目的の第一は認知度アップ。地域の人々とSDGsの狙いや意義を共有する

日本で最初のアーケード商店街が、日本で最初の「SDGs商店街」にーー。
福岡県北九州市の「魚町銀天街」が、第3回「ジャパンSDGsアワード」の最高賞「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」に輝いた。

「SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」は、2015年9月の国連サミットで、全会一致で採択されたもの。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための国際目標だ。貧困やジェンダー、エネルギー、気候変動、平和など17の項目がある。

魚町銀天街は2018年に「SDGs商店街を目指します」と宣言。商店街の取組みをまとめた動画を発表し、「第1回SDGsクリエイティブアワードGOLD AWARD 」を受賞した。17の目標のうち、4番「質の高い教育をみんなに」と11番「住み続けられるまちづくりを」を中心に、すべての目標に取組んでいくという。

魚町商店街振興組合理事長の梯(かけはし)輝元さんは「商店街は、単にものを売ったり買ったりするだけの場ではない。地域やコミュニティの再生と活性化のために役立ちたい」と語る。

「私たちにできる大事な役割のひとつが、SDGsの認知度向上です。2019年夏に北九州市立大学が調査したところ、市民の認知度は約18%に過ぎませんでした。多くの人が行き交う商店街で、SDGsの横断幕や看板を掲示したり、関連イベントを開催することで、その狙いや意義を伝えていきたい」。

17のゴール17のゴール

日本で最初にアーケードを設置した、「銀天街発祥の地」

魚町銀天街は、北九州の玄関口・JR小倉駅近くを起点とする、全長約400m、約160店舗の商店街だ。戦後復興期の1952年に、全国で初めてアーケードを建設したことで知られる。当時は公道に屋根を架けた前例がなく、なかなか役所の許可が下りなかったという。奮起した魚町の商店主たちは、自ら上京して当時の建設省に直談判し、熱意で許可を勝ち取った。もともと進取の気風に富んだ商店街なのだ。

2010年には商店街を横断する国道にジョイントアーケードを設置(全国で2番目)。透過性太陽光パネルを仕込んで商店街のLED照明に活用している。2011年に全国で初めて「リノベーションスクール」が開かれたのも、この商店街だった。

左/商店街に掲げられた「SDGs」の垂れ幕 右/写真上が太陽光パネルを設けたジョイントアーケード「エコルーフ」。右下に見えるのは「銀天街発祥の地」の碑。「銀天街」の名称は「銀の天井に輝く街」を意味し、公募で選ばれた。その後、各地の商店街で用いられている左/商店街に掲げられた「SDGs」の垂れ幕 右/写真上が太陽光パネルを設けたジョイントアーケード「エコルーフ」。右下に見えるのは「銀天街発祥の地」の碑。「銀天街」の名称は「銀の天井に輝く街」を意味し、公募で選ばれた。その後、各地の商店街で用いられている

商店街で学べる「まちゼミ」やSDGsを楽しく伝えるアートフェスタを開催

SDGs商店街を宣言する前から、魚町ではあらゆる人に開かれた教育活動を行っている。商店主が自らの専門知識や技術を伝授する、少人数制の無料ミニ講座「まちゼミ」だ。2003年に愛知県岡崎市で始まった試みで、魚町版の愛称は「うおゼミ」。毎年6月と11月に開催している。直近の2019年11月度は、50の講座が開かれた。そのテーマには、家の廃油で石けんをつくる、空き缶アルコールストーブでご飯を炊く、新聞紙やペットボトルを手芸・工作でリユースするなど、SDGsにつながるものも多い。

さらに宣言後は、SDGsを前面に掲げたイベントを次々と仕掛けている。2019年6月には、アートパフォーマーのカラリズム・リサさんを招いて「魚町銀天街SDGsアートフェスタ」を開催。その場でリサさんが制作したSDGsバナーを商店街に掲示している。子どもたちがSDGsをテーマに描いた絵も、商店街各所に展示した。

「SDGsバル」は、セミナーやワークショップを通じて参加者同士が交流する場だ。野菜の廃棄問題や防災など、一見堅そうな題材を取り上げるが、飲食OKがミソ。1000円の会費を徴収する代わりに軽食と飲み物を用意し、テーマに合わせてフェアトレード食品や防災食を試食する。「みんなで楽しく盛り上がらなければ続かない」と、前出の梯さん。同時に「SDGs をマネタイズにつなげることも重要」と、北九州市立大学の眞鍋和博教授による「SDGs経営セミナー」も開いた。

左上/商店街内にある多世代交流の場「まなびとESDステーション」で開催された「SDGs活用セミナー」の様子 右上/カラリズム・リサさんが「アートフェスタ」で制作したSDGsバナー 下2点/「うおゼミ」の講座のひとつ「街中アウトドア」。空き缶のアルコールストーブでご飯を炊く。災害時にも役立ちそうだ(右上以外の写真提供:魚町銀天街)左上/商店街内にある多世代交流の場「まなびとESDステーション」で開催された「SDGs活用セミナー」の様子 右上/カラリズム・リサさんが「アートフェスタ」で制作したSDGsバナー 下2点/「うおゼミ」の講座のひとつ「街中アウトドア」。空き缶のアルコールストーブでご飯を炊く。災害時にも役立ちそうだ(右上以外の写真提供:魚町銀天街)

商店街ならではのフードロス削減や地産地消、ユニバーサルなまちづくりにも

個々の商店も、それぞれSDGsに取り組んでいる。地産地消を進めるため、地元の食材を使う自然食レストランや、農協を通さずに農家から直接野菜を仕入れて販売する朝市・昼市も立つ。一般の流通にのらない規格外の野菜を売る仕組みで、農家の支援やフードロス削減につながる。フェアトレード食品の輸入販売や、賞味期限間近の食品を安く提供する商店もある。飲食店では、北九州市が進める「残しま宣言」運動のステッカーを貼ったり、プラスチックゴミ削減のため、紙ストローの利用を促したりしている。

ほか、大学生を中心とした街の清掃活動「グリーンバード」、ホームレスを自立支援組織につなぐ活動、公共交通機関の利用を呼びかける「クールチョイス」や、車椅子やベビーカーでも利用しやすい環境づくりにも取り組んでいる。「商店主が車椅子に乗って自分の店に入ってみて、どこが使いづらいか確認したり。みんなでユニバーサルマナー検定も受検しました」と梯さん。

日々の暮らしに密着した商店街で行われる数々の取組みは、「国際目標SDGs」とは、私たちひとりひとりの足元から始めるものだと教えてくれる。

魚町銀天街HP:http://www.uomachi.or.jp/

左上/賞味期限が近い高級食材を安く提供し、フードロス0を目指す「D.G shop」 右上/日替わりで地産地消の市が立つ「三番街自由市」。右が梯輝元さん 左下/自然食工房めぐみ 右下/「野菜党ラーメン」ではスムージーを紙ストローで提供左上/賞味期限が近い高級食材を安く提供し、フードロス0を目指す「D.G shop」 右上/日替わりで地産地消の市が立つ「三番街自由市」。右が梯輝元さん 左下/自然食工房めぐみ 右下/「野菜党ラーメン」ではスムージーを紙ストローで提供

2020年 02月18日 11時05分