東日本大震災と地球温暖化が「低炭素建築物認定制度」を後押し

東日本大震災をきっかけにエネルギーの需要と供給のバランスが変化した。これにともない人々のエネルギー・地球温暖化に関する意識も高まり、その対策は急務となっている。
そこで政府は建築物の低炭素化(省エネ化)の普及を図るため昨年(2012年)12月に「低炭素建築物認定制度」をスタートさせた。
また、今年(2013年)10月には同制度よりも若干認定基準が低い「改正省エネ基準」も施行予定だ。国土交通省は2020年までにこの基準の義務化を目指している。
その前段階となる低炭素建築物認定制度。この制度に認定された住宅には同基準以上の様々な優遇措置が用意されている。

低炭素住宅には「住宅ローン減税の最大控除額拡大」5つの優遇措置がある

ここで低炭素住宅の主な5つの優遇措置を紹介する。

1.住宅ローン減税の最大控除額拡大(図A)
最大控除額が20万円から30万円に拡大される(平成26年3月まで)。
2.登録免許税の軽減
住宅用家屋の所有権の保存登記の税率が0.4%から0.1%になるなど、いくつかの登記にかかわる税率が軽減される。
3.贈与額の非課税枠の引き上げ
低炭素住宅を含む省エネルギー性または耐震性基準を満たす住宅を取得するために贈与を受ける場合は、それ以外の住宅よりも贈与税の非課税限度額が増額される(平成26年12月31日まで)。
4.容積率の緩和
低炭素住宅の認定基準に適合させるための設備設置のために容積率がオーバーしてしまう場合は、延床面積の20分の1を限度に容積率に不算入となる。
設備例:太陽光発電システム、燃料電池設備、雨水・井戸水・雑排水利用設備

5.フラット35S(金利Aプラン)による金利引き下げ(図B)
フラット35の金利を当初10年間年0.3%引き下げるフラット35S(金利Aプラン)の利用が可能。

A.住宅ローン減税の最大控除額 B.フラット35S(金利Aプラン)は当初10年間の金利が0.3%引き下げられるA.住宅ローン減税の最大控除額 B.フラット35S(金利Aプラン)は当初10年間の金利が0.3%引き下げられる

認定基準は3項目。「断熱性能」「一次エネルギー消費量」「その他の低炭素化に資する措置」

低炭素住宅の認定基準は以下の3項目をすべて満たすことだ。

1.住宅の断熱性能
断熱性能はUA値とηA値という基準で測定。UA値は住宅の内部から外部へ逃げる熱量を外壁や屋根、床など家の外側全体の面積(外皮面積)で割ったものだ。またNA値は冷房をする時期に住宅へ侵入する日射量を外皮面積で割ったもの。これらの値が認定基準を満たすかどうかは、建築依頼先が算出する。
2.一次エネルギー消費量
一次エネルギーとは石油、石炭など自然から採取したままの状態のエネルギーのことだ。一方で電力や都市ガスなど加工されたエネルギーを二次エネルギーという。低炭素住宅の認定では、冷暖房や照明、給湯などで消費されるエネルギーを合計し、一次エネルギーに換算したものが指標となる。また、太陽光発電システムなどの創エネ設備を設置すると消費エネルギーから差し引くことができるので有利になる。
3.その他の低炭素化に資する措置
その他の低炭素化に資する措置とは、以下の8項目の中から2項目を選択することで認定条件を満たすことになる。
(所管行政庁(都道府県庁など)から一定以上の環境性能があると認められることでも条件を満たすことが可能)

選択項目
1.節水に資する機器の設置2.雨水または雑排水利用3.HEMSの設置4.定置型蓄電池の設置5.一定のヒートアイランド対策 6.住宅の劣化の低減に資する措置7.木造住宅8.高炉セメントなどの使用

認定件数は毎月増加しているものの長期優良住宅には遠く及ばず

このように低炭素住宅の認定基準のハードルはけっして低くない。
しかし、その認定件数は毎月徐々にだが増加している。国土交通省が今年(2013年)7月に行った調査によると、制度スタート翌月の2012年1月が16件だったが、2013年6月は159件と約10倍となった。

とはいえ、同月の長期優良住宅の認定件数は約1万件なので、まだまだ圧倒的に少ないと言えるだろう。

↓新築低炭素住宅の認定実績
(国土交通省「都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく低炭素建築物新築等計画の認定状況」を基に作成)

新築低炭素住宅の認定実績
平成24年度 平成25年度 合計
1月 2月 3月 年度計 4月 5月 6月 年度計
16 29 93 138 98 127 159 384 522

建築依頼先が求める仕様規定が作成されてからが本当の拡大期に

雑誌、日経ホームビルダーが2012年12月に行った調査によると、一般消費者の低炭素住宅の認知率は46.2%だった。認定件数の少なさの理由は、この認知率の低さもあるだろう。
しかし、これには本来認知を促すべき建築依頼先側があまり積極的でないという側面もある。

その原因は前述の断熱性、一次エネルギー消費量の算出があまりにも煩雑だということだ。
これまでの省エネ基準(平成11年基準)をクリアする際には仕様規定というものがあった。これは「この構造の外壁の場合、この種類の断熱材を○○cm使用する」といった規定を守って施工すれば、計算することなく基準を満たすことができるというものだ。これまで11年基準の認定受けた建物の9割以上は仕様規定を採用したと言われている。
しかし今回の低炭素住宅に関しては、まだそのような仕様規定がない。
関係省庁はこれを作成する準備に取り掛かっているものの、現時点ではまだ未定だ。そのため中小工務店を中心に低炭素住宅の案内が滞りがちになっている。

仕様規定が作成されるまでは各社によって低炭素住宅の取り扱いに得意・不得意があるので、過去の実績や低炭素住宅に対する考え方をよく確認して依頼先決定の判断をしてほしい。

2013年 09月27日 12時00分