コーディネイト済家具付きマンションとは?

短期的にマンションを借りたいとき、便利なのがマンスリーマンション。多くは、家具が標準設置されているが、備品のイメージが選択できず、不動産業者の趣味を押し付けられてしまうのが、難点だ。
6月19日から開始された新サービス『セプト!』は、このような悩みを解決してくれるかもしれない。『セプト!』のテーマは、「着替えるように模様替え」。プロがコーディネイトした家具付マンションがレンタルできるのだ。

「衣食住」の中でもっとも取り替えが大変なのは、言うまでもなく「住」だ。シャツ一枚と、部屋のカーペット1枚では、購入価格も違うし、取り替えの手間も格段に違う。設置した後で、「思っていたイメージではなかった」と気づいても、購入からやりなおすのは、ごく一部の限られた方だけだろう。しかし、『セプト!』を利用すれば、自分で家具を選んで設置する手間がないうえ、インテリアコーディネイターがプロデュースした、趣味の良い部屋を借りることができるという。しかも、完成イメージを前もって知ることができるので、「こんなはずではなかった」という失敗がないのもうれしい。
そこで、株式会社泉ハウジング 広報担当の今泉竜氏に、詳しい話を伺ってみた。

シンプルかつ快適なイメージのスタンダードタイプシンプルかつ快適なイメージのスタンダードタイプ

日本の住文化は独特?

運営会社の株式会社泉ハウジングは、茨城県鹿嶋市でマンスリーマンションサービスを立ち上げた企業でもある。当初は工業地帯への出張族をターゲットとしていたが、問題になったのが、家具。ホテルなら必要最低限の家具が用意されているが、マンションは空っぽの状態で提供されるため、住むには適さない。レンタル家具を利用するしかないが、好みに合うものを見つけるのは、至難の業だったという。

「海外では、家具付きの『ファーニッシュド・アパートメント』あるいは、フロントやコンシェルジュまで常駐する『サービス・アパートメント』が普通です。しかし、日本では、空の状態で賃貸される。手ぶらで引っ越せないという不自由さもありますが、部屋の雰囲気を変えるには、従来の家具を捨て、新しく買うしかないのも不便。いくら新しいマンションに引っ越しても、家具は住居から持ち込まなくてはいけませんから。」と、今泉氏は言う。
それに、何も入っていない空間にどう家具を配置すべきかと、一からデザインするのは、素人にはなかなか難しいものだ。サイズを間違ったりして、思ったように設置できないことも少なくないだろう。
現在では、マンスリーマンションは、最低限の家具家電を設置するのが一般的だが、利用者の満足度は決して高くない。
そこで、実験的に、コンセプトから選べる家具付きマンションの提供を始めたところ、収益が倍に増えた。特に、中長期の出張族に喜ばれたとか。短期間でも、好みの雰囲気の中で生活をしたいという需要は多いのだろう。あるいは、仮の住処だからこそ、非日常を味わいたいものなのかもしれない。

コンセプトは6種類からスタート。あなたのお好みは?

現在用意されているのは、「アジアン×リゾート」、「COOL MODERN(クールモダン)」、「STANDARD(スタンダード)」、「モノトーン」、「RESORT(リゾート)」、と、計5種類のコンセプトでデザインされた部屋。例えば「アジアン×リゾート」の部屋は、用意されたスリッパまで籐編みのバリ風。細部までこだわったデザインだ。モダンでシックなイメージのデザインが主だが、近々女性向けの「ナチュラルコージー」もリリース予定。今後100種類近くまで増やす予定だそうだ。
それぞれのコンセプトにおいて、五感に訴えるよう、デザインだけでなく手触りなども工夫されている。そのほか、新規レンタルの際には、部屋のイメージにあった香りのディヒューザーをサービス。タバコなど、前の住人が残していった匂いを気にしなくてもいいのはうれしい。ただし、味覚だけは対応しようがないそうだが……。

ところで、そっくりな部屋が複数存在するわけだから、遊びに行った友人の家のデザインが、自宅とまったく同じである可能性もある。それはちょっといやだという人のために、自分らしい個性を演出するにはどうしたら良いか、今泉氏に聞いてみた。
「洗濯機、テレビ、冷蔵庫などの大物家具は、部屋の雰囲気に影響を与えません。部屋のイメージを決定するのは、カーテンやカーペット、ベッドの布類などの布類。『セプト!』の部屋は、これらの調度をコーディネイト済みですが、雑貨類をそろえることで、個性的なスパイスを加味できます。100円均一ショップで好みの雑貨を選んだり、観葉植物を置いてみたりしてはいかがでしょう」
工夫次第で、費用をかけずに個性を出すことは可能なようだ。

バリ島の休息地をイメージ。籐編みのテーブルや、木彫りの壁掛け時計など、細部にまでこだわっている。バリ島の休息地をイメージ。籐編みのテーブルや、木彫りの壁掛け時計など、細部にまでこだわっている。

マンションごと借りなくてもOK。サービスをどう利用する?

サービスの一貫として、自分の部屋用に家具だけを購入、あるいはレンタルも可能。購入の場合は希望の家具をチョイスできる。ただし、レンタルする場合は、フルセットが条件だ。とはいえ、レンタル料金には、家具の設置手数料が含まれているので、「着替えるように模様替え」を実現できるのはうれしい。
また、マンションレンタルを選択すれば、気分転換をしたくなったとき、気軽にまったくタイプの違う雰囲気の部屋に引っ越すこともできる。家具の入れ替えにかかる物流費との兼ね合いから、最低レンタル期間は少し長めの3ヶ月に設定されているが、気分屋さんにとっては興味深いサービスではなかろうか。

では実際に『セプト!』のマンションをレンタルする際、どの程度の契約期間に設定すべきだろうか?
「出張でご利用いただく場合は期間の変更は珍しくありませんし、さまざまな理由により、いつ引越しが発生するかわかりません。中途解約には違約金が発生しますから、まずは3ヶ月で契約していただくのが現実的では」
と、今泉氏。さらに、
「そもそもは、日本の住文化を変えたいという思いが出発点です。例えば、東北大震災で、マンスリーマンションに避難する人が多数いらっしゃいましたが、家具サービスが充実していないため、布団一枚での生活も少なくありませんでした。不動産業者が家具を扱うのが当たり前になれば、避難生活も変わるはずと考えたのです。ですから、利用者のご希望にはなるべく添いたいという思いがあります。2020年には東京五輪が開催し、短期の滞在を希望される方もおられるでしょう。レンタル期間の短縮もありえますので、ご相談ください。」
とのこと。契約の前に、まず相談してみるのがベターだろう。

現在、サービスを受けられるのは、関東・東北・中京・関西地区のみだが、来年の6月ごろには、全国展開の予定。

■『セプト!』ホームページ
http://www.sep-t.jp/

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