「おはようございます」。旅行客と住人が同じフロアで挨拶を交わす

地上5階建て全28室。うち14室が民泊として機能している『メゾンミラノ』。宿泊施設の運営・運営代行サービスを行う株式会社メインツリージャパンと事業主の株式会社ビーロット、リノベーション施工を行う株式会社ノットコーポレーションによるプロジェクトだ地上5階建て全28室。うち14室が民泊として機能している『メゾンミラノ』。宿泊施設の運営・運営代行サービスを行う株式会社メインツリージャパンと事業主の株式会社ビーロット、リノベーション施工を行う株式会社ノットコーポレーションによるプロジェクトだ

レモン、オリーブ、エスプレッソーーー、どの部屋にしようかな?オンライン予約の画面で迷ってしまう。そんな一部屋一部屋コンセプトが異なったインテリアが楽しめる民泊施設が大阪市北区にある。『メゾンミラノ』の注目ポイントは、これだけではない。建物に賃貸と民泊の部屋が半分ずつ共存しているのだ。

メゾンミラノは、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)ではなく、営業日数の制限がない、大阪市特区民泊の制度を利用している。
元々賃貸マンションとして利用されていた当物件は、築40年弱、居室の半分以上が空室という状況の中、当物件を取得し新オーナーとなった株式会社ビーロットからの委託により民泊施設として立て直すべくコンセプト提案から許可申請、運営オペレーションを株式会社メインツリージャパンが一手に引き受け2018年4月のオープン当初より稼働率は常時85%以上を維持し、老朽化した建物に新しい価値と収益性の向上をもたらしている。

ケータリングカーでの飲食ビジネス経験を活かして

民泊運営を行う株式会社メインツリージャパンの代表取締役山下実咲さんは、元々個人でケータリングカーでの飲食ビジネスを7年間行っていたという経歴の持ち主。全国各地北から南まで点々としながら商売をする中、様々な宿に宿泊する機会があった。その中で、グループ向けの宿が足りていないという現実を知った。

「ゲストハウスに泊まれない場合、ビジネスホテルしかない。私たちのようなビジネス利用は困らないが、ファミリーや訪日外国人の団体はいったいどうしているんだろうと疑問が沸いたんです。」次第に宿泊施設について考える時間が増えていき、自分でやろうと決意。2016年12月にメインツリージャパンを設立し、地元でもあり土地勘のある大阪でまず一つ目の宿泊事業をスタートさせた。

賃貸マンションについていたメゾンミラノという名前もそのままに、新築ではなく、元々あるものに価値をつけて活かそうという趣旨を大事にした。そして『ミラノ』から連想する『イタリア』というテーマで、各階で「FOOD FLOOR」や「FASHION FLOOR」などのジャンルを設けて、デザインチーム、施工チームと皆でブレストを重ねつつ空間デザインを決めていった。
当時ケータリングカーでクレープを販売していた頃、「多くのメニューの中からどれにしようか選ぶお客様のワクワクした表情や、楽しそうなリアクションを見るのが嬉しかった」という山下さん。
“自分で選ぶ楽しさ”に注目し、このサービスの価値をメゾンミラノにもスライドさせている。

民泊運営を始めるにあたって、元々賃貸として入居している住人へ直接訪問挨拶と書面で案内。近隣への住民説明会も行った。不安の声ももちろん上がったが、「受けた不安をひとつひとつ解決することで、相互のよりよいコミュニケーションに繫げたい」と山下さんは前向きだ。まだコミュニケーションが生まれているとまではいかないが、施設の近所で、住人が旅行客に道案内をするなどの光景も見られるようになっている。

メインツリージャパンの代表取締役山下実咲さん。メゾンミラノは、3つめの民泊運営物件だメインツリージャパンの代表取締役山下実咲さん。メゾンミラノは、3つめの民泊運営物件だ

中津という土地の魅力

株式会社メインツリージャパンが近所で経営する飲食店。地元のサラリーマンや住人が集まる。2階はゲストハウスになっており、海外観光客が1階でコミュニケーションしている様子も多々見受けられる株式会社メインツリージャパンが近所で経営する飲食店。地元のサラリーマンや住人が集まる。2階はゲストハウスになっており、海外観光客が1階でコミュニケーションしている様子も多々見受けられる

メゾンミラノの物件があるのは、大阪市北区の中津というエリア。大阪の北部の中心である梅田駅も徒歩10分圏内、大阪メトロ中津駅からも徒歩3分という好立地で、大阪・関西の旅の拠点として、連泊するグループ客が多いというのもうなずける。
大通りから一本入ると民家や古アパートが立ち並び、長く住んでいる単身世帯が多い。梅田のビジネス街にも近いため、中小企業のオフィスもある。地域密着型のスーパーや個人飲食店、若者に話題のカフェやセレクトショップなどが混在している町だ。

「線路一本向こうは梅田で、グランフロント大阪のような高層ビルが立っているのに、こちら側は”いつの時代のもの?”というようなデザイン看板のバイク屋さんが残っていたりします。線路をひとつまたぐと見える下町。この中津の雰囲気がどんどん好きになっています。この地域性や人情味が残る町の魅力を海外の人に知ってもらいたいです。
住人、旅行客という間柄は関係なく、そこにいるみんなの中で「おはよう」「おやすみ」、「いってきます」「いってらっしゃい」という会話が自然と飛び交えば最高ですよね。
中津の日常に旅行客が溶け込んでもらえるような仕組みを作りたいと思っています。これから中津が民泊事業で激戦区になれば最高です。」と山下さん。

「ここホテルじゃない?」といわれる民泊をやりたい

民泊運営で山下さんが力を入れているのは、サービスと清掃だ。トイレットペーパーがない、お湯が出ないなどの細かい申し出にも、宿泊客が想定するよりもスピーディに対応する。清掃については満足度の要にもなるため、会社内でクリーンスタッフを設け、外部委託をせずに自分たちで行うオペレーション体制をしっかりと組んでいる。

「今後、メゾンミラノのような賃貸と民泊の共存施設が増え、運営代行のニーズが増加すると考えています。なぜなら賃貸運営よりも民泊運営の方が、家賃収入が得られる可能性が十分にあるからです。
一般家庭並みのキッチンとダイニングがあり、しかも清潔なお部屋。
運営側やオペレーション側の想いって、お客様と密接にお話ができない分、清潔面や細かな気遣いでしか伝えられないと考えています。
『民泊なのにホテルみたい』と言われるようなサービスを心掛けたい。そうなれば、民泊はホテル以上の新しい存在になりうるのかなと。まずはそこが、私たちの達成すべき一つ目のゴールだと考えています。」

中津というエリアの魅力を広めつつ、民泊の価値を深めていく。これからの動きに期待したい。

家のようなダイニングスペースも。1階にはコインランドリーも併設し、長期滞在しやすい環境家のようなダイニングスペースも。1階にはコインランドリーも併設し、長期滞在しやすい環境

2018年 09月06日 11時05分