「外国人が増えている」といっても人口の約2%。愛知県は約3%

セミナー『外国人労働者と雇用企業・地域のこれから』の様子。企業、議員、大学など、外国人に関わる幅広い業種の人が真剣に耳を傾けたセミナー『外国人労働者と雇用企業・地域のこれから』の様子。企業、議員、大学など、外国人に関わる幅広い業種の人が真剣に耳を傾けた

「まず質問です。日本に住む外国人(在留外国人)は人口の何%だと思いますか?」

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の南田あゆみ氏からの質問に、会場からは2~8%までまんべんなく手が挙がった。2019年1月に名古屋市内で開催されたセミナー『外国人労働者と雇用企業・地域のこれから』冒頭でのひとコマだ。

答えは、人口の約2%。製造業が盛んな愛知県では外国人の働き手が多く活躍しているが、それでも人口の約3%だという(2017年、法務省入国管理局調べ)。

少子高齢化が進み、労働力不足が課題となっている日本。愛知・岐阜・三重・静岡の東海4県では、外国人社員が働きやすく、暮らしやすい環境を整えるため、地元の経済団体の協力を得て「外国人労働者の適正雇用と日本社会への適応を促進するための憲章」を策定した。約10年前のことで、全国の自治体で初めての取組みだという。

まさに「外国人労働者雇用」のパイオニアともいえる東海地方。実際、雇用に積極的な企業では、外国人社員の働きやすさ・暮らしやすさのためにどんな取組みを進めているのだろうか?

モノづくり企業2社は「アジア進出のきっかけになった」

2社ともにベトナムで現地採用。社員は現地で日本語教育を1年ほど受けてから、日本で勤務する。「ベトナムに自社で日本語教室を開設しました」(キョウワ)※写真はイメージ2社ともにベトナムで現地採用。社員は現地で日本語教育を1年ほど受けてから、日本で勤務する。「ベトナムに自社で日本語教室を開設しました」(キョウワ)※写真はイメージ

セミナーでは、「東海4県の企業による取組事例」と題し、パネルトークが行われた。参加したのはいずれも外国人社員を積極的に雇用している4社。まずはメーカー2社の取組みを紹介しよう。

愛知県の熱処理加工メーカー、日高工業株式会社では社員154名のうち外国人社員は23名で、ブラジルなど南米出身の社員が19名、ベトナムが4名。うち1名は、インドネシアに進出した取引先で技術支援を行っている。

「約15年前から技術・技能の担い手として日系人を多く採用。次にアジアへの進出を見据えて、ベトナムでの現地採用を始めました。外国人社員はすべて日本人と同じ雇用条件です。不安感をなくすために同じ国出身のベテランがいる部署に配属したり、仲間同士の食事会に私も参加して風通しのいい関係をつくり、日本のマナーや文化をさりげなく伝えています」(日高工業会長 今村順氏)

岐阜県の機械設備メーカー、株式会社キョウワは、社員43名のうち、ベトナム人技術者が8名と2割を占める。今年はさらに3名が入社予定だ。

「2006年に採用したベトナム人技術者1期生の尽力もあって、2011年にベトナム進出をスムーズに果たしました。今や彼はベトナム拠点の幹部です。本社は関市の田舎にあり、技術者の採用に苦戦していたのですが、現地採用・教育システムを整えることでベトナム人技術者が来日してくれ、大きな戦力になっています」(キョウワ社長 臼田龍司氏)

ちなみにキョウワでは、空き家を活用して社員寮にし、1人1部屋のプライベート空間も用意している。「『空いていたわが家の離れに若い家族が住んでくれるのは安心』と話してくれる年配のご夫婦もいますね」と臼田氏。

「2社ともに、外国人社員からのボトムアップでグローバル化が進むいい例ですね。賃貸住宅の借り上げや永住申請の保証人、日本語教育といった生活支援にも会社ぐるみで取り組んでいます」とファシリテーターの南田氏は総括する。

