あたらしい移住はもう始まっている

本田直之著『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住』出版記念イベントが東京・六本木ヒルズ内会議室にて開催された本田直之著『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住』出版記念イベントが東京・六本木ヒルズ内会議室にて開催された

都会を離れ、地方に移住する流れがいま、注目を集めている。
「地方移住」や「脱東京」というと、田舎暮らしでのんびりといったイメージが強いかもしれないが、最近は東京でバリバリ働いている人が移住する「攻めの移住」に変わっているという。

8年前にハワイに移住し、現在は1年の半分をハワイ、3ヶ月を日本、残りをヨーロッパで暮らしているという、レバレッジコンサルティング株式会社の代表取締役 本田直之氏が『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住』(毎日新聞出版社)の出版を記念し、福岡への移住サポートやコミュニティ情報を発信する「福岡移住計画」と共同で先日、「あたらしい移住~脱東京->福岡行 スペシャルナイト」というイベントを開催した。
「あたらしい移住」とは何なのか?その模様をレポートしたい。

ライフスタイルの変化とテクノロジーの進化で生まれる新しい移住のスタイル

第一部は本田直之氏と村上萌氏によるトーク。それぞれ自身の体験を交え、これからの移住について話をしていく第一部は本田直之氏と村上萌氏によるトーク。それぞれ自身の体験を交え、これからの移住について話をしていく

第一部は本田直之氏と、モデレーターを勤めるライフスタイルプロデューサーの村上萌氏とのフリートークが行われた。

「実際に移住をした人に話を聞くと、東京から離れて暮らしているけれども東京の仕事をしていたり、起業したり、インターネットの発達によってどこでも仕事ができるという動きになってきています。さらに震災以降、ライフスタイルが物質主義から精神至上主義に変わってきた流れをテクノロジーの進化が後押しし、新しい移住のスタイルが生まれたというのがおもしろいですね。僕がハワイに移住した当時はここまでできなかったし、事例もなかったです。」

村上氏は、現在6割くらいを札幌に住み、東京と行ったり来たりの生活を送る。会議などはスカイプで行っているが、特に支障はないという。村上氏の場合は移住をしようと思っていたわけではなく、旦那さんの転勤によるものだったそうだ。
「一緒に住んでいる人がこれだけ移動するんだったら、この先自分はどうやって移動していくんだろう、と考えました。転居のたびにキャリアを1からリセットするのではなく”キャリアを活かして仕事をするにはどうしたらいいだろう“と模索した結果、自分で会社を作ることにしました。その土地その土地を楽しむようになって、自分が楽しそうにしていると、仕事を覚えたばかりで”すぐ移動しちゃってかわいそう”から、”楽しそうだね!”に、周りの反応も変わったんです。どんな気持ちで目の前のことを捉えるかによって、環境は変わってきますよ。」
さらに本田氏は日本の「地方」の可能性について語る。
「日本の“地方”にも本当に魅力的な街がたくさんあり、なのにこれだけコストが安いのは世界的にもまれなことなんです。
そして今はどこでも仕事ができる時代。仕事の部分だけがネックだというが、実際やってきてみたら仕事が増えました、という話もよく聞きます。これから10年の世の中の動きはもっと早いと思うし、かつ日本の地方にはおもしろいことがたくさん埋まっています。」

人生は壮大な実験だ

書籍販売コーナーでは、本田氏直筆のサインをもらう姿も多く見られた書籍販売コーナーでは、本田氏直筆のサインをもらう姿も多く見られた

トークは進み、移住から「人生は壮大な実験だ」という話に展開した。
昔は移住と言えば「その地に骨をうずめる」というイメージだったが、インターネットや技術の発達でかかるコストも抑えられることから、最近はそうでもなくなっているという。

本田氏は、「もっとラフに実験してみて、うまくいかなければ無理せずにまたやり直せばいいんです。以前ハワイに移住した友人が、自分のビジネスと、子供の教育の関係で日本に戻ったんです。戻ったら失敗したみたいでカッコ悪いなどと思いがちですが、そのまま意地でもう2、3年ハワイに居たら彼はハッピーではなかったかもしれません。実験と思ってやってみる、それでいいんだと思います。」

続けて村上氏が言う。「わたしはまたいつ移動するか分からないので、“札幌の夏は今しかない!”と思うと色んな地域のイベントに顔を出したくて、毎週末忙しいんです。わたしがそうやって大騒ぎしていると地元の方も“そんな所あったんだ!”と驚かれることも多いです。」
「実験」ととらえたり、「ずっと住まない移住」にすることで気づけることも多そうだ。

そして移住先となる地方の街も、財政難などの背景からそれを受け入れるようになってきたという。
「例えば島根県の海士町は以前は破綻すると言われていましたが、今では人口の1割は移住者、そして若い人なんですね。定住してくれなくていいというスタンスで『ないものはない』と開き直っているのがカッコイイと思います。実際に都会のようにコンビニもないしモールもないですが、チャレンジしたい人を求めているし、みんな地域のために努力しています。廃校になる寸前の学校を立て直すため企画された本州から船で渡る「島留学」は、定員オーバーになったそうですし、”メチャクチャキツイよ。”というキャッチフレーズで、漁業の定置網の仕事を募集したところ元教師の方が移住してきてチャレンジしたりしています。」
外からの人を受け入れる街はまたおもしろくなるし、そういう街は移住にも向いていると本田氏は話す。

移住についての九州各都市の取組みは?

