に。これならペットも人も安心して生活できるだろう。 提供:インサイトハウス動物病院やペットホテルでも採用されているグリップ性の高い床。留守中のペットを見守るペットカメラも用意されている。(写真はINSIGHT ROPES 山科小野)提供:インサイトハウス

ペットを通じた交流を生む場所としても

ペットのことだけではなく、「ペットを飼う人も幸せに」と、「人」のことも忘れてはいない。
エントランスには、このマンションで飼われているペットの写真と名前が飾ってある。「どんなペットが同じマンション内で飼われているかわかりますし、住人同士の会話が、ペットの話題で弾みますよね」と椙尾さんは言います。

エントランスに飾られているペットの写真。下には自由に使えるペット用のシートが置いてあるエントランスに飾られているペットの写真。下には自由に使えるペット用のシートが置いてある

1階にオープンしたフリールーム「salon de Repos」も、ペットを通じて人と人のつながりをもたらすもの。マンション住民や地域住人が、ペットを連れて利用することができる。窓際に寛げるソファ席を配置し、大きなダイニングテーブルやキッチンを備えた共用スペースだ。ペットを連れて出かけにくいという声に応えてつくられた。

「当初はテナントにすることも考えたのですが、代表の岡田がこの景色を見て、地域の方に使っていただける、つながりが増えるスペースをつくれないかということになりました」。マンション内で、地域に、ペットを通じたつながりを生んでくれるだろう。

エントランスに飾られているペットの写真。下には自由に使えるペット用のシートが置いてあるキッチンも備えているので、「salon de Repos」では小さなパーティーを開くことも。提供:インサイトハウス
エントランスに飾られているペットの写真。下には自由に使えるペット用のシートが置いてあるペットと一緒に交流をする場として、地域住民も利用可能だ。提供:インサイトハウス

ペットの幸せを考えるのは、命を考えること。保護犬の譲渡活動も

1階にオープンした「ペットライフサポーターBATON」1階にオープンした「ペットライフサポーターBATON」

さらに特徴的なのは、1階でペットショップが営業していることだ。

2021年12月にオープンした「ペットライフサポーターBATON」は、ペットシッターとして長年活動してきた「TOCOTOCO」の代表・石橋健一さんが運営している。ペットと過ごす幸せな居場所を提供したいというインサイトハウスの想いに賛同し出店した「ペットを売らない、ペットショップ」だ。

ペットホテル、トリミング、ペット専用商品の販売しているが、石橋さんの経験から、ペットのことを考えたサービスが充実している。例えば、ペットが窮屈な思いをすることがないよう、ペットホテルは壁で仕切られた個室で、大型犬も利用できるように広さは3種類。経験豊かなスタッフが、トリミングやトレーナーが動物たちの体調や状態を見ながら対応してくれる。

また、石橋さんは長年、保護犬の譲渡活動に力を尽くしてきた人物。同店にも保護犬用のスペースが3頭分あり、希望する人とのマッチングを行っている。これも「動物たちがふたたび悲しい思いをすることがないよう」と願う代表の石橋さんの想いから。「これらの活動を知り、保護犬を迎え入れたいと手を挙げるマンション入居者もおられます。一頭でも命を救いたい。そんな活動の輪が広がっていくといいと思います」と椙尾さん。

1階にオープンした「ペットライフサポーターBATON」広々とした店内に、ペットホテルは個室が3つ。大型犬用の部屋もある

ペットも人も幸せに暮らすこと―。
このことを突き詰めて考えると、「自分のペットだけが幸せでいいのか?」。そんな社会問題にたどり着くだろう。同社もそうだ。マンション収益の一部を「動物愛護事業推進基金」へ寄付している。小さな一歩かもしれないが、動物を愛する人たちができることはたくさんある。
INSIGHT ROPES は、人も動物も、みんなが主役の社会をつくる気づきを住人や地域に教えてくれている。

公開日: