2019年に平均で5.5%値上げの予定 地震保険料も改定の見込み

2019年3月期に支払うことになる保険金は、2018年に続発した豪雨や台風、地震などによる被害を反映して、過去最高になる見通しだ。損保各社は数十年に一度に備えた「異常危険準備金」を毎年積み立てているが、今回それを取り崩して対応することになる。
ただし、今回の取り崩しは大手損保で1,000億円以上になるともいわれており、自然災害に対する経済的保障としての役目を担う損保各社は保険金支払いへの体制を改めて整えるのと同時に、業績安定への努力も欠かせないというハードルの高い役割をこなす必要がある。

火災保険料の引き上げは2014年以来5年ぶりで、「総合型住宅保険」の保険料が平均で5.5%引き上げられる予定。前回の改定以降、台風など自然災害や水漏れ被害で保険料の支払額は増加傾向にあるが、2018年は西日本豪雨が発生し、その後台風21号と24号が日本列島を直撃、さらに大阪府北部地震と北海道胆振東部地震が相次いで発生したこともあって、保険金の支払額は大手損保3グループ(東京海上、MS&AD、損保ジャパン日本興亜)だけで1兆1,000億円と、過去最高だった2005年の7,000億円を大きく上回る見込みだ。

日本の地震リスクは極めて大きく、民間や海外再保険では対応できないとされていることから政府が再保険を受ける仕組みになっており、地震が与える経済的損害については最終的には税金で賄われているが、それでも事業費の削減や経営合理化などコスト削減の方策実施が、保険料率改定の試金石となる。
今後の日本の損害保険制度と保険料について、今後の見通しと課題を有識者に聞いた。

2019年に平均で5.5%値上げの予定 地震保険料も改定の見込み

高経年のマンションはさらに負担増。検討は慎重に ~佐藤 優氏

<b>佐藤優</b>:マンション管理士、ファイナンシャル・プランナー・行政書士。一般社団法人日本マンション管理士会連合会副会長。2002年マンション管理士合格後、2003年サトウマンション管理士事務所開設。数多くのマンション管理組合や区分所有者の相談に応じ、管理組合顧問や管理組合役員として、日常的に各管理組合の運営を補助しアドバイザーとして活動中佐藤優:マンション管理士、ファイナンシャル・プランナー・行政書士。一般社団法人日本マンション管理士会連合会副会長。2002年マンション管理士合格後、2003年サトウマンション管理士事務所開設。数多くのマンション管理組合や区分所有者の相談に応じ、管理組合顧問や管理組合役員として、日常的に各管理組合の運営を補助しアドバイザーとして活動中

今回の値上げは、2018年6月に損害保険料率算出機構が損害保険会社が火災保険料を設定するときの基準となる「参考純率」を平均5.5%引き上げたことによるものである。あくまで参考純率なので、損保各社がすべて5.5%の値上げになるわけではなく、各損保各社が個別に値上げ幅を決めることになる。また、改定率の例を見てみると木造や鉄骨造の建物は地域によっては引き下げになる地域もあるが、鉄筋コンクリート造の共同住宅等はすべての地域で値上げとなり、最大で40%の値上げとなる地域もある。つまり、マンション管理組合が共用部分に付保するマンション保険については、どの地域でもどの損害保険会社でも値上げとなるということである。

もともとマンションの保険は、近年漏水事故等により大幅に損害率が悪化し、更新時には2~3倍の保険料になる管理組合もある。これは、損保各社が損害率悪化に対応し「築年数別保険料体系」に変更したことによる。つまり、事故があろうとなかろうと高経年のマンションは保険料が高く比較的新しいマンションの保険料は安いということになる。それでは、今後高経年等のマンションはどのように対応したらよいのだろうか?

最近では、マンションの管理状況(法定点検実施状況、改修工事実施状況、長期修繕計画の見直しや未収管理費等の回収状況等)をチェックし、管理状況が良ければ保険料を割引する損害保険会社が数社出てきている。まずはこのような損害保険会社を探し、相見積もりを取ることが重要になる。大規模なマンションでは保険料が数百万円異なる場合もあり、損害保険会社の選択は慎重に検討して欲しい。
第二には、長期契約による値上げの回避である。最近では、5年契約を選択する管理組合も多いと思う。長期契約にすることにより割引もあり5年間トータルの保険料も安くなる。今回の改定では、損保各社10月での値上げを検討しているとのことなので、その前7~8月に保険契約を見直すことも必要になると思う。保険会社の変更がなければ月割解約をすることにより基本的に保険料の損失はないと考えてよい。

最後に、保険料の高騰があっても無保険状態とするのは勧められない。特に漏水事故の多いマンションでは、漏水事故原因調査費用保険金等が果たす役割は重要であり、万が一の事故に対応する準備をしておくのは管理組合にとって必要不可欠な業務と考えられる。

防災・減災意識と地震保険の加入検討を! ~竹村宗哲氏

<b>竹村宗哲</b>:日新火災海上保険株式会社 商品企画部長。個人・個人事業主・中小法人のお客様向けの商品開発・改良に取組む。日本アクチュアリー会正会員。京都市生まれ竹村宗哲:日新火災海上保険株式会社 商品企画部長。個人・個人事業主・中小法人のお客様向けの商品開発・改良に取組む。日本アクチュアリー会正会員。京都市生まれ

