女性正社員は23区西側の住宅地か横浜都心、専業主婦は青葉区、港北区、船橋市

私は著書『都心集中の真実』において、近年の東京都心部あるいは23区での人口増加が、男性よりも女性に顕著であることを指摘した。
25歳から40代を中心とする女性が、未婚でも既婚でも子どもがいても都心(23区内)を好んで住むようになったのである。
そこで本論でも働く女性がどういう街を選ぶか、郊外を選ぶかを調べてみる。

まず女性正社員と専業主婦を比較すると、上位の順位はあまり変わらないが、正社員では渋谷区・目黒区・世田谷区が27%、中野区・杉並区が17%など東京西側の住宅地の人気が非常に高い。
郊外では正社員は横浜市西区・中区、鶴見区・神奈川区という横浜市内での都心部の人気が高い。対して専業主婦は横浜市青葉区、船橋市・鎌ヶ谷市・習志野市、横浜市港北区・都筑区の人気が高い、というように好みに差がある。

ちなみに男性正社員は、1位が同率で千代田区・中央区・港区と渋谷区・目黒区・世田谷区が13.2%。郊外では横浜市西区・中区、藤沢市・平塚市・茅ヶ崎市が6.2%、横浜市戸塚区・港南区・栄区、鎌倉市・逗子市・葉山町が4.7%、横浜市旭区・緑区・瀬谷区・泉区が3.9%などとなっており、横浜市都心部志向はあるものの、女性正社員と比べるとそれほど圧倒的に渋谷などが強いわけではない。
女性で正社員ということは男性より未婚者率が高いわけだから、そのことが住みたい街の選択に影響を与えていると考えられる。

女性正社員は23区西側の住宅地か横浜都心、専業主婦は青葉区、港北区、船橋市

渋谷・目黒・世田谷に住みたい割合が45%の女性とは?

女性正社員をさらに学歴で分けると、4大卒以上の女性は渋谷・目黒・世田谷を希望する人がさらに増えて34%。2位は、正社員では2位だった中野区・杉並区を抜いて、千代田・中央・港が20%。4位が文京区・豊島区で18%というように、より都心志向が強まる。
かつ職種で見ると、4大卒以上の正社員のうちスタッフ部門(総務・人事・経理・企画等)の女性の住みたい街1位は渋谷・目黒・世田谷が45%という圧倒的な数字になる。
スタッフ部門では中野区・杉並区が2位に復帰し、32%。文京区・豊島区が3位で31%と人気が高い。

郊外では4大卒以上女性も、4大卒以上かつスタッフ部門女性も、横浜市西区・中区が多く、さいたま市西区・桜区・南区・北区も多い。
ただし、4大卒以上女性全体では横浜市青葉区、川崎市川崎区・幸区、船橋市・鎌ヶ谷市・習志野市、横浜市港北区・都筑区が上位に来るのだが、スタッフ部門女性だと武蔵野市、三鷹市といった中央線や、和光市などの東武東上線、さいたま市大宮区や中央区も人気である。

武蔵野市が吉祥寺のイメージなら井の頭線始発、三鷹駅も総武線や東西線の始発、和光市は副都心線始発、大宮も埼京線始発で通勤に便利ということをスタッフ部門女性は求めているのかもしれない。
その理由ははっきり分析しきれないが、4大卒以上スタッフ部門女性では、子どもがいる人ほど武蔵野市、三鷹市、和光市などを希望していることが集計から明らかであるため、子育て環境を求めて郊外に住むが、通勤にも便利なところに住みたいという判断をしているものと思われる。

渋谷・目黒・世田谷に住みたい割合が45%の女性とは?

23区内居住者を除くと東京北部が人気

しかしながら正社員でスタッフ部門で働く女性はそもそもすでに23区内に住んでいる人が多い可能性がある。
そこで23区内居住者を除く1都3県居住の4大卒以上正社員と、そのうちスタッフ部門女性の住みたい街を集計してみた。

するとやはりスタッフ部門女性は渋谷・目黒・世田谷が42%とダントツで多い。しかし文京区・豊島区も23%と多く、板橋・練馬も中野区・杉並区や品川区・大田区と同率3位であり、正社員全体との差で見ると板橋・練馬はスタッフ部門女性により好まれる傾向がある。
台東区・墨田区・江東区、新宿区、荒川区・北区も全体より多めである。概して中央線・総武線以北の区が人気なのである。
その理由ははっきりわからないが、スタッフ部門女性の出身県を見るとやや埼玉県出身者が多いということが影響しているかもしれない。

