水まわりだけの素材ではない。タイルの持つ可能性

INAXブランドのタイルの「いま」を紹介する次世代の「タイル研究所」INAXブランドのタイルの「いま」を紹介する次世代の「タイル研究所」

以前は水まわりに多く用いられていたタイル。耐水性・耐久性が高く、一般的な住宅でも古くから使用されていた馴染のある建築素材のひとつである。
しかし、最近では水まわりの設備機器の変化に伴い、住宅ではタイルを取り入れるプランが少なくなっているのが現状だ。

床材や壁材として多くのタイルを使用していた浴室は、システムバスが主流となり、キッチン空間で多用されるシステムキッチンは、清掃性の高い壁材(キッチンパネルなど)が標準仕様として組み込まれている。洗面まわりも、ボウルや収納が一体化された洗面化粧台を設置するプランも多く、タイルを用いるスペースは減少していると言えるだろう。
しかし、タイルは多様な可能性を持つ素材であり、水まわりにとどまらず用い方によって豊かな空間を生み出すものではないだろうか。

各メーカーからもショールームやカタログなどを通じて、新しいタイルやコーディネートプランなどが紹介されている。そんな中、LIXILは建築家やデザイナー向けに先進技術を取り入れたタイルや、それらの使い方を提案するWebサイトを立ち上げた。
INAXブランドのタイルの「いま」を紹介する次世代の「タイル研究所」としての「DTL -DESIGNER’s TILE LAB-(デザイナーズ・タイル・ラボ)」をみてみよう。

設計者やデザイナー向けに使い方やコンセプトを提案

「現在の日本の住宅設計では、タイルを用いる機会がなく、残念ながら、若い建築家やデザイナーにとっては、使用することに躊躇してしまっている。タイルの使い方や良さがわからずマイナスイメージだけを持ってしまっているのではないか、と感じています」と話すのは、LIXIL タイル商品部部長の木野謙さん。

「今回立ち上げたWebサイトは、カタログでは伝えきれないタイルの視覚的なイメージや魅力を、Webならではの表現方法を用いて伝えていきたいと考えています。特に、最近のタイルは、先進技術と伝統技術が融合されたタイプも豊富に揃い、住宅はもちろん商業施設などに、積極的に取り入れることができるはずです」(木野さん)

確かに焼き物としてのタイルは、用いる釉薬・窯での焼成など、伝統の技術なしでは生まれない素材であるし、最新技術を用いることで新しい素材の魅力が付加されるようにも感じる。
Webサイトでは、それらの新しい魅力を5つの方向性に分類し、それぞれの空間づくりを提案している。

美しい柾目がリアルなタイル、英国産のバーリントン・ストーンを緻密に表現したもの、鈍く輝く金属光沢を実現したタイル、リネンのソフトで繊細なテクスチャーの布調タイルなど美しい柾目がリアルなタイル、英国産のバーリントン・ストーンを緻密に表現したもの、鈍く輝く金属光沢を実現したタイル、リネンのソフトで繊細なテクスチャーの布調タイルなど

フェイクからスーパーリアルへ。異なる質感、形状などで表現も広がる

5つの方向性をみてみよう。
まずひとつめは、「SUPER REAL(スーパーリアル)」。大理石や木、金属、石などの質感が緻密に表現されたタイルが揃う。最新の技術によって、単なるフェイクではなく、スーパーリアルなデザインが可能となっている。

「HYBRID TEXTURE(ハイブリットテクスチャ)」は、違う質感・違う形状を組み合わせることで、新しい魅力を実現したもの。
「LIGHT & SHADE(ライト&シェイド)」は、変化に富んだ立体形状のタイルなど、光との相乗効果をもたらすタイプが揃っている。
また、多彩な色が魅力の「PLAYFUL COLORS(プレイフルカラーズ)」は、ヨーロッパで用いられる色合いなど、さまざまなパターンが可能。 「YAKIMONO DIVERSITY(ヤキモノダイヴァーシティー)」は、焼き物ならではの美しさ、ムラや風合いなど、焼き物の魅力を表現したタイルがみられる。

5つの中でも、特に注目したいのが「SUPER REAL」だろう。
「最新の印刷やデジタル技術によって、本物そっくりに表現したものです。規格外の柄や色調も、自然に見えるようコントロールされ、本物を超える要素も感じられるのではないかと思います。タイル素材としての耐久性の良さは大きな魅力ですが、加えて、木材や石など、限りある素材の代わりに、リアルに表現されたタイルを用いることで、環境的にもやさしい、とも言えるのではないでしょうか」(木野さん)

使い込まれた古木のヴィンテージ感を表現したものや大理石の大胆な静脈、深い色合いを再現したタイプ。また、ガラスとミラーを組み込んだデザイン、木目が透ける絶妙な色合いを揃えたタイルなども使い込まれた古木のヴィンテージ感を表現したものや大理石の大胆な静脈、深い色合いを再現したタイプ。また、ガラスとミラーを組み込んだデザイン、木目が透ける絶妙な色合いを揃えたタイルなども

建築家設計者やデザイナーに向けてのイベントも

渋谷で行われた「DTL Communication Day」。鈴野浩一さん(右)と木野謙さん(左)のトークセッションも渋谷で行われた「DTL Communication Day」。鈴野浩一さん(右)と木野謙さん(左)のトークセッションも

今回のWebサイト立ち上げに際しては、最新のタイルとデザインについて考える「DTL Communication Day」を開催。最新タイルの展示と合わせ、トラフ建築設計事務所の鈴野浩一さんから素材としてのタイルの魅力・デザインのプロセスなどの紹介やトークセッションも実施した。

鈴野さんは
「タイルは、空間の中において用い方や並べ方・目地の使い方などによって、平面だけでなく立体的な美しさを生み出すものだと思います。今回、実際にタイルが製造される工場見学の機会を得て、カタログからは知ることができない素材感や焼き物であるタイルだからこその魅力も改めて感じることができました。新しいWebサイトの5つのカテゴリー構成も面白い視点ではないでしょうか。その中でも、SUPER REALに分類されたタイルをみると、何が人工で何が自然なのか、わからなくなるような不思議な気持ちにもなりますが、最新のプリント技術によってまだ出来ることがあるのではないかとも思います」

LIXILの木野さんは、「DTL -DESIGNER’s TILE LAB-」はメーカーからの一方通行ではなく、建築家やデザイナーの方と双方向でコミュニケーションをとりながら、タイルの可能性を広げるためのプラットフォームとしていきたいと思っています」と話す。作り手と使い手が協力することで、また新しい方向・商品が生まれるかもしれない。

素材としてさまざまな可能性のあるタイル。
住宅においては、用いるケースは少なくなっているとはいえ、インテリアアイテムとしてモザイクタイルなどは若い世代などに人気があり、新築やリフォームだけでなくDIYのアイテムとして楽しむ方は多くみられる。

今回紹介したWebサイトは、設計者やデザイナーなどプロ向けだが、タイルの最新傾向や興味深い使い方など一般ユーザーにも参考になるのではないかと思う。新しいタイルが生み出す、多様な空間づくりをWeb上で楽しみ学んでみてはいかがだろうか。

■Webサイト/取材協力
DTL -DESIGNER’s TILE LAB-
https://www.lixil.co.jp/lineup/tile/designers_tile_lab/

LIXIL
https://www.lixil.co.jp/

トラフ建築設計事務所
http://www.torafu.com/

2019年 04月15日 11時05分