九州3都市のキーパーソンによるクロストーク。モデレーターはライフハッカー日本版の編集米田智彦氏九州3都市のキーパーソンによるクロストーク。モデレーターはライフハッカー日本版の編集米田智彦氏

イベントの第二部では福岡市、糸島市、北九州市のキーパーソンによるクロストークが行われた。

福岡市役所経済観光文化局 創業・立地推進部 企業誘致課 山下龍二郎氏は、「人口減少局面に入っているなか、福岡市は今でも人口が増えています。尚且つ若い人、学生、女性が多いというのが一つの特徴と言えます。そしてコンパクトに集約された街であり、空港から中心市街地へのアクセスも非常に良いです。
そんな福岡市としては、ITやデジタル産業を盛り上げていこうという活動をしています。実際に大手の企業様も福岡に支店を進出させるなど、クリエイティブ産業が盛り上がっています。そうした企業様は即戦力となる人材を欲しがっていて、東京で実績を積んだ人にジョインして活躍してもらいたいと考えています。」

しかし移住を考えているが、福岡に仕事があるのか、収入はどうなるのかを約8割の人が心配しており、これを行政が間に入ることで企業と人材の橋渡しをすべく、県外からの移住検討者に対して無料で転職や移住に関するサポートを行い、応援金も出す「福岡クリエイティブキャンプ2015」を開催している。

続いてのスピーカーは、ランサーズ株式会社 取締役COOの足立和久氏だ。
ランサーズでは、都市から地方への人と仕事の動きを推進する「ふるさとテレワーク」を実施。福岡県糸島市においてクラウドソーシングを活用した移住促進プログラムを提供している。
「移住する前の段階でクラウドソーシングを使って収入のベースを月5万円でもリモートワークで作ります。その状態で移住先でも仕事を探していきます。リモートワーク半分、地元の仕事半分ということですね。」
ランサーズではリモートでできる仕事を提供することで移住をサポートし、地元のコミュニティに馴染めるかどうかという精神面のサポートは、福岡移住計画と連動して行うという。

北九州市からは、株式会社北九州家守舎 代表取締役 遠矢弘殻氏が登壇した。
「北九州氏は、福岡市、糸島市のように体制を整えて迎えるのではなく、何かをやってみたい人を応援する、という取組みが盛んです。『北九州リノベーションスクール』では、全国から集まってきた受講生で実際にある物件のリノベーションプランを考えてオーナーに提案します。そこにないものを作り出すんです。何かをやってみたいと思ったら、北九州市はおもしろいですよ。」

都市ごとに異なる特徴や魅力

ランサーズ株式会社 取締役COO 足立和久氏と株式会社北九州家守舎 代表取締役 遠矢弘毅氏ランサーズ株式会社 取締役COO 足立和久氏と株式会社北九州家守舎 代表取締役 遠矢弘毅氏

第二部の後半はライフハッカー日本版の編集長、米田智彦氏もモデレーターに加わり、トークはさらに盛り上がった。
米田氏が編集長に就任以来、移住というカテゴリーがあるほどずっと特集してきているという。
「今はニッチな街というか、ベルリンではなくクロイツベルクという街が人気だし、ニューヨークのブルックリンの中でもウィリアムズパークが人気など、移住する人も細分化したエリアにこだわるようになってきています。
今は世界だけでなく、国内でも大移動時代に投入しました。これだけの情報、選択肢があり、あとは行動するだけという中、誰かが呼んでくれるという人との出会いが重要になるのではないかと思いますね。まずは泊まってみる。そこで縁を感じて仕事を探してみる。何かきっかけを作って一緒に行ってしまうのもいいですよね」

3都市の地域の魅力のほか、移住先でいかに稼げるかなど、リアルな課題やそれを乗り越えられるかという質問に対してそれぞれの立場から説明がされた。

「福岡出身者として感じることは、飲んで仲良くなって仕事をするというような商習慣があり、行ってすぐ仕事を見つけるというのとは違うのかもしれないということです。
そして地元では当たり前で価値として捉えられていないことがそこら辺に転がっており、チャンスは無限にあると感じています。」と話すのはランサーズの足立氏。北九州市の遠矢氏は、
「北九州に仕事は少ないですが、作れる土壌はあります。私も最先端のことをやれているし、東京の人と仕事をしています。安いコストで美味しいご飯を食べながら、一人勝ちできるチャンスもある。そんなチャレンジしたい人を待っています。」

移住が注目されるなか、一言に移住といっても、地域ごとにその特色は異なり、ライフスタイルも違うものになるようだ。そして仕事や地域のコミュニティなどの現実的な課題以上に選択肢も無限に存在するように思える。
自分のライフスタイルに落とし込んで考えてみること、そして、住む場所を移動するということにはアナログな人のつながりが重要だと認識させられた。
多くの情報があり、テクノロジーの進化がある。さらにそれを受け入れる地域も多様になる中、あまり身構えすぎず、ラフな気持ちで新しい地域へとチャレンジしていくのも良いのかもしれない。

2015年 12月24日 11時06分