若者や観光客に人気のエリアに誕生した特区民泊マンション

2018年7月、住友林業株式会社が手掛ける初の民泊物件「フォレステイ心斎橋」がグランドオープン。場所は、おしゃれな洋服店やカフェなどが建ち並び、若い世代に人気のエリアである大阪市西区南堀江。地下鉄の四ツ橋駅から徒歩5分、JR難波駅からも徒歩10分ほどと、アクセスも便利だ。

東京と同じく大阪も、インバウンド需要に対応してホテルの開業ラッシュが見られる。同様に、民泊施設も増加しており、住友林業は、国家戦略特区に指定されている大阪市で特区民泊事業のスタートをきった。

特区民泊は、東京都内では大田区のみだが、大阪市は梅田や難波などを中心に広範囲で実施が可能。

住宅宿泊事業法(民泊新法)では1住宅あたり年間180日以内とされている営業日数も、特区民泊では制限がない。また、大阪市では2016年12月に、宿泊日数制限をそれまでの6泊7日以上から2泊3日以上に緩和した。

そんなこともあってか、内閣府地方創生推進事務局の2019年3月28日更新のデータによると、特区民泊が可能なエリアのうち、2019年2月28日時点で大阪市の認定居室数は2,053施設6,015居室と、断トツの数字となっている。

住友林業初の民泊物件「フォレステイ心斎橋」。写真右上は201号室、右下は401号室。運営は、民泊サービス業を展開する株式会社百戦錬磨の施設運営事業が分社化した株式会社REAH Technologies(リア・テクノロジーズ)が担当する住友林業初の民泊物件「フォレステイ心斎橋」。写真右上は201号室、右下は401号室。運営は、民泊サービス業を展開する株式会社百戦錬磨の施設運営事業が分社化した株式会社REAH Technologies(リア・テクノロジーズ)が担当する

賃貸マンションを民泊施設へリノベーション

民泊物件へのリノベーションとして、新たに取り付けた非常用照明民泊物件へのリノベーションとして、新たに取り付けた非常用照明

住友林業が民泊事業に進出したのは、ストック住宅事業の一環だという。「新築住宅の需要がだんだん減ってきている状況の中、いかにストック住宅を有効活用するか。それがまず事業の根底にありまして、住宅事業を主力事業の一つとする企業として、どのように携わっていくかを模索する中、マンションをリノベーションして再販するという取り組みを行っていたこともあり、同じようにストック住宅を活用してノウハウを活かせる道として、宿泊施設に着目しました。ちょうど大阪市内でもインバウンド需要が高まってきている時期でもありましたので、事業化をスタートしました」と、住友林業 住宅・建築事業本部 市場開発部の𠮷川貴祥さん。

大阪市内でも中心部の難波、心斎橋に近いエリア、そして特区民泊として認定を受けるための「一居室の床面積が25m2以上」という広さの確保、比較的築年数の新しいところという条件で探している中で出合ったのが、今回の「フォレステイ心斎橋」となった賃貸マンション。1フロア2室ずつで、1階部分はエントランスと店舗のため住宅戸数は全16戸。2017年の秋に購入した際には全室が入居中であったが、年末になって空いた1室から民泊住戸へのリノベーションが始まった。

特区民泊や簡易宿泊所では、近隣とのトラブルも問題になっているが、近隣住人、マンション内の別部屋の入居者への説明も行い、特に反対意見が出ることもなく、保健所の認定を取得した。

「民泊用のリノベーションでは、消防への申請や保健所の認定を取らなければなりません。それらの組成作業を進め、2018年7月に計5室でオープンしました。今後も空いた部屋からリノベーションをして、2019年の5月ごろには9室で稼働する予定です」。

住友林業らしさを取り入れたプレミアムルーム

元々の賃貸マンションが2019年7月で築6年ということで、大きな修繕などの必要はなかったが、アクセントクロスで見栄えをアップしたり、床材を張り替えたりと、工夫を施した。

間取り変更は行わず、13.6畳のLDK部分にダブルベッドを置き、その奥に位置する6畳の洋室部分にテレビやソファーベッドが配置されている。

「民泊物件にするにあたって住宅メーカーとして意識したことは、家に泊まりに来ていただくイメージ。宿泊施設ですけれども、家のようにくつろげるようにということを、運営会社さんと共に心掛けています」と𠮷川さん。

