神楽坂のイメージを模した外観も印象的

張り出したバルコニー、1階外壁の神楽坂をイメージした黒い板張り、白い石が印象的な外観張り出したバルコニー、1階外壁の神楽坂をイメージした黒い板張り、白い石が印象的な外観

東京メトロ東西線神楽坂駅から歩いて7分。ちょっと分かりにくい路地の奥に「オートルフォワ神楽坂」がある。建物外観は、遠目からはコンクリート打ちっ放しに四角いバルコニーが付き出した現代的なスタイルだが、近寄ると外構に神楽坂の雰囲気に合わせた黒板塀を模したものになっており、足元には玉砂利、石畳も。物件名のオートルフォワはフランス語で「いにしえの」という形容詞だそうで、アンティーク家具、神楽坂のイメージを重ねたもの。外観からして期待が高まる物件である。

間取りは2~4階が22m2前後のワンルームで階段を挟んで左右に1室ずつ。1階はワンルームに地下室(窓、ドライスペースなどの要件を満たしていないため、法規上はサービスルーム)を備えたメゾネットで面積は40m2前後。室内も壁、天井はコンクリート打ちっ放しになっており、床はフローリング。それだけならごく普通の部屋だが、そこにアンティーク家具が入るとなるとがらりと様相が変わる。

しかし、なぜ、アンティーク家具?

企画、管理を担当するPM工房社の久保田大介氏は最初、オーナーから「家具・家電付き物件にしたらどうだろう?」と言われたものの、それでは差別化にならないと考えた。他にもあるからだ。加えて、退去後の家具・家電は次に使いにくい。だとしたら、最初から古いモノ、つまりアンティークにしたらどうかと提案したという。アンティークなら多少入居者が使うことで傷がついたとしても、それも味になる。だったら、何度でもずっと使えるというわけだ。

全室異なるテーマを決めて家具、小物を配置

白い小型マントルピースのある部屋は2室あり、ご覧の通り、かなり雰囲気が違う(撮影:大島康広)白い小型マントルピースのある部屋は2室あり、ご覧の通り、かなり雰囲気が違う(撮影:大島康広)

さらにこだわったのは全室に異なるテーマを設定、全く違う家具を置くということ。そうすれば、他の物件と同物件の比較ではなく、この物件内のどの部屋にするかで選んでいただけるだろうと考えたため。実際、内覧に来た人は「あの部屋のほうが家具が好みだが、間取りはこちらが」などと悩んだ例が多いそうで、中には家具の交換を言い出した人もいたとか。ひとつとして同じものがない、アンティークならではである。

買い付けに当たったのは久保田氏が以前、企画した物件に居住するグラフィックデザイナーで、自室DIY時のセンスを買われてのこと。モノとしては50年以上、中には100年超であることが明らかなモノまである。首都圏のみならず、全国のアンティークショップを検討、メインで選んだのは広島で築80年の診療所を店舗に、ヨーロッパから直接買い付けを行っているショップ、「リ・カムアクロス」。一部は目黒や仙台で買い付けたものもあるそうだが、海外からの買い付けであれば、首都圏が有利というわけではないらしい。

実際、室内には都内のアンティークショップの人たちが驚いた希少品も置かれており、特に注目なのが2室に置かれている、小型の白いマントルピース(暖炉飾り)で、珍しいものである。マントルピース自体は出回っているものの、ワンルームに置いても違和感のない小さめタイプは非常に少ないというのである。趣味のない人間からすると、なんでもないようだが、好きな人にはたまらないらしい。事前に情報を公開した2017年1月16日から2月4日までの20日間で152件の問合せが入り、2月5日の内見開始後30分で半分の4戸の申し込みというから、驚くしかない。

椅子とテーブルという同じアイテムでも、雰囲気は別物

では、実際の部屋をご紹介しよう。まず、1階の地下スペースのある住戸のうち、101号室は「くつろぎカフェ空間」。大きなトランクを机代わりに置き、それを挟んで椅子が2脚置かれている。椅子はもちろん、室内にあるアンティークはすべて使って良いことになっており、トランクも物入れとして使える。面白いのは何室かに置かれていたアルバムも自分の写真を入れて使えること。ただし、退去時にはアルバム本体は置いて出なくてはいけない。となると、長く住む人が増えるのではと久保田氏は考えている。

