2014年度の税制改正で、引き渡し後の耐震改修工事も減税対象に

住宅ローン減税ではこれまで、原則として木造の一戸建て住宅などは築20年以内、マンションなど耐火建築物は築25年以内であることが要件とされ、それを超える場合には一定の耐震基準を満たすものにかぎり適用が認められていた。ただし、取得の日よりも前(2年以内)に耐震性が証明されていなければならず、売主の協力が得られにくい一般の中古住宅では実質的に住宅ローン減税の利用は困難なことが多かっただろう。

そのため2014年度の税制改正で要件が見直され、中古住宅を購入して引き渡しを受けた後に、買主自らが耐震改修工事を実施した場合でも住宅ローン減税の適用が受けられることとなった。売主が個人の場合でも最大で200万円(10年間の合計額)が控除されるため、耐震改修工事費用を十分にまかなえるケースも多いだろう。2014年4月1日以降に売買契約を締結した場合が対象となる。しかし、実務上での問題点も生じているようだ。手続きの流れを確認するとともに、注意すべき点をまとめておきたい。

耐震性の向上は日本の住宅にとって大きな課題であるが、地盤の問題も大きい耐震性の向上は日本の住宅にとって大きな課題であるが、地盤の問題も大きい

住宅ローン減税制度における築年数要件の変遷を振り返る

本題へ入る前に、住宅ローン減税制度について主に築年数要件の観点からこれまでの変遷などを振り返っておくことにしよう。住宅取得者を対象とした所得税の軽減制度は1970年代からあったものの、当初は新築住宅のみを対象とし、住宅ローンの有無は問われなかった。その後、1978年に住宅ローンの利用が考慮されるようになり、1983年からは住宅ローン利用者のみが対象となっている。また、現在の住宅ローン減税制度と同様にその年末残高に応じて減税額を計算する方式となったのは1986年からである。

その一方で、減税対象に既存住宅(中古住宅)が加えられたのは1980年だが、当初は一律築10年以内で一定価格以下のものにかぎられていた。1983年の改正によって既存住宅の築年数要件は木造が築10年以内、マンションなど耐火構造が築15年以内となった。1993年には耐火構造が築20年以内に緩和され、半年ほど遅れて同年中に木造が築15年以内に改定されている。そして、現在と同じく木造が築20年以内、耐火構造が築25年以内に緩和されたのは1999年のことだ。住宅ローン減税による控除限度額が過去最大(587万5千円)だったのもこの時期(1999年1月から2001年6月まで)である(2009年から2011年までの認定長期優良住宅:600万円を除く)。

なお余談ながら、近年における既存住宅ストック活用の議論の中で、築20年を超える木造一戸建て住宅などが十分に評価されていない現状について、「不動産業界の悪しき慣習」という指摘がされることもある。だが、1999年以降は築20年(それ以前は10年または15年)で線を引き、それを超えるか超えないかで数百万円の差がつく制度の中で、築20年を超えれば不利になる(安くしなければ売れない、その結果として建物の評価分を売出し価格に上乗せすることができない)状況が法によって作り出されていた一面も否定できないだろう。

耐震性を満たす住宅であれば築年数を問わないこととなった

原則として木造が築20年以内、耐火構造が築25年以内という要件は現在まで継続されているものの、2005年4月1日以降は一定の耐震性を満たした住宅であれば築年数を問われないこととなっている。ただし、そのためには買主が取得する日の前2年以内に「耐震基準を満たしていること」が証明されていなければならない。つまり、売買契約の前に売主が一定の手続きをしなければならず、耐震性の不足する住宅であれば売主が耐震改修工事をする必要があった。

耐震性を証明する書類は、一定の調査に基づく「耐震基準適合証明書」または「住宅性能評価書(耐震等級1〜3と評価されたもの)」であるが、2013年からは「既存住宅売買瑕疵保険」への加入もその選択肢に加えられている。

しかし、いずれにしても住宅ローン減税適用のメリットを受けるのは買主であり、そのための費用を負担するのは売主という構図の中で、この要件が適用されるケースはかなり少なかったようである。売主からすれば、耐震改修を求めない買主を選びたいであろうし、売れるかどうか分からない段階で耐震改修工事費用を負担することは躊躇するはずだ。逆に所有者自らが積極的に耐震改修工事をする住宅は、そのまま居住が継続されるケースが多く、中古住宅として売り出されるケースは少ないだろう。

そこで2014年度の税制改正により新たに住宅ローン減税の要件として加えられたのが、引き渡し後の買主による耐震改修工事である。ただし、マンションにおいて買主が耐震改修工事をすることは困難であり、実質的に築20年超の木造一戸建て住宅、または築25年超の鉄筋コンクリート造一戸建て住宅などを対象としたものと考えてよい。

引き渡し後の耐震改修の手順

現行の耐震基準に適合していない築20年超(または築25年超)の中古住宅を購入した買主は、その売買契約を締結してから引き渡しを受けるまでの間に、耐震基準適合証明や建設住宅性能評価などの取得に必要な一定の申請(耐震改修工事業者が確定していない場合は仮申請)、または既存住宅売買瑕疵保険の申込みを行う。

そして、実際に建物の引き渡しを受けてから耐震改修工事に着手し、工事完了後に耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書または既存住宅売買瑕疵保険契約の付保証明書を受けて入居するのである。入居した翌年に一定の書類を添えて確定申告をすることなど、その後の手続きは通常の住宅ローン減税と同じだ。耐震改修工事の請負契約書、証明の申請書(または申込書)、証明書など、添付しなければならない書類は増えるが……。

なお、引き渡し後の耐震改修によって住宅ローン減税だけでなく、住宅取得資金贈与の非課税措置や不動産取得税の特例措置なども受けることができるようになった。耐震基準に適合することの証明を受けるタイミングについて、住宅取得資金贈与の非課税措置は取得日の翌年3月15日まで、不動産取得税の特例措置は取得後6ケ月以内といった規定もあるが、住宅ローン減税の適用を受ける場合には「入居の日まで」であることに十分な注意が必要だ。

引き渡し後の耐震改修における問題点

築年数を経た既存住宅の流通を促進し、不動産業界からの要望も強かった新しい規定だが、現状では大きな問題点を抱えている。入居時期の判定をめぐる内容だ。制度上では、耐震改修工事が完了してその証明を受けた日以降(かつ取得日から6ケ月以内)に入居することが求められ、その入居日は原則として住民票の記載によって確認される。

その一方で、住宅ローンを融資する金融機関からはその実行日、つまり引き渡し日に住民票を異動させておくことを求められるケースが多いだろう。「居住目的」であることを担保するためである。金融機関の求めに応じて入居前に住民票を異動させることで、住宅ローン減税の適用が否認されるかどうかは、来年の確定申告時期になってみなければ分からないが、十分に注意したいところだ。

この制度の利用を考えるのであれば、金融機関に柔軟な対応をしてもらえるようにあらかじめ交渉をすることも考えなければならない。これらの対応について国土交通省や財務省が明確な基準を示すのは、まだしばらく先のことになりそうであり、それまでは管轄の税務署に相談をしても満足な回答は得られないだろう。

2014年 09月02日 11時03分