あいちトリエンナーレ2016 ~虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅~

これまで2回にわたって、あいちトリエンナーレの沿革や実施後の変化などを紹介してきた。本記事ではいよいよ開幕となった、あいちトリエンナーレ2016の見どころについてお伝えする。まずは開催概要を見ていただこう。

■あいちトリエンナーレ2016開催概要
【開催期間】2016年8月11日(木・祝)~10月23日(日)[74日間]
【テーマ】虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅 Homo Faber:A Rainbow Caravan
【主な会場※】愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか、豊橋市内のまちなか、岡崎市内のまちなか、モバイル・トリエンナーレ
【芸術監督】港 千尋 氏(写真家・著述家、多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授〈映像人類学〉)
【参加アーティスト数】119組(38カ国・地域)
※主な会場の詳細や開催日程については記事最後のリンクを参照

愛知の玄関口として1日100万人以上が利用する名古屋駅も会場に。JRタワー名古屋で作品が展示される予定愛知の玄関口として1日100万人以上が利用する名古屋駅も会場に。JRタワー名古屋で作品が展示される予定

豊橋会場は見どころ盛りだくさん!

2016年の会場は名古屋市、豊橋、岡崎の3カ所。そのうち初の拠点となる豊橋会場の見どころを、あいちトリエンナーレ実行委員会事務局の水野亜依子さんに伺った。

「豊橋は、製造業関係の仕事に就いているブラジルの方が多く住んでいます。そうした背景もあって、今回はブラジルからの参加で、日本で初めて紹介されるアーティストが5組いらっしゃるんですが、その方々の展示やパフォーマンスをすべて豊橋で展開します。一部をご紹介すると、たとえばラウラ・リマさんというアーティストが水上ビルで手がける“Flight”。水上ビルはとても特殊な建物で、下に水路が流れていて、その上に細くて縦長のビルが建っています。その一画をトリエンナーレの会場にさせていただき、約100羽の⿃の空間をつくります。空間の中には世界各国の風景画などのアートを飾り、鳥はその風景を見て過ごします」

動物をテーマに現代の人間のあり方や立場を考えさせられる、ちょっとユニークで奥深いアートだ。ほかにはどんな作品が用意されているのだろうか。

ラウラ・リマさんの作品が展示される豊橋会場の「水上ビル」。約100羽の鳥がどんなふうに展示されるのか楽しみだラウラ・リマさんの作品が展示される豊橋会場の「水上ビル」。約100羽の鳥がどんなふうに展示されるのか楽しみだ

一般参加型のプログラムも多彩に展開

「ジョアン・モデさんというアーティストは、カラフルな紐をつなぐという一般参加型の作品を手がけます。紐は人と人のつながりを表していて、ネットの広がりが人の輪の広がりであり、その境界を意識して人と人とをつなげていくというプロジェクトです。モデさんはブラジルやドイツの国境などでこの紐をつなぐプロジェクトを行っていて、これを豊橋のまちなかと、名古屋、岡崎でも行います。最終的にはその3カ所とモバイル・トリエンナーレでつくったものを全部つなげ、愛知芸術文化センターで特大の作品を完成させる予定です」

さらに、パフォーミングアーツでも面白そうなプログラムがある。

「8月の公演では、ダニ・リマさんというブラジルのダンサーが率いる4人のダンサーの方々が、身近なものを使ってパフォーマンスをします。傘やおもちゃなどご家庭にある物を使って4人の方々が前衛的でかっこいいダンスを披露してくださるほか、そうした物を使った新しい遊びを考えるワークショップも行います」

ピックアップしたプログラムは、豊橋会場のイベントのなかでも特に大きな展開になるそうなので、一期一会のアートをぜひ堪能していただきたい。

ジョアン・モデ《NET Project》 SESC Barra Mansa、リオデジャネイロ 2003- photo: João Modéジョアン・モデ《NET Project》 SESC Barra Mansa、リオデジャネイロ 2003- photo: João Modé