同じ1階のもう一部屋は一角にトップライトがあるのだが、その下に階段状になった棚が飾られている「階段を飾ろう」というテーマの部屋。不思議な家具だが、モノを飾ることから部屋をアレンジするという考えは新鮮。どうしても現実的に収納やモノが置けるかということから考えがちなインテリアを「家具のために」から発想してみると楽しい部屋ができるかもしれない。

2階以上の6室は基本、椅子と机があり、プラス αというアレンジになっているのだが、机が異なることでそれぞれが違う部屋になっている。たとえば、202号室は「自分だけの書斎」と題したライティングビューロー(書き物、収納が同時にできる机)が用意されており、合わせてスーツなどが掛けられるハンガーもあって男性向きのイメージ。人数に合わせて天板を伸縮させられるバタフライテーブルが置かれた302号室「ぬくもりのある部屋」にはカラフルな色の椅子が用意されており、どちらかと言えば女性向きなイメージだ。

上の2点は1階2室の地下スペース。階段状の棚の上にはトップライトがあり、光が差し込むようになっている。下の2点の机の違いに注目(撮影:大島康広)上の2点は1階2室の地下スペース。階段状の棚の上にはトップライトがあり、光が差し込むようになっている。下の2点の机の違いに注目(撮影:大島康広)

一室の予算は20万円、手紙や窓など変わった品も

椅子、机や棚はごく普通にある家具だが、部屋によっては不思議な品も。たとえば、「壁を飾ろう」というテーマの402号室には元々、教会の壁を彩っていたであろう、木製のチャーチパネルという壁の一部が置かれ、実にシックな雰囲気。この部屋には額に吊るされた古い手紙もインテリアとなっており、お値段は1500円ほど。1室全体ではアンティーク家具だけで平均20万円ほどかかっいるとか。といってもまとめて購入しているので、定価で買うと数割高いというから、かなり、お金をかけた部屋といえるだろう。

だが、家具だけで入居が決まったわけではない。新築でもあり、オートロックや防犯カメラなどといったセキュリティー、バス・トイレ別、浴室乾燥機、シャワートイレなどを備えた水回り、インターネット無料などと設備も充実しており、さらに細かい心配りがある。たとえばトイレットペーパーホルダーを付けにくい部屋には、ペーパーをストックしておける小型家具を設置したり、洗濯機が置けるかどうか気になる人のためには小型洗濯機を置いて見せたりなどなど。しかも、この洗濯機は2~4階の入居申込者のうち、希望者にはプレゼントするとしており、全員が希望したそうだ。

室内にあるアンティーク家具はすべて使用可。小物として置かれているアルバムなども同様で、自分の写真を飾って楽しめる室内にあるアンティーク家具はすべて使用可。小物として置かれているアルバムなども同様で、自分の写真を飾って楽しめる

設備や使い勝手への工夫も人気の要因

窓際に用意された物干し竿を掛けるためのバー。使っていない時にはあまり目立たない窓際に用意された物干し竿を掛けるためのバー。使っていない時にはあまり目立たない

部屋自体の使い勝手にも工夫がある。それが天井に設置されたダクトレールとフック。レールに沿って動かすことで照明の位置を移動できるほか、ダクトレール内のコンセントからコードを伸ばし、フックに引っ掛ければ好きな場所に照明を設置できる。もちろん、コード以外のモノをぶら下げて楽しむ手もある。

個人的には室内の窓辺に設置された物干し金具がコンパクトで使いやすそうと感じた。必要に応じて引き出して使うタイプで、使わない時にはさほど目立たたないのが◎。ファミリータイプの場合なら気にならないかもしれないが、1室になにもかにもが収まるワンルームの場合、室内にはあまりデザインのないモノは置きたくないものである。

最後に気になる賃料だが、ワンルームで10万円前後、地下スペースのあるタイプは15万円強になり、共益費は5000円。相場よりも1割くらいは高いそうだが、今回の募集では残念ながら、17日間で全室埋まってしまった。気になるようなら専用ホームページがあるので、時折チェック。空室を待ちたいところだ。

2017年 03月28日 11時03分