風営法改正のポイントをおさらいしよう

会場は満席。「経済」という少しとっつきにくい話題ではあったが、ゲストのわかりやすく楽しい話に、客席から時に笑い声があがる楽しいイベントとなった会場は満席。「経済」という少しとっつきにくい話題ではあったが、ゲストのわかりやすく楽しい話に、客席から時に笑い声があがる楽しいイベントとなった

今年6月に風営法が改正されたことで話題となった「ナイトエコノミー(夜の経済)」。にわかに夜の経済の注目が高まる中、Next Wisdom Foundation主催の「踊るケイザイNight ~夜に花開く文化と経済」と題した、夜の文化・経済を探るイベントが開催された。多彩なゲストによる、真面目な話から「夜の話」まで、幅広く繰り広げられた3部構成イベントの様子をお伝えする。

まずその前に、「夜の経済」のポイントとなる風営法改正について簡単に説明しておこう。
クラブなどダンス営業の規制を緩和する「改正風俗営業法」が施行されたのが、今年6月23日。改正前は客に踊りや飲食を提供するクラブの営業を原則午前0時(最長午前1時)までに制限していたが、その規制がなくなり24時間営業が可能となった。

改正法は、飲食を提供し、客が音楽に合わせて踊るクラブについて、店内の照明が休憩時間中の映画館と同じ程度の10ルクス超の明るさであれば、通常の飲食店として午前0時以降の営業を認めるというもの。午前0~6時に酒類を提供する店は新たに「特定遊興飲食店営業」と分類し、都道府県公安委員会の許可制とした。この「特定遊興飲食店営業」の許可を受ければ、原則24時間の営業が可能となり、深夜の営業ができるようになったのである。

風営法が改正されて、日本の夜に何が起こっているのか

3部構成のPart1は、「夜の経済ナウ」がテーマ。POOL INC. CEOでNext Wisdom Foundation理事の小西利行さんをモデレーターに、A.Tカーニー 日本法人会長の梅澤高明さんと、弁護士の齋藤貴弘さんをゲストに、トークが進められた。

風営法の改正により、ゲストの2人が今後夜の経済がどのように変わっていくと考えているのかを述べた。
「一言で説明すると、朝まで様々な業態の店が色々なコンテンツを提供できるようになります。いわゆる踊るクラブが朝まで営業できるということのほかに、食事やパフォーマンス、とにかくいろんなことが朝までオープンするという状態になります。そこから先はそれぞれの企業の創意工夫次第で、可能性は無限にあるのではないでしょうか」(梅澤さん)

「夜の文化はアングラなため、今までは参入できるプレーヤーが限られていました。本当に好きな、濃い人達がひとつの夜の文化を脈々とつくってきたことが面白く、独特だと思います。
その一方で、大きな資本が入れなかったことで、なかなか大きな経済や産業に発展するには至らず、市民権を得られませんでした。それが風営法改正により適法で営業できることで大きな資本が入ることにより、今まで好きな人たちが地道に作り上げてきた様々なコンテンツがもう少し花開くようになっていけばいいと思っています。色々なプレーヤーが参加することで、様々なコンテンツが出てくるのではないでしょうか」(齋藤さん)

左から小西さん、梅澤さん、齋藤さん。風営法の改正のよる今後の夜の経済についてわかりやすく説明を行った左から小西さん、梅澤さん、齋藤さん。風営法の改正のよる今後の夜の経済についてわかりやすく説明を行った

夜の経済が活性化すれば、その市場規模は数千億円にも!

国家が成熟し、「昼の経済」では急カーブを描く上昇はまず見込めない日本。期待される「夜の経済」が活性化したら、一体どれ位の市場規模が見込まれるのだろう?

