数々ある「人気の街ランキング」や「住みたい街ランキング」

住みたい街ランキングで上位にくることが多い吉祥寺。井の頭公園など緑が豊かなことも人気のひとつ住みたい街ランキングで上位にくることが多い吉祥寺。井の頭公園など緑が豊かなことも人気のひとつ

どの街がよいのか、どの街に住みたいか……家を購入する場合・借りる場合、間取り・価格・築年などの物件スペックと同じように気になる点である。だが、一般的となった物件のスペックとは違い「よい街」「好きな街」は、一概には語れない。

しかし、世の中には「人気の街ランキング」や「住みたい街ランキング」などの類が数々出ている。それらのランキングの指標づけを見てみると、それぞれ調査する側の視点が違うようだ。

東洋経済の「住みよさランキング」は、物件のスペックの比較指標のように規模や数を中心とした指標である。大型小売店の店舗面積や公園の規模、病院の病床数などで生活インフラの充実度を分析し、転入・転出人口・出生率などの自治体の数値情報、新設住宅の着工数や持家率などにより、住居水準充実度をはかっている。株式会社リクルート住まいカンパニーの「みんなが選んだ住みたい街ランキング」、株式会社ネクストの「生活者実感ランキング」は、いわゆるアンケートによる主観的なランキングだ。「みんなが選んだ住みたい街ランキング」は、エリアにおける駅と行政区について居住したいところを3つまで聞いたものであり、「生活者実感ランキング」は、「日常の買い物の充実度」や「公共サービス充実度」などについて、実際にその街に住む人に街を評価してもらうものである。
ちなみに東洋経済の2016年「住みよさランキング」千葉県印西市が総合1位。リクルート住まいカンパニーの「関東 住みたい街ランキング2016」では、4年連続1位だった吉祥寺をおさえて恵比寿が総合1位。ネクストの「東京都内生活者実感ランキング2013」では、吉祥寺のある武蔵野市が1位であった。

そんな中、2015年にHOME'S総研が「センシュアス・シティ・ランキング」を発表した。都市を動詞で評価しようというチャレンジである。これは、実際にその都市に住んでいる人々に聞いたもので、例をあげると「デートをした」「街の風景をゆっくり眺めた」「イベントに参加した」など、実際に行動した動詞を調査項目としてアンケートを行っている。その「センシュアス・シティ・ランキング」調査結果の1位は文京区であった(※詳しい内容は、HOME'S PRESS記事HOME'S総研HPで)。

「都市の評価方法を考え直す」

カルチャースタディーズ研究所 三浦 展氏。今回は「人」と「街」の関係性を独自の調査データから分析しているカルチャースタディーズ研究所 三浦 展氏。今回は「人」と「街」の関係性を独自の調査データから分析している

そして今回、カルチャースタディーズ研究所三浦展氏が、新たな街のランキングを発表した。2016年11月24日、PHPエディターズ・グループ社から書籍化された『あなたにいちばん似合う街』である。

三浦氏といえば、"街歩きの達人"としても有名で、独自の視点で消費や都市、カルチャーを鋭く分析してきた人物である。今回、書籍の発行に伴い“新・住みたい街ランキング”ともいえるこの調査の主旨と調査項目についてお話を伺ってきた。

「きっかけの一つは センシュアス・シティ・ランキング。たとえば西荻窪は、住んでいる人は街を好んでいるし、西荻窪にたまに来るだけの人も、いいまちだ、住みたいと言うのに、通常のランキングではまったく上がって来ない。センシュアス・シティ・ランキングのように新しい軸で街をみれば、西荻窪や北千住など、私が注目する街が浮上すると思ったのです」と、三浦氏は言う。

三浦氏のこの調査分析は、「性別・年齢・家族構成」「年収・職業」「階層・学歴」「専業主婦・就業子育て」「余暇の過ごし方」「生活行動・価値観」など多肢に渡る項目で“どんな人がどんな街を好むのか”を浮かび上がらせている。

