新年の福を授かる意味をもつ、酉の市の熊手

酉の市は全国のおおとり神社で11月に行われるお祭り酉の市は全国のおおとり神社で11月に行われるお祭り

今年もそろそろ新年の準備を始める季節になった。2017年は酉年。酉年は実りの多い年になるともいわれているそうだ。

新年の準備といえば、関東では酉の市が知られているだろう。酉の市は全国のおおとり(大鷲・鷲・大鳥などの漢字があてられることが多い)神社で11月に行われる祭りで、希望者には縁起物の熊手が授与される。熊手は「福を掻き集める」意味があり、お多福や入船などの飾りをつけると、いかにも幸福を呼んでくれそうなにぎやかな雰囲気になる。商売人はもちろん、より良い新年を願う人々が集まる、活気あふれた祭りだ。開催日は11月の酉の日。十二支と呼ばれる通り、酉の日は12日ごとに廻ってくるから、暦によっては2~3回開催される。最初の酉の日を「一の酉」、次を「二の酉」、その次を「三の酉」と呼ぶが、今年は11日が一の酉、23日が二の酉で、三の酉はない。

夜明けと同時に一番太鼓が鳴り、熊手の授与が開始される。最初に熊手を受けた人には「一番札」を授ける神社もあり、深夜から参拝者が殺到するようだ。

酉の市の由来とは

今では、今では、"酉の市といえば浅草"といわれるようになった

酉の市が始まったのは、花又村(現:足立区花畑)の大鷲神社といわれる。そもそもは収穫祭だったが、祭りは数少ない庶民の娯楽でもあったため、時代によりだんだんと形を変え、祭りの本拠地も浅草へと移った。そして、浅草長國寺のご本尊である鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)が鷲神社の祭神と習合したほか、浅草隣の千束にある鷲神社が酉の市を開催したため、"酉の市といえば浅草"のようになったのだ。

鷲神社の由来によると、ご祭神の鷲大明神は、太陽神である天照大神が岩戸に隠れたとき、外へ引っ張り出すために演奏した楽器の上に止まった鷲であり、世の中を明るくする霊験があると考えられてきた。
また、酉の市は本来「酉の祭(まち)」と呼ばれていたという。熊手が縁起物になったのは、日本武尊(やまとたけるのみこと=一世紀ごろにいたとされる伝説上の英雄)が、関東の逆賊を征伐するためにこの神社に立ち寄って祈願したことに由来する。討伐が終わり、都へ帰る途中にも立ち寄って、境内の松に熊手をかけて戦勝を祈ったのだそうだ。

日本人と酉の市の関わり

酉の市の歴史は古く、『東都歳時記』には、1832年(天保壬辰)の六十余年前には始まっていたと書かれているから、江戸時代初期に遡るようだ。
文学作品にも数多く登場しており、樋口一葉の『たけくらべ』では、酉の市のにぎわいぶりが描写されている。また、冬の季語にもなっており、
高浜虚子は、
“人並みに押されてくるや 酉の市”
と詠んでいる。

また、三の酉がある年は火事が多いとの俗信もあり、古くから酉の市が庶民の生活に浸透していたとわかる。しかし、統計的にみて、三の酉のある年に火事が多いとは言えず、「宵に鶏が鳴くと火事がでる」という俗信と混同したのだともいわれている。確かに、鶏は夜明けに鳴くものであり、日が暮れてすぐに鳴くのおかしい。宵に鶏が鳴くのを不吉な前兆と感じるのに不自然はないだろう。また、日の変わる時刻から始まる酉の市を、「夜が明けぬうちに鳴く鶏」とみなしたのかもしれない。
三の酉のころは寒さも厳しく火を使う機会が増えるので、火の用心を促すためとも、酉の市の帰りに吉原などの遊郭へ遊びに行こうとする男衆を足止めするために、女性たちが戒めたのだともいわれている。
さらに、鶏の赤いとさかが火を連想されるのだという説もあり、はっきりわかっていない。
ただ、10万人以上の死者を出した明暦の大火は、三の酉がある年に起こっており、「やはり三の酉がある年は要注意だ」と深く印象づけられ、長く言い伝えられたのだろう。

酉の市の楽しみ方と熊手の飾り方

酉の市は夜明けとともに始まり、一日中にぎわう。活気を楽しむのも良いが、新年がより良いものになることを祈って、熊手を授かってみてはいかがだろう。
熊手は縁起物だから、値段がついていないものが多いようだ。言われた値段が、相場よりも高いと感じる人もいるだろう。大きさによっては何万もするものもあるうえ、年を数えるごとに大きいものに買い換えていかねば「福徳が下がる」といわれているから、最初は小さなものから始めると良さそうだ。

さすが縁起物、値段があって無いとはいえ、言い値を値切っても良いが、その際、ちょっとしたルールがあるので紹介しよう。まずは値段を確認してから値切る。すると少し安い金額が提示されるので、さらに値切り、納得のいく値段になれば、商談成立。しかし支払いの際は値切った後の金額で支払ってはいけない。最初に提示された値段で支払い、差額はご祝儀とするのが粋なのだそうだ。

「縁起物を値切るべきではない」と考える人も、ご祝儀を上乗せして支払う。千円以下の端数はご祝儀と考えるので、千円札で支払って、おつりをもらおうするのも粋ではないのだとか。

ただし、この作法は関東だから成立するのかもしれない。
おおとり神社の総本社は大阪府堺市の大鳥大社だが、関西で酉の市はあまり知られていない。そのかわり、1月にえびす神を祭る神社で開催される十日えびすが有名。9日の宵えびす、10日の本えびす、11日の残り福と3日連続で開催され、縁起物の熊手が授与される。この祭りでは、値切った後の金額で支払うのが一般的だし、お釣りは当然のように受け取るのだ。

酉の市でも十日えびすでも、授かった熊手は、神棚や玄関などの目の位置より高い場所に飾ろう。お札に準ずるとの考えから、恵方に向けると良いという説もあるが、はっきりした決まりはないようだ。

ところで、「酉」はもともと酒を入れる器を表した象形文字で、「とり」や「にわとり」の意味はない。それなのに十二支の「とり」にこの漢字が使われているのはなぜだろう。
実は「とり」の読みや意味よりも、漢字の「酉」の方が先。そもそも十二支は植物の状態の移り変わりを表現したものとされており、「酉」は果実が成熟しきった状態を指していた。後世になって、「酉」と同じ「ヨウ」の音を持つ鶏があてはめられたのだ。

酉の市は浅草の鷲神社をはじめ、新宿区の花園神社、府中市の大國魂神社などで開催される。関東以外でも、名古屋の長福寺や静岡の大安寺で開催されているようだ。
来年の干支は酉だから、より良い新年が授かるよう、酉の市へ出かけてみてはいかがだろう。

熊手は福を招くものなので、飾る場所は神棚などの他、その年の恵方(吉方)に向けて飾るのも良いらしい熊手は福を招くものなので、飾る場所は神棚などの他、その年の恵方(吉方)に向けて飾るのも良いらしい

2016年 10月28日 11時05分