80カ国を旅したオーナーが導き出した答えが、世界と地元を繋ぐ場所づくり

リニア開通を控えて進化する名古屋駅エリアの西側に、2015年6月「グローカル名古屋 ホステル&カフェバー」がオープンした。こちらは、バックパッカー向けのホステルと、地元の人も利用できるカフェバーの複合施設。宿泊者はアジアを中心にした外国人が約半数を占めている。

オーナーの市野将行さんは80カ国を巡った経験から、「自分が外国人の立場の時にどういう場がほしかったか?」を考えて、行きついたのがこのホステル兼カフェのスタイルだという。しかし、単なる外国人向けの宿泊施設というわけではない。そのヒントは『グローバル(世界)とローカル(地元)を繋ぐ』という意味を込めた店名にある。

「外国人向けのおもてなし空間だけでなく、地元のための場所にしたいと思っています。隣に座った人に気軽に話しかけて自然な交流ができる場所。コミュニティを繋げていく場が理想です」(市野さん)

グローカル名古屋が目標とする姿は『愛知県の多文化共生まちづくりとグローバル人材育成の拠点』。なかなか壮大なテーマだが、どんなことを行っているのか、ただのカフェではないのか? 話を聞いてきた。

▲オーナーの市野将行さん。「世界中の人が寛げるようなインテリアにしたくて、温もりのある足場板やレンガを使いました。小学校のイスも懐かしいでしょ」とにっこり。▲オーナーの市野将行さん。「世界中の人が寛げるようなインテリアにしたくて、温もりのある足場板やレンガを使いました。小学校のイスも懐かしいでしょ」とにっこり。

異文化交流したい人が集うには「カフェとホステルが一緒にあることが大事」

▲日本人の夫のいるママたちが女子会に活用。名古屋エリアで暮らす外国人が世間話をできるお店にもしたいそう▲日本人の夫のいるママたちが女子会に活用。名古屋エリアで暮らす外国人が世間話をできるお店にもしたいそう

近ごろは名古屋でも外国人旅行者の姿をよく見かけるようになった。
「電車やお店で旅行客を見かけると『何語をしゃべっているんだろう?』と気になりますよね。きっかけがあれば交流したいという人は結構多いのではないでしょうか」(市野さん)

一方、ホステルを選んで宿泊するバックパッカーたちも、地域の人とのコミュニケーションを求める度合いの高い人たちだという。そこで「異文化交流したい人を繋げるには、ホステルとカフェを一緒にする必要がありました」と市野さん。

実際にグローカル名古屋のカフェは、宿泊する外国人旅行者のほか、「海外に興味がある」という地元の若者がよく訪れる。そこに英語が堪能なスタッフが介在して、双方のコミュニケーションを後押し。一緒にガイドブックを見て観光名所を教えたり、「今から名古屋城へ案内しましょう」と意気投合するなど、自然発生的に交流が生まれて賑わっているそうだ。

「日本には約200万人の外国人が住んでいますが、普段外国人と会話することは少ない。つまり違うコミュニティになっているんです。互いに安心して会話できる場をつくることが“多文化共生のまちづくり”の一歩。これからは旅行者や労働の担い手として、外国人がさらに増えていくと思います。僕の最終目標は、国籍関係なく『地域の人たちが仲良く安心して暮らすこと』なんです」

旅する人の記憶に残るのは「観光名所より、先々で出会った人」

直撃インタビューしたドイツ人カップルと市野さん。直撃インタビューしたドイツ人カップルと市野さん。

グローカル名古屋をオープンする前、毎日名古屋市内の外国人に突撃インタビューを行っていた市野さん。あるドイツ人カップルとの出会いが、記憶に残っているという。

「串揚げを食べたいと聞いたのですぐ近くにあったお店まで案内して、お店の前で一緒に写真を撮ったんです。『ドイツに来たら声をかけて』と連絡先を交換して別れました。しばらくして彼らのfacebookに『Japan』というアルバムがアップされたのでのぞいてみたら、景色やグルメの写真の中で、唯一彼らと一緒に写っている人物の写真が僕だけだったんです。日本の人々との交流が他にあまりなかったのかもしれません」

自身、世界を旅した時にいろんな人に手を差し伸べてもらった市野さんは、「美術館より、行く道中に出会った人の方が思い出深かったりする」と笑う。やっぱりモノよりヒトなのだ。

「バックパッカーに聞くと、名古屋へ訪れる理由は『空港がある』『東京から京都への通過点』であり、特別お目当てにしている観光名所はないようです。名古屋のまちが“体を休めるソファ”の役割だとしたら、さらにソファの隣に座って一緒に話せる場を目指せばいい。『このまちは、みんなが話しかけてくれて楽しい』と感じてもらえれば、どんな観光名所より大きな魅力になると思います!」

いずれは企業・行政・大学と協力して、グローバル人材育成も目指す

▲大学のゼミ生とスイスから訪れた旅行者との偶然の出会い。スイス文化と中山道の情報交換で盛り上がったそう▲大学のゼミ生とスイスから訪れた旅行者との偶然の出会い。スイス文化と中山道の情報交換で盛り上がったそう

さて、グローカル名古屋のもうひとつの目標が、グローバル人材育成の拠点だ。「カフェには、留学から帰国して語学力を維持したい、英会話教室に通っているので実践してみたいというお客さんが多いですね。でも僕らが目指しているのはもう一歩先なんです」

その取り組みの一つがインターンシップの受入れ。学生にはスタッフとして働きながら外国人と会話を深めて、社会課題や今抱えている悩みを聞き出し“問題解決力”を育んでほしいという。

「多文化共生の教育は3F(フード、ファッション、フェスティバル)が定番です。食や衣、お祭りをテーマにすれば異文化を楽しく学ぶきっかけとはなりますが、その場限りがほとんどで、当然異文化間にあるギャップに飛び込むようになるまでは行きません。今、企業が即戦力として求めているのは、外国人と会話ができるだけでなく、違いや変化に柔軟で新しいマーケット=社会課題の解決策をつくり出せる人なんです」

「ワーキングホリデーや留学に行く前に、帰国後の自分をイメージして心の準備ができる場所にしたい」と話す市野さん。ありそうでなかった人材育成のカタチになりそうだ。

おいしいランチやビールを楽しむついでに、隣の人に話しかけてみよう!

大胆な構想が詰まったグローカル名古屋だが、一見すれば「不思議なほど外国人が集うおしゃれなカフェバー」。ポリシーを掲げることもなく、看板は「Glocal」というシンプルな文字だけ。美容室だと思って見過ごしてしまう人も多いそうだ。
もちろん地元の人はカフェとして親しめばいい。お気に入りのカフェでたまたま外国人が隣に座り、少しだけ会話を交わしてみる。そんな気楽さが多文化共生の原点ではないだろうか。

「次は旅行会社を考えています。日本人と外国人が一緒に行く高山バスツアーって楽しいと思いませんか」と市野さん。名古屋のカフェから始まる【まちのグローバル戦略】はとにかく柔軟で期待度大だ!

取材協力/グローカル名古屋 ホステル&カフェバー(名古屋市中村区則武1-21-3)

ラザニアのランチ、小倉ソイフレンチトースト、80種類以上の世界のビールなどカフェとしてのクオリティーも非常に高いラザニアのランチ、小倉ソイフレンチトースト、80種類以上の世界のビールなどカフェとしてのクオリティーも非常に高い

2015年 11月24日 11時06分