8月は雷のピーク。九州・沖縄では22万回以上も

全国月別落雷数2009-2013(株式会社フランクリン・ジャパン調べ)。日本全国2600KM四方に発生した落雷数を月別にまとめたもの全国月別落雷数2009-2013(株式会社フランクリン・ジャパン調べ)。日本全国2600KM四方に発生した落雷数を月別にまとめたもの

今年も局地的豪雨が相次いだ日本の夏。豪雨につきものなのが雷だ。
「全国雷観測ネットワーク」を運営している株式会社フランクリン・ジャパンが公開する統計データによると、落雷は7月~8月に集中している。また、地域別の落雷数は2013年を見てみると

九州・沖縄 22万3500回
関東甲信 17万1300回
東北 9万1100回
中国 7万9700回
近畿 7万2300回
北海道 6万5500回
東海 5万6100回
北陸 4万6500回
中国 4万4800回

という結果に。筆者が住む東海地方でも雷が多発しているので、上位にランクインされるのかと思いきや、全国的にはさらに多くの雷が発生している地域があることに驚きだ。雷のピークである8月は過ぎたものの、森林面積の減少や温室効果ガスの増加により大気が不安定になってきている今、9月も引き続き雷には注意しておきたいところ。もし雷が落ちたらどうなるのか、家は?家電は? 「自分の家は大丈夫」と根拠のない自信を持っている人も、雷被害について一度考えてみてほしい。

「避雷針があるから雷が落ちない」は間違い! 雷を落として建物を守るのが避雷針

真ん中の箱が建物だとして、突針からプラスの真ん中の箱が建物だとして、突針からプラスの"お迎え放電"を出し、マイナスを帯びた雷を誘導し、導線を通って大電流を地中に埋められた板から放出するのが避雷針の仕組み

さて、落雷被害にあわないための設備で思いつくのが避雷針。避雷針の設置工事・保守点検を行う名古屋市の株式会社セイクンで、その仕組みと効果について教えていただくことに。お話を伺ったのは、同社工事部課長の後藤真二さん。まず、避雷針とは何か、聞いてみた。

「避雷針とは、落雷を地表に落とすためのものです」
え?避雷針は、字のごとく雷を避けてくれるものなのでは?
「そうではなく、建物の高いところに設置して、先を尖らせて落雷を誘導しやすくしているんです。避雷針から“お迎え放電”を出し雷を避雷針に誘導し、地面に電圧を放電する仕組みで、それによって建物を守るのです」
なるほど。避雷針は高いビルやマンションの上に建っているのを遠目で見たことはあるけれど、ちゃんと仕組みまでは理解していなかった。あの突起に落ちた雷は、アルミや銅でできた導線を通って建物の地中に埋められた銅板によって地中に放電されるのだそう。

山地、小高い丘、原っぱ…周囲に高い建物がなく、開けた場所には設置を検討しよう

川沿いや小高い丘の上など、上空や周囲が開けた場所では、高層でなくても落雷の被害にあう可能性がある。写真/気象庁ホームページより川沿いや小高い丘の上など、上空や周囲が開けた場所では、高層でなくても落雷の被害にあう可能性がある。写真/気象庁ホームページより

落雷には、大きく分けて「直撃雷」と「誘導雷」がある。直撃雷は、対象そのものに落雷することを指し、電気機器であればほぼ間違いなく破損、人体に落雷した場合は死亡率70%以上とも言われている。
建築基準法によると、高さ20Mを超える建物には避雷針を取り付けることが義務付けられている。後藤さんによると、一般的な5階建てマンションは高さが19.5Mだそうで、その高さなら貯水タンクやアンテナ類を含めてもギリギリ20M以内で収まるので、設置の義務はないということになる。

そういえば、戸建て住宅に避雷針が設置されているのを見たことがないが、高さの基準がクリアできていれば雷被害にあうことはないのだろうか。
「戸建て住宅に直撃雷が落ちることはほとんどありません。周囲に高層ビルやマンションがある場合は、雷はそちらの避雷針に誘導されますから。ただ、周囲や上空が開けたゴルフ場やグラウンドなどに避雷針が設置されているように、高台に建っていたり周りに高い建造物がない場合は、落雷の可能性が高くなるため避雷針を取り付けたほうがいいと思います」と、後藤さん。
同社では愛知県内で数件、戸建て住宅への避雷針の設置を行ったそう。住宅用の避雷針は工事費を別にして20万円ほど。立地条件によっては設置を検討してみることも必要なようだ。

被害額2,500万円!省エネ家電は雷に弱い。被害を最小限に留めるには避雷器の設置が有効

写真左は、家庭の分電盤に取り付けるタイプの避雷器。とりあえずできることから、というわけで筆者は近所の量販店でタップを購入(写真右)。両方ともコンセントに差し込むと、雷ガードという表示にランプが点灯する写真左は、家庭の分電盤に取り付けるタイプの避雷器。とりあえずできることから、というわけで筆者は近所の量販店でタップを購入(写真右)。両方ともコンセントに差し込むと、雷ガードという表示にランプが点灯する

