2013年に続いて2回目。暮らしに対するリテラシーを醸成する展示会

研究会、シンポジウム、書籍の発刊、展覧会などさまざまな方法で、住まいの“新しい常識”を考え、発信する「HOUSE VISION」。2013年に続き2回目となる展示会、「HOUSE VISION 2016 TOKYO EXHIBITION」が東京都江東区青海で8/28まで開催中だ。

今回のテーマは、「CO-DIVIDUAL 分かれてつながる/離れてあつまる」。経済の停滞、超高齢化社会の到来、災害対策など、近い将来においても課題が山積している日本。一方、昨今のテクノロジーの進化により、新しい未来を創造可能なのも事実。その可能性を、デザイナー原研哉氏のディレクションのもと、企業と建築家/クリエイターとの協働によってつくられた12の展示棟で表現しているのがこの展示会だ。

「社会の課題、ハイテクノロジーがもたらした世界の変化などを考慮しながら、これからの私たちの暮らしを考えると色々なアイデアが浮かんできます。文字にする、絵に描くという方法もありますが、それを誰もが関わりのある住まいで、しかも1分の1の原寸大で表現したのがHOUSE VISION 2です」と、広報担当の夏目康子さん。

少し未来の暮らし方や産業の方向性などの可能性を探るという目的が先にあり、それを誰もが密接に関係のある「家」で表現しているHOUSE VISION 2。
それでは、そのいくつかを紹介し、近未来の暮らしの可能性を垣間見てみよう。

再利用を前提に105ミリ四方の角材をほぼ加工なしに積み上げてつくったエントランス。</br>会場はゆりかもめ「青海」駅から徒歩3分ほど。会場ではコーヒーやビールなども楽しめる再利用を前提に105ミリ四方の角材をほぼ加工なしに積み上げてつくったエントランス。
会場はゆりかもめ「青海」駅から徒歩3分ほど。会場ではコーヒーやビールなども楽しめる

木の香りに包まれる「吉野杉の家」。新しいAirbnbのカタチを提案

吉野の杉や檜の清々しい香りに包まれた、木の美しさや魅力が実感できる2階のゲスト空間。無垢の円卓や湯飲みなども吉野の杉や檜が用いられている吉野の杉や檜の清々しい香りに包まれた、木の美しさや魅力が実感できる2階のゲスト空間。無垢の円卓や湯飲みなども吉野の杉や檜が用いられている

高齢者による一人暮らしの増加、また若者の晩婚化・未婚化など単身世帯が増加し続けていることから、今後地域コミュニティの必要性がさらに高まると考えられる日本。その地域コミュニティ活性化の具体例となるのが、Airbnbと建築家・長谷川豪氏がコラボした「吉野杉の家」だ。

この吉野杉の家、奈良県吉野町で一旦組まれた家を分解し、5台のトラックで会場に運ばれてきたもの。展示会後は再び吉野町に「帰郷」し、吉野川のほとりに設置される。

「例えば私の家に空いている部屋があったとして、それをAirbnbに登録して海外から旅行客が泊まりに来るとします。ガイドブックに載っていないようなお店に連れて行って一緒に食事を楽しんだりすることで、交流を深めることができますよね。それを、個人ではなく、吉野町全体がホストとなって行おうとするのが、吉野杉の家なのです」(夏目さん)

縁側で寛ぐおじいちゃんおばあちゃん、そして町の人々。そこに海外からの旅行客が一緒になってお茶を飲みながら談笑し、夜になったら2階の寝室で休む。このようなAirbnbの新しい形を提案している吉野杉の家。
「外国人旅行旅行客との楽しく新鮮な触れ合いが、高齢者の暮らしに対するモチベーションを高めるのではないでしょうか」と夏目さん。地域全体、暮らす人々がホストとして活躍する、新たなAirbnbの形を提案している。