サービス業の2社は「日本で新たな外国人マーケットができた」

右から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 南田氏、日高工業会長 今村氏、キョウワ社長 臼田氏、エス・ティー・シー人事部部長 藤氏、三重県南部自動車学校社長 加藤氏右から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 南田氏、日高工業会長 今村氏、キョウワ社長 臼田氏、エス・ティー・シー人事部部長 藤氏、三重県南部自動車学校社長 加藤氏

続いて、より日本語力が必要となるサービス業2社の取組みを聞いてみよう。

静岡県の株式会社エス・ティー・シーは26店舗の携帯電話ショップを運営し、県内企業29位の売上高を誇る。従業員280名のうち外国人スタッフは26名。中国、韓国、台湾、ブラジル、ベトナムなど多国籍だ。

「日本人の市場は頭打ちなので、在留外国人のマーケットに着目。とくにミャンマーのスタッフは珍しく、SNSで知った同国のお客様が来店してくれるようになりました。昨年は外国人向けの営業や販売フォローに特化した国際営業推進課を設立し、外国人スタッフのリーダーも育成していきます」(エス・ティー・シー人事部部長 藤正人氏)。

仕事は通訳ではなく、内容・雇用条件ともに日本人社員とまったく同じ。販売マニュアルの漢字を学ぶといった新人社員研修は少々大変だが、一方で帰国するための長期休暇を設けている。「今年から15連休の制度を始め、いずれは30連休まで延長する予定です」と藤氏は話す。

三重県南部自動車学校は、“ほめちぎる教習所”としてTVで紹介されたほか、中国人の指導員3名が活躍することでも話題になり、少子化のご時世でも入校者数が伸びている。

「オール中国語で免許が取れるため、合宿免許で遠方から訪れる中国の方が増え、入校待ちの状況です。中国人指導員の育成では『面接時に聞いていない業務は担当しない』と言われるなど文化の違いにお互い戸惑うこともありましたが、会話を増やしてクリア。春節は20日間休暇も可能にしています」(三重県南部自動車学校社長 加藤光一氏)

参加者との質疑応答では「『畑の作物を収穫された』といった地域住民とのトラブルはあるか?」という具体的な質問も飛び出したが、4社ともに「特に大きなトラブルはない」と回答。企業と外国人社員の信頼関係が伝わってきた。

外国人労働者の資格はさまざま。4月施行の「特定技能」とは?

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の南田氏による基調講演では、在留外国人の現況が国・県・同社が調査したデータで明快に示された。

『日本で外国人が働くための「在留資格」とは?』
●身分・地位に基づく在留資格(永住者、配偶者が日本人、日系3世など)=日本人と同じく就労の制限はない
●定められた範囲内で就労可能な在留資格(医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務など)=範囲外の仕事に就くことはできない
●技能実習生=技術・知識の習得が目的、最長5年で帰国
●留学生=原則就労不可。資格外活動として一定時間のアルバイトのみ

『在留外国人が働く企業規模は?』
99人以下の事業所が約75%。
「外国人の多くが働いているのは中小企業・小規模事業者」という事実は少々意外だった。

『新たな在留資格「特定技能」とは?』
技能実習生の制度にメスを入れた新たな在留資格「特定技能」が閣議決定し、2019年4月からスタートする予定だ。これは即戦力となる外国人を受け入れるための取組みで、人材不足が見込まれる14業種(介護、建設、一部の製造業、農業、漁業、外食業など)が対象。受け入れ業種ごとに「日本語能力水準」と「技能水準」が決められている。原則5年という期間は技能実習生と同じだが、同じ業種内で「転職が認められる」点が画期的だとか。

外国人の働き手について日本では賛否両論があるが、企業の取組みは一歩ずつ進んでいる。地域のグローバル化のひとつとして私たちも着目していきたい。

取材協力/愛知県 県民文化部 社会活動推進課 多文化共生推進室

「近年、外国人労働者の多国籍化が進み、全国で見ると中国とベトナムが各20%超でブラジルは9%。愛知県はブラジルがトップで25%を占めています」と南田氏「近年、外国人労働者の多国籍化が進み、全国で見ると中国とベトナムが各20%超でブラジルは9%。愛知県はブラジルがトップで25%を占めています」と南田氏

2019年 03月15日 11時05分