雪のある生活とは

合掌造りの屋根は雪を積もらせないよう急斜面になっている合掌造りの屋根は雪を積もらせないよう急斜面になっている

世界を真っ白に変える雪。見た目には美しいが、その中で生活するとなると、さまざまな工夫が必要となってくる。
たとえば雪深い白川郷の合掌造りはその一例である。45度~60度と急な勾配をつけた屋根は、雪を滑り落としやすくするための工夫だ。岐阜県以上に雪の多い北海道や東北地方なども、かつては「三角屋根」と呼ばれるような、角度のきつい屋根が主流だった。暖かい地域に住む人間には雪の重さなどさほどのものと思えないが、比較的軽い新雪でも1立方メートルあたり100キロ前後の重量になるから、20平方メートルの屋根に1メートルの雪が積もれば、2トンの重量がかかることになる。
しかし、近年は、自然に落ちる雪が近隣の迷惑になるという理由から、太陽電池や灯油などで屋根を温めて雪を溶かす「融雪式住宅」も増えているという。また重量に耐えるよう、家の強度を上げるなどの対策も進んでいる。
さらに、寒い地域では防寒対策が重要。北国では、長年の経験から編み出された防寒のアイデアが周知されており、たとえば北海道の人々が東京へ行くと「隙間風がひどくて寒い」と感じることも多いという。
また、道路の雪かきが大変だが、ロードヒーティングのある地域では、実はさほど困らない。ロードヒーティングとは、電熱線や温水の循環するパイプが舗装の下に張り巡らせてあるもので、道路に積もった雪を自動的に溶かしてくれるのだ。

雪国の家の工夫

雪国の家屋には、「融雪式住宅」をはじめ、それ以外の地域にはない、さまざまな工夫がされている。
融雪式でない古いタイプの家屋では、急傾斜の屋根がつけられていることが多いが、かなりの割合で3階建てになっており、1階は倉庫などになっている。1階部分はすべりおちた雪で太陽光が入らず、暗いためだ。リビングなど、人の生活する部屋は2階以上に設けられていることが多い。
そして柱は四寸(約12センチ)角と太目のものが使われており、本数も多目に設置されていることが多い。壁は分厚く、断熱性に優れた素材が使われる。
「耐雪式住宅」と呼ばれる家屋は、3メートルの積雪にも耐えるが、それでも雪おろしが必要になる場合もあるという。つまり、豪雪地帯では3メートル以上の雪が降ることもあるわけだから、普通の家屋ならぺしゃんこになってしまうだろう。
また、雪おろしで下に落とされた雪が、階下の窓ガラスを割ってしまう危険があるので、1階の窓には「雪がこい」と呼ばれる横板がとりつけられていることも。そして家の中でもっとも冷気や暖気を呼び込むのが窓ガラス。断熱性を確保するため、二重にすることが多い。

雪国の庭に必要な対策

雪国の庭木には雪吊りなどの対策が必要だ雪国の庭木には雪吊りなどの対策が必要だ

工夫が必要なのは室内だけではない。雪が降り積もる庭にこそ、注意が必要だ。庭木が雪の重みで折れてしまわないよう「樹木の雪がこい」が必要になる。これは丸太を円錐状に組み合わせて木を覆い、雪の重量から守るもので、木の本数が多いと大変だ。また、幹に添わせるように支柱をたて、そこから円錐状に縄を張って枝を吊る手法を「雪吊り」と呼ぶ。
「雪吊り」は、兼六園など、雪国の庭園などで見たことがある方も多いだろう。雪国の庭園は、雪が積もって一面真っ白になっても変化が生まれるよう、背の高い樹木を配して高低差をつけるなどの工夫がされているようだ。
また、庭にあるものはすべて雪に埋もれてしまうので、使用するものは忘れず室内に入れておかないと、春になるまで見つからない。

雪国の常識!?雪国あるある

冷凍庫より雪の下にうずめる方が速く冷える冷凍庫より雪の下にうずめる方が速く冷える

ではここで、”他の地域の住人にはよく理解できない雪国の常識”を見ていこう。

・冬場は気温のマイナスを省略する
「今日の気温は20度だって~」と言われても「意外と暖かいんだな」と勘違いしてはいけない。冬の雪国民が言う「20度」は「-20度」のこと。寒いを通り越して、肌がヒリヒリし、息をするたび肺が苦しいと感じるレベルなのだそうだ。

・除雪車の音で目が覚める
ロードヒーティングが設置されていない地域は、車が通れるように除雪車が走るのだが、どけた雪は道路の両脇に移動するため、家の前に雪の山ができてしまう。その山はそれぞれの家の住人が、雪かきで取り除かなければならないのだ。
タイミングが悪いと、せっかく雪かきをした後に除雪車が通り、やりなおしを余儀なくされることもあるようだ。

・夏よりも冬にアイスクリームを食べたくなる
冬の室内はしっかり暖房されており、屋外でも万全の防寒服を装備しているため、夏より暑く感じるほどだそうだ。

・靴はデザインより底重視
雪道は滑りやすいので、滑り止めは必須だ。職場や学校では、「今年はもうころんだ」「まだころんでない」が定番の話題となるほど、「滑り」を避けて通れないのが雪国。ただし滑りやすい道は悪いことばかりではなく、そりが一つあれば、ショッピングカートの代わりにも、ベビーカーの代わりにもなるという。

・急冷したいときは冷蔵庫より室外
すぐに冷たいビールを飲みたいときは、冷凍庫に入れるより、室外に積もった雪にうずめる方が急速に冷えるらしい。冷凍庫は-18度以下に冷やすよう、JIS規格で定められているから、外気は-20度近いのかと驚くが、暖かい室内に置かれた冷蔵庫の狭い庫内よりも温度を下げてくれるのかもしれない。また野菜を新聞紙に包んで雪に埋めておけば、冷蔵庫で保存するより鮮度が長持ちするという。

雪国の生活は暖かい地域とは勝手が違って大変なことも多いが、慣れてしまえば利点も少なくない。しかし、まずは住んでみなければ長所も短所もわからない。雪国での生活にあこがれている読者は、旅行などで雪国の冬を短期間だけ体験してみるのもよいかもしれない。

2016年 02月07日 11時18分