クルマやバイクと共鳴する新基準のガレージ付き賃貸アパート

北海道苫小牧市にオープンしたデイトナハウス・ガレージアパートメントAREA053。まるで飛行場のように舗装された道路に白線でしるされた物件名。シャッターはステンシルでナンバリングされている北海道苫小牧市にオープンしたデイトナハウス・ガレージアパートメントAREA053。まるで飛行場のように舗装された道路に白線でしるされた物件名。シャッターはステンシルでナンバリングされている

2017年9月、北海道苫小牧市に一般に流通する賃貸物件とは一線を画す「ガレージアパートメントAREA(エリア)053」が誕生した。お気に入りのクルマやバイクとの共生を基軸に考えられた趣味人のための賃貸だ。ライフスタイル雑誌「Daytona(デイトナ)」と建築設計プロデュースを行うLDK(エルディーケー)有限会社のコラボレーション「DAYTONA HOUSE×LDK(デイトナハウス)」の企画である。
Daytonaは、これまでにさまざまな住宅やガレージの魅力を特集しており、LDKは長年クルマ共生住宅を開発し続けてきた。そんな両者がタッグを組み、本物の家をプロデュースすることになったのだ。

デイトナハウスとは、「システム鉄骨工法」を基軸に、「LGSパネル」と呼ばれる軽量鉄骨をつなぎ合わせ、自由に住宅やガレージ、店舗など様々な建築をつくることができる新しい工法である。規格を統一することでローコストを実現しながら、ライフスタイルの自由性やデザイン性も同時に満たすことを可能とした。パネルの枚数を数えるだけで、建築の広さやおよその予算などがわかるというのも特徴だ。

加盟店制度で全国展開を進めており、Daytonaの誌面を通してガレージアパートメントや店舗、別荘などのケーススタディを紹介し、今では全国様々なところでデイトナハウスの企画が進められている。デイトナハウス初のガレージアパートメントとして、AREA053も工事の進捗などがたびたび紹介されてきたのだが、遂に完成を迎えたというので取材に訪れた。

無骨な骨組みが露出するGLB(Garage Living Bedroom)空間

ガレージアパートメントAREA053は、3棟全25世帯で、建築基準法としては2階建てとなるが、1階にガレージ、2階にリビングと、その上のロフトにベッド空間を設けた「WT/Wild Triplex」トリプレクス構造の3層住居スタイルとなっている。従来の賃貸では1LDKという表記になりがちであるが、GLB(Garage Living Bedroom/ガレージリビングベッドルーム)という新しい部屋のジャンルである。平米数で考えると何ら変わりないかもしれないが、立米数で立体的に捉えると開放感がある。
さらに、内部空間は黒マットの無骨な鉄骨フレームがむき出しとなり、素材感がクルマやバイクと共鳴するようになっている。
ガレージスペースのガルバリウム鋼板と鉄骨の組み合わせは、デザイン性だけではなく、磁石を利用することができるため、貼ったりつり下げたりなど、容易に自分の趣味をインテリアに反映することができる。
また、屋根材は米軍の格納庫でも使われている「R(アール)スパン」を採用。デイトナハウスで増築した、所ジョージさんの「世田谷ベース」でも使用されている屋根材だ。室内から天井を見上げると、露出した骨組みに、曲面を描く天井が豊かな吹き抜け空間を形成している。植物やハンモックをつり下げたり、ロングボードを飾ってもいい、など自分が住むなら…と思わず想像してしまうほどだった。

(左上)1階ガレージモデルルーム、(右上)2階居住スペースモデルルーム、(左下)2階居住スペース(右下)ロフトスペース、開放的な吹き抜け空間(左上)1階ガレージモデルルーム、(右上)2階居住スペースモデルルーム、(左下)2階居住スペース(右下)ロフトスペース、開放的な吹き抜け空間

大切なのは、骨格。建材を工夫して居住性と意匠性を両立した

ガレージ空間。黒粉体塗装のLGSパネルとガルバリウム鋼板による界壁がかっこいい空間を演出ガレージ空間。黒粉体塗装のLGSパネルとガルバリウム鋼板による界壁がかっこいい空間を演出

