立地条件がいいのなら店舗併用住宅を検討する価値がある

積水ハウス株式会社 東京南シャーメゾン支店 店長の黒川剛氏。渋谷区周辺を中心に数多くの店舗・賃貸併用住宅の建築に携わっている積水ハウス株式会社 東京南シャーメゾン支店 店長の黒川剛氏。渋谷区周辺を中心に数多くの店舗・賃貸併用住宅の建築に携わっている

近頃、特に駅に近いなど条件の良い立地で家を建てる際に、賃貸併用住宅を検討するケースが増えている。家賃収入によって住宅ローンの一部またはすべてをまかなえることや節税効果といった経済的なメリットがあるからだ。
だがこのようなメリットがあるのは賃貸併用住宅だけではない。商業地域に近いなどの条件が揃うのならば店舗併用住宅もぜひ検討すべきだろう。店舗併用ならば節税効果が得られるだけでなく、「いつかは花屋さんを開業したい」といった将来の夢を実現することも可能だ。
そこでどのような条件が揃えば店舗併用住宅は成功するのかなどを、積水ハウス株式会社 東京南シャーメゾン支店 店長の黒川剛氏に聞いた。

相続税対策など様々な節税効果が

相続税の「小規模宅地等の特例」の評価割合と上限面積。店舗併用住宅の場合、自宅用の土地(上限330m2)と店舗用の土地(上限400m2)の合計730m2まで評価額が軽減される(資料提供:積水ハウス)相続税の「小規模宅地等の特例」の評価割合と上限面積。店舗併用住宅の場合、自宅用の土地(上限330m2)と店舗用の土地(上限400m2)の合計730m2まで評価額が軽減される(資料提供:積水ハウス)

店舗併用住宅には2通りある。自分で開業するケースと貸店舗としてテナントから家賃収入を得るケースだ。どちらにしても節税効果があり、店舗部分のローン利息や建物・設備の減価償却費などは経費として計上できる。
また、相続税対策としても有効だ。相続する土地に店舗併用住宅が立っていれば「小規模宅地等の特例」が適用されるからだ。たとえば自分で開業するために併用住宅を建て、将来相続人がその事業を引き継げば、自宅用(特定居住用)と店舗用(特定事業用)の土地面積を合わせて合計で上限730m2まで相続税評価額が20%となる。つまり土地に対する相続税が80%軽減される。もし、自宅用とテナント用(貸付事業用)の土地ならば、ある計算(調整計算)によって上限200m2まで50%軽減となる。
くわしくは国税局のサイトなどで確認してほしい。

さらに貸店舗とする場合は、賃貸併用住宅に比べて建物自体の建築費のコストダウンを図ることが可能だ。賃貸住宅のように複数のバス・トイレなど水まわりやエアコンなどの設備を設置することなく、スケルトンの状態で貸すことができるからだ。

賃貸住宅と貸店舗を比較すると賃料も大きく差が出ることがある。黒川氏は、その具体例を以下のように語る。

「たとえば渋谷駅から徒歩10分程度の住宅街なら賃貸住宅の家賃相場は1坪当たり1万円から1万5,000万円前後です。それが貸店舗になると1坪当たり3万円前後になります。メイン通り沿いなら5万円前後になることも珍しくありません」

では、賃貸併用住宅にするよりも店舗併用住宅の方がお得かというと必ずしもそうとはいえない。

「賃貸併用住宅の場合は、空室の有無に関係なく安定した家賃収入が得られる管理会社との一括借り上げ契約が主流です。一方でテナントに関してはこのような契約方法は一般的ではありません。つまり空室のリスクが高いのです。安定収入を望むならば、明らかに集客が見込める立地以外はお勧めできないのが現状です」(黒川氏)。

夢の実現だけでなく地域貢献という側面も

東京都渋谷区にある積水ハウスのモデルハウス。4階建てで1階部分がカフェの店舗併用住宅(資料提供:積水ハウス)東京都渋谷区にある積水ハウスのモデルハウス。4階建てで1階部分がカフェの店舗併用住宅(資料提供:積水ハウス)

とはいえ、店舗併用住宅のメリットは経済面だけではない。自分で開業する場合は、夢の実現をはじめ、移動時間の削減、自由な開店時間、子育てや介護と仕事の両立、家賃などランニングコストの削減などがある。
貸店舗の場合は、クリニックや教養系の教室などがテナントとして入れば地域住民に喜ばれる。また、防犯カメラが設置されていたり夜間でも照明がついていたりすることで周辺の防犯性の向上にも役立つ。

「メイン通りの例ですが、1階にテナントとしてコンビニが入り、2階が賃貸住宅、3階が自宅といった併用住宅にすると、賃貸の入居者にとっての利便性が向上し、空室率の低下にも役立ちます」(黒川氏)。

周辺住民に迷惑をかけないことが第一

上記モデルハウス内のカフェ部分の内装(資料提供:積水ハウス)上記モデルハウス内のカフェ部分の内装(資料提供:積水ハウス)

では、どのような業種が店舗併用住宅に向いているのだろうか。黒川氏は以下の5つの条件をあげる。

1.音や臭いが出ない
2.人が騒がない
3.夜中に営業しない
4.大勢がクルマやバイクで来ない(メイン通り除く)
5.威圧的な人が出入りしない

基準は家族や周辺住民に迷惑がかかりにくい業種だ。
具体的にはカフェ、学習塾、教養系教室、理・美容室、クリニック、鍼灸整体、ギャラリー、事務所などだ。
上記のような業種は駅の近くや繁華街でなくても比較的集客が可能なので、住宅街でも営業しやすいといえるだろう。

実績豊富なプロに相談することが成功の近道

定年後、または脱サラして自分のこだわりを具現化したお店を開業することを将来の目標とする人は少なくないはずだ。しかし、素人が思いつきで開業して成功するほど甘くないのも事実。
黒川氏は成功の条件を次のように教えてくれた。

「専門会社によるエリアマーケティングと同時に地元住民や行政への事前相談が必須です。特に土地勘のない街で開業する場合は、町内会長などの顔役の理解、理想的には後押しが欲しいところです」

たとえば積水ハウスがクリニックを建築する場合は、事前に診療圏調査として周辺に何科のクリニックが何件あるか、などを調べ成功の可能性を探る。
また、貸店舗とする場合、同社のように数多くの店舗併用住宅を手掛けた実績のある会社は、完成後もテナントの募集から管理まで一括で請け負うので将来にわたって頼りになる。

行政への相談とは、たとえば飲食店の場合は保健所への許認可手続きなどだ。また、業種によっては閑静な住宅地では営業不可の場合もある。

このようなことは、素人にはどうしたらいいか分からないものだろう。そのため、まずは実績豊富な専門会社へ相談することが成功の近道ではないだろうか。

取材協力:積水ハウス株式会社
http://www.sekisuihouse.com/style/shop/

2015年 03月12日 11時05分