借金ができる、収入が安定しているなど、不動産投資にはメリットいろいろ

経営に失敗、大きな借金を抱えた賃貸物件を立て直した経験もあり、大家さんのお金の話には詳しい渡邊さん経営に失敗、大きな借金を抱えた賃貸物件を立て直した経験もあり、大家さんのお金の話には詳しい渡邊さん

賃貸市場は家を借りたい人、仲介をする人、そして家を貸す人から成り立っているはずだが、これまで家を貸す人、つまり大家さんがどのような人たちなのか、何をしているのかなどについては専門誌・紙以外では語られることはなかった。しかし、市場の一翼を担う人たちの存在を無視して良い物件が増えることはないし、借りやすい状況が到来するはずもない。この連載ではこれまで知られてこなかった大家さん像、その仕事内容などの紹介を通じて、入居者、大家さん、そして仲介する人が三方良しになれる道を考えていきたい。今回のテーマは大家は「ラクして儲かる」は本当か?である。

不動産投資には株その他の金融商品への投資とは明らかに異なる点がいくつかある。代表的なものとしては借金ができる、安定した収入が得られる、金融商品に比べれば利回りが良いなど。不動産投資がこのところ、ブームと言われ続けている要因はこのあたりにあるのだろう。

「株などの金融商品では銀行がお金を貸してくれるわけではないので、自分の元手以上の投資はできません。でも、不動産投資であれば銀行から貸してもらえるので、極端な話、現金がなくても、銀行融資で始められる可能性があります。実際、年収が高くない方や専業主婦が不動産投資を始めて、大きな収入を上げている例もあるほど。また、地価が下がっても家賃はそんなに下がらないため、安定した収入が見込めますし、家賃収入(インカムゲイン)以外にも売却益(キャピタルゲイン)が見込めるケースもあります」(大家さんでもあり、大家さん専門の税理士でもある渡邊浩滋さん)。

もうひとつ、金融商品の利回りが低値で安定しているのに比べると不動産投資の利回りは一見高く見える。「利回りとは購入金額(投資額)に対して毎年得られる収入の割合のことで、たとえば6,000万円のアパートを購入して、年間600万円の家賃収入が入ってくるのであれば、600万円/6,000万円×100=10%ということになります。不動産投資は物件によりますが、利回り10%、20%以上として売られている例もあり、すごく儲かりそうに見えます。」

支出を数え上げていくと、意外に儲からない結果になることも

だが、実際にはそれほど儲かるわけではない。物件が売られている場合に表示されている利回りは一般に表面利回りと言われ、物件を維持、管理していくためなどにかかる経費が考慮されていないためだ。「実際には各種経費がかかり、それを引いた残りの現金で計算した利回りを実質利回りといい、さらにそこから所得税等の税金等を引いたものを税引き後利回りといいますが、そうやって順に必要な支出を考えていくと、実際に残る現金は意外に少なくなってしまうものです」。

先ほどの、6,000万円のアパートを購入、年間600万円の家賃が入るケースで渡邊さんに試算していただいたのが下の数字。

この例では年間の家賃収入として600万円入ってくるといっても、税金を差し引いた手残り(手元に残る現金のこと)は40万円。税引後の利回りを計算してみると0.66%となり、想像以上に儲からない印象がある。「もちろん、投資額を増やせば手残りも増えますし、支出を減らす、利率の低いローンを利用するなどの工夫もあれこれ。自分で考えて工夫すれば収益を増やすことができるのも他の投資と異なる点です」とはいうものの、6,000万円ものお金を借りた結果がこれである。楽して大儲けとは言い難い。

しかも、築年数が経っていけば、修繕などにかかる費用は増え、家賃は下がる。自分の土地にアパートを建てる、初期投資が少なくて済むケースでも修繕となれば、大金がかかるのは同じ。長く儲け続けるのは難しい仕事なのである。

