2025年の万国博覧会は大阪が舞台

1970年の万博会場跡地は、現在公園や商業施設として使用されている1970年の万博会場跡地は、現在公園や商業施設として使用されている

2025年に、大阪で万国博覧会の開催が決定した。大阪といえば、1970年に日本で初めて万博が開催された土地。岡本太郎氏がデザインした「太陽の塔」や、アポロ計画で持ち帰られた月の石などが話題となった。それから55年が経ち、2025年の万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、国連が掲げる持続可能な開発目標が達成される社会、日本の国家戦略である狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の新しい社会の実現を目指す。
万博開催地として注目されている夢洲は、大阪の北港にある。埋め立てが完了すれば、総面積は390haになる予定。舞洲と夢舞大橋で、咲州とは夢咲トンネルで結ばれているが、コンビニエンス・ストア以外の商業施設はなく、大阪府民でも夢洲に足を踏み入れた人は少ないだろう。
しかし、今回の万博開催を受け、インフラ整備や開発が進むのは間違いない。そこで、夢洲の成り立ちや環境について、改めて見直してみよう。

「負の遺産」と呼ばれた夢洲・咲洲・舞洲

舞洲と夢洲をつなぐ夢舞大橋舞洲と夢洲をつなぐ夢舞大橋

そもそも大阪港は、南港地区から江戸時代には埋め立て工事が行われ、1933年には南港開発計画が着工。しかし太平洋戦争のため一時中断していた。夢洲・咲洲・舞洲など、埋め立て人工島の開発が始まったのは、1958年。咲洲地区のフェリーターミナル周辺地の埋め立てから始まる。高度成長期の1970年には埋め立て造成と廃棄物処理を同時に行うため、「大阪湾フェニックス計画」も立案。長期安定的に広域の廃棄物を適正に埋め立てて処分し、その埋め立てによってできた土地を活用して港湾を整備し、地域の発展に寄与するのがその目的だ。
1988年には夢洲・咲洲・舞洲を舞台に、国際交易機能、情報・通信機能、先端技術開発機能を担う「テクノポート大阪」計画が策定されている。咲州に国際交易機能を果たすためのワールドトレードセンターやアジア太平洋トレードセンターが建設されたほか、先端技術開発機能を果たすための先端技術開発・研究施設などが建設された。また、情報・通信機能を満たすためには、光ファイバーを活用する計画だった。しかし、その後のバブル崩壊もあって開発は進んでいない。
2008年の夏季オリンピックを招致して、舞州と夢洲を会場や選手村にする計画が立案され、さまざまなイベントが開催されたが、開催地は北京に決定。オリンピック誘致のための建造物は、大阪府や大阪市の財政を圧迫した。600億円もの費用がかかった世界初の浮体式旋回稼働橋である夢舞大橋も、総事業費が約1,060億円の夢咲トンネルも有効活用できないままで、「税金の無駄遣い」との批判も多かった。

夢洲・咲洲活性化の取り組み

咲洲には大阪府庁の機能が一部移管されている咲洲には大阪府庁の機能が一部移管されている

そこで2009年に、夢洲・咲州地区の将来を見据え、活性化に取り組むべく、大阪府・大阪市・経済団体が共同して「夢洲・咲洲地区まちづくり推進協議会」を設置。9月15日には第1回の会議が開催された。2010年には、ベイエリア見学会やセミナーなどのプロモーションが行われるなど、企業誘致にも取り組んでいる。
そして2016年9月21日、当時の松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長は、万博開催候補地を夢洲に一本化することを決定した。しかしなぜ、夢洲なのだろう。

大阪にオリンピック招致を計画した際、メイン会場が建設される予定だった舞洲は、シティバスが運行しているし、スポーツ施設などもある。初夏には250万輪ものゆりの花が咲き乱れるゆり園も開園し、多くの人が訪れている。咲州は、面積約1,045ha。野鳥園や大阪府の咲州庁舎、アジア太平洋トレードセンターなど、人々が集う施設がある。ニュートラムも通っているので、大阪府民にとっても親しみのある場所だろう。2014年に遊休地の開発事業者を募った際は、条件が厳しすぎたこともあって応募者はゼロだったが、2017年には外国人観光客の増加による慢性的なホテル不足の緩和を目指して大型施設を誘致すべく、条件を緩和して、再度開発事業者を募集している。今回は事業者が決まり、店舗やスポーツ施設、共同住宅のほか、ホテルなどの複合施設が建設予定だ。こうしてある程度活用されている舞洲や咲州に比べると、夢洲は、ほとんど有効活用されていないのが現状だ。

2016年9月29日に開催された「万博基本構想検討会議」の議事録を見た限り、夢洲が万博の舞台に選ばれた理由は、夢洲をアジアのハブ都市にしたいという思い、また、ITや環境技術などの先端技術を駆使して、街全体の電力の有効利用を図って省資源化を徹底するほか、大阪万博のテーマでもある健康、そしてその延長線上にある長寿にも対応するスマートシティのモデルとしたいという期待があったようだ。さまざまな技術を結集するには、遊休地の多い夢洲が都合よかったのだろう。

課題と今後の開発

咲洲から夢洲を望む咲洲から夢洲を望む

万博開催における大きな課題は、約1,250億円とも試算される建設費だろう。国、地方自治体、民間で均等に分担する計画だが、大阪の経済は「地盤沈下」が指摘されて久しい。金融機関をはじめ大阪で生まれた企業が続々と東京に本社移転する中、建設費がさらなる財政負担になるのではないかと指摘されている。

しかし、バスもニュートラムも通っておらず、舞洲から夢舞大橋、咲州から夢咲トンネルを利用するしかなかった、夢洲へのアクセスの悪さは、解消されそうだ。2018年12月20日に大阪メトロが発表した「地下空間の大規模改革及び夢洲開発への参画について」の中で、中央線を夢洲まで延伸する計画があるからだ。JR桜島線も、舞洲までの延伸を検討している。

万博の開催期間は2025年5月3日から11月3日までの185日間。万博終了後も跡地を有効利用すべく、検討もされているようだ。併せて夢洲にIR複合リゾート施設誘致への取り組みも続けられている。カジノをはじめ、ホテルや大型ショッピング施設が入れば、万博終了後も、大阪にはさらに多くの観光客が訪れるようになるだろう。
万博開催やカジノ誘致には賛否両論あるが、2兆円の経済効果も見込まれている。

すべての物事において、プラス面があれば、必ずマイナス面もあるもの。万博による恩恵ばかりを期待して、楽観しすぎるのも問題だが、疑心暗鬼になりすぎては、発展もないだろう。せっかくの国際イベントなのだから、楽しみに待ちたいと思う。

■参考
せせらぎ出版『大阪湾の白い象 ーこれが新人工島の全貌だ-』大阪市ベイエリア研究会著 1996年9月25日 発行
日本機関紙出版センター『これでもやるの? 大阪カジノ万博 賭博はいらない!夢洲はあぶない!』カジノ問題を考える大阪ネットワーク著 2017年2月10日 発行

2019年 01月19日 11時00分