景気動向をつかむ指標にもなるオフィスビルの空室率や家賃上昇率

「景気がいい」「景気が悪い」。皆さんは何を基準にこれを判断しているだろう。例えばサラリーマンならば、給料のベースアップをあげる人が多いのではないだろうか。しかし、そもそもベースアップは企業の業績が上がっていることが前提だ。そのような企業の景気動向を包括的に見る指標の1つにオフィスビルの空室率や家賃上昇率がある。

ほとんどの企業の経営者は、オフィスを立ち上げたり、移転する際に立地にこだわる。「東京駅から徒歩○分」といった立地条件の良し悪しは業績に直結する。また、誰もが知っている主要駅前にオフィスを構えることは、企業の信用度アップにもつながる。それゆえ、企業というものは成長するにしたがって、より良い立地と高いグレードのオフィスビルへ移転していくのが一般的だ。一方で業績が悪化すれば、支店を撤退させたり、最悪の場合は廃業・倒産となる。つまり、オフィスビルの空室率や家賃上昇率は景気の鏡ともいえる。

2018年1月22日、事業用総合不動産サービスを提供するCBRE(シービーアールイー)株式会社が、全国13都市のオフィスビル市場動向(2017年第4四半期)を発表した。この資料を基に全国各都市のオフィスビル市場の現状と、今後の変化を探ってみよう。

なお同社では、オフィスビルを立地や延床面積などによって、グレードAからオールグレードまで4つに分類している。下の表がそれをまとめたものだ。この表を参考に読み進めてほしい。

CBREではオフィスビルを立地や延床面積などによって4つのグレードに分類している(CBREの資料を基に作成)CBREではオフィスビルを立地や延床面積などによって4つのグレードに分類している(CBREの資料を基に作成)

東京のみ雲行きがあやしい三大都市の市場動向

●東京23区のオフィスビル市場動向
2017年第4四半期の東京23区のオールグレード空室率は、対前期比からマイナス0.2ポイントの1.5%となった。これは業績が好調で、立地条件の改善やオフィスのグレードアップに前向きな企業が増加していることを背景としている。中でも比較的大手企業が対象となるグレードAの空室率は、対前期比マイナス0.7ポイントの1.8%で、3期連続の低下となった。ただし、2018年は前年の2倍近い新規供給が予定されており、すでに既存ビルでは、設定賃料の見直しでテナントを繋ぎとめようとする動きがある。CBREでは、今後このような借主優位な状況が浸透し、グレードAの想定成約賃料は2018年通年で3.0%下落すると予想している。

●大阪のオフィスビル市場動向
2017年第4四半期の大阪のオールグレード空室率は、対前期比からマイナス0.2ポイントの2.5%。これで1993年第1四半期の調査開始以来の過去最低値を、4期連続で更新したことになる。中でもグレードAの空室率は、2005年の調査開始以来の最低値である0.3%で前期比横ばいとなった。この高い需要の背景には、好立地やハイグレードビル不足がある。そのためグレードAの想定成約賃料は、2017年通年でプラス7.9%と、リーマンショック前年である2007年以来の上昇率となった。CBREでは、この高い需要は長期化し、2018年通年のグレードAの想定成約賃料は3.4%上昇すると予想している。

●名古屋のオフィスビル市場動向
2017年第4四半期の名古屋のオールグレード空室率は、対前期比マイナス0.8ポイントの2.6%。1999年第1四半期以来19年ぶりに3%を割った。立地改善やグレードアップに前向きな企業が多い一方で、2019年まで新規供給の予定はない状況。そのため、空室率はさらに低下する見込みだ。このような需要の高まりを受けCBREでは、グレードAの想定成約賃料は2018年通年で1.2%上昇すると予想している。

東京、大阪、名古屋の空室率は、すべて減少傾向。企業の業績が好調な表れだ(CBREの資料を基に作成)東京、大阪、名古屋の空室率は、すべて減少傾向。企業の業績が好調な表れだ(CBREの資料を基に作成)

神戸・札幌・福岡のオフィスビル市場動向

2017年第4四半期では、調査したすべての地方都市において空室率の低下が進んでいる。例えば神戸の空室率は、過去最低値を2期連続で更新した。また、想定成約賃料は、全国13都市のすべてが上昇。札幌、福岡では2期連続で対前期比プラス2%以上の上昇率となった。特に福岡の上昇率は顕著で、対前年比プラス11.1%となり、調査開始以来最高の伸び率を記録した。

上記のように現在のオフィスビル市場は、全国において活況を呈している。また、一部の地域を除きこの状況は長期化するとの見方が強い。この明るい状況を多くの人たちが実感できるのはいつになるのか。期待を込めて次回の発表も注視したい。

地方都市においても空室率の低下が進んでいる。神戸の空室率は過去最低を2期連続で更新。札幌、福岡の市場も活況で、想定成約賃料も上昇している(CBREの資料を基に作成)地方都市においても空室率の低下が進んでいる。神戸の空室率は過去最低を2期連続で更新。札幌、福岡の市場も活況で、想定成約賃料も上昇している(CBREの資料を基に作成)

2018年 04月05日 11時07分