スクラッチタイルを使った貴重な建物にも注目

あいちトリエンナーレの会場はほとんどが終了後に手放されるが、残る例もある。たとえば名古屋会場の、アートラボあいち長者町と大津橋だ。アートラボあいち自体ははアートに関する情報発信基地としての機能を持つ場所だが、ぜひ建物にも注目していただきたい。特に今回初めて設置されたアートラボあいち大津橋は、これまで一般の人が入れなかった建物だという。アーキテクトの武藤隆さんが詳しく説明してくださった。

「アートラボあいち大津橋は、もともとは愛知県庁の大津橋分室でした。1933(昭和8)年に建てられた古い建物で、最初は愛知県信用組合連合会館として使われていましたが、1957(昭和32)年に愛知県に寄贈されました。一般の人は入ることができませんでしたが、アートラボあいちとして使われることで、誰でも中を見られるようになりました。1階は戦争に関する資料館になっています。もともと良い建物ですし、今まで見ることのできなかったものが見られるようになったという意味では、あいちトリエンナーレのなかでは最も有効活用している建物だと思います」

名古屋会場の建物の見どころは、もう一つある。74年間営業し、2014年に閉店した名古屋栄の旧明治屋栄ビルだ。この建物についても武藤さんにお聞きした。

「旧明治屋栄ビルも非常にレトロな建物です。閉店後は入ることができませんでしたが、あいちトリエンナーレ2016の期間中はまた入れるようになります。おそらくこのエリアは再開発がされるでしょうから、建物を見る最後のチャンスになると思います。旧明治屋栄ビルとアートラボ大津橋の特徴は、スクラッチタイルが貼られていること。タイルは表面がつるつるしていますが、焼く前に筋を入れてスクラッチ、つまりひっかいて焼いたものがスクラッチタイルです。スクラッチタイルは多治見や常滑、土岐でつくられていたこの地域ならではのタイルで、それがかなり良い状態で状態で残っている2つの建物は、建物としてもとても魅力がありますね」

アートラボあいちは、あいちトリエンナーレに関する情報や地域のアート情報の発信をはじめ、<br />愛知県内の芸術系大学との展覧会の実施などを行うアートセンター。写真はアートラボあいち大津橋
アートラボあいちは、あいちトリエンナーレに関する情報や地域のアート情報の発信をはじめ、
愛知県内の芸術系大学との展覧会の実施などを行うアートセンター。写真はアートラボあいち大津橋

公式ホームページでアートツーリズムのモデルコースを紹介

いくつか見どころを紹介してきたが、あいちトリエンナーレ2016は会場が名古屋、豊橋、岡崎とやや離れているため、1日ですべて巡るのは難しい。そこで、あいちトリエンナーレ実行委員会事務局では、さまざまな工夫を凝らして巡り方の提案をしているというので、水野さんに詳しく伺った。

「今回は“旅”がテーマなので、アートツーリズム的な巡り方をご提案したいと考えています。愛知県は横長な都市で、西から東に向かって名古屋地区、豊橋地区、岡崎地区と並ぶので、アートを見ながら旅を楽しめるように。たとえば東京方面から来られるなら、新幹線のぞみで名古屋駅まで行くよりも、ひかりを利用して豊橋駅で降りて巡るほうが合理的です。そうした提案も含め、ファミリー向け、1日で巡りたい方向け、あちこち巡りたい方向け、といったツーリズムのモデルコースを作成し、公式ホームページでご紹介していきます。また、ガイドブックも用意していますが、今回は旅を意識した内容になっているので、まちの情報やグルメ情報もたくさん盛り込んでいます。ガイドブックやモデルコースを見て、あいちトリエンナーレ2016を自由に楽しんでいただきたいと思います」

あいちトリエンナーレ2016開催前のレポートはこれにて完結だが、次は開催期間中に会場を巡り、その様子をレポートするのでご期待いただきたい。

【取材協力】
あいちトリエンナーレ実行委員会事務局(愛知県県民生活部文化芸術課国際芸術祭推進室内)

あいちトリエンナーレ2016 会場案内や開催概要など

モバイル・トリエンナーレの各会場

名古屋から岡崎までは約37km、豊橋までは約68km(岡崎から豊橋までは約30km)の距離名古屋から岡崎までは約37km、豊橋までは約68km(岡崎から豊橋までは約30km)の距離

2016年 08月18日 11時08分