必要な経費を引いて考えていくと利益がどんどん減っていくのが分かる必要な経費を引いて考えていくと利益がどんどん減っていくのが分かる

節税対策としての不動産投資は破綻しているケースも

相続税対策としてアパートを建設する人はいまだに多いが、本当に大丈夫なのだろうか相続税対策としてアパートを建設する人はいまだに多いが、本当に大丈夫なのだろうか

しかも、ここ1~2年は地価、人件費も含めた建築費が高騰していることから、物件価格が上がり、特に首都圏では利回りの高い物件は少なくなっている。バブル時は物件価格、家賃が同時に上がったものだが、昨今の経済状況下では物件価格が上がったからといって家賃を上げるわけにはいかない。投資効率は明らかに悪くなっているのだ。

加えて、原状回復では大家さんが負担する部分が増えており、かつてその原資とされていた敷金も減っている。礼金のように、ほとんど受け取れなくなった収入がある一方で、不動産会社に払う仲介手数料や広告料は上がっている。客観的に見ると不動産投資を巡る状況はそれほど良くはない。それでも不動産投資をしたいと考える人が少なくないのはこうした現状をよく知らない人が多く、また、節税と考えているため、手残りが少なくても良いと思っている人がいるため。

「不動産投資は節税になるといいますが、それは不動産投資で出た赤字を給与で相殺できるため、トータルで税金が圧縮されるからです。特に平成10年以前は建物の減価償却の計算として定率法が選択できたので、投資直後に多くの減価償却を計上でき、節税効果が高かった。でも、今は、建物は定額法での減価償却しか認められておらず、土地に係る借入金の利息が損益通算できません。その結果、不動産投資は節税になるとは言えないケースも多々。よく、不動産投資が節税になっているという方の話を聞くと、そもそも不動産投資が赤字で、キャッシュフローも赤字、つまり持ち出しになっている方が少なくありません。節税額以上に経費などの支出が多くなっている方が本当に多いのです。本来、収益を上げるのが投資なのに、わざわざ赤字を作る。本末転倒ですね」。

それでも大家さんになりたい人がいるのはなぜ?

夜間、早朝、休日……、いついかなる時にも入居者からの連絡があったらすぐに動く、そこまでのことができる大家さんはまだまだ少ない夜間、早朝、休日……、いついかなる時にも入居者からの連絡があったらすぐに動く、そこまでのことができる大家さんはまだまだ少ない

それでも、大家さんになりたい人がいる。どこに魅力を感じているのかを何人かの大家さんに聞いてみると、金融投資と異なり、自分の工夫次第で収支を改善できる、経営手腕が結果に出るといった点にやりがいを感じている人が多いようだ。「空室、賃料下落その他のリスクを減らすには自分が汗をかいて行動しなければなりませんが、それが苦にならない人であれば不動産投資には向いています」。

もうひとつ、時間が自由になるという点も大きい。株式投資のように毎日、時間ごとに株価の動きをウォッチする必要はなく、満室になってしまえばトラブルがない限り、特にやることはない。副業として考えたら、手間のなさは魅力だ。ここから、働かずに収益が上がるという印象が生まれたのだと思うが、実際に大家さんたちが何もしていないかといえば、そうでもない。以下、大家さんたちに聞いてみると、

「『自転車置き場がいっぱいで足りない、増やしてほしい』と入居者さんから言われたので『じゃあ、一度見に行きます』と言ったら『朝6時半前に見に来て欲しい』と。それ以降だと通勤、通学で出払ってしまうので現状が分からないそうで、朝一番に見に行きました。それ以外でも夜中の2時に騒音の苦情があり、音を聞きに行ったりなど、規則正しく働いてはいませんが、いつ何時でも動く必要はあります」(下條雅也さん)。

「台風や大雪の時には必ず見に行き、水をかい出したり、雪かきをするなど、入居者が快適に暮らせるようにしています。入居者には携帯の連絡先を教えてあるので飲んでいる時に水漏れの電話が来ることも。サービス業ですから、笑顔で素早く動くのは基本ですね」(廣田裕司さん)。

などなど、働く大家さんの姿が浮かび上がってきた。決まった時間に机の前にいるわけではないから、どこでいつ仕事をしているかは見えにくいが、大家さんも働いているのである。真夜中のクレーム電話がラクと思える人なら、大家さんはラクして儲けていると言ってもよいのかもしれないが、そう思える人はそれほど多くはないのではなかろうか。

2015年 02月20日 11時20分