豊かな生活をおくることができる町家・町並みを作る住宅モデルプランを募集

今回の「津島型町家の住宅モデルプラン」募集では、町家での暮らし方、使い方を合わせて提案することも課題に組み込まれた。豊かな生活ができる町家を実現できることを考えた内容だ今回の「津島型町家の住宅モデルプラン」募集では、町家での暮らし方、使い方を合わせて提案することも課題に組み込まれた。豊かな生活ができる町家を実現できることを考えた内容だ

2015年、愛知県津島市が主催となり「津島型町家の住宅モデルプラン」の提案募集が行われた。これは、かつて伊勢と尾張をつなぐ湊町として栄えた津島市に残る、歴史ある町家・町並みの保存を目的とした取り組みのひとつだ。

町家の風情ある佇まいは魅力的だが、そこには、老朽化や空き家といった問題も潜んでおり、全国でもさまざまな取り組みがされている。そんななかで、津島市では、環境や防災などを現在の基準に対応させ、現代のライフスタイルに合わせながら保存し、豊かな生活をおくることができる町家・町並みにしていきたいとする。

その考えをもとに、2015年10月16日を期限として全国から作品を募集。10月31日の一次審査会を経て、12月5日に最優秀賞などが発表された。今回はその紹介と、津島市役所の担当者に取材した市の取り組みについてお伝えしたい。

作品提出前の参考に、現地見学会を実施

現地見学会は、全2回で30組ほどが参加した現地見学会は、全2回で30組ほどが参加した

プラン募集にあたり、8月1日、8日と2回にわたって現地見学会が行われた。現地見学会の参加は応募に必須の条件ではないが、実際に町歩きすることで見えてくることもあるため、企画参加希望者にとっては、いい機会となった。

まずは集合場所となった津島市文化会館で、1時間ほどスライドを使って津島市の町家の特徴についての説明がされた。戦国~江戸時代、近代、戦後と町がどのように移り変わったか、町家の造りがどのようになっているかなどを紹介した。戦国時代には織田信長が湊町として発展した津島の財力の支援を受けて、尾張を統一したといわれる。昭和初期から戦後の高度経済成長期には、毛織物産業で栄えた。そんなふうに賑わっていた町が産業の衰退とともに、町並みが変貌していくことになったという。

町並みの見学では、かつてにぎわいの中心であった本町筋と呼ばれるエリアへ。約600年の伝統を誇り、日本三大川まつりの一つに数えられる尾張津島天王祭が催される天王川公園の近くだ。この本町筋の町家は、格子戸が入れられており、2階建てが中心の大きなしっかりした造りのものが目立つが小さな家も多く、全体で町並みを構成している。客をもてなすための茶室が設けられていることが多いのも特徴だ。現在は空き家となっている町家の間取りや構造を見るなど、約2時間かけて津島の町並みにふれた。

最優秀賞は空き地をつなぎ、町並みを再生する住宅プラン

今回の募集には、全国から36作品の応募があったという。そのなかから、一次審査会で10作品が選ばれ、最終審査では、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、佳作7作品が決定した。

「津島型町家の住宅モデルプラン」は、実在する敷地、建物、町区を自由に選択し、住み暮らし続けることができる土地、建物の利活用を考えたモデルプランを募集したもの。そのなかで最優秀賞となったのは、三軒長屋の真ん中の1軒が空き地となった敷地のプラン(「向こう三軒両隣り」)だ。空地部分に門型ラーメン補強を施して耐震性を向上させるほか、新しく造る住宅は、2階が居住空間、1階はオフィスや交流施設とすることで町の再生を図ったという。

各賞を受賞した作品はホームページで閲覧ができる。いずれも力作揃いなので、ぜひ下記を参照してほしい。
津島型町家の住宅モデルプラン http://www.compe24ma.x0.com/

これから津島市が目指すこととは?

今回お話しを伺った、左から津島市役所建設部参事の佐藤正幸さん、建設部計画建築課の側島清仁さん、市長公室企画政策課 歴史・文化のまちづくり推進グループの菱田真也さんと横井さつきさん今回お話しを伺った、左から津島市役所建設部参事の佐藤正幸さん、建設部計画建築課の側島清仁さん、市長公室企画政策課 歴史・文化のまちづくり推進グループの菱田真也さんと横井さつきさん

今回の取り組みはどのようなきっかけから生まれたのだろうか。津島市役所の担当者に伺った。
「2014年から、津島市は歴史・文化の町づくりを進めています。神社やお寺をはじめ、古い町並みが多く残っているので、それを生かした町づくりをしていこうという取り組みです。以前から計画案は出ていたのですが、なかなか実際にできず、やっと具体的になったところです」。

具体的に一歩進むようになったのは、現在の市長、副市長がともに一級建築士というのも町並みを保存したいという思いがいっそう強くなった要因かもしれないという。今後の計画については「現在、補助制度の創設について検討中です。本町筋の通りを中心に、古い町並みを保存したり、新しい建物を作るにしても、町並みに合うような建物にするためのものです」と話す。新築物件では昔からの雰囲気を思わせる格子をつけたりするだけでなく、建物全体として少しでも昔の町並みに調和するように、室外機の目隠しなど細かい点についても対象にしていくことを考えているという。

実際に津島市が面している町家の問題はというと、やはり空き家の問題だ。「空き家は本町筋と、津島駅から津島神社へとつながる商店の建ち並ぶ天王通りというエリアで、60~70軒ほどあります。そのなかで貸し物件として出ているのが5軒くらいなんです。空き家のままでは、さらに荒廃が進んでいってしまいます。でも、家の持ち主はトラブルを心配して貸すことに躊躇されていたりもするんです。一方で、何軒かの方に聞いてみたところ、市の活性化のために空き家を貸すのはどうですかというと、それであればいいですよという回答もありました。ですから、市が少し関わった組織である『一般社団法人津島まちや・まちなみ再生機構』を立ち上げました」。
1988年に町家の調査を一部実施したのだが、解体されたり、新しい建物になったりで、すでにその時の対象物件の約3分の1の町家が失われてしまっているという。

時折開催される津島市の町歩きのイベントは、市内外から参加者が集い、盛況だという。「津島市に住んでいるとあまり気づかないのかもしれませんが、外から見るとやはり津島の町並みっていいよねと評価をいただいているんです。いいと言っていただけるものは私たちも残していかなければいけないと思いますし、市民の方にそれを伝えていくことで、意識を高めていただけるようになれば」と話す。

市が積極的に関わることで、町家の持ち主は維持を考えるのに安心感が生まれ、町家を借りたり、このエリアに新築する人にとっては風情ある町並みのなかで豊かに暮らす楽しみを持つことができる。津島市の取り組みは始まったばかりだ。昔ながらの町家を大切にしながら、さらなる魅力のある市となることを期待したい。

取材協力:津島市役所 https://www.city.tsushima.lg.jp/

2016年 02月17日 11時05分