火災保険は、一般的に、火災だけでなく、落雷、風災、雪災などの自然災害により、建物や家財に被害が発生した場合に保険金が支払われる保険である。
今年、損害保険各社が、近年発生した自然災害による保険金増を背景に、火災保険の保険料を値上げするとの報道がなされている。昨年の西日本豪雨や台風21号をはじめ、2011年度以降、台風や豪雪などによる保険金の支払いが高額になる傾向が続いている。日本は世界的にも自然災害に見舞われる頻度の高い国であり、我々一人ひとりとしても、日ごろから防災・減災に向けた取組みを考え、リスクに備えておく必要がある。

地震、噴火、これらによる津波は火災保険では補償されない。大地震が発生すると、火災の発生件数が増えたり、交通渋滞等により消防能力が低下したりすることで、大規模な火災が発生する可能性もあるが、地震による火災も、火災保険では補償されない。
それを補償するのが地震保険である。地震保険は単独での契約はできず、火災保険にセットで契約することとなっている。地震保険の付帯率(火災保険契約件数に対する割合)は、2017年度で60%強である。
被災した場合、家の建て直しや修繕、家財の買い替え、仮住まいの費用など、生活を再建するためにまとまった資金が必要となる。地震保険は、迅速な生活再建に向けた大切な役割を担っており、被災後、数週間以内に保険金が支払われることもある。

地震保険に加入していない場合で家が地震や津波で全壊した場合、被災した家の修繕費や再築費用の負担が大きく、それまで住んでいた家と新しい家の2つのローンを抱えることもある。そのような負担を軽減する意味で地震保険は有効である。
実際、東日本大震災、熊本地震、大阪府北部地震でも、被災者の方から地震保険があって本当に良かったとお聞きしている。地震に対する経済的な備えとして、地震保険をより多くのお客様に確実にお届けしていきたい。

保険への知識不足や誤解を排して加入率を上げる努力を ~松崎のり子氏

<b>松崎のり子</b>:消費経済ジャーナリスト。生活情報誌の副編集長として20年以上、節約・マネー記事を担当。雑誌やWebを中心に、生活者目線で記事を執筆中。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)ほか。「消費経済リサーチルーム」https://www.ec-reporter.com/松崎のり子:消費経済ジャーナリスト。生活情報誌の副編集長として20年以上、節約・マネー記事を担当。雑誌やWebを中心に、生活者目線で記事を執筆中。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)ほか。「消費経済リサーチルーム」https://www.ec-reporter.com/

2019年は、地震保険・火災保険がダブルで改定される年だ。10月には消費増税が控えており、保険料は非課税費目とはいえ、家計への影響も懸念される。とはいえ、そもそも論では保険とは個人では賄いきれない金額のリスクに備えるものであり、公的保障が実は手厚い医療費に備える保険よりも、火災保険及び地震保険を重視すべきだと考えている。

自然災害や巨大地震でもし住まいを失うと、損害は数千万円単位となり、預貯金では賄えないケースや二重ローンの悲劇も起こりえる。しかし、生命保険や医療保険に比べ、圧倒的に関心が低いのがこれらの保険だ。巨大災害が起きれば国が助けてくれると思っている人は多いが、実際には家の建て直しに受け取れるのは最大でも300万円(被災者生活再建支援法の基礎支援金+加算支援金)。わずか300万円で建つ家は、まずないだろう。また、先日聞いた話だが、住宅ローンを完済したら火災保険も不要になると思っている人もいたとか。さらには、相続した空き家があるとして、遠方にいる持ち主が居住しないその家にも保険をかけるという発想はまずない。どちらも誤った考えだが、正されることもないまま災害が起きれば恐ろしい。

地震保険については、必ず言われる「保険料が高い」という認識も問題だ。生命保険料の場合、1世帯あたりの年間払込保険料は平均38.2万円も払っている(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」・二人以上の世帯調査。平成28年度)。逆に地震保険料は、東京都の木造建築で保険金額1,000万円なら、年間で3万5,000円ですむ(建築年割引を適用した金額)。こうした住まいの保険に対する知識不足や思い込みを払しょくするような施策を、国・自治体・業界が連携して行い、加入率を上げていくべきだと思う。

今、保険業界にはインシュアテック(保険+テクノロジー)の波が押し寄せている。自動車保険ではドライバーの運転技術によって保険料が変動するテレマティクス保険、生命保険では健診結果によって保険料を割り引く健康増進型保険などがブームだ。こうしたリスクスコア、AI判定などによる、きめ細かい保険料算定が火災保険にも適用できるようになれば、新しい料金スタイルも考え得るのではないか。また、LINEが提供を始めたサービス「贈るほけん」(最初にリリースされた商品は、地震で家財に損害があった時などを補償)は、LINEのトーク上でメッセージカードとともに保険を贈れるもので、これまで損害保険に関心がなかった層を取り込める可能性がある。
巨大災害リスクが日本中を覆う現状では、入りやすく理解しやすい商品開発を進め、広く・薄く・国民みんなで支え合おうという姿勢が欠かせないと考えている。

2019年 04月09日 11時00分