多様化する“老後の住まい”

高齢者住宅経営者連絡協議会 会長 森川悦明氏高齢者住宅経営者連絡協議会 会長 森川悦明氏

2014年9月、“日本一の高齢者住宅”を決める「リビング・オブ・ザ・イヤー」が開催された。コンテストを仕掛けたのは、高齢者住宅サービス提供企業の経営者の集まりである高齢者住宅経営者連絡協議会(以下、高経協)。

2011年の「高齢者住まい法」改正でサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)が登場して以来、老後の住まいは多様化している。“老後は老人ホーム”という時代は終わり、在宅では訪問介護・デイサービス・定期巡回など、居住ではサ高住のほか、特別養護老人ホーム・有料老人ホームなど多くの類型がある(※)。
定年後の長い自由時間をどう過ごすか、罹病した際に暮らす場所をどこにするか、どんなエンディングを迎えるか――様々な選択肢があるだけに、利用者に情報収集力と判断力が求められるようになってきた。
今回は、高経協会長の森川悦明氏に、「リビング・オブ・ザ・イヤー」開催の背景と今後の高齢者住宅について聞いた。

※老人ホームとサ高住については、当サイト【老後の暮らし考①シニアの住まいのニューウェーブ『サ高住』って何?】を参照

“いざ”という時まで接する機会の無い高齢者住宅

当事者にならないと接する機会が少ない高齢者住宅。一般住宅よりも情報が少なく、最適なホームを選ぶ「見極め力」が問われる当事者にならないと接する機会が少ない高齢者住宅。一般住宅よりも情報が少なく、最適なホームを選ぶ「見極め力」が問われる

「高齢者住宅には多くの類型があり、分かりづらいという指摘があります。一方では、類型ごとに定められた条件さえ満たせば参入しやすい業界でもあり、職員スキルやサービスの質に差が生じています」と高経協会長の森川氏。

高齢者住宅は情報量が少ないだけに、一般住宅よりも暮らしている人の感想や評価が外に届きにくい。また、親の介護や自身の老後の住まいを決める時期になるまで接する機会が多くないため、いざ老後の住まいを決めようとしても多様な選択肢から最適なものを選ぶ経験値が少ないと言える。
例えば、民間主導で進むサ高住のサービス内容は、他施設との差別化競争と相まって多様化しており、身の回りの世話を行う程度から終の棲家をうたうものまで様々だ。介護度が進んだ場合に退去しなければならないのか、費用は上がるのかなどの不安があっても、第三者からの評価・情報は少ない。

そこで考えられたのが、優れた高齢者住宅や取組みを表彰する「リビング・オブ・ザ・イヤー」だ。
「立地・建物・サービス規模などの外部要因に左右されず、清潔さ・食事内容・スタッフ教育などの介護サービスへの工夫や、職員の志の高さを評価できるコンテストにしました。また、より良い高齢者住宅運営に取り組んでいる施設・住まいにスポットを当てるため、類型に関わらずエントリー可能にしました」

さらに、ユニークな審査方法にも注目。類型を問わず全国の高齢者住宅を対象とし、2014年度は61ホームがエントリーした。書類選考で21ホームまで絞り、これを高経協の審査員(つまり、高齢者住宅の経営者)が3人1組で3ホームを見学審査、ファイナリストとして7ホームを選出する。ファイナリストは高経協会員と一般客を合わせた100人の前で10分間のプレゼンを行い、投票で最優秀ホームを決める。

実際に訪れて職員や入居者と接することで、交通や広さ・サービス人員数などの“数字”ではなく、サービス内容やスタッフの質など“運営からつくられる価値”の評価ができるというわけだ。

“日本一の高齢者住宅”は?

2014年の最優秀ホームは、住宅型有料老人ホーム「アクラスタウン(福岡県・運営:株式会社誠心)」。
長年看護師として介護・看護にあたってきた施設長の思いを具現化したホームで、食事処やギャラリー・カフェを併設している。介護保険の限度額を超える介護・看護についても定額で行うシステムで費用を明確化し、ホーム内で看取り・葬儀まで実施している。

「ファイナリストの7ホームには多くのメディア取材が入ったと聞いています。入居者・利用者が満足できる健全な運営とユニークな取組みにスポットがあたり、多くの方の目に触れるのは嬉しいことです」と森川氏。

ファイナリスト受賞理由を見てみると、活発な地域交流、看取りの実施、高度医療措置が必要な人の受入れ能力、認知症ケア、充実した食事メニューなどが評価されている。裏を返せば、このようなサービスを提供していないホームが多いということだ。

シニア人口が増える今後の社会では、高齢者住宅がさらに増えていくだろう。その際に、入居者のニーズに合わないホームを淘汰し、真摯な経営を評価する「リビング・オブ・ザ・イヤー」の“中身”に踏み込んだコンテストは価値あるものとして広がりそうだ。
そして読者の皆さんには、親や自身が理想の老後をすごすために、良質な施設・住宅を選ぶ選択眼を持って欲しいと思う。高齢化社会を豊かなものにする舵取りは、選ぶ側にも求められている。

第1回「リビング・オブ・ザ・イヤー」最優秀ホームに選ばれた【アクラスタウン(福岡・運営:株式会社誠心)】第1回「リビング・オブ・ザ・イヤー」最優秀ホームに選ばれた【アクラスタウン(福岡・運営:株式会社誠心)】

2014年 12月26日 11時05分