23区内居住者の次の希望は2拠点居住か?

住みたい街を選ぶとき、現在住んでいる地域を大きく離れることはあまりないと前回書いた。
そこで調査対象となった1都3県を10地域に分けて、それぞれの地域に住んでいる人ごとに住みたい街を集計してみた。

東京23区居住者の1位は「上記以外」、つまり1都3県および茨城県以外であり、23区内に住まないとしたら、もう地方移住だということである。
2位以下は武蔵野市、横浜市西区・中区、鎌倉市などとなっているが、まあ、これは23区の居住者にとっては23区の飛び地のような意識だろう。
そういう意味では地方に移住したとしても、それは地方と23区内の2拠点居住をして、土日だけ地方に行くとか、逆にいつもは地方にいて、必要なときだけ都心に来るといったライフスタイルを志向しているとも言える。

23区内居住者の次の希望は2拠点居住か?

横浜市など政令指定都市は市外に引越したい人は少ない 

マンションの増えた三鷹も路地を入ると飲み屋があるというのも人気の秘密かマンションの増えた三鷹も路地を入ると飲み屋があるというのも人気の秘密か

三多摩居住者では武蔵野市、府中市、立川市、八王子市、三鷹市という順位であり、ほぼ順当な結果である。
横浜市居住者も横浜市内の区だけで上位を占めた。川崎市居住者も川崎市内と横浜市の川崎市に近い区だけで占められている。今より通勤時間があまりに長くなる地域への引越はありえないということである。
川崎市居住者としては、今よりあまり都心から遠くならずに横浜ブランドや商業文化的な充実が増えるなら引っ越してもいいという判断だとも言える。また近年川崎市で増えた人口の中に横浜市内に実家のある人も多かったのではないかと思われる。

相模原市居住者は66.0%が相模原市内での引越ししか考えていない。さいたま市居住者や千葉市居住者も同じ市内での引越しを考える人がほとんどである。
このように政令指定都市の居住者はほぼ同じ市内での引越ししか考えておらず、政令指定都市としての利便性を捨てる気はないと言える。

埼玉県は人気都市が分散傾向 

また「その他の神奈川県」居住者は「藤沢市・平塚市・茅ヶ崎市」が31.1%と、かなり一地区に集中している。

「その他の千葉県」居住者も、船橋市・鎌ヶ谷市・習志野市が25.6%と一地区集中傾向がある。
だが「その他の埼玉県」居住者は越谷市が11.1%、川口市が9.6%などとなっており、分散している。

「その他の神奈川県」では湘南のブランドが強力であり、「その他の千葉県」では船橋市、習志野市の通勤と生活の利便性の高さが他の地域より抜きん出ているのであろう。
対して「その他の埼玉県」では、鉄道路線が都心から放射状に各方面に分散しており、それぞれの沿線での拠点に人気が分散するのだと思われる。

スカイツリーライン沿線ではレイクタウンのある越谷市が人気スカイツリーライン沿線ではレイクタウンのある越谷市が人気

船橋市、青葉区は定住意向が高い

そこで居住地をもっと細かく分類して住みたい郊外を23区以外の1都3県を30地域に分類して集計してみた。
なお、居住地の分類と質問における住みたい街の分類が同じ市区町村を包含しているのが理想であるが、一地域の居住者数を40人以上になるようにするためには、それができず、若干のズレが生じている。

集計結果のすべてを紹介するのはスペース的に余裕がないので、特徴的なところだけ紹介する。
まず現在の居住地と同じ地域に住みたい人の割合が高い地域はどこか。言わば定住意向の強い郊外である。

1位は圧倒的に「船橋市・鎌ヶ谷市・習志野市」であり、居住者の73.9%が同じ地域に住みたいと回答している。相模原市は先ほど見たように66.0%。越谷市に住みたい人も越谷ブロック(越谷市、草加市、八潮市、三郷市、吉川市)の中では56.9%と高い。越谷ブロックに住んでいる人はできれば越谷市内、おそらくレイクタウン周辺に住みたいのである。

鎌倉・三浦半島ブロック(鎌倉市、逗子市、葉山町、横須賀市、三浦市)では「横須賀市・三浦市」に住みたい人が54.8%と多かった。鎌倉市より横須賀市の居住者が多いことの影響もあるだろうが、結構三浦半島は人気である。郊外と言うより地方、リゾート地として過ごす、先ほど見たように、2拠点居住をする、というイメージでの人気であろうと思われる。三浦半島は人口減少に悩んでいるが、こうしたニーズに応えていけば将来性はありそうだ。

青葉区・港北NTブロックでは横浜市青葉区が48.3%、表にはないが横浜市港北区・都筑区も44.8%であり、どれか3区に住み続けたい割合は相当高いと言える。

船橋市、青葉区は定住意向が高い

春日部市、厚木市は他の都市に人気を奪われている

府中市・調布市も「調布市・狛江市」に住みたい人が39.6%であり、府中市に住みたい47.9%と合わせると、ほとんどの人が定住意向を持っていると言える。

柏市・野田市・流山市も柏市の44.9%に加えて野田市18.4%、流山市16.3%であり、やはり柏市周辺に住み続けたい人がほとんどである。

また、表にはないが、春日部ブロックでは住みたい街の1位が「久喜市、幸手市、白岡市、春日部市」で30%であり、春日部市の20%を上まわっている。
拙著『東京郊外の生存競争が始まった!』でも書いたように2005年から15年にかけて春日部市からは白岡市への転出超過が見られる。白岡市が宇都宮線から湘南新宿ラインなどで都心に短時間でつながったことの影響が大きいのだ。

人口が少ない割に人気のある市としては海老名市が挙げられる。厚木ブロック居住者の住みたい街の1位は海老名市・綾瀬市であり33.8%。以下、座間市・大和市26.2%、秦野市・伊勢原市18.5%、厚木市16.9%となっており、実際の25−54歳人口を勘案しても海老名市・綾瀬市のほうが人気がある。これは海老名駅周辺の大規模再開発による膨大な商業集積のためであろう。
また2019年11月末には海老名駅から相鉄線・二俣川まで行けば、湘南新宿ライン乗り入れで新宿まで最速44分(予定)、東横線乗り入れで渋谷まで39分(予定)と大幅なスピードアップが実現することも海老名人気上昇の一因であろう。

このように考えると都心へのアクセスと巨大商業集積のいずれかが住みたい街に大きな影響を与えることは間違いない。


※同調査は、三菱総合研究所が毎年行っている3万人調査「生活者市場予測システム」(※略称mif)の2018年の回答者への追加質問をする形で行ったものであり、東京、埼玉、千葉、神奈川および茨城県南部の居住者2,400人の男女(25〜54歳)を対象とした

大規模再開発で海老名が住みたい街になった大規模再開発で海老名が住みたい街になった

2019年 08月22日 11時05分