「実際の調査は、三菱総合研究所“生活者市場予測システム”2015年サンプルの追加調査として、2016年7月に関東の1都3県在住の1500名にインターネットで調査を行ったものです。この調査は、これまでとは違う“どんな人がどんな街を好むのかを探る”という試みです。結果として、ところどころ謎が残るものの(笑)、とても面白く興味深い結果が出たと思います」という。

三浦展氏が切り込んだ「人」と「街」の関係

2016年11月24日、PHPエディターズ・グループ社から書籍化された『あなたにいちばん似合う街~人生を変えたいなら、住む街を変えよう』2016年11月24日、PHPエディターズ・グループ社から書籍化された『あなたにいちばん似合う街~人生を変えたいなら、住む街を変えよう』

ランキングの切り口は、今までになく個々人のスペックや環境に切り込んでいる。
例えば、男女の性別での差でいくと、女性の一番住みたい街は年齢にかかわらず“横浜みなとみらい”である。片や男性の一番住みたい街は“鎌倉”であった。興味深いのは30代の男性の一位が秋葉原であること。また、一人暮らし・独身・既婚・子どもの有無などによっても、住みたい街が変わる。例えば、20代一人暮らし男性の住みたい街の1位は同率で「武蔵小杉」「自由が丘」。三浦氏曰く、"若い男性は、メディアによく出てくる街を選ぶ"のだという。それが、30代40代になるとまた変化する。

価値観・志向性によっても選ぶ街が変化することが見てとれる。例えば分析の項目で行くと“毎日お酒を飲む人”“カフェをよく利用する人”などが選ぶ街の違いもデータがとられている。また、“生きがいは家庭”“人生の勝ち組になりたいか”などによる志向性による選ぶ街の違いなどもある。不動産への志向も聞いており、“新築志向””中古志向”“賃貸志向”でも選ぶ街が変わる。

三浦氏自身も今回のランキングの結果として、
「分析をしていて、おもしろかったのは、集計のしかたで西荻窪が1位になったり、川崎や蒲田が上位にくることがある点でしたね」という。

浮かび上がる「都市の輪郭」

一見、それぞれの調査項目が点であるようにも感じるが、よく読むと調査項目の相関性なども見えて、考えさせられる部分があり、興味深い。
例えば、女性が選ぶ街のランキングは、男性では年収600万円以上の人が選ぶ街のランキングと似ている。つまり、女性は年収高い男性と結婚すると住みたい街に住めるということだ。

この調査は、実は街の調査分析でありながら、人の属性や志向での“今のそれぞれの街の見え方”をあぶりだしたものである。街それぞれの特色がよくわかるということもそうだが、それ以上に都市に住む人たちの今の街への考え方・感じ方がよくわかる調査結果であった。

あらためて三浦氏に自分に合った街の選び方を聞いてみると
「自分で歩いてみること。関わってみること。実際に行ってみて、表だけでなく、裏や路地も歩いて見て、感じてみること。昼だけでなく、夜も歩いてみること。そして観察してみることですかね」と、答えてくれた。

街は人が行き交う場所である。人の考え方、人が創り出す環境によって、変化するものであることを再認識させられる調査であった。この調査は、今の都市の輪郭であるが、またこれからの都市のそれぞれの街の兆しも現れているように思った。

『あなたにいちばん似合う街~人生を変えたいなら、住む街を変えよう』 三浦 展 著
https://www.amazon.co.jp/dp/4569832172

写真左上:総合で女性に人気の横浜みなとみらい 写真右上:総合で男性に人気の鎌倉</br>写真左下:秋葉原の街を選んだのはどういった人? 写真右下:北千住がランキング上位なのはどんな人が選んだ結果?</br>本に掲載される調査結果から、自分なりの街の選び方を見直してみるのも面白い写真左上:総合で女性に人気の横浜みなとみらい 写真右上:総合で男性に人気の鎌倉
写真左下:秋葉原の街を選んだのはどういった人? 写真右下:北千住がランキング上位なのはどんな人が選んだ結果?
本に掲載される調査結果から、自分なりの街の選び方を見直してみるのも面白い

2016年 11月28日 11時06分