今回、設計を手がけたLDK有限会社の玉田敦士氏にお話を聞くことができた。

デイトナハウスを構成する「LGSパネル」はLDKが独自に開発したものである。今回のガレージアパートメントでは一棟あたりおよそ340枚をつなぎ合わせて建築された。さらにLGSパネルにつや消し黒の粉体塗装を施し、外断熱でくるむことで、構造体自身が内装材としても空間のアクセントとなる重要な役割を担っている。3階建て以上の建物には、鉄骨に耐火被覆をしなくてはならないことから、2階建てだからこそ実現できる仕様だ。

さらに、法律の制限により普通は鉄骨を露出させるのが難しいところまでも、建材を工夫するなどして、露出することにこだわり抜いたという。たとえば、一般的に1階ガレージの天井は、2階への居住性を考えて、断熱材をいれて天井を張ってしまうため、鉄骨がみえなくなってしまうケースがほとんどだ。一方ガレージアパートメントでは、G-SLAB(ジースラブ)という1階の天井と断熱材、2階の床が一体となっている素材を採用。これによりガレージから2階へ伝わる冷輻射を抑え、居住性とガレージ空間の意匠性も確保した。

「建物もクルマと同じ考え方で、自動車評論でよく言われるのはクルマのフォルムではなく、土台などのフレーム(骨格)なんです。自動車やバイクが好きな人はフレームに対するこだわりが全然違うのですよね。」
骨組みを見せることへのこだわりを聞くとこう返ってきた。住宅づくりにも、クルマやバイクへの考え方が影響していることを感じる。

「ぜひ、夜にスポットライトで見てほしい。ペンキではどうしてもツヤが出てしまいます。ペンキでは出せない、粉体塗装ならではのマットな鉄の素材感が際立つので、もっと唯一感を感じられると思います。」

住む場所や環境はもっと自由でいい。趣味をもっと豊かにする拠点

デイトナハウスの設計を手がけるLDK有限会社の玉田敦士氏デイトナハウスの設計を手がけるLDK有限会社の玉田敦士氏

ガレージに住むところもついている、というようなイメージで、使う人のインスピレーション次第だと玉田氏はいう。
「クルマやバイクだけではなく、いろんな可能性があっていいと思います。自転車が趣味な人でもいい、友人とシェアして借りることもできるので、陶芸など共通の趣味を持つ人がシェアしてガレージを工房のように使ってもいい。住むだけではない、趣味ををもっと豊かにするための拠点となればいいなと思っています。」
住むところは別にあり、必ずしも住むという目的ではない方からの申し込みもあるという。設計者の意図が伝わったのだろう。

デイトナハウスは、現在島根県出雲や、沖縄、浜松などの地方での計画が進んでいるという。今回のAREA053もそうだが、なぜ、都会ではなく地方都市でのプロジェクトが多いのだろうか。
「土地の価格は、交通や情報が集積している場所、つまり都会が高くなっています。しかし、クルマやバイクで自由に移動ができるし、その移動を楽しみたいという人もいます。インターネットがあれば情報にも事欠かない時代です、もっと違う観点で土地を探したいなと。田舎ではあたり前の田んぼや夕焼けの風景だって、そこに一つ建物を置くことによって、もともと地域が持っている潜在的な価値を引き出すことができると思っています。建築自体に力があるわけではなく、周りの環境も大切なので、むしろ地方にこそ可能性があると思っています。」
土地の価格では見えてこない、その場所が持つ本来の価値や希少性が今後デイトナハウスによって新たに発掘されていくのかもしれない。

デイトナハウス・ガレージアパートメントも今後全国に広がっていく予定で、既に別の計画が始まっている。ここに趣味人が集い、それぞれのシャッターが開放され、話している姿や交流する様子がみられた時、本当の外観が完成するのだろう。苫小牧だけでなく、全国に誕生するガレージアパートメントを拠点にどのような暮らしやコミュニティーがこれから生まれるのか、期待したい。

DAYTONA HOUSE x LDK:http://daytona-house.com/

2017年 11月16日 11時04分