閑静な住宅街の戸建てを借りる。初心者OKの「DIY戸建て」誕生

閑静な住宅街に建つ戸建て。ここが丸ごと「DIY可能」閑静な住宅街に建つ戸建て。ここが丸ごと「DIY可能」

東京メトロ丸ノ内線「新高円寺駅」から徒歩12分、杉並区の閑静な住宅街に丸ごとDIY可能な戸建て賃貸が登場した。新宿まで10分という都心ながら、低層マンションと戸建てが多く、道には飼い猫がごろりと寝転ぶような光景が見られるのどかな住環境だ。
築46年・木造2階建ての家には、子どもが独立したあと高齢の女性が一人で暮らしていた。「母親が家を出て空き家になるので、シェアハウスとして活用できないか?」株式会社Rバンクが相談を受けたのは2014年秋のこと。自分が育った家を取り壊したくないが、空き家をどう活用したらいいか分からないと、シェアハウスの企画運営で実績のあるRバンクに声がかかった。

「当初シェアハウスとして活用したいという相談でしたが、実際に物件を見たら各部屋の広さが足りないのと、シェアハウスとして内装や家電等の設備を整えるのに予算を超える初期投資が必要なことがわかりました。当社がDIY可能・原状回復義務無しの賃貸マンションを企画し、1ヶ月で満室になった経緯をお話して、“DIY可能戸建て”を提案しました」と株式会社Rバンクの鈴木学さん。

Rバンクとしても、本格的な戸建てでDIY可能賃貸を手がけるのははじめて。それでも実施に踏み切ったのには“DIY可”に自信があったからだ。

余る「木造戸建て」

賃貸入居者の退去後は、壁や床板を変える必要がある。どうせ変えるなら入居者のDIYに任せる、というのもひとつの方法だ賃貸入居者の退去後は、壁や床板を変える必要がある。どうせ変えるなら入居者のDIYに任せる、というのもひとつの方法だ

2014年に総務省が発表した住宅・土地統計調査によると、日本の総住宅数は6,063万戸、うち空き家数は820万戸で空き家率は13.5%、2008年調査から5年で空き家は63万戸増えた。そして、増加した空き家63万戸のうちの8割が戸建て、戸建ては急速に空き家になっているのである。
「DIY可能・原状回復義務無し」の賃貸方法は、空き家戸建ての救世主になるか――?

「DIY可能賃貸を手がけたきっかけは、当社が管理していたマンションに10年住んでいた方が退去したことです。壁紙や床板を変える必要がありましたが、築40年超の建物を従来のままリフォームしても入居者が入るか不安でした。建築家を入れたデザイナーズ物件が増えて珍しくなくなった時期でもあり、内装をおしゃれにするだけでは新しい物件との競争には勝てません。リスクを抑えつつ入居促進ができる“新築との差別化ポイント”を考えたときに、DIYの盛り上がりに注目しました。大家さんを説得して、その部屋を“DIY可能”にしたらすぐに入居者が決まり、その後、そのマンションはDIY可能物件になりました」
それからRバンクは10軒のアパート・マンションでDIY可能物件を手がけた。いずれも反応は良く、築45年の新宿にあるテラスハウス「太陽荘」は2週間で満室になったという。

「今回の戸建てのオーナーさんはリフォームの見積りもとったそうですが、築年数が経っているとリフォームしても新築よりは見劣りします。であれば、変える必要のある壁紙や床材は入居者自身がつくる『DIY』に任せてみては、という提案をしました」

「ほどほどDIY」が成功のカギ

ただ、DIYにも“お膳立て”が必要だと言う。
「水まわりの変更や和室を洋室にするなどハードルの高いDIY物件は、一般受けしないと考えました。変更にお金がかかり、古さが出るキッチン・バスルームなどの水まわり設備は新しくしつつ、花柄の入ったレトロな雰囲気のガラスや珍しい建具などはなるべく残して、新築との差別化ポイントにしています」

DIYの“お膳立て”として、畳は床板に、引き戸は扉へそれぞれ変更し、押入れのふすまは取り払って貸し出す。和室よりも洋室を好む入居者が多いことと、収納以外の押入れの活用方法を入居者のアイディアに任せるためだ。さらに、床材は構造用合板の状態に、壁はプラスターボードの状態でそれぞれ貸し出し、入居者が自由に床材や壁紙を貼ったり塗装ができるようにしている。(※事前にDIYの内容を申告することで、原状回復義務がなくなる)
今回の改修費は、外装塗装や庭の剪定、水まわり設備の変更も入れて約600万円、リフォームよりも初期投資が安くすむのもDIY可能物件のポイントだ。賃料は175,000円と、周辺の家賃相場と同等だが、すでに入居者が決まったという。

「DIYをしなくても、そのままで住めるというのを大切にしています。DIY初心者の方もいますし、すぐに取り掛かれない人もいます」
入居者が少しずつ時間をかけて手を入れていくことで部屋に愛着がわき、長いあいだ暮らすことになる。入居者が長く住むほうが大家もありがたい。

床板・壁ともに仕上げ材のまま貸し出すDIY可能物件。右下は新設したキッチン。「思った以上に常識的なDIYをする方が多く、オーナーとトラブルになった事例はありません」と鈴木さん床板・壁ともに仕上げ材のまま貸し出すDIY可能物件。右下は新設したキッチン。「思った以上に常識的なDIYをする方が多く、オーナーとトラブルになった事例はありません」と鈴木さん

DIY可は、“都心で広い部屋に住む”ひとつの方法

この物件の想定ターゲットは、20~30代のルームシェアや都心部が職場のファミリー層。
「都心の広い賃貸は数が多くないんです。戸建て賃貸は数が少ないし、ファミリータイプのマンションは分譲が多い。広い物件を購入しようとすると、都心から離れざるを得ない状況です。これから都心にある築年数の経った戸建て賃貸には需要があるとおもっています」

自分が育った家を取り壊したくない、先祖代々の土地を手放したくないという想いから空き家になっている戸建ては少なくないだろう。ただ、空き家は放置すると荒れて、防犯面から地域の不安材料になる。古い木造戸建てという発想を変えて、借りる側にとって魅力的な物件に転換させる手法のひとつが「DIY可能」だ。アパート・マンションで広がりつつあるDIY可能物件、今後は戸建てにも広がっていきそうだ。

家族の思い出を刻んだ戸建てが新しい入居者を経て手入れをされ住み継がれていく――こんな住まいの循環が、空き家問題のひとつの解決方法かもしれない家族の思い出を刻んだ戸建てが新しい入居者を経て手入れをされ住み継がれていく――こんな住まいの循環が、空き家問題のひとつの解決方法かもしれない

2015年 03月19日 11時08分