対して販売・マーケティング部門は神奈川県出身者が多めであるためか、23区内では千代田・中央・港区を希望する人が多く、中野区・杉並区、台東区・墨田区・江東区は少なめであり、板橋・練馬、荒川区・北区に至っては3%しか希望していない。

23区内居住者を除くと東京北部が人気

埼玉県出身者の横浜志向はあるのか

スタッフ部門女性は渋谷、世田谷、目黒が大好き(写真は代々木上原)スタッフ部門女性は渋谷、世田谷、目黒が大好き(写真は代々木上原)

職種によって出身地が異なるというのは面白い話だが、念のため、今回の住みたい郊外調査のサンプルについて、男女全体で雇用形態や学歴にかかわらず職種別の出身地を集計してみたが、やはり販売・マーケティング部門は神奈川県出身者が多く、34%を占める(埼玉県出身者は15%)。

対してスタッフ部門は埼玉県出身者が26%。埼玉県出身者の割合は就業者全体では18%だから、埼玉県出身者はスタッフ部門に多くいるのだ。男女別に見ても同様の傾向である。
どうしてこうなるのかわからないが、何となく実感に近い気もする。横浜、湘南、箱根などの消費・娯楽的な地域が多い神奈川県では、その出身者が販売・マーケティングの仕事をする傾向が強いのは理にかなっていると思えるからだろう。
あるいは神奈川県出身だと慶応大学に進む人も多いから、販売・マーケティング部門に就く人が多くなるという気もする。

話を郊外に戻すと、正社員全体でもスタッフ部門でも販売・マーケティング部門でも横浜市西区・中区が最も好まれているのは共通である。率としてはスタッフ部門のほうが販売・マーケティング部門よりも横浜市西区・中区を好んでいる。
スタッフ部門女性は横浜市港北区・都筑区や青葉区も好んでおり、横浜志向が少しあるのかもしれない。まるで映画「翔んで埼玉」のようだが、埼玉県民は海や港に近い場所に憧れる気持ちは小さくないということか(ただしこの仮説はこのアンケートからは裏付けできなかったが)。

どういう郊外が生き残るか

小田急多摩線黒川駅前に開業したネスティングパーク小田急多摩線黒川駅前に開業したネスティングパーク

また関西、中京方面への出張を考えると横浜方面に住んだほうが時間的に得であることは言うまでもない。さいたま市内ならともかく、所沢市や川越市では遠すぎる。

東急田園都市線あざみ野駅まで来ている横浜市営地下鉄が今後は小田急線新百合ヶ丘に延伸する計画や、多摩センターから唐木田まで来ている小田急多摩線が横浜線相模原駅まで延伸する計画もあり、ますます東海道新幹線新横浜駅とのアクセスが改善する地域が横浜市内を中心に拡大する。
もちろんリニアモーターカーの橋本駅開業も考えると、正社員で働く女性にとっては横浜市の人気が拡大する方向にあるといえる。

横浜市ではないが川崎市麻生区の小田急多摩線黒川駅前には、小田急電鉄によりネスティングパーク黒川が開業した。リノベーション業界の第一人者、ブルースタジオの大島芳彦氏による新しい郊外の場所づくりである。
芝生の広場を囲んでカフェとオフィスがあり、小さな事務所や店舗を借りたり、コワーキングスペースを使ったりすることができる。キャンプ場のようにそれらが配置され、実際、キャンプファイヤーをすることもあるという。郊外に働く場所と夜の娯楽を導入する試みである。

私の知り合いの会社も新宿にあったオフィスをたたんで、いくつかのシェアオフィスに分散し、その1つにネスティングパーク黒川を選んだ。大島氏が小田急線座間駅前で手がけた小田急電鉄社宅のリノベーション賃貸住宅でも、入居者の半数以上が23区内から来たという。黒川ではオフィスも都心から引き寄せたのだ。

鉄道のようなインフラの整備に加えて、こうした新しいライフスタイルが提案されると、横浜、川崎の郊外住宅地も新しい街に生まれ変わり、スタッフ部門女性が選ぶ郊外になるかもしれない。

※同調査は、三菱総合研究所が毎年行っている3万人調査「生活者市場予測システム」(※略称mif)の2018年の回答者への追加質問をする形で行ったものであり、東京、埼玉、千葉、神奈川および茨城県南部の居住者2,400人の男女(25〜54歳)を対象とした

2019年 10月14日 11時00分