最初に手掛けた201号室は「プレミアムルーム」として、住友林業らしい造りに。オーク材を使った腰壁や、ナチュラルテイストの家具などで木質感を演出。随所に観葉植物が置かれているのも特徴だ。

また、プレミアムルームにふさわしく、寝心地にも追求。腰壁や照明器具などは、「木の内装と間接照明の組み合わせが睡眠の質の改善や疲労の軽減につながる効果がある」という住友林業筑波研究所の研究成果による設えになっているのだ。

201号室の室内<写真左上>腰壁、照明など、住友林業筑波研究所の研究成果を基にした設えに<写真左下>ナチュラルテイストの家具を採用<写真右上>観葉植物で癒し空間に<写真右下>ベッドルームと奥の洋室は仕切ることもできる201号室の室内<写真左上>腰壁、照明など、住友林業筑波研究所の研究成果を基にした設えに<写真左下>ナチュラルテイストの家具を採用<写真右上>観葉植物で癒し空間に<写真右下>ベッドルームと奥の洋室は仕切ることもできる

45m2という広さが海外からの利用客に好評

民泊用に稼働している部屋は、すべて異なる内装となっている。例えば202号室は住友林業グループのオリジナルキャラクター「きこりん」のぬいぐるみが置かれ、それに合わせたかわいらしい雰囲気に。401号室は、花柄やピンク色など女性に好まれる配色となっている。

取材で部屋を見せていただいて、まず感じたのは45m2という広さ。ダブルベッド2台、ソファベッド1台、テーブルセットが置かれていても、狭さを感じず、快適に過ごすことができるだろう。クローゼットは、スーツケースもしまえる十分な広さだ。

もちろん、タオルやアメニティ、洗濯機、冷蔵庫、電子オーブンレンジ、食器、調理器具と備品、設備もそろっている。

𠮷川さんに現在の利用状況を聞くと、「外国人と日本人の割合は9対1くらいです。海外の方の中では、韓国、香港、台湾、中国の方が7~8割を占めます。大阪はアジア圏からの旅行客が特に多く、近年、関西国際空港にLCC(格安航空会社)の乗り入れが増えたことが背景にあると思います。」とのこと。

掲載する宿泊ポータルサイトでは、広さや環境、清潔さが評価されているそうだ。今は海外客の利用が圧倒的だが、観光に人気のエリアに位置し、宿泊料は定員5名で1室当たり1泊1万6,500円~(※利用は2泊以上)というのは、家族連れなどの国内旅行でもかなり魅力だ。

401号室は日本の女性が“女子会”で利用することも想定した部屋にしているとのこと。民泊という言葉はよく耳にしても、日本人の利用はまだ少ないように感じる。だが、こういったホテルとほぼ同じ感覚のマンションスタイルで、認知度がさらに高まれば、今後は国内旅行客の利用も増えるのではないだろうか。

<写真左上・左下>住友林業グループのオリジナルキャラクター「きこりん」をモチーフにした202号室</BR><写真右上・右下>女性好みの設えになった401号室。家具や絵画なども部屋ごとにスタイルががらりと変わる<写真左上・左下>住友林業グループのオリジナルキャラクター「きこりん」をモチーフにした202号室
<写真右上・右下>女性好みの設えになった401号室。家具や絵画なども部屋ごとにスタイルががらりと変わる

ノウハウを蓄積して新たな再生事業に活かす

今回取材にお答えいただいた、住友林業の𠮷川貴祥さん。大阪での民泊事業を開業前の準備から担当。2019年4月からは東京に移り、そのノウハウを活かしていくという今回取材にお答えいただいた、住友林業の𠮷川貴祥さん。大阪での民泊事業を開業前の準備から担当。2019年4月からは東京に移り、そのノウハウを活かしていくという

以前から推進している既存ストックの利活用と共に、インバウンド需要に向けたインフラ整備を目的に特区民泊事業をスタートさせた住友林業。すでに大阪市内で2軒目の民泊用物件を取得済みで、開業に向けて準備中だという。

「大阪市内の特区民泊で物件を増やしていくことで、プラスアルファとして宿泊施設の運営ノウハウが蓄積されます。今後はそれを古民家再生といった分野で発揮できないかなと考えています」と𠮷川さん。

ストック住宅に新しい価値を加えて後世につなぐ。民泊事業もその一端を担う、住宅メーカーとしての取り組みが興味深かった。

取材協力:住友林業  https://sfc.jp/

2019年 05月18日 11時00分