紡績会社のテナントをイベント&コワーキングスペースに

中之島SPINNING代表の平野泰裕氏中之島SPINNING代表の平野泰裕氏

各地で開催されるクラフトフェスタにはたくさんの人が集まり、クラフト作家を集めたショッピングサイトが人気と、近年クラフト作品に注目が集まっているようだ。しかし一方で、伝統工芸や地場産業は廃れつつある現状もある。
そんな中、名古屋紡績株式会社を母体とする中之島SPINNINGは、大阪北浜にある築55年の元テナントビルを利用し、ものづくりや伝統にこだわって、イベントスペースやコワーキングスペースを運営。伝統工芸の認知度をあげるため、さまざまなイベントを開いている。

現在も名古屋紡績株式会社から独立しているわけではなく、一事業部といった位置づけで、伝統工芸の中でも、特にアパレル関連を意識したイベントを主催している。
代表の平野泰裕氏は名古屋紡績の三代目。
「この建物が6年前に空きビルとなったので、もったいないから何かやらせてほしいと頼み込み、2年半前に中之島SPINNIINGを開業したのです」
と教えてくれた。

伝統工芸を残すための突破口を仲間とともに

当初はまったくの手探り状態で、経費をかけられない中、なにができるかと考えたとき、イベント&コワーキングスペースを思いついたそうだ。

「伝統を守っているだけで工夫をしなければ、伝統工芸は必ず消えてしまうだろうと、伝え手の多くは危機感を持っています。だから、イベントで危機感を共有し、みんなで突破していこうという気持ちが強いですね」
と平野氏。たとえば、2015年の秋から3度にわたって、イベントコーナーで開催している「デザイン×伝統展」では、名古屋の伝統工芸である有松絞りをファーのように使用したTシャツや、西陣織の帽子やカードケース、六角形の瀬戸焼の器など、伝統工芸と新しいデザインを組み合わせた商品を展示した。幸い大手百貨店が興味を持ち、コラボレーションで展示会も開かれたが、まだ商売につながっているとはいえないそうだ。
しかし、中之島SPINNINGのイベントの人脈で商品が生まれたり、大阪で販路を開いたブランドもあったりするほか、平野氏自身も人脈が広がっており、なにがしかの手ごたえは感じているという。
百貨店のイベントでは記者やブロガー向けの発表会を開き、各ブランドに開発までのストーリーを語ってもらったので、ケータリングを頼んだ料理人とのつながりもでき、今後食をからめた企画につなげられるのではと考えているそうだ。
「ただ、職⼈さんたちは、人前で話をするのに慣れてらっしゃらないので、台本を考えればよかった」
と、後悔もあるが、イベントを積み重ねていけば、平野氏自身の経験値があがっていく。現在までに3~40回ほどのイベントを開催しており、どういう見せ方をしたらいいかわかってきた部分もある。まずは続けることが大切だと考えているそうだ。

3階のイベントスペースで開かれたイベント。立地の良さもあり、たくさんの人が集まった3階のイベントスペースで開かれたイベント。立地の良さもあり、たくさんの人が集まった

利用者との交流も濃密に

2階はコワーキングスペース。6名の会員が思い思いのスタイルで仕事をしている2階はコワーキングスペース。6名の会員が思い思いのスタイルで仕事をしている

イベントコーナーは申し込めば誰でも利用可能で、利用者主体のイベントも多数開催されている。中でもアパレル雑貨を作っている人たちのマルシェは人気が高く、来場者も多かったという。また、カメラの扱い方から教えてくれるカメラ講座も人気だ。現在3回開催されているが、すぐに定員に達してしまうという。また、映画のワンシーンから英会話を学ぶセミナーも、頻繁に開かれている。

コワーキングスペースは、ウェブ関係者やパッケージデザイナーなどが在籍しているそうだ。現在は、コワーキングスペースよりイベントスペースとしての認知度が高く、コワーキングスペースの会員とコラボしての企画は実現していないそうだが、たとえば、人脈を活かして会員が求める人材を紹介したり、会員に仕事を発注したりするなど、会員を巻き込んだイベントも試みていきたいと考えている。

中之島SPINNINGの魅力は、アクセスの良さと景色。川が近く、特に冬のイルミネーションが始まると、セミナーにも人が集まりやすい。また、北浜はオフィス街だが、オシャレなカフェがあるので曜日を問わず人が多く、休日営業する飲食店も多いから、その利点をいかしていきたいという。

良い連鎖を生み出すスペースに

2階のコ・ワーキングスペースにはスケジュールが貼りだされ、誰でもイベントスケジュールが確認できる2階のコ・ワーキングスペースにはスケジュールが貼りだされ、誰でもイベントスケジュールが確認できる

今後のイベントとしては、福岡の呉服屋や、倉敷のデニム屋が展示会をする予定。

しかし、おもしろいだけでは続かない。
「平野さんにまかせれば売れると思ってもらえなければ、協力は得られません。だから、今後しばらくはアウトプットだけでなく、吸収と学習……インプットの時間にするつもりです。たとえば、伝統×デザイン展も3回目を終え、見せ方を工夫せねば飽きられてしまいますし、出展者も増やしたいです。そのために、これまでに交流したブランドを見学し、表面的ではなく、深く勉強したいと考えています」
と、平野氏は言う。そしてもしそこから仕事が生みだせれば、コワーキングスペースにも人が集まり、よい連鎖を生みだせるかもしれないという期待もある。

「将来についてはまだ明確には決めていませんが、服飾関係、そして日本の伝統を応援していこうという軸には変わりがありません。今のところは伝統商品ばかりですが、伝統芸能や伝統料理など、さまざまな分野に広げていければ。また、若い人たちに伝わるようなアレンジがしたいですね。若い人たちの多くは、伝統工芸や産地技術について自分には関係ないと考えていますから、若者の文化に溶け込まねばなりません。たとえば、マンガやサブカルチャーにからめられれば良いのですが」
と、具体的なアイデアはまだ浮かんでいないが、今後もこのスペースを使って、良い商品をどう伝えるか、工夫を続けていくという。

2016年 11月30日 11時05分