共用空間を広くすることで、賃貸住宅を地域コミュニティの場に

従来の賃貸住宅を一度「個人空間」と「共用空間」に解体し、物理的に再構築したのが、大東建託と建築家・藤本壮介氏がコラボした「賃貸空間タワー」だ。賃貸住宅で多く見られる専有空間が大きく、共用部分は通路のみという構成ではなく、プライベート空間を最小化し、キッチンや浴場、シアタールームや庭などに広々とした空間を確保。シェアハウスとも異なり、プライベートと共有部分を鮮明に区分けし、それらを新たに結合し直すことで気持ちのいい賃貸住宅の形を提案している。

「通り抜けできるようになっているので、街の銭湯のような感覚でお風呂を開放することもできます。ライブラリーも、ルールを決めて住人以外の人も使えるようにすることで、新しいコミュニティができるでしょう」(夏目さん)
共有スペースに住人だけでなく街の人も集まる、新しい賃貸住宅の提案と言えるだろう。

賃貸住宅のさらなる可能性を探求して完成した「賃貸空間タワー」。キッチンや風呂、ライブラリー、階段や廊下は</br>広々としたスペースを確保。住人以外も時間単位で借りることができるので、近隣住人とのコミュニティ形成の中心となる、</br>新しい賃貸住宅の形を提案賃貸住宅のさらなる可能性を探求して完成した「賃貸空間タワー」。キッチンや風呂、ライブラリー、階段や廊下は
広々としたスペースを確保。住人以外も時間単位で借りることができるので、近隣住人とのコミュニティ形成の中心となる、
新しい賃貸住宅の形を提案

「家」は日本の諸問題を解決する鍵。その可能性を追求する

床や壁など、家づくりをする時にこだわりたいのが木材だ。床にこだわりの無垢材などを使えば室内がグッと引き立つほか、温もりのある優しい空間になる。
それを、木材を使わずに印刷された木目で実現したのが、凸版印刷と日本デザインセンター 原デザイン研究所がコラボした「木目の家」。世界各地から集めた木材を細胞レベルまで観察し、その特長を最大限に生かした木目表現を研究している凸版印刷の高い技術力が感じられる。座るだけでストレスチェックができるベンチも面白いので、ぜひ体験してはいかがだろう。

紹介したほかにも、冷蔵庫が外から開く家のようなIT技術を駆使した近未来の家、IoT(Internet of Things)技術を体感できる住まい、給排水システムを天井にまとめることで自由な空間レイアウトを叶えた家など、これからの暮らしや住まいの進化形を垣間見ることができる。

すべての人の生活の基盤となっていると言える「家」。その家が変わることで、未来がより良い方向に変わるのではないかと期待を抱かせる展示会だ。興味深い12の提案を見に、ぜひ足を運んでいただきたい。

■HOUSE VISION2ホームページ/http://house-vision.jp/exhibition/
会期は8月28日(日)まで。入場料1,800円。

左上/本文で紹介した「木目の家」。印刷とは思えないクオリティ </br>右上/ヤマトホールディングス×柴田文江氏が提案する「冷蔵庫が外から開く家」。このようなサービスも現実になるだろう </br>右下/三越伊勢丹×谷尻誠氏・吉田愛氏が協働した「遊動の家」。</br>定点居住というよりも仕事で移動が常態となったような人々を対象とした、百貨店の高い商品調達力が感じられる住まい </br>左下/会場の一角にある「市松の水辺」は、住友林業と、樹木を自在に操る西畠清順氏、建築家の隈研吾氏のコラボによるもの。</br>銭湯や掘りごたつのようにリラックスしながら、水に足を浸けて涼むことができる左上/本文で紹介した「木目の家」。印刷とは思えないクオリティ 
右上/ヤマトホールディングス×柴田文江氏が提案する「冷蔵庫が外から開く家」。このようなサービスも現実になるだろう 
右下/三越伊勢丹×谷尻誠氏・吉田愛氏が協働した「遊動の家」。
定点居住というよりも仕事で移動が常態となったような人々を対象とした、百貨店の高い商品調達力が感じられる住まい 
左下/会場の一角にある「市松の水辺」は、住友林業と、樹木を自在に操る西畠清順氏、建築家の隈研吾氏のコラボによるもの。
銭湯や掘りごたつのようにリラックスしながら、水に足を浸けて涼むことができる

2016年 08月24日 11時07分