避雷針によって直撃雷による被害は免れても、誘導雷による被害を食い止めるのはなかなか難しい。
雷が近くに落雷した際に拡散するエネルギーによって、電磁界が大きく乱されることにより発生する誘導雷。近くに敷設されている電線やケーブル、電気機器に対して誘導電流が発生し、異常電圧(雷サージ)によって機器の焼損・破損を及ぼすという。パソコンや電話が雷で壊れたという事故は、ほとんどがこの雷サージによるもので、後藤さんが担当した昨年の事例では、インターホン、照明器具、家電が壊れ、マンション一棟の被害が2,500万円にまでのぼったそうだ。

誘導雷による雷サージを防ぐには、家電の電源スイッチをオフにしていても効果はなく、コンセントやアンテナのケーブルを電気機器から外さなければ、被害を受けてしまう。被害を最小限に留めるには、避雷器が有効だと後藤さん。避雷器とは、ブレーカーの中に内蔵し家の中に多量な電圧が家電に流れる前に阻止するもの。電気工事を行う会社に依頼すれば、後付けで取り付けることが可能だ。雷による異常電圧が流れるとスイッチを閉じてバイパス回路を作り電圧を放電、雷が通り過ぎると元に戻るという仕組み。工事費を除けば5,000円程度だそう。 最近の家電製品は省エネ化で電子機器が多く埋め込まれていて、少しの異常電圧でも誤作動や異常を起こす可能性があるという。一発の雷で家電がパーになってしまったら、被害額は数十万になりかねない。5,000円程度で被害を免れるなら、一般家庭でも取り付けたほうが安心できそうだ。

また、家電量販店に行けば、雷サージを防ぐプロテクターが売られている。コンセントに挿して使うタイプだと、安いものなら500円程度、延長コードタイプなら2,000円程度で購入できる。しかし、コンセント部分にこのようなプロテクタを装着しても、残念ながら完全に雷被害を防ぐことはできない。なぜなら、電力線以外からも誘導雷サージは侵入するためだ。電話線につながっていたモデムやルーター、CATVを利用している人は、テレビやテレビ機能内蔵パソコンとつないでいるアンテナ線にも注意が必要だ。電話線やアンテナにも対応するプロテクタも1万円ほどで売られている。どこまでの対策を講じるのか、各家庭の環境によって違うだろうが、腰の重い筆者でも、こうも頻繁に雷が鳴っていると何も対策を講じないよりは、できることからやっていこうという気になる。

マンション住まいの人は避雷針のチェックを

お話を伺ったセイクンの後藤さん。「最近では東海三県だけでなく、関東圏からのお問い合わせも非常に多くなっています」。屋上の貯水タンクを埋設する工事に伴った、避雷針の付け替え依頼というのも増えているそうだお話を伺ったセイクンの後藤さん。「最近では東海三県だけでなく、関東圏からのお問い合わせも非常に多くなっています」。屋上の貯水タンクを埋設する工事に伴った、避雷針の付け替え依頼というのも増えているそうだ

お話を伺ったセイクンでは、避雷針の新規設置や取り換えの問い合わせが年々増えているそう。
避雷針は年に一度保守点検をし、25~30年で取り替えるのが一般的で、老朽化していると雷が落ちたとき地中に流れるはずの雷サージがマンション構造内の鉄骨に触れたりして、各家庭に損害を与えかねない。JIS(日本工業規格)でも、一年に一回は、年次点検をしなければいけないとされてはいるが、管理会社によっては付けたら付けっぱなし、というところもあるのが実情だそう。自分の住んでいるマンションが、どのように雷から守られているのか、一度チェックしてみる必要があるかもしれない。

また、従来の避雷針に加え、“雷を落とさない”PDCE避雷針というものも少しずつ普及している。雷雲の下層に滞留したマイナス電荷と、地表に集まったプラス電荷が引き合って放電するのが雷だが、PDCE避雷針は突起部分にマイナス電荷を発生させ、雷雲のマイナスと反発しあうように設計されたもの。
「プラスの電荷を出して雷を誘導する従来の避雷針では、建物自体は守られても設備機器やシステムを完全に保護することはできませんが、PDCEなら雷が落ちてこないので被害を受けずに済みます。国内では防衛省、電力会社、小中学校など、約350か所に設置され、当社でもマンションやゴルフ場などに施工しました」(後藤さん)
今取り付けられている避雷針の突針をPDCEに付け替えることもできるとあって、同社だけでもマンションの管理会社からの問い合わせが3割ほど増えたそうだ。
夏に多い雷だが、日本海沿岸では冬季の雷発生率が高いという統計もある。夏も冬も雷被害に怯えることなく安心して暮らせるかどうか、今後マンション住まいを考えている人は、この避雷針の設置や種類についてもチェック項目にいれてみてはどうだろう。

この記事を書いている今も、また突然の豪雨に交じってゴロゴロと雷の音が聞こえてきた。わが家も簡易ながらプロテクタを取り付けて、できる対策をしてみようと思う。



取材協力:株式会社セイクン
http://www.seikun.co.jp/

2014年 09月05日 12時33分