最初から「ペットが喜ぶ」ことを考えて建てたマンション
「ペット可」とされている賃貸マンションは以前に比べると多くなった。
だが、最初からペットOKとして建設されたのか、建設後しばらく経ってから「ペット可」になったのか。それによって建物内の設備は大きく変わってくるだろう。
京都市山科区に本社を置くインサイトハウスが展開する賃貸マンション「INSIGHT REPOS(インサイトルポ)」は前者だ。最初からペットと住むことを前提に設計されている。2020年1棟目を京都市山科区小野に、2021年には同区椥辻に竣工。続いて京都市上京区でも建設を予定している。しかも、「ペット可」であるだけではない。INSIGHT REPOSのコンセプトは「ペットが喜ぶ」マンションだ。
ペットと人、両方が主役になれる場所をつくるために
インサイトハウスが、INSIGHT REPOSのようなマンションを建てることになったのは、代表取締役の岡田治樹さんが建設予定地を訪れたとき、周辺に動物病院があることや、ペットを連れて散歩している人を見かけたことがきっかけだった。さらには、「ペットを飼いたいけれど、一人暮らしだから飼えない」という話を聞いたりしたこともあって、それならばと思い立った。
「そもそも、インサイトハウスは“一人ひとりの居場所、舞台をつくり、すべての人が人生の主役となるような社会の実現を目指す”ことを掲げています。ですからINSIGHT REPOSは人とペットの両方が主役になれる場所をつくろうという考えから出発しました」とインサイトハウス・店長の山本篤彦さん。
実体験に基づく飼い主の「あったらいいな」を盛り込んだ設計
そこで、社内にチームをつくり、「ペットと人が喜ぶマンション」を追求することに。チームのメンバーのほとんどがペットを飼っていることもあって、実体験の「あったらいいな」を織り込んでINSIGHT REPOSはつくられた。
例えば、エレベータ内がわかるモニターもその工夫のひとつ。
「INSIGHT REPOSは、大型犬も飼育OKなのですが、もし、大型犬と飼い主さんがエレベータに乗っていたら、ドアが開いたときに待っている人やペットがビックリするかもしれません。モニターで見ることができれば、そういうことが回避できます」と話すのは同社の椙尾真実さん。もちろん、自身もペットとともに暮らしている一人。こうしたことは、実際にペットと共に暮らしてみないとなかなかわからないことだ。
そして、建物内を歩いていると、ところどころで目にするのがリードフック。各部屋の前、オートロックの操作ボタン前、足洗い場、ポスト前と、人が足を止めそうな場所に設置してある。さらには、ドッグカートの無料貸し出しを行っているほか、ペットが粗相した時に拭くことができるペットシートも設置してある。細かなことだが、ペットと暮らしている人だったらピンとくる、あると便利なものばかりだ。
また、ペットが室内を走り回っても滑りにくく、また汚れにくい特殊コーティング加工がされている「愛犬の床®」を、すべての部屋に導入している。「関西の賃貸マンションで初めて導入しました。とにかく“ペットファースト”のマンションです」(山本さん)
ペットを通じた交流を生む場所としても
ペットのことだけではなく、「ペットを飼う人も幸せに」と、「人」のことも忘れてはいない。
エントランスには、このマンションで飼われているペットの写真と名前が飾ってある。「どんなペットが同じマンション内で飼われているかわかりますし、住人同士の会話が、ペットの話題で弾みますよね」と椙尾さんは言います。
1階にオープンしたフリールーム「salon de Repos」も、ペットを通じて人と人のつながりをもたらすもの。マンション住民や地域住人が、ペットを連れて利用することができる。窓際に寛げるソファ席を配置し、大きなダイニングテーブルやキッチンを備えた共用スペースだ。ペットを連れて出かけにくいという声に応えてつくられた。
「当初はテナントにすることも考えたのですが、代表の岡田がこの景色を見て、地域の方に使っていただける、つながりが増えるスペースをつくれないかということになりました」。マンション内で、地域に、ペットを通じたつながりを生んでくれるだろう。
ペットの幸せを考えるのは、命を考えること。保護犬の譲渡活動も
さらに特徴的なのは、1階でペットショップが営業していることだ。
2021年12月にオープンした「ペットライフサポーターBATON」は、ペットシッターとして長年活動してきた「TOCOTOCO」の代表・石橋健一さんが運営している。ペットと過ごす幸せな居場所を提供したいというインサイトハウスの想いに賛同し出店した「ペットを売らない、ペットショップ」だ。
ペットホテル、トリミング、ペット専用商品の販売しているが、石橋さんの経験から、ペットのことを考えたサービスが充実している。例えば、ペットが窮屈な思いをすることがないよう、ペットホテルは壁で仕切られた個室で、大型犬も利用できるように広さは3種類。経験豊かなスタッフが、トリミングやトレーナーが動物たちの体調や状態を見ながら対応してくれる。
また、石橋さんは長年、保護犬の譲渡活動に力を尽くしてきた人物。同店にも保護犬用のスペースが3頭分あり、希望する人とのマッチングを行っている。これも「動物たちがふたたび悲しい思いをすることがないよう」と願う代表の石橋さんの想いから。「これらの活動を知り、保護犬を迎え入れたいと手を挙げるマンション入居者もおられます。一頭でも命を救いたい。そんな活動の輪が広がっていくといいと思います」と椙尾さん。
ペットも人も幸せに暮らすこと―。
このことを突き詰めて考えると、「自分のペットだけが幸せでいいのか?」。そんな社会問題にたどり着くだろう。同社もそうだ。マンション収益の一部を「動物愛護事業推進基金」へ寄付している。小さな一歩かもしれないが、動物を愛する人たちができることはたくさんある。
INSIGHT ROPES は、人も動物も、みんなが主役の社会をつくる気づきを住人や地域に教えてくれている。
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