「ロンドンのナイトクラブで調べたら、約2600億円の経済効果がありました。ナイトクラブだけでこの数字です。現在インバウンドで約2千万人の外国人が日本に訪れており、2020年には、これを4千万人まで増やそうとしています。一人当たり平均で14万円ぐらい使っているのですが、夜の品揃えがものすごく増えたら14万を15万にできると思いませんか? 
ひとり1万円多く使ってくれたら、4千万人いたら4千億円です。2万円多く使ってくれたらプラス8千億円ですから。経済的にも大きいと思います」(梅澤さん)

「クラブカルチャーという意味でいちばん面白い文化を発信しているのはベルリンだと思います。ベルリンの人達と話をしていたら、クラブでいちばん経済的に面白いところは産業の広がりだと。クラブ単体の売上自体も大きいですが、そこから波及していくもの、例えば設置しているDJ機器。世界シェアの9割がパイオニアやテクニクスなどの日本製ですが、そのような音響機器関連は日本ブランドが強い分野です。文化を発信するという意味ではファッションやアパレルなどともものすごく密接です。夜遊ぶとホテルに1泊しますからホテルがもう1泊分利益が出ますし、クラブシーン周辺の経済の広がりも大きいと思います」(齋藤さん)

しかし、法改正で大資本が参入することで、今まで脈々と培われてきた「夜の文化」が崩壊してしまうことはないのだろうか。ショッピングモールの進出により、地元の商店街がシャッター商店街に変わり果ててしまったという話は誰もが耳にしたことがあるだろう。

「大資本が参入したからといって、夜の文化が壊れることはないと思います。むしろ逆だと思っていて、今まではすごく好きな個人が大きなビジネスリスクを背負ってやっていた。それが大きな資本が入ってくることによって、そういう人達が活躍できる土壌ができるようになるのではないかと考えています。クラブはコンテンツが非常に重要で、そのコンテンツをつくれるのはかなり特殊な人達、こだわりを持っている人達だと思います。逆に、そういう人達なしでお金だけでできる世界ではないと思いますし、それでは価値がなくなってしまうでしょう」(齋藤さん)

今後、夜の文化を守り、経済を発展させていくためには?

「今後はよりコミュニケーションが大切になると思います」(齋藤さん)。「東京を世界一のクリエイティブシティにしたい」(梅澤さん)「今後はよりコミュニケーションが大切になると思います」(齋藤さん)。「東京を世界一のクリエイティブシティにしたい」(梅澤さん)

「夜の経済」を発展させるために、2人が重視していることはどんなことだろう。また、目指す未来は?

「昼間の名刺とか肩書などから解放され、もう少しダイレクトに、フィジカルにコミュニケーションを取れることが、割と大きな夜の価値だと思います。例えばクラブには、外国人を含め多様な人が集まります。テクノロジーとかデジタルの世界もどんどん進化していくと思いますが、フィジカルにコミュニケーションを取れる場所がもっともっと増えていくと、今後はコミュニケーションがよりいっそう重要になってくるのかなと考えています。距離感の近さというか、そこで色々なアイデアが生まれてきたり、今度何か一緒にやりましょうとなって昼間ミーティングをしたりとか、昼間と接続する入口のひとつになるのかなと思います」(齋藤さん)

『昼間との接続』において、2人はすでに行動を起こしていた。
「齋藤さんと僕とでサポートしている、今年発足したフード&エンターテインメント協会という組織があるのですが、やろうとしていることはフード業界とエンターテインメント業界を融合して新しい業界をつくること。夜も含めて、色々なことを考えています」と梅澤さん。さらに続ける。
「東京を世界一のクリエイティブシティにしたいと思います。日本のクリエイティブの強みは何かというと、かなり質の高いロングテール(注:ネットビジネスにおいて、あまり売れない大多数の商品の売上が、少数のヒット商品の売上を凌駕する状態のこと)があるということ。ものすごく品揃えが多い。しかも1つ1つのクオリティが高い。ファッションでもアニメでも食でもすべてに当てはまるというのが日本の文化、生態系の特徴。しかもロングテールは昼間より夜の方がもっと有効。だから夜の経済は夜の文化と表裏一体ですごく大事だと思います」

夜の文化と密接に絡み合っている夜の経済。風営法が改正され、夜の時間帯を効果的に使えるようになったことで、今後の日本経済のけん引役を期待したいところだ。
次回は、イベントのPart2とPart3の内容についてご紹介したい。

2016